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コピュラの性質:分布の裾での依存関係

第 2 章 資産価格変動のコピュラとポートフォリオの信用リスク 39

2.2 コピュラ

2.2.3 コピュラの性質:分布の裾での依存関係

ここでは,2変量を仮定し,コピュラを用いて,分布の裾での変量間の依存関係を考察する.

以下,分布の裾での変量間の依存関係を示す指標を定義する.

連続な分布関数F1, F2に従う確率変数をそれぞれX1, X2とする.X1, X2の「上側裾依存係 数」を次の極限値として定義する.

λU = lim

u1Pr[F2(X2)> u|F1(X1)> u] (2.9) (2.9)式は,閾値u1に近づけた際,X1の分布関数がuより大きい(F1(X1)> u)という条 件で,X2の分布関数がuより大きい(F2(X2)> u)確率である.このとき,0< λU ≤1なら ば,X1, X2は「上側で漸近従属」の関係にあるといい,λU = 0ならば,X1, X2は「上側で漸 近独立」の関係にあるという.(2.9)式右辺を変形すると,X1, X2のコピュラをCとすること で,以下を得る.

ulim1Pr(X2 > F21(u)|X1 > F11(u))

= lim

u1

1−Pr(X1 ≤F11(u))−Pr(X2 ≤F21(u)) + Pr(X1≤F11(u), X2≤F21(u)) 1−Pr(X1 ≤F11(u))

= lim

u1

1−2u+C(u, u) 1−u

(2.10) (2.10)式右辺の分子,分母ともにu→1−0に収束することから,C(u1, u2)u1u2いず れについても(0,1)の区間で微分可能な関数であるとすると,ロピタル(L’Hospital)の公式か6,(2.11)式に変形することができる.

ulim1

1−2u+C(u, u)

1−u = lim

u1

{(

1− ∂

∂sC(s, t)

s=t=u

) +

( 1− ∂

∂tC(s, t)

s=t=u

)}

= lim

u1{Pr(U2> u|U1=u) + Pr(U1 > u|U2 =u)}

(2.11)

5

ここでは,全体の依存度合いを調整するためケンドールのタウを0.5に固定し,tコピュラの自由度は3とした.

6

ロピタルの公式が適用できる条件については,Rudin [1976]Theorem 5.13を参照.

 0.02 

 0.04 

 0.06   0.08 

 0.1   0.12 

 0.14   0.16 

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3

‑3‑2‑10123

正規

 0.02 

 0.04 

 0.06 

 0.08   0.1 

 0.12   0.14   0.16 

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3

‑3‑2‑10123

t

 0.02 

 0.04 

 0.06 

 0.08   0.1 

 0.12   0.14 

 0.16 

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3

‑3‑2‑10123

ガンベル

 0.02 

 0.04 

 0.06 

 0.08   0.1 

 0.12 

 0.14   0.16 

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3

‑3‑2‑10123

クレイトン

 0.02 

 0.04 

 0.06 

 0.08 

 0.1   0.12 

 0.14   0.16 

‑3 ‑2 ‑1 0 1 2 3

‑3‑2‑10123

フランク

図2.2: 2変量同時密度の等高線 備考: Yan [2007]copulaパッケージを用いて作成.

ここで,U1, U2は区間[0,1]の一様分布に従う確率変数である.このとき,C(u1, u2) =C(u2, u1) であるならば,次式が得られる.

λU = 2 lim

u1Pr(U1 > u|U2 =u) (2.12) 同様に,X1, X2の「下側裾依存係数」を(2.13)式で定義する.

λL= lim

u0+Pr[F2(X2)< u|F1(X1)< u] (2.13) (2.13)式は,閾値u0に近づけた際,X1の分布関数がuより小さい(F1(X1)< u)という条件 で,X2の分布関数がuより小さい(F2(X2)< u)確率である.上側の場合と同様,0< λL≤1 ならば,X1, X2は「下側で漸近従属」の関係にあるといい,λL= 0ならば,X1, X2は「下側 で漸近独立」の関係にあるという.(2.10)式と同様の変形により,次式を得る.

λL= lim

u0+

C(u, u)

u (2.14)

C(u1, u2) =C(u2, u1)であるならば,以下の関係を得る.

λL= 2 lim

u0+Pr(U1< u|U2=u) (2.15) なお,上側でも下側でも漸近独立である場合,X1, X2は「漸近独立」の関係にあるという.

本章では,下側裾依存性の推計の際,極限をとった(2.13)式の代わりに一定の確率uを条件 とした

λL(u) = Pr[F2(X2)< u|F1(X1)< u] (2.16) を下側裾依存性の推計値として用いる.(2.16)式の条件付き確率は同時分布F(·,·)やコピュラ C(·,·)を用いると次式で書き直すこともできる.

λL(u) = F(F11(u), F21(u))

u = C(u, u)

u (2.17)

2変量のコピュラについて,(2.17)式の下側裾依存性λL(u)とその極限値である(2.13)式の下 側裾依存係数λLを示すと表2.1のとおりである.tコピュラでは自由度νが低いほど大きな下 側裾依存係数となっているが,正規コピュラでは下側裾依存係数は0になり漸近独立となるこ とがわかる(導出の詳細は2.3節を参照).クレイトンコピュラでは下側で漸近従属し上側で は漸近独立となっている.ガンベルコピュラでは逆に下側では漸近独立であり上側では漸近従 属している.フランクコピュラでは上側でも下側でも漸近独立である(クレイトン,ガンベル,

フランクの各コピュラでの裾依存係数の導出は2.4節を参照).リスク管理上は下側で漸近従 属することが問題となる場合が多い.そこで,下側で漸近従属するようにガンベルコピュラを 反転させた反転ガンベル(rotated Gumbel)コピュラを導入する7.反転ガンベルコピュラは (2.18)式で表現される.

反転ガンベルコピュラ: C(u1, . . . , un) =

n

j=1

uj−1+exp{−(

n

j=1

(−ln(1−uj))γ)1/γ} (2.18)

表2.1に示すように,反転ガンベルコピュラの裾依存係数はガンベルコピュラの裾依存係数と は上側・下側がちょうど逆になっていることがわかる.

7

反転ガンベルコピュラは,下側での裾依存性を考慮する際によく用いられる(Tsafack [2009];小宮[2003] ど)

表2.1: 2変量コピュラの下側裾依存係数

コピュラ 下側裾依存性 λL(u) 下側裾依存係数 λL

正規

ΦΣ−1(u),Φ−1(u))

u 0

t tν,Σ(t−1ν (u),tu −1ν (u)) 2tν+1(

−√

(1ρ)(ν+1) (1+ρ)

) クレイトン (2−uα)1/α 21/α

ガンベル u21/γ1 0 反転ガンベル 2 +(1u)21

1

u 2−21/γ

フランク −δu1 ln(

1 +(e(e−δu−δ1)2

1)

) 0

備考: 正規コピュラ,tコピュラのパラメータΣは非対角要素を相関パラメータρとした2×2 の行列である.