第 6 章 本研究 2
6.2. 研究方法
地域環境要因として,都市部で保護者の教育的関心の高い地域 (学校1) と,農村部で教 育課程特例校15として町ぐるみで英語教育に取り組んでいる地域 (学校2) の2つの小学校 を抽出した。両校ともに英語教育の成果に期待されており,学校全体で英語教育に取り組み,
その教育の成果を様々な場で発信している。しかしながら両者は人口構造,産業構造 (経済
15文部科学大臣が,学校教育法施行規則第55条の2に基づき,学校を指定し,学習指導要領等によらない教育課程を 編成して実施することを認める制度。
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圏と農業地帯) ともに大きく異なっており,また地域に居住するあるいは訪れる外国人数の 割合から地域の国際化という面でも異なっていると考えられる。対象とされた2校のうち,
1校 (学校1) は英語教育の歴史をもち,学校がもつ英語指導の経験知を共有しながら担任 教師が単独で授業をしている。もう1校 (学校2) は英語教育の歴史は浅いが,英語授業に 際してはALTや英語専科の教師らによる人的サポートがあり,また地域で共有された小中 高一貫カリキュラムに基づいた指導をしている。そのため,都市部と農村部という違いだけ ではなく,英語授業実践に関して学校がもつ英語教育の経験知や教師の外国語授業実践に おける自律性にも違いがあると考えられる。本研究2では本研究1で用いた質問紙調査の データのうち,これらの2校の担任教師たちから得たデータを分析の対象とした。
Nakamura, Shimura and Mitusgi (投稿準備中) では同様の調査により,指導観,外国
語学習者ビリーフ,英語授業実践に関して両校の類似点や違いを明らかにし,各学校から選 出された教師に対するインタビューと集団討議から得た質的データによって,そうした違 いをもたらしている要因を考察した。本研究 2 では,Nakamura, Shimura and Mitusgi
(投稿準備中) の結果を踏まえながらそれ以外の要因 (学習者ビリーフ,国際的志向性,教師
としての学び) に関して統計的に分析する。
6.2.2. 参加者と調査時期
本研究 1 で得たデータの中から調査の目的に合致している 2 地域 (都市部と教育課程特 例校の指定を受けている地域) にある 2 校のデータを用いて分析した。学校 1は人口 190 万人を擁する政治・経済・文化の中心である政令指定都市 (A市) に位置している。A市は,
毎年多くの外国人観光客が訪れる (2015年度865,000人) 観光都市となっており,2015年 度現在で1万人を超える外国人が居住している。学校 1が位置する地区は落ち着いた住宅 地であり,保護者や地域からの教育に対する期待が高い地域として知られている。学校1は 調査時点での生徒数は367名で,学級数12 クラス (特別支援学級1) であった。英語を母 語とする生徒や保護者が在籍することもあり,本調査の時点においても英語を母語とする 児童が在籍していた。本研究では普通学級11名の担任を分析の対象とした。総合的な学習 の時間が導入された時点から英語教育に取り組み,10 年以上の英語教育の歴史と実績をも つ。英語教育を含んだ公開の研究授業を多く開催しており,教育の成果に対して関心を集め ている。英語教育に関わり,JICA研修員との交流やインターネットによるオーストラリア の学校との交流等の国際理解教育にも力を入れている。そうした学校 1 の教育実践に対す る取り組みは,地域や保護者からの教育に対する期待と関心の高さも一因となっていると 判断される。英語教育に関しては1年生から6年生まですべての学年で実施されており,
すべての担任が単独で英語授業を行っている。調査対象となった担任11名 (男性8名,女 性3名) の年齢の平均は37.36歳であり,最少年齢26歳,最長年齢48歳であった。
一方,英語教育課程特例校である学校2のあるB町は、日本でも有数の広大な平坦地に 位置し、水稲栽培を中心にした農業地帯である。人口総数約5,000人で,過疎化,高齢化へ
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の対策に迫られている。町内の外国人居住者は11人 (2010年調べ) であり,町内で英語を 用いる機会はほとんどない。町の教育政策の一環として英語教育に力を入れ,2012度より 教育課程特例校の指定を受け,小中高をつなげる英語教育に取り組んでいる。町は小学校2 校,中学校 1 校,高等学校 1 校を擁している。英語教育課程特例校の特徴を調べた瀧口
