第 2 章 中米 6 ヶ国におけるコミュニティ防災分野を取り巻く環境
2.3 中米 6 ヶ国のコミュニティ防災に係る現状分析と課題およびニーズ
2.3.5 コスタリカ
(1)
現状と課題およびニーズコスタリカのコミュニティ防災に係る現状および調査結果を踏まえての課題とニーズを以 下に示す。
表 2.3.9 コミュニティ防災に係る現状・課題およびニーズ(コスタリカ)
項目 現状と課題 ニーズ
災害リスク に係るデー タ収集・整 備状況
CNE の文書情報センター(Biblioteca Digital)は国家リスク管理シス テムを構成する各組織の支援の下災害リスク・管理情報を収集・蓄積 し公開(HP含む)している。
収集データには、1981年から 2009年までのハリケーン・洪水災害、
地震・火山・地すべり災害等の被害状況・教訓に関する情報と災害評 価に加え、防災およびその計画・土地利用計画、防災能力強化、復興 などの情報が含まれている。
CNE はリスク管理のためにまずコミュニティを組織し各コミュニティ
災害履歴の整理能力 の向上 防災計画への災害履 歴の導入技術指導
項目 現状と課題 ニーズ の潜在的脅威に関する情報を収集することの重要性を強調している。
国立古文書資料館・国立図書館にも古文書・公文書・新聞などの形で 災害リスクに係る情報は保管されているが防災分野といった分野分け がなされておらず整理が必要である。
リスク分
析・評価 住民が認識する災害種は地震・津波・洪水・火山・土砂災害が主。洪 水・土砂災害は頻発しており、地域の住民および政府機関の関心が比 較的高い。また、海岸沿いに位置するコミュニティは、地震による津 波への関心が高い。
CNE は洪水や土砂災害を比較的得意としている。地震や火山の専門知 識を有する職員が少ない。
行政機関・CME・CCE の各レベルでの各種 災害の専門知識
CNE では危機調査課がデータを集約し、ハザードマップを作成・更新 している。CNEのHPには主要地域のハザードマップが公開されている。
スケールは地域レベルのものから市レベル(コスタリカではカントン と呼ばれている)のものまであり統一されていない。市が防災計画や 土地利用計画に活用できるレベルの中~大縮尺のハザードマップを整 備することが課題である。
中~大縮尺のハザー ドマップ整備 解析技術の向上 ハザード・リスクマ ップ情報の共有 フェーズ 1対象コミュニティでは、避難所および避難ルートを示した
防災マップや模型が住民主体で作成されている。住民主体で防災マッ プを作成する活動はグッドプラクティスの一つである。ただし、今回 確認した地図では、リスクの評価は示されておらず、今後は防災マッ プとしての精度向上が課題である。
住民が理解できて、
分かりやすい防災マ ップの作成 リスク評価技術の向 上
体制構築 コ ス タ リカの 防 災 に 関 す る 組 織 体制の 主軸は 、 上位 か ら CNE
(National)→CRE(Regional)→CME(Municipal)→CCE(Community)
という階層構造となっている。法律 No.8488にはCMEやCCEを設立す るよう記述があるが、CCE に関してはまだすべての地域で組織されて はいない。フェーズ 1で初めて CCE が組織された所も多い。各地域で の防災組織の整備と各階層レベルでの防災能力の向上が課題である。
防災組織の整備 各階層レベルでの防 災能力の向上
市役所では、リスク管理だけを担当とする部署はない。ほとんどが環 境管理課の職員が兼任している(エスカス市のみリスク管理担当者が 1名組織されている)。
IFAMは各市役所に関する情報を多く有しており、IFAM主催の全国市議 会も開催している。市同士の連携に強みを持っている機関である。
地方自治体の防災組 織整備
防災担当者の能力向 上
フェーズ 1で対象だったコバノ市では、市役所・CME・CCEの連携(コ ミュニケーション)が非常にうまくいっており、地域全体での防災活 動が現在も継続して行われている。その理由に考えられることは、① 市からのバックアップ(資金面)、②CME(特にJICA帰国研修員)の意 識の高さとリーダーシップ、③CCE レベルのリーダーの意識の高さと リーダーシップ、があるからと考えられる。(ここではいずれの組織で も防災リーダーは女性であった。コバノ市の場合、市からのCME・CCE への資金援助は2014年で3年目になる。資金援助が可能なのは、教育 省がコバノ市に協力的という背景があるかもしれない。)
コミュニティの多くは生計維持のために男性の多くが、昼間コミュニ ティ外に仕事に出かける(カーニャスでは周辺のサトウキビ畑へ働き に行く等)。災害時には、女性と子供たちのみで対応しなければならな い事態も想定される。
