• 検索結果がありません。

研磨面と劈開面における光誘起ダイナミクスの違い

第 5 章 BaV 10 O 15 の劈開面における光誘起ダイナミクスの温度依存性 55

5.3 研磨面と劈開面における光誘起ダイナミクスの違い

図5.2(a), (b), (c), (d)に10 K(<Tc)における、様々なプローブ光エネルギー~ωprの光誘起 反射率変化∆R/Rの時間依存性を示す。横軸の遅延時間は40 psであり、 プローブ光の偏光 方向は(a), (c)a軸に平行(Epr||a)(b), (d)b軸に平行(Epr||b)で、(a), (b)研磨面、(c), (d)劈開 面においてである。ポンプ光のエネルギーは1.56 eV(795 nm)である。ポンプ光強度は2.8 mJ/cm2であり、劈開面の10 Kにおいて、ポンプ光の侵入長以内における吸収フォトン密度

は0.06 photon/V-siteに相当する。これは反射率測定から得られたポンプ光の吸収係数と反

射率の損失を考慮して見積もっている。研磨面における結果は、既に文献[89]と4章で述べ ている。

研磨面と劈開面の結果を比較すると、~ωpr依存性と偏光依存性の全体的な特徴は似ている ことが分かる。しかし、明確な違いが2つ観測された。1つ目は、∆R/Rの絶対値が、劈開面 の方が数倍大きいことである。このような∆R/Rの絶対値の違いは、図5.1に示した、光学 伝導度スペクトル[σ(ω)]において観測された、spectral weightの大きさの違いと同様に、サ ンプル表面のストレスによるものであると考えられる。

2つ目の違いは、研磨面と劈開面における∆R/Rの詳細な時間依存性である。図5.2から 分かるように、約1 psの比較的短い緩和時間を持った∆R/Rの変化は、研磨面と劈開面の両 方で観測される。しかし、それに続く数psの緩和時間を持った∆R/Rの緩和は、劈開面での み観測された。測定結果を定量的に解析するために、∆R/Rの時間依存性を次の式でフィッ ティングした。

R R

=A exp (

t τ1

) +B

[

−exp (

t τ1

) +exp

(

t τ2

)]

+C [

1−exp (

t τ2

)]

when t>0,

=0 when t<0, (5.1)

これは測定系の応答関数で畳み込みをしている。この式において、Aは∆R/Rの瞬時応答を 与え、緩和時間τ1Bに緩和し、最後に緩和時間τ2Cに緩和する。このτ2の項は、文 献[89]と4章における、研磨面の∆R/Rのフィッティングでは考慮されなかった。劈開面に おけるフィッティングの結果を図5.3に示す。~ωpr = 1.0 eVにおいてτ1 =0.5 ps,τ2 =3.9 psで、~ωpr =1.5 eVにおいてτ2 =7.4 psである。文献[89]と4章で議論したように、瞬時 応答はVのt2gの軌道整列の融解に対応し、それに続き、V三量体が緩和時間τ1=0.5 psで 壊れる。そして、τ2は格子の温度が上昇する時間に対応すると考えられる。つまり、様々な フォノンモードが、数psの緩和時間でインコヒーレントに励起されると考えられる。この 光誘起ダイナミクスの模式図を図5.4に示す。したがって、V三量体の消滅に関する、Vイ オンのコヒーレントなシフトの時間スケールτ1 と、様々なフォノンモードのインコヒーレ

第5章 BaV10O15 の劈開面における光誘起ダイナミクスの温度依存性 58

0 20 40

−0.1 0 0.1

0.2 BaV10O15

R /R

Delay time (ps) 1.5 eV 1.4 eV 1.2 eV 10 K Epr || a 2.8 mJ/cm2

2.0 eV 2.5 eV 1.0 eV

10 30

(c) cleaved surface

0 20 40

−0.1 0 0.1 0.2

BaV10O15

R /R

Delay time (ps) 1.5 eV 1.4 eV 1.2 eV 10 K Epr || b 2.8 mJ/cm2

2.0 eV 2.5 eV 1.0 eV

10 30

(d) cleaved surface

0 20 40

−0.1 0 0.1

0.2 Epr || b

2.5 eV

10 K

Delay time (ps)

R /R

1.2 eV

1.4 eV 1.0 eV

1.5 eV 2.0 eV

BaV10O15 2.8 mJ/cm2

30 10

(b) polished surface

0 20 40

−0.1 0 0.1

0.2 Epr || a

2.5 eV 10 K

Delay time (ps)

R /R

1.2 eV 1.4 eV 1.0 eV

1.5 eV

2.0 eV BaV10O15

2.8 mJ/cm2

30 10

(a) polished surface

5.2 10 K(<Tc)における様々なプローブ光エネルギーprの光誘起反射率変化R/R 時間依存性、(a)プローブ光の偏光方向Epr||aで研磨面、(b)Epr||bで研磨面、(c)Epr||aで劈開 面、(d)Epr||bで劈開面

ントな励起の時間スケールτ2は、劈開面においては異なる。一方、研磨面においては、これ ら2つのプロセスは1つに結合してしまっている。これはサンプル表面に残されたストレス のためだと考えられる。

第5章 BaV10O15 の劈開面における光誘起ダイナミクスの温度依存性 59

0 5 10

0 0.1 0.2

BaV10O15

R /R

Delay time (ps) 1.5 eV 10 K Epr || b 2.8 mJ/cm2

1.0 eV

5.3 pr=1.0 eV, 1.5 eV10 KEpr||bにおけるR/Rの時間依存性、太い実線は式(5.1) によるフィッティング結果

V

V

light

V

<< 250 fs

V

V

V V

V

~ 1 ps V

V

V V

5.4 劈開面BaV10O1510 Kにおける光誘起ダイナミクスの模式図

第5章 BaV10O15 の劈開面における光誘起ダイナミクスの温度依存性 60

関連したドキュメント