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第 5 章 本研究 1

5.4. 研究課題 2

研究課題2「教師をとりまく学校環境要因と小学校教師の言語教師としての特徴 (認知面,

感情面,行動面) はどのような関係があるのか」に関して結果と考察を述べる。分析に先だ って学校環境要因の特徴を明らかにし,その上で環境要因と教師の特徴の関係を調べる。

5.4.1. 学校環境要因

本研究では,学校の環境を示す指標として「生徒・教師間関係」と「教師同士の協力体制」

に注目した。OECD (2009) では,労働状況や仕事に対する態度の両方から影響を受けてい る要因として「職務満足感」や「自己効力感」を取り上げている。Bronfenbrennerは「人 の行動と発達にとって大切なのは『客観的な』現実の中に存在する環境ではなく,認知され た環境である」(Bronfenbrenner,1979磯貝・福富訳,1996:5) としている。本研究では「生 徒・学校間関係」を示す指標として「効力感」を用いる。「効力感」は教師が自分自身や勤 務校の教育実践に関してどう評価しているのかという尺度であるが,それは教師が自分を とりまく教育環境 (生徒との関係や教育の成果) をどう認識しているかという指標でもあ ると考える。また,教師をとりまく学校環境要因として重要なものとして「教師の協力体制」

がある。OECD (2009) では,教員の協力関係を「授業実践の改善や教育成果の向上のため に,教員がグループあるいはチームを組むこと (p.132)」と定義している。本研究では学校 環境要因としてOECDによる「生徒・教師間関係」と「教師の協力体制」を調べる指標を 用いた。

5.4.2. 結果 5.4.1.1. 環境要因 (1) 生徒・教師間関係

生徒・教師間関係の回答は「5・非常にそう思う」から「1・全くそう思わない」の5件法 で行われた。OECD (2009) で用いられた 10項目に対して因子分析 (最尤法,プロマック ス回転) を行ない,共通性が低かった1項目を削除した。改めて因子分析を行なった結果,

固有値1以上となる因子数を選択し2因子までを選択した。第1因子は「私は自分の児童 に大きな教育的効果を及ぼしていると思う」「私は最も困難でやる気のない児童も進歩させ ることができる」「私は自分のクラスの児童から好かれている」等の5項目で構成されてお り,自身の教育実践に対する有能感に関わっているため「自己効力感」と命名された。第2

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因子は「私が勤務している学校では教師と児童の関係は良好である」「私が勤務している学 校の教師は児童が幸福であることが最も大切であると信じている」等の 4 項目で構成され ており,教員と生徒のモラルや関係性,児童の安全性といったことに関わり学校全体の教育 実践への評価を表しているため「学校効力感」と命名された。表5.49に因子分析によって 得られた因子負荷量と因子相関行列を,表5.50から表5.51に尺度ごとの質問項目の平均値 と標準偏差を,表5.52に尺度ごとの得点の記述統計,クロンバックα係数,寄与率を示す。

表5.49「生徒・教師間関係」に関する因子負荷量と因子相関行列

自己効力 学校効力 私は最も困難でやる気のない児童も進歩させることができる .81 -.18 私は自分の児童に大きな教育的効果を及ぼしていると思う .66 -.02 私は自分のクラスの児童から好かれている .60 .04 私は児童に学習内容を理解させる方法を知っている .53 .15 私が勤務している地域では教師は敬意を払われている .49 .11 私が勤務している学校の教師は児童の発言に関心をもっている -.06 .80 私が勤務している学校では教師と児童の関係は良好である .13 .71 私が勤務している学校は介護が必要な児童に対応する -.14 .66 私が勤務している学校は児童の幸福を最も大切にしている .18 .55 自己効力感 ― .58

