第 2 章 中米 6 ヶ国におけるコミュニティ防災分野を取り巻く環境
2.3 中米 6 ヶ国のコミュニティ防災に係る現状分析と課題およびニーズ
2.3.1 グアテマラ
(1)
現状と課題およびニーズグアテマラのコミュニティ防災に係る現状および調査結果を踏まえての課題とニーズを以 下に示す。
表 2.3.1 コミュニティ防災に係る現状・課題およびニーズ(グアテマラ)
項目 現状と課題 ニーズ
災害リスクに係る データ収集・整備状 況
Desinventarに災害履歴は入力されているが(グアテマラの場合、1988 年以降の災害記録が整理されている)、利用できる防災担当職員は限ら れており、防災対策に十分に利用されていない。
災害履歴の整理能力 の向上
防災計画への災害履 歴の導入技術指導
リスク分
析・評価 住民が認識する災害種は火山・洪水・土砂災害が主。地震・津波は発生 頻度が低く、日常的に発生する火山・洪水・土砂災害への関心が政府・
住民ともに高い。稀に発生する地震に関しては、被災を記録に残しいか に災害を伝承していくかが課題である。
災害記録の蓄積・伝 承 各レベルでの各種災 害の専門知識の習得 全国スケールの土砂災害リスクマップが CONREDのホームページに掲載
されている。
2000年~2003年のJICAプロジェクト(GIS 基盤地理情報整備及びハザ ードマップ作成計画調査)で小縮尺のハザードマップが作成された以 降、ハザードマップの整備が進んでいない。防災活動を進める上で有効 な手段であることを行政機関が認知し、中~大縮尺のハザードマップを 整備することが課題である。
中~大縮尺のハザー ド・リスクマップ整 備
解析技術の向上 ハザード・リスクマ ップ情報の共有 フェーズ 1対象コミュニティでは、避難所および避難ルートを示した防
災マップが住民主体で作成されたようである。住民主体で防災マップを 作成する活動はグッドプラクティスの一つである。しかし、住民の多く はその見かたをよく理解しておらず、存在も周知されていない。
住民が理解できて、
分かりやすい防災マ ップの作成と共有 体制構築 グアテマラの防災に関する組織体制は、上位から CONRED(National)
→CORRED(Regional)→CODRED(Departmental)→COMRED(Municipal)
→COLRED(Local)という階層構造となっている。しかしながら、コミ ュニティに最も近い存在である COMRED(地方自治体レベル)の防災能 力が低い。
CONRED が直接コミュニティで防災活動を行っている。
各階層レベルの防災 能 力の 向 上 (特に COMREDとCOLREDの 能力向上)
市役所には防災担当の部署は全く組織されておらず、関連所属員が事後 対応をするのみの体制となっている。コミュニティ防災を発展させるた めには、地方自治体レベルの防災能力の向上が課題である。
地方自治体の防災能 力向上
一部のコミュニティにおいて、若手中心の自主防災組織(ECORED)が組織 されている。彼らは社会的な役割を与えられたことにより、責任感を持 ち、プライドをもって普段から生き生きと活動している。グッドプラク ティスの一つである。
ECOREDの普及 ECORED が管理する 応急対応用の備品の 整備
情報の伝達体制に関して、地震/火山/気象/水文に係る観測/情報伝達は INSIVUMEHの役割である。しかし、SE-CONREDも独自で火山/河川水位を 観測しており、情報の混乱をきたしている。
防災情報の一元化
項目 現状と課題 ニーズ コミュニティの中には生計維持のために男性の多くが出稼ぎに出てい
る集落も多い。災害時には、女性と子供たちのみで対応しなければなら ない。
非常時の弱者救済 災害弱者への対応 女性の防災組織参加 促進と子供たちへの 防災教育
啓発 防災教育は現在 CONRED がコミュニティあるいは市に対し実施してい る。ただし、教育が実施されている地域は、主にフエゴ・パカヤ・サン ティアギト火山周辺に限定される。防災教育を普及させるためには COMRED など地方自治体レベルの防災組織の関与と、教える側のリーダ ー・防災関係者を育成することが必要である。
防災教育による住民 啓発 指導者のレベル向上
と維持
防災教育のための教材作成とカリキュラムの整備が必要である。 防災教育の工夫 教材とカリキュラム の整備
学校教員の履修科目に防災に関する項目を取り入れようとしている。
SE-CONRED と教育省の連携による防災教育の拡大と制度化が課題であ る。
教育省との連携 学校教員への防災教 育
フエゴ火山の麓の町に火山博物館がフェーズ 1 帰国研修員により設立 された。現在は市の運営になっているが、地元の小学生が訪れるなど良 き防災教育の場となっている。
防災教育・経験の共 有の場の提供 防災計画 上位計画のひとつである中米防災10 カ年計画(2006-2015)では、中央
政府の防災体制強化に加えコミュニティレベルの防災力強化、防災人材 育成、防災配慮の地域開発計画策定を重点課題としている。