(2006) は,地域によって行政の英語教育に対する理解と支援の在り方に違いがあることを
明らかにしている。B 町においては大学教授も加わった英語教育推進委員会が組織され小 学校1年生から高等学校3年生に渡る小中高に共有された町に独自のカリキュラムが構築 され,行政と現場が一丸となって英語教育実践にあたっている。学校2においては,英語教 育はまだ始まったばかりであるが,すでにその児童の英語力の伸びや英語に対する態度の 変化等の英語教育の成果を検証し英語教育に関わる学会や研究紀要にて発表している。調 査時点で生徒数146,学級数は特別支援学級4 クラスと普通学級6クラスであった。本研 究では普通学級担任6名を分析の対象とした。英語教育は1年生から6年生まですべての 学年で行われている。学校2のすべての担任が英語授業を担当しているが,ALT,英語専科 の教員,さらには中学校教師がサポート (英語教育推進コーディネーター) として担任の支 援にあたっており,基本的にすべての英語授業が専科教員らとのチーム・ティーチングで行 われている。調査対象となった担任6名 (男性5名,女性1名) の年齢の平均は44.17歳で あり,最少年齢37歳,最長年齢51歳であった。両校ともに英語教育は小学校1年から実 施されている。まとめると,2校は異なった環境にありながら,英語教育に先進的に取り組 み,その教育の成果に対して評価を得ていると言える。表6.1に各学校の特徴をまとめる。
表6.1 各学校の特徴
学校1 学校2
地域環境 政令指定都市 外国人居住者が多い
農村地帯
外国人居住者は少ない 地域教育特徴 教育に対する期待が高い 町ぐるみで英語教育を推進
教育の成果に対する期待がある 英語教育 歴史と実績がある
成果を発信している 担任が単独で授業 国際交流の取り組み
現在進展中
成果を発信している
基本的にすべてチーム・ティーチ ングによる授業
調査時期は,学校1は2014年7月23日, 学校2は2014年12月11日であった。
6.2.3. 分析の方法
本研究では本研究1で用いたデータの中から対象となる 2校のデータを抽出し,各因子 の因子得点の比較によって 2 校の教師間に見られる類似点や相違点を明らかにする。また
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2校のデータに加えて調査で得られたすべてのデータ (n = 279) も比較データとして用い,
小学校教師全体との比較によって両校の特徴を明確にする。その上で 2 校の地域環境,学 校環境の違いから,教師間に見られる類似点や相違点の背景にある環境要因の影響につい て考察する。
6.2.4. 分析の対象者
量的データの結果を補完するため,各学校から抽出した3名ずつ (計6名) の教師の協力 を得て,インタビューとグループ討議を行った。グループ討議では,様々な立場の同僚と自 由に語り合うことで,他者の発言から新たな気づきが得られ,無意識にもっている自身のビ リーフが明確化することが期待できると考えた。人選にあたっては年齢,役割に配慮した
(方法と内容については,第7章参照)。参加者と分析対象者の情報を表6.2に示す。
表6.2 調査の参加者と分析の対象者
分析の対象者 討議のメンバー
学校1 教師A (担任・男性・30代)
教師B (教務主任・男性・40代)
教師C (担任・女性・20代)
学校2 教師D (担任・男性・30代)
教師E (英語専科・男性・40代)
教師F (中学校サポート教諭・男性・40代)
Nakamura, Shimura and Mitsugi (投稿準備中) では,紙面の都合によりその中から年齢
と担当が同質である2名ずつの教師 (学校1から教師AとB,学校2から教師DとE) を 抽出して分析をした。学校1の教師Aは30代の男性担任教師,教師Bは40代の男性教務 主任であった。学校2の教師Dは同様に30代の男性担任教師,教師Eは40代男性で中学 校英語教諭の経験をもち現在は英語専科の教師として担任の授業の支援をしている。分析 の対象としなかった2名のうち,学校1の教師Cは新卒2年目の教師であり,教師経験が 不足していると判断された。また学校2の教師 Fは中学校の英語教諭で英語サポート教師 として小学校で英語教育を支援している立場であることから,分析の対象としなかった。グ ループ討議では,それぞれ教師Bと教師Fが進行役を務めた。分析にあたっては,学校1 が 11名,学校 2 が 6 名とデータ数が少ないことから,グラフや散布図を用いた比較を行 う。