学校効力感 ―

表5.50「自己効力感」に関する質問項目の平均値と標準偏差

質 問 項 目 M SD 私は自分の児童に大きな教育的効果を及ぼしていると思う 3.42 .77 私は最も困難でやる気のない児童も進歩させることができる 3.18 .79 私は自分のクラスの児童から好かれている 3.41 .65 私は児童に学習内容を理解させる方法を知っている 3.59 .68 私が勤務している地域では教師は敬意を払われている 3.09 .86

表5.51「学校効力感」に関する質問項目の平均値と標準偏差

質 問 項 目 M SD

私が勤務している学校の教師は児童の発言に関心をもっている 3.92 .71 私が勤務している学校では教師と児童の関係は良好である 3.77 .73 私が勤務している学校は介護が必要な児童に対応する 3.94 .64 私が勤務している学校は児童の幸福を最も大切にしている 3.71 .82

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表5.52 下位尺度ごとの得点の記述統計,クロンバックα係数,寄与率

下位尺度 M SD 歪度 尖度 α 寄与率 自己効力感 3.34 .54 -.24 1.11 .76 41.83 学校効力感 3.84 .56 -.35 .26 .78 15.05

分析の結果,小学校教師全体として平均点は「自己効力感」「学校効力感」ともに高く,

特に「学校効力感」の得点に高い傾向が見られた。

(2) 教師の協力関係

教師の協力体制に関する質問項目は,学級や学年を超えた授業参観等を通じて共通の目 標設定や指導に関しての意見の深いレベルでの交換を意味する「専門的協働」と教材や経験 を交流しあう「情報交換」の二つの指標をもつが,この両者には強い相関があるとされてい る (OECD, 2009)。研究課題1で用いた「教師の学び」と重複する部分があるものの,「教 師の学び」は学内・学外に関わらず個人として取り組んでいる学びであるのに対して,「教 師の協力体制」は学内に限定して組織として取り組んでいる学びであり,学校の風土を示す 指標の一つとして捉えられる。回答は「5・いつも行っている」から「1・全く行っていない」

の5件法で行われた。中村・志村 (2014) で作成された8項目に対して因子分析 (最尤法,

プロマックス回転) を行なった結果,1 因子が抽出された。表 5.53に尺度ごとの質問項目 の平均値と標準偏差を,表5.54に尺度ごとの得点の記述統計,クロンバックα係数,寄与率 を示す。

表5.53「教師の協力体制」に関する質問項目の平均値と標準偏差

質 問 項 目 M SD 個々の児童の学習進歩についての話し合い 2.60 1.03 学年ごとの外国語活動 (英語) 授業に関する会議 2.58 1.03 他クラスや他学年の教師と協力した授業づくり 2.65 1.08

同僚との教材の交流 2.71 .99

同僚の教師の授業を参観 2.72 1.04 児童の評価に関する共通の基準の確認 2.75 .95 外国語活動 (英語) 教材の選択についての話し合い 2.56 1.06

チームで取り組む授業 2.95 1.12

表5.54 得点の記述統計,クロンバックα係数,寄与率

下位尺度 M SD 歪度 尖度 α 寄与率 協力体制 2.69 .83 .17 -.11 .92 66.87

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記述統計から,「チームで取り組む授業」「同僚との教材の交流」「同僚の教師の授業を 参観」「児童の評価に関する共通の基準の確認」等の頻度がやや高い傾向が見られ,単なる 実践や教材の交流ではない,深いレベルでの協働も比較的よく行われていることが示され た。以上の分析により得られた「学校環境要因」の各教師の因子得点を用い,学校環境要因 と教師の認知面,感情面,行動面との関係を分析する。

5.4.2.2. 学校環境要因と認知面

研究課題2「教師をとりまく教育環境要因と教師の個人的特徴 (認知面,感情面,行動面) はどのような関係があるのか」という研究課題に答えるため,「生徒・学校間関係 (自己効 力感と学校効力感)」「教師の協力体制」と教師の認知面に関して,各尺度の因子得点を用 いてピアソンの相関係数を求めた。相関分析の結果,「自己効力感」と「学習適性ビリーフ」

