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アインシュタイン方程式の導出

ドキュメント内 yokou 最近の更新履歴 理論物理学教程の道 (ページ 53-58)

ジ固定とかファデーフ・ポーポフゴーストとかと関係していますが、今回の講義では古典 近似しか行わないので無視して構いません。

今、逆に、この経路積分を実行すると、n と Nµは線形でしか入ってきませんので、n の変分と Nµ の変分から、拘束条件54

H = 0

Pµ= 0 (3.24)

が得られます。これはそれぞれ一般相対論におけるハミルトニアン拘束条件、運動量拘束 条件ですが、私たちの局所繰り込み群の立場からはこの拘束条件がそもそも局所繰り込 み群がスキームに依らないと言う性質から要請されていて、その結果として、シフトベク トルとラプス関数を導入することができたのだと思うことができます。そして、その結果 として、d+ 1次元の一般座標変換が創発されました。つまり、(量子)局所繰り込み群の 構造は、ホログラフィー原理を通じて高次元の一般座標変換不変性を予言していると言え ます。

前節で導いた式を([26]とコンベンションを合わせるために、N2 の因子を作用 S に吸 収した上で)もう一度そのまま引用すると

eFµν]=

DXed4xγH(X,γµν) =

∫ DγµνµνDnDnµ Diff eS S =

drd4x(πµνi∂rγµν −NµiPµ+nH) (3.25) が5次元重力理論の有効作用をハミルトニアン形式で書いたものになります。ここで、具 体的には、

H =√γΛ[γµν]− Bµνµν]iπµν+Bµν;ρσµνµνπρσ (3.26) となります。前節の復習ですが、Λ[γµν] は宇宙項の局所繰り込みで、Bµνµν] が、シン グルトレースのエネルギー・運動量テンソル Tµν に対する局所繰り込み群のベータ関数、

Bµν;ρσµν, τ] がエネルギー・運動量テンソルから作ったダブルトレース演算子:TµνTρσ :

に対する局所繰り込み群のベータ関数です。以下では、話を簡略化するために、Nµ = 0 のゲージを取ることにして、運動量拘束を忘れることにしましょう。

5次元重力理論の作用を完全に決定するためには、これらの局所繰り込み群関数を、ラー ジ N 極限を取ったN = 4超対称ヤン・ミルズ理論で計算する必要があります。特に、弦 理論の考察によると、いわゆるトフーフト結合定数 g2N が非常に大きい極限で、この作 用がアインシュタイン・ヒルベルト作用になることが期待されます。しかし、一方で、こ れらの局所繰り込み群関数は微分展開で計算されるために、素朴にはアインシュタイン・

ヒルベルト作用よりも高階の微分を含んでいるように思えます。以下では、局所繰り込み 群の微分展開の構造と重力理論の局所性がどのようにして両立しているのか?を議論して いきたいと思います。

局所繰り込み群関数の構造をひとつずつ見ていきましょう。まず、宇宙項の局所繰り込 み群は、2.4 節で述べたように、共形アノマリーと関係していて、この構造と一般的な性 質はよく知られています。N = 4 超対称ヤン・ミルズ理論では、この共形アノマリーに 関係する項はゲージ結合定数によらずに57

−2Λunivµν] = N2 4(4π)2

(

2 (Rµν)2− 2 3(R)2

)

(3.27)

57超対称性から共形アノマリーはカイラルアノマリーと関係していて、カイラルアノマリーが結合定数に 依らないことから示されます。

で与えられることが知られています。

局所繰り込み群変換では、(パワーカウンティング繰り込み処方では計算できませんが、)

これよりスケール次元の低い量も現れる可能性があります。実際、

Λ[γµν, τ] = Λ1+ ΛRR+ Λunivµν] +O(R3) , (3.28) と展開されるべきですが、超対称性から、Λ1はゼロであることがわかります。58同様に、

ΛR[τ]も、N = 4 超対称ヤン・ミルズ理論ではゼロであることが(少なくとも摂動論の計 算では)知られています。

次に、ダブルトレース演算子に対する繰り込み群のベータ関数を考えます。これらはや はりスケール次元を持った量で、パワーカウンティング繰り込み処方では計算できませ ん。しかし、以下で説明するように、微分展開で最低次の量にしか興味がないので、具体 的に計算するのはとりあえずおいておいて、一般座標変換不変性から期待される形として

Bµν;ρσ = η

√γ (γµργνσ−λγµνγρσ) +O(R) (3.29) を仮に認めましょう。

ここで、この仮設の下で気づくのは、πµν を積分してラグランジアン形式の作用を作っ た時に、これらのダブルトレース演算子に対する繰り込み群のベータ関数は、計量の運動 項 ∂rγµν に対してGµν;ρσrγµνrγρσ と言う形で現れます。ここで、Gµν;ρσ はBµν;ρσ の逆

(つまりBµν;ρσGρσ;ηκηµδνκ))になります。そこで、もし、最終的な作用がアインシュタ

イン・ヒルベルト作用のように2次であるならば、(3.29)において、これ以上高い微分が 現れては困ることになります。さらに、前節で議論したようにハミルトニアン拘束の無矛 盾性から、他に物質場が存在しない場合には、λ= +1/3でないといけないことが知られ ています。59