コミュニティ防災の 上位計画との整合 地域開発計画(流域洪水土砂管理・土地利用計画等)は、防災への配慮
が必要である。SEGEPLAN(経済企画庁)は現在作成中の国家開発計画・
市開発計画のなかに災害管理の考えを盛り込んでいる。一方で、貧困層 が災害に脆弱な河川沿いや急斜面上に住まざるを得ない状況があるな ど計画とは別の実態もある。
貧困層への対策
ハード対策としては泥流氾濫に対処する堤防建設・浚渫などがMasagua 市、San Sebastián市などで実施されている。しかし、河川流域全体の 洪水土砂管理計画は整備されておらず、被害を受ける土地土地でばらば らな対応のようである。
河川流域全体の洪水 土砂管理計画の整備 とそれに基づくハー ド対策
対策 フェーズ 1 対象コミュニティにおいては、無線ラジオの導入と SE-CONRED からの情報伝達システムが構築されている。一方、対象とな っていないコミュニティは通信手段が携帯電話しかなく、災害時に不通 になったり、普段から全く電波の入らない地区もある。確実な通信手段 の確保が課題である。また、近隣コミュニティ間の連携強化も図ってい く必要がある。
無線ラジオの設置・
管理
コミュニティ内で警報システムが用いられて集落はなかった。今後は、
住民が独自でモニタリングし、自分たちで状況を把握できるようなシス テムを整備することが課題である。
簡易警報システムの 整備・共有と防災知 識の向上
災害情報の伝達は、INSIVUMEH→SE-CONRED→(地方自治体)→コミュニ ティという流れであるが、INSIVUMEHから発信される情報は専門的な数 値のため、住民は理解できない。住民が理解できる形での災害情報の伝 達が課題である。
住民が理解しやすい 災害情報の提供
フェーズ 1 対象コミュニティの一部では避難施設や避難ルートが指定 されている。しかし、他のコミュニティでは避難施設そのものがない場 合も多い。避難施設と避難ルートの確保が課題である。
コミュニティレベル の避難所の整備・運 営・管理能力の向上 備蓄品の整備 洪水を想定し、2階建ての学校建設を積極的に進め非常時の避難所に指
定している市もある。
項目 現状と課題 ニーズ 訓練 フェーズ 1ではコミュニティを対象に大規模な避難訓練が行われた。大
規模な避難訓練はグッドプラクティスの一つである。あるコミュニティ ではその訓練の効果が後に活かされたようである。大規模な避難訓練の 普及と、今後は地方自治体を巻き込んだ避難訓練とする必要がある。
防災訓練の継続と達 成度の確認 避難訓練のノウハウ 蓄積と成果のフィー ドバック
緊急対応 災害時は、災害の規模に応じた階層レベルに緊急オペレーションセンタ ーが設置される。緊急オペレーションセンターには、SE-CONREDの他、
行政担当、警察、消防、病院、学校、メディアなどが集結し、対応を図 る体制となっている。
コミュニティではCOLREDの避難・救護・救助・衛生・治安の5グルー プが活動する制度になっている。
赤十字などNGOの緊急時活動は、物資の支援など限定的である。
インフラ 整備・生計 向上
コミュニティの生活インフラ整備(水供給・避難道路など)と生計向上 策の推進がコミュニティの防災力向上のベースである。
農業を主な収入源とするコミュニティも多いが、害虫や火山灰などの被 害で生計が安定していない。生計向上を最も優先すべき課題と捉えてい るコミュニティも多い。
生活インフラ整備と 生計向上策の推進
集落へのアクセス道路が 1本しかない場合が多々あり、過去にも災害時 に集落が孤立してしまった例が多くある。災害時のコミュニティアクセ スが課題である。
避難道路の整備(小 規模インフラ整備)
火山を観光にした国立公園が整備されている。周辺の住民にとっては、
観光が大きな収入源となっている。観光業の拡充による生計向上と防災 活動(観光客に対する防災情報の提供など)が今後の課題である。
観光業との連携 コミュニティの安定 的な生計確保 出典:調査団
(2)
フェーズ1
後の取り組み状況今回の調査で訪問したフェーズ1のパイロットコミュニティの取り組み状況を表 2.3.2 に 示す。フェーズ
1
終了後、CONRED
はフェーズ1
で対象としたフエゴ火山周辺のコミュニ ティのみならず、パカヤ火山およびサンティアギト火山周辺のコミュニティに対しても独 自でコミュニティ防災活動を進めている。現在までの具体的な活動として、COLRED
の組 織強化・防災教育・避難訓練等を実施している。これらの活動の原動力には、CONRED
の 帰国研修員が果たす役割が非常に大きい。(3)
フェーズ1
コミュニティにおける教訓と課題フェーズ1コミュニティにおける教訓と課題を表 2.3.2に示す。
CONRED
の職員による精 力的な活動とリーダーシップがコミュニティ防災活動の大きな原動力となっている一方で、コミュニティ自身は未だ
CONRED
の指示待ち・依存傾向が強く、自立した防災活動の実施・定着までには至っていない。今後、対象とするコミュニティが増えるにつれ、