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第 2 章 資産価格変動のコピュラとポートフォリオの信用リスク 39

2.4 アルキメディアンコピュラ

2.4.4 ガンベルコピュラ

ガンベルコピュラは,Gumbel [1960]で示されたコピュラで,γ(> 1)をパラメータとして

(2.7)式で表される.1.4.2節で考察したように,各変量について最大値を考えたときに,その

同時分布から構成されるコピュラは極値コピュラと呼ばれ,リスク管理上も意義深いコピュラ であるが,ガンベルコピュラはアルキメディアンコピュラで唯一の極値コピュラであることが 知られている(Genest and Rivest [1989]

(1) ガンベルコピュラの裾依存係数

2変量(n= 2)のガンベルコピュラの裾依存係数は,上側では,C(u1, u2)u1u2いずれ についても(0,1)の区間で微分可能な関数であるから,ロピタルの公式を用いて,

λU = lim

u1

1−2u+C(u, u)

1−u = lim

u1

1−2u+ exp{−(2(−lnu)γ)1/γ} 1−u

= lim

u1

−2 + 21/γu21/γ1

−1 = 2−21/γ

(2.55)

となる.γ >1よりλU >0となるので,上側では漸近従属することがわかる.一方,下側で は,21/γ >1より,

λL= lim

u0+

C(u, u)

u = lim

u0+

u21/γ

u = lim

u0+u21/γ1 = 0 (2.56) となる(漸近独立).つまり,ガンベルコピュラは,分布の両裾で異なる依存関係を持っている.

33

推定に統計言語Rを用いる場合には,最適化(最大化)関数の1つであるoptimizeに対数尤度(2.54)式を適 用することでαが得られる(なお,推定するパラメータが複数のときには,Rではoptimという関数を用いる)

(2) ガンベルコピュラに従う乱数の発生法

ガ ン ベ ル コ ピュラ の 生 成 関 数 はϕ(ui) = (−lnui)γ と な る た め ,そ の 逆 関 数 はϕ1(s) = exp(−s1/γ)で与えられる.マーシャル・オルキン法を適用するには,潜在変数θのラプラス変 換ζ(s)が以下の関係を満たせばよい.

ζ(s) = exp(−s1/γ) (2.57)

ラプラス変換が(2.57)式で表されるような確率変数θが従う分布は,「安定指数1/γ (0<1/γ≤ 1),歪みパラメータ1の正値安定分布」となることが知られている34.この分布に従う乱数θ0

は,[0, π]の一様乱数V と標準指数分布に従う乱数W を独立に生成し35 θ0

(sin((γ−1)V /γ) W

)γ1

sin(V /γ)

sin(V)γ (2.58)

とすればよい(Kanter [1975].したがって,(2.58)式に従って乱数θ0を発生させて,マーシャ ル・オルキン法を適用すれば,ガンベルコピュラに従う乱数を発生させることができる.具体 的なアルゴリズムは次のようになる.

アルゴリズム(ガンベルコピュラに従う乱数発生法)

1. [0, π]の一様乱数V と標準指数分布に従う乱数W を独立に発生させ,潜在変数θ0を(2.58) 式で生成する.

2. θ0とは独立な[0,1]の一様乱数I1, . . . , Inを発生させる.

3. i= 1, . . . , nUi ←exp(−(−θ01ln(Ii))1/γ)としてU1, . . . , Unを生成する.

(3) ガンベルコピュラのパラメータ推定法

以下では,ヒストリカルデータを用いた最尤法によって,ガンベルコピュラのパラメータ(γ を推定する方法を検討する.

まず,2変量の場合で考える.ガンベルコピュラは,

C(u1, u2) = exp(−((−lnu1)γ+ (−lnu2)γ)1/γ) (2.59)

34

一般に,安定指数α˜,歪みパラメータβ,位置パラメータµ,尺度パラメータσを持つ安定分布は,その確率 変数X の特性関数が次のように表せる.ここで,iは虚数単位であり,0<α˜21β1σ0である.

詳細はSamorodnitsky and Taqqu [1994]を参照.

E[eitX] =

{exp[σα˜|t|α˜{1iβsign(t) tan(πα/2)˜ }+ iµt] for ˜α̸= 1 exp[σ|t|{1 + (2/π)iβsign(t) lnt}+ iµt] for ˜α= 1

35

標準指数分布の分布関数はF(x) = 1e−xで与えられるため,それに従う乱数wは,[0,1]の一様乱数をu して,w=F−1(u) =ln(1u)で生成することができる.

と書けるので,密度関数

2C(u1,u2)

∂u1∂u2 は以下のようになる.