(r = .31, p<.01)「構成主義的指導観」(r = .31, p<.01) の間に弱い相関が,また「学校効力 感」と「構成主義的指導観」(r = .34, p<.01) にも弱い相関が見られた。結果からは,「生 徒・学校間関係」が学習適性ビリーフと構成主義的指導観に弱い相関があるものの,教師の 協力体制では相関がみられないことが示された。結果を表5.55に示す。

表5.55 環境要因と教師の認知面における相関行列表

学習適性 学習方略 構成主義 直接伝達主義 自己効力感 .31** .19** .31** .10 学校効力感 .12* .24** .34** -.17**

協力体制 .20** .06 .06 .01

*p<.05, **p<.01, df = 277

5.4.2.3. 学校環境要因と感情面

「生徒・教師間関係」「教師の協力体制」と教師の感情面に関して,各尺度の因子得点を 用いてピアソンの相関係数を求めた。その結果,「自己効力感」と「外発的動機づけ」(r = .34, p<.01)「内発的動機づけ」(r = .37, p<.01)「交流志向」(r = .33, p<.01) の間に弱い相関があ り,「学校効力感」と「外発的動機づけ」(r = .338, p<.01)「内発的動機づけ」(r = .34, p<.01)

「交流志向 (r = .33, p<.01) の間に弱い相関が,「無動機」(r = -.33, p<.01) との間に弱い 負の相関が見られた。結果から「生徒・教師間関係」と「学習動機」,「交流志向性」に関 係があることが示されたものの,認知面と同様に教師の協力体制と感情面に相関は見られ なかった。結果を表5.56に示す。

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表5.56 環境要因と教師の感情面における相関行列表

外発的動機 内発的動機 無動機 仕事志向 交流志向 自己効力感 .34** .37** -.13* .29** .33**

学校効力感 .38** .34** -.33** .15* .32**

協力体制 .12* .25** .00 .22** .24**

*p<.05, **p<.01, df = 277

5.4.2.4. 学校環境要因と行動面

「生徒・教師間関係」「教師の協力体制」と教師の行動面に関して,各尺度の因子得点を 用いてピアソンの相関係数を求めた。その結果,生徒・教師間関係では「学校効力感」と「構 造化実践」(r = .35, p<.01) の間に弱い相関が見られただけであった。一方「教師の協力体 制」においてはすべての下位尺度において中程度の相関が見られた。「教師の協働」では「教 師の学び」(r = .62, p<.01),「生徒主体実践」(r = .63, p<.01),「構造化実践」(r = .535,

p<.01) という結果であった。結果からは「生徒・教師間関係」と教師の行動面にはあまり

相関がみられないものの,「教師の協力体制」との間に行動面に関するすべての因子に相関 が見られ,認知面や感情面に見られたのとは逆の特徴が示された。結果を表5.57に示す。

表5.57環境要因と教師の行動面における相関行列表

教師の学び 生徒主体実践 構造化実践 自己効力感 .19** .26** .28**

学校効力感 .13* .08 .35**

協力体制 .62** .63** .55**

*p<.05, **p<.01, df = 277

5.4.3. 考察 (1) 学校環境

学校環境に対する教師の認識として,「自己効力感」「職場効力感」の2因子に関して分 析した。「自己効力感」はクラス内における教師の効力感や生徒と教師との良好な関係性を 示す指針であり,また「職場効力感」は学校全体の教育実践に対する評価を示す指標である。

分析では,2因子ともに比較的高い平均点を示していた。効力感は成功体験や他者からのフ ィードバックによって培われると考えられる。昨今では,教師の多忙や子供や保護者の変化 から教師をとりまく教育環境が厳しいものになっていると言われているが,本研究からは 児童とよい関係を築きながら,自らの実践の成果を実感し自信をもって教育実践できる環 境にある教師も多いことが読み取れた。また,教