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第 4 章 港湾運営効率化の評価:港湾リードタイム短縮への効果

4.2 わが国の外航海運およびコンテナ港湾の現状

国土交通省海事局(2007)によると、2006 年の世界の海上荷動量は、トンベースで 69 億 8,000 トン(対前年比 4.8%増)、トンマイルベースで 30 兆 6,680 億トンマイル(対前年 比 5.5%増)となり、前年に引き続いて両指標ともに過去最高を記録している42

図 4-1 は、わが国の外航海運の輸送量推移をみたものである。図より、輸出・輸入とも に増加傾向にある。その背景となっているのが、中国をはじめとするアジア諸国の経済成 長であり、2006 年度の財務省の貿易統計によると、この年に戦後としては初めて中国(香

42 国土交通省海事局(2007)14 ページ。

港を除く)がアメリカを抜き日本の最大貿易相手国となっている。

図 4-1 わが国の外航海運の輸送量推移(単位:千トン)

輸出 輸入

840,000 860,000 880,000 900,000 920,000 940,000 960,000 980,000

150,000 170,000 190,000 210,000 230,000 250,000 270,000 290,000 310,000

H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 輸 出 輸 入

出典:国土交通省総合政策局情報管理部(2006)第 3-1 表より作成。

世界的な海運活況を受けて、中国をはじめとするアジア諸国で大規模コンテナ港湾の整 備が急速に進んだ一方、わが国の主要コンテナ港湾は、その流れに取り残される形となっ た。表 4-1 は、2006 年の世界の港湾別コンテナ取扱個数の順位を示したものであるが、上 位 6 位までが中国をはじめとするアジア諸国の港湾であり、日本は東京港の 23 位が最高で ある。

近隣アジア諸国の港湾における世界的な地位向上は、わが国の海上輸送貨物の海外トラ ンシップ(積替)の増加と密接な関係にある。国土交通省が 2008 年 11 月に実施した「全 国輸出入コンテナ貨物流動調査」によると、アジアの主要 12 港43のトランシップ貨物量は 240 万 3,000 トン(輸出 116 万 8,000 トン、輸入 123 万 5,000 トン)であり、前回の 2003 年の調査と比べて輸入は 7.3%減少したものの、輸出は 21.3%増加している。また、トラ ンシップ率(積替貨物量/全コンテナ貨物量)では、18.0%(輸出 23.0%、輸入 14.9%) にも達しており、2003 年の調査と比較して、輸入は 0.7 ポイント低下したものの、輸出は 7.4 ポイント拡大している。調査対象港湾のうちトランシップ率の順位をみると、釜山港、

シンガポール港、香港の順となっている44。とりわけシンガポール港は、その7割以上が

43 アジアの主要 12 港とは、釜山港、光陽港、香港、上海港、深セン諸港、廈門港、寧波港、

基隆港、高雄港、台中港、シンガポール港、タンジュンペラパス港である。

44 国土交通省港湾局(2009)27~28 ページ。

トランシップ需要であり、海運産業はGDPの約7%を占め、10 万人の雇用を達成している といわれている45

こうした背景を受けて、韓国の釜山新港は、全体計画で約 9,000 億円の事業費をかけて 2011 年までに全長 11kmに及ぶ 30 バースの整備計画を立てており、これにより同港の年間 取扱量は 804 万TEUに拡大するといわれている。さらには、ターミナルの後背地に 37 万坪 の大規模国際物流団地を開発中である46。また、2006 年 12 月に第 2 期の開港を果たした中 国の上海港洋山コンテナターミナルは、全長 3,000mにおよぶ連続 9 バースが供用され、年 間取扱能力が 220 万TEUに拡大された。さらに 2020 年には全長 11kmに及ぶ 33 バースの整 備(年間取扱量 1,500 万TEU)が予定されている47

このようなアジア諸港の躍進に危機感を募らせたわが国では、第 1 節で述べたように、

主要コンテナ港湾の競争力回復による世界的な地位向上を目指し、スーパー中枢港湾構想 にみられるような主要港湾における効率化に向けて積極的に投資を推進している。たとえ ば、表 4-2 は近年のスーパー中枢港湾プロジェクトに係る投資額推移をみたものであるが、

2009 年で伸びは鈍化しているものの、それまでの期間は一定のボリュームで投資が拡大さ れてきたことが示されている。

45 2007.8.11 付日本経済新聞より。

46 国土交通省近畿地方整備局(2007)6 ページ。

47 国土交通省近畿地方整備局(2007)7 ページ。

表 4-1 世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキング(2006 年)(単位:TEU)

順位 港 湾 名 コンテナ取扱個数

1 シンガポール 24,792,400

2 香港(中国) 23,538,580

3 上海(中国) 21,710,000

4 深圳(中国) 18,468,900

5 釜山(韓国) 12,038,786

6 高雄(台湾) 9,774,670

7 ロッテルダム(オランダ) 9,654,508 8 ドバイ(アラブ首長国連邦) 8,923,465 9 ハンブルグ(ドイツ) 8,861,545 10 ロサンゼルス(米国) 8,469,853

11 青島(中国) 7,702,000

12 ロングビーチ(米国) 7,290,365

13 寧波 7,068,000

14 アントワープ(ベルギー) 7,018,899

15 広州(中国) 6,600,000

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23 東京 3,969,015

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28 横浜 3,199,883

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33 名古屋 2,751,677

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38 神戸 2,412,767

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44 大阪 2,231,516

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106 博多 785,182

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155 清水 423,677

注:出貨と入貨(輸移出入)を合計した値であり、トランシップ貨物を含む。

統計は、“CONTAINERISATION INTERNATIONAL YEAR BOOK 2008”にもとづく。

出典:国土交通省港湾局 web サイト〔http://www.mlit.go.jp/kowan/data/index.html〕。

表 4-2 スーパー中枢港湾プロジェクトに係る投資額推移(単位:100 万円)

年度 投資額 前年比の伸び率

2009 61,992 103%

2008 60,058 115%

2007 52,383 137%

2006 38,107 137%

2005 27,844 121%

2004 22,991

出典:国土交通省港湾局予算(2004~2009)。