院の再編や病床数の見直しは当県に限らず,国民総医 療費の抑制とそれに伴う病床数の削減という政策的な 流れによるものではあるが,地域において唯一医療を 提供している当院としては,なんとしても存続し続け る必要があり,以下当院の取り組みについて述べる。
(1) 療養病床の導入
平成14年には病床利用率が60%を切り今後回復の 見通しも立たない中で唯一の選択として一般病床の一 部45床を療養病床とした。療養病床の導入は辛い決 断であった。県立病院の使命に照らして療養病床を導 入することが果たして許容できるものなのかというこ とである。療養病床は介護の要素が大きく,医療を担 う当院の機能からすれば相反する点が多かったが,検 討の結果,地域住民の病院であり続けるために地域住 民が求めるサービスを提供することが使命にかなうも のとして導入を決定した。平成15年5月に療養病床 の届け出を行ったが,届け出後の病床利用率は,平成 15年79.5%,16年度には87.6%に達した。高い病床利 用率となった背景として当地域の超高齢化の現状があ り,患者の病態も明らかに変化していることが大きな 要因として上げられる。
県立病院が療養病床を導入することの是非はともか くとして,住民のニーズに応えた結果であることは確 かである。また,収支の面でも,初年度である平成15
年度は900万円の赤字ではあったが,その後好転の兆 しが見られ,一定の成果を上げることができた。課題 もあり,看護体制は従来の一般病棟入院基本料2,す なわち2.5対1看護のままとなっていた。原因は労働 組合との協約にあり,協約事項の2−8(夜勤時に看 護師2人体制,夜勤月8回以内)を満たすため看護補 助者の導入が出来なかったことによる。補助者を夜勤 に組み入れたのは1年後の平成17年4月になってか らである。
(2) アウトソーシング
収支改善対策として療養病床の導入等で収入の確保 を図る一方,費用の見直しにも着手した。変動費であ る材料費を見ると,医業収益比で3・4%程度とかな り低く,内容的にも衛生材料が大半で今後縮減は期待 できない。薬品費や経費についても同様である。固定 費では給与費が医業収益比70%に達しており,費用の 縮減を考えた場合,給与費すなわち職員配置の見直し は避けられない課題であった。以上のことから平成 17年に医事業務,調理業務,公用車運転の各業務を外 部委託し,併せて職員定数の見直しを行った。これに より,前述した看護体制の見直しと合わせて正規職員 を64人から52人に,臨時職員を22人から14人と大幅 な削減を行った。
(3) 業務改善による経済効果
①入院患者数の確保
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グラフ−4 収入に占める繰入金の割合
病院経 営 管 理者 養 成 課程
︽ 卒 業 論 文
︾ 経 営 改 善 へ の 取 り 組 み
療養病床の導入によって病床利用率は大幅に改善し たが,特筆すべきは療養病床の利用率の高さと,療養 との連携によって一般病床の利用率が上昇したことで ある。高齢化にともない介護的要素の高い病態の患者 は一方で病状の変化も早く,療養病床を組み合わせた ことは単に患者確保に留まらず,患者のニーズに沿っ た選択であった。対14年度比では15年度が1億の増収 となり,16年度においても更に3,300万の増収を実現 できた。
②費用の削減
費用面では,アウトソーシングを進め職員の削減を 図った結果,17年度における経済効果は,医事業務,
調理業務,公用車運転業務合わせて3,000万程度見込 まれ,当院の予算規模としては決して少なくない効果 をもたらした。
4. 経営改善の検証
生き残りをかけて取り組んだ県立病院改革と自院で の経営改善は,一定の成果を上げつつある。県立病院 改革では業務の集約による臨床検査技師,事務職員の 削減などが目に見える成果として上げることができる。
一方,根本的な問題である医師確保は,絶対数が不足 している状況を解消するには至っていない。基幹病院 を中心とする一体的運営を目指しながらも,地域病院 としての経営責任まで一体化したわけではなく,自主 努力は当然必要とされる。今後の課題としては基幹病 院を軸に展開される病院経営において地域病院等の管 理者や職員のモチベーションをいかに維持し高めてい くかがテーマとなる。現に,事務職員の中には業務の 多くが基幹病院に移された結果,自らが業務を完結で きないために達成感を得られず,意欲低下を訴える者 もいる。このような現象が他部門に伝播することは十 分に考えられる。経営改善の一環として自院で進めて
いる療養病棟への看護補助者の導入やアウトソーシン グの推進の是非については医療の質,業務の質などの 観点から多くの異論がある。多額の税金を投入し運営 を続けざるを得ない現状で地域医療を支え続けるため には,国民に対して経営責任の明確化と説明責任を果 たす必要があり,ある程度医療の効率化を図ることは やむを得ないところである。
5. まとめ
山間過疎地における一次医療を担う当院の現状を県 立病院改革と独自の経営改善の面から紹介した。一定 の効果を上げてはいるが,今後の経営見通しは極めて 厳しいといわざるを得ず,予断を許さない。一般的に 都市部において議論される 勝ち組と負け組み とは 全く別次元に地域の医療を支える姿がある。公立病院 に対する膨大な税金投入の現実に国民や私的病院が大 きな関心を寄せていることは本研修で痛感したところ であるが,地域医療を公立病院が担い続けなければな らないことも現実である。地域,都市部を問わず,国 民が等しく医療を享受するには,そうした医療機関の 努力だけでは限界があり,不採算地域の医療を診療報 酬で評価し賄うことが必要である。その方が地域医療 に対する国民の理解も得られるだろうし,医療機関も 経営努力を正しく評価され,負い目を感じる必要もな い。
今後,地域病院が存続できるか否かは国民の地域医 療に対する深い理解と判断にかかっている。
参考文献 『県立病院改革実施計画』
『将来推計人口データベース』(小地域簡易将来 人口推計システム)
︽ 卒 業 論 文
︾ 経 営 改 善 へ の 取 り 組 み 病 院経 営 管 理者 養 成 課程