さて、最後にシングルトレース演算子に対する繰り込み群のベータ関数を考えます。3.1 節の最後で述べたように、量子繰り込み群が1次の微分の項を持たない相対論的なラグラ ンジジアン形式の作用を再現するためには、シングルトレース演算子に対する繰り込み群

58いわゆる宇宙項問題が超対称性によって回避されているのと同じ議論で、真空エネルギーがボソンと フェルミオンでキャンセルしています。

59この値が1/3でない重力理論はホジャバ・リフシッツ型の重力理論と関係していますが、局所的なハ ミルトニアン拘束に問題があることが知られています。

のベータ関数はグラディエントフローでなければいけないわけでした。具体的には、

Bµν =Bµν;ρσδSBµν] δγρσ

(3.30) という要請をします。そこで、グラディエントフローの生成ポテンシャル汎関数をやはり 微分展開から

SB =

d4x√

γ(−6ΛB−κBR) , (3.31) と言う形を仮定します。この仮定の下で先ほどのダブルトレース演算子に対する繰り込み 群のベータ関数を使うと、シングルトレース演算子に対する繰り込み群のベータ関数は

Bµν =η (

ΛBγµνB

(

Rµν− R 6γµν

))

(3.32) となります。

これから高階の微分項が最終的な作用で消える条件を考えていきますが、まず、正準運 動量πµν を積分してラグランジアン形式に移りましょう。

S =

drd4x (

n1Gµν;ρσrγµνrγρσ+nGµν;ρσ

4 BµνBρσ+n√γΛ[γµν] )

(3.33) ここで、局所繰り込み群関数 (3.29) と (3.32)を代入してあげると、4階の微分項として

Gµν;ρσ

4 BµνBρσ と、 Λ[γµν]の中のΛunivµν]が寄与することがわかります。私たちの目標は 2階の微分しか持たないアインシュタイン・ヒルベルト作用を求めることでした。すると、

この両者はお互いにキャンセルしていないといけないことがわかります。そのためには

c= ηκ2B

8 = N2

4(4π)2 (3.34)

と言う関係式が得られます。ここで、c=aと言う変数は 2.4節で考えた c-関数から来て います。

さらに、規格化因子をもう少し精密に考えます。私たちは、局所繰り込み群変換を計量 のワイル変換と同一視したわけですが、規格化として、4次元の計量のワイル重みが2で あるとしました。そのため、私たちが使いたい局所繰り込み群方程式では、計量に対する 繰り込み群のベータ関数は、Bµν = 2γµν+O(R) となっていることが必要です。これは、

η

2ΛB= 1 と言う規格化を採用することに他なりません。

このようにして、最終的に N = 4 超対称ヤン・ミルズ理論の強結合領域での局所繰り 込み群関数を

Bµν = 2γµν+ 8c κB

(

Rµν −R 6γµν

)

Bµν;ρσ = 8c κ2B√γ

(

γµργνσ −1 3γµνγρσ

)

(3.35) と無次元の量を完全に決定することができました。60ここでひとつ注目したい点として、

シングルトレース演算子に対する繰り込み群のベータ関数がスカウテンテンソルで与えら れていることです。これは、とりもなおさず、初日に1.5 節で、アインシュタイン方程式 に対して繰り込み群的な手法で漸近解析を行った際に繰り込み群のベータ関数がスカウテ ンテンソルで与えられていたのをきちんと再現しています。このスカウテンフローはラー ジN 極限を取った4次元超ヤン・ミルズ理論の不思議な幾何学的な性質を示しているは ずなのですが、その深い理解はあまりされていないようです。61

さて、これらの結果から最終的なラグランジアン形式での重力理論の作用は

S =

drd4x√γnκ2B 8c

(

12 + 4c

κBR−n2µργρσ−γµνγρσ)∂rγµνrγρσ

)

=

dzd4x√γn˜ (3κ2B

2cz0

+ κB

2z0

R−n˜2κ2Bz0

2c (γµργρσ−γµνγρσ)∂zγµν

2

zγρσ

2 )

(3.36) で与えられます。ここで、r = log(z/z0) および、˜n =nzz0 と変数変換を行いました。さ らに、z0 =√

c

κB と取ってあげると、(1 + 4)次元の一般座標変換不変性が明白になって、

S =

d5x√ g

(3κ5/2B

2c3/2 + κ3/2B 2c1/2R(5)

)

(3.37) と、R(5) を5次元のリッチスカラーとして、AdS5×S5上でのIIB型の超重力理論の一部 であるアインシュタイン・ヒルベルト作用が係数を含めて完全に得られました。62

60κB はスケール次元を持った量なので決まりません。もともとの由来としては局所繰り込み群を定義す るときの紫外カットオフから来ています。

61まあ、共形対称性と一番相性の良い曲率テンソルがスカウテンテンソルであるので、深い意味はないの かもしれません。

62この議論を拡張して、他の場、例えば、ディラトン・アクシオン場なども導入することも可能です[26]。

ドキュメント内 yokou 最近の更新履歴 理論物理学教程の道 (ページ 53-58)

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