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第 2 章 都市下水の生成,処理および処理下水の再利用量に関する世界の現状とその評価 4

2.3. 結果および考察

2.3.2. 世界の各地域における都市下水生成量,処理量および処理下水の再利用量

2.3.2.8. アジア地域

アジア地域において,中国や日本をはじめとした 5 ヶ国の都市下水の全側面(生成,

処理,再利用量)の報告がある一方,14 か国においていずれかの都市下水量の側面が利 用可能であった(表11).

アジア地域においては都市下水生成量のわずか 32%しか処理されておらず,いくつか のアジア諸国においては都市下水処理施設が不足していることが原因である(WEPA-IGES, 2012).各国の都市下水を管轄する省庁に行った聞き取り調査によると,都市下水 管理における最も一般的な制限要因は財政問題であり, 21 か国中 19 か国が該当する.

次いで明瞭な政策および適任の労働者の不足が挙げられている(UN, 2000).

日本は処理された都市下水の再利用に対し他国と異なる戦略を持っている(Funamizu et

al., 2008).2009年における処理下水の再利用量は0.2 km3 yr-1であり,景観用(全再利用

量の 29%),親水(3%)および河川の流量維持目的(29%)の環境利用に半数以上(計

61%)が使用されていた(国土交通省, 2012).農業および工業は都市下水の再利用は 10%以下と主要な再利用産業ではない(国土交通省, 2012).加えて,トイレの洗浄用に

全体の 3.5%が再利用されていた(国土交通省, 2012).歴史的にみると,日本の都市下水

の再利用は農業利用よりも直接的に都市の水需要を満たすために行われてきた(USEPA, 2004).そのため,日本は都市の水需要を緩和するための良い再利用モデルを提供できる と考えられた.

中国においては,処理および未処理の都市下水を灌漑している農地は少なくとも 130 万 ha であると試算されている.ベトナム国においては 9,500 ha が未処理の都市下水を灌 漑利用している(Jiménz and Asano, 2008a).Raschid-Sally et al.(2004)によると,ベトナ ム国において少なくとも市街地近郊の農地の 2%において利用され,その大半が稲作であ った.パキスタン国においては全国的な都市下水の使用に関する調査により,3.3 万ha に おいて直接灌漑していることを明らかにした(Ensink et al., 2004).パキスタン国におい て処理される都市下水の割合はごくわずかであり,都市下水の利用を可能とする法令も存 在しないことが明らかになっている(van der Hoek, 2004).未処理の都市下水の直接的な 再利用はインド国において一般的であり,1985 年には都市下水の灌漑農地は 7.3 万 ha で あった.インド国における都市下水の排出量およびその農業への再利用量は劇的に増加し ている(USEPA, 2004).近年,ムシ川流域に4万ha灌漑農地が存在しており,それゆえ,

インド国内において 7.3 万 ha を超える都市下水灌漑農地が存在すると指摘されている

(van der Hoek, 2004).アジア地域においては,都市下水の利用並びに下水の水質への混

表 11 アジア地域における都市下水生成量,処理量および再利用量

国名(略称) 都市下水生成 都市下水処理 処理下水の再利用

報告年 生成量

(km3 yr–1

報告年 処理量

(km3 yr–1

報告年 再利用量

(km3 yr–1 バングラデシュ国 2000 0.725a NA NA ブータン国 2000 0.004a NA NA カンボジア国 2000 1.184b 1994 0.0002 NA

中国 2009 58.920c 2006 17.890 2005 13.390

インド国 2012 13.999d 2012 4.302d 2000 0.450e

日本 2009 27.000f 2009 14.650g 2009 0.204g

ラオス国 2000 0.546b NA NA マレーシア国 2000 1.403a 1995 0.398 NA モルディブ国 2000 0.004a NA NA モンゴル国 2002 0.126h 2002 0.083h NA ミャンマー国 2000 0.017a NA NA ネパール国 2006 0.135i 2006 0.006i NA パキスタン国 2011 6.849j 2011 0.548k NA フィリピン国 2000 7.500l 1993 0.010 NA

韓国 2000 6.895a 1996 4.180 2008 0.157m

シンガポール国 2000 0.470a NA 2008 0.027m スリランカ国 2000 0.950a NA NA

タイ国 2008 5.293 1995 0.035 NA

ベトナム国 2003 1.100 2009 0.070 2003 0.175 上記19か国の合計 133.120 42.172 14.403

特別な記述がない場合はFAO-AQUASTAT(2012)から引用した.

都市下水の生成量,処理量および処理下水の再利用量が利用不可能であった国:アフガニスタン国,

ブルネイ国,北朝鮮,インドネシア国,パプアニューギニア国,東ティモール国.

a UN (2000); b 1人あたりの水消費量(230 L)を基に2000年における人口から算出した生活廃水の 推定値(Kamal et al. 2008); c MEPPRC(2010); d Kaur et al.(2012); e Shrivastava and Swarup

(2000); f 生活用水および従業員4人以上の事業所の淡水補給量の合計(国土交通省,2012); g 国土交通省(2012); h Basandorj(2002); i Nyachhyon(2006); j Murtaza(2012); k 都市下水生成 量に対する処理割合が 8%であることから算出した(Murtaza, 2012); l 生活廃水のみ(UN, 2000); m Jiménez and Asano(2008a)

NAはデータが参照できなかったことを意味する(Not Available).

入が生じている一方,都市下水を利用している灌漑農地の面積などの基本情報が不足して いた.

FAO(2010)によると,東アジアにおける肥料の需給バランスは,カリウム肥料にお いて 2014 年まで需要を大きく下回る供給状態にあると予測している.この予測は南アジ アにおいて,もっと厳しい状況であり,肥料の消費は速いペースで増加を続けている.南 アジアにおける窒素,リン酸,カリウム肥料は予測の終了する 2014 年において窒素肥料

(N換算)430万t,リン酸肥料(P2O5換算)740万t,カリウム肥料(K2O換算)510万t の量がそれぞれ不足すると見積もられている.これらの肥料の需要と供給の差の一部は都 市下水中の養分によって賄うことができるため,政策決定者や科学者による効果的な技術 的解決策,適切な制度および実効性のある規制の確立が必要であると考えられた.