CMEとCCEへの防災 教育
非常時の弱者救済 女性の防災組織参加 促進と子供たちへの 防災教育
CNEやOVSICORI、気象庁等によるモニタリング結果から緊急事態が想 定された場合、CNE の緊急オペレーションセンターから各機関に情報 が伝達される。
コミュニティ(CCE)には無線ラジオでCNE から情報が入ることになっ ているが、地形的な問題でCNE から直接無線が入らなかったり、災害 時の停電により無線が使えなかったりという問題が実際に発生してい る。無線ラジオが整備されていないコミュニティも多い。また、CCE
確実で迅速な災害情 報伝達
防災情報・情報発信 の一元化
項目 現状と課題 ニーズ から住民全体に知らせる手段が整備されていない(サイレン等の設置
が必要)。
大規模災害に備えた災害情報伝達体制の強化(行政レベル・コミュニ ティレベル)が課題である。
啓発 フェーズ 1で対象となった地域では、防災教育は上位組織が主体とな って行われている。しかしながら、CME が CCEに、CCE が住民に教育を 行うには、指導者側の知識に限界がある。指導者の更なる防災知識の 向上が必要である。
防災教育による住民 啓発
指導者のレベル向上 と維持
2012年の9 月にM7.6の地震がニコヤ半島で発生した。その後、地震 に対する関心がその地域の住民の中で高まった。(実際に脅威を経験す ることで、防災の必要性の認識が高まる)
防災の必要性の認識 向上
フェーズ 1 で開催されてから毎年開催されているコバノ市の防災祭 は、行政・学校・住民・消防・警察・赤十字などさまざまな関係者が 一堂に会する地域の一大イベントとなっている。周辺の学校が BOSAI の取り組みを我が校にも導入したいと問い合わせがあるようである。
地域レベルで防災活動の取り組みの水平展開が起きている。グッドプ ラクティスの一つである。
防災教育・経験の共 有の場の提供
コバノ市の Santa Teresa 地区は海岸沿いのリゾート地である。2012 年9 月の地震を契機にホテルやレストランの経営者の防災意識が高ま った。現在、CCE が観光関係者をコミュニティ防災活動に巻き込む努 力を始めた。観光マップに津波への勧告記事と避難ルートを示してい る。観光業と防災活動の連携が見られるグッドプラクティスである。
ただし、一部の環境業者は防災活動(危険の告知)による観光客減少 を懸念し、防災活動に消極的である。
観光業と防災活動の 調和
防災計画 HFA に沿って策定された「新国家リスク管理計画(2010-2015)」に基 づき、防災に関する法制度や計画・組織体制の整備が進められている。
2013年末にMIVAHを中心として、「国家土地利用政策」および「国家 土地利用計画」が策定された。これを基に、各市が市の土地利用計画 を策定している。ただし、市役所だけではこの土地利用計画の策定は 技術的に困難であり、外部から専門家を雇っているのが現状である。
また、土地利用計画策定に必要な精度のハザードマップも整備されて いない。
土地利用計画の策定 と実行技術
エスカス市では、2010年11 月に発生したLajas土石流による被災者 の移転活動を行っている。CNEの資金で、51軒の移転者用住居地を建 設中である。入居者側の負担は一切なく、充実した住環境にもかかわ らず、移転命令を拒みリスクの高い土地に住み続ける住民も多い。
貧困層が災害に脆弱な河川沿いや急斜面上の災害リスクの高い場所に 住まざるを得ない状況もある。
市による土地利用計 画の策定と実行技術 住民への防災教育 土地利用に関する法 制度の強化 対策 コミュニティ内で独自の警報システムが用いられている集落は今回確
認できなかった。今後は、住民が独自で雨量や河川水位などをモニタ リングし、自分たちで状況を把握・避難できるようなシステムを整備 することでコミュニティの防災能力は更に向上する。
簡易警報システムの 整備と防災知識
災害時の備蓄品(食糧・水・衛生グッズ等)が整っているコミュニテ
ィは今回確認できなかった。 備蓄品の整備
避難所の整備、運営、
管理能力の向上 市は災害に対するハード対策をほとんど実施していない。その理由は、
予算の問題ではなく、工事の許可を得るまでにかかる時間の問題であ る。工事の許可は、環境エネルギー省(MINAE)が行うが、過去に沢の 巨礫を撤去するだけの作業に許可が下りるまで4年もかかった。今回 は詳細を調べられなかったが、環境エネルギー省の工事許認可システ ムに課題があるようである。
必要最低限のハード対策が行われていないため、事態を悪化させてい るようである(例えば、市内を流れる小中河川の護岸保護がされてい
河川流域全体の洪水 土砂管理計画に基づ くハード対策