2C(u1, u2)

∂u1∂u2 = ∂{C(u1, u2)((−lnu1)γ+ (−lnu2)γ)1/γ1(−lnu1)γ1/u1}

∂u2

= (−lnu1)γ1

u1 ×[C(u1, u2){((−lnu1)γ+ (−lnu2)γ)1/γ1}2(−lnu2)γ1/u2 +C(u1, u2)((−lnu1)γ+ (−lnu2)γ)1/γ2(γ−1)(−lnu2)γ1/u2]

=C(u1, u2){(lnu1)(lnu2)}γ1

u1u2 {(−lnu1)γ+ (−lnu2)γ}1/γ2

×[{(−lnu1)γ+ (−lnu2)γ}1/γ+γ−1]

(2.60)

これより,対数尤度は,データ数がN の場合,1 ≡ −lnu1, uˆ2≡ −lnu2とすると,

ln

N

j=1

(∂2C(uj1, uj2)

∂uj1∂uj2 )

=

N

j=1

 −((ˆuj1)γ+ (ˆuj2)γ)1/γ+ ln

{uj1uˆj2)γ−1

uj1uj2 ((ˆuj1)γ+ (ˆuj2)γ)1/γ2 } + ln{(γ−1) + ((ˆuj1)γ+ (ˆuj2)γ)1/γ}

(2.61)

となる.(2.61)式を最大化するγは,数値計算で求められる.

次に,3変量以上のガンベルコピュラでも,同様の手続きで,密度関数と対数尤度を求めら れる.ただし,n変量の密度関数を一般的な形では表現することができないため,逐次微分し て密度関数を具体的に求める必要がある.

以 下 で は ,35 変 量 の ガ ン ベ ル コ ピュラ の 対 数 尤 度 関 数 を 示 す.表 記 を 簡 単 に す る た め , i= 1, . . . ,5で,i ≡ −lnuiψji ≡((ˆuj1)γ+ (ˆuj2)γ+· · ·+ (ˆuji)γ)1/γと記す.

• 3変量ガンベルコピュラ ln

N

j=1

(∂2C(uj1, uj2, uj3)

∂uj1∂uj2∂uj3 )

=

N

j=1

[

−ψj3+ ln

{(ˆuj1j2j3)γ1

uj1uj2uj33j)1 }

+ ln{(2γ−1)(γ−1) + 3(γ−1)ψ3j+ (ψj3)2} ]

(2.62)

• 4変量ガンベルコピュラ ln

N

j=1

(∂2C(uj1, uj2, uj3, uj4)

∂uj1∂uj2∂uj3∂uj4 )

=

N

j=1

 −ψ4j+ ln

{uj1ˆuj2uˆj3uˆj4)γ−1

uj1uj2uj3uj44j)1 } + ln{

(3γ−1)(2γ−1)(γ−1) + (11γ−7)(γ−1)ψj4+ 6(γ−1)(ψ4j)2+ (ψ4j)3}

 (2.63)

• 5変量ガンベルコピュラ ln

N

j=1

(∂2C(uj1, uj2, uj3, uj4, uj5)

∂uj1∂uj2∂uj3∂uj4∂uj5 )

=

N

j=1





−ψ5j+ ln

{uj1uˆj2uˆj3uˆj4uˆj5)γ−1

uj1uj2uj3uj4uj5j5)1 }

+ ln

{ (4γ−1)(3γ−1)(2γ−1)(γ−1) + 5(5γ−3)(2γ−1)(γ−1)ψ5j +5(7γ−5)(γ−1)(ψj5)2+ 10(γ−1)(ψ5j)3+ (ψj5)4

}





(2.64) 5変量までのガンベルコピュラのパラメータは,以下のアルゴリズムによって,推定すること ができる.

アルゴリズム(ガンベルコピュラのパラメータ推定)

1. まず,データ数N,変量数nの原データxjii= 1, . . . , n, j = 1, . . . , N)を,周辺分布 ごとに[0,1]の一様分布系列uji に変換する(uji =Fi(xji))

2. ˆuji =−lnujii= 1, . . . , n, j = 1, . . . , N)を計算する.

3. 対数尤度関数を定義する(変量数nに応じて,(2.61)(2.64)式の1つを選択) 4. 最大化アルゴリズムにより,対数尤度関数を最大化するパラメータを求める.

ここで,上記のアルゴリズムによる具体的なパラメータの推定事例を挙げる.まず,γ = 4 のガンベルコピュラを用いて,5変量乱数を1,000個発生させる.次に,ガンベルコピュラのパ ラメータの値を未知として,この乱数データからパラメータを最尤推定すると,パラメータの 推定値はγˆ= 3.984となり,真値(γ = 4)にほぼ等しい結果が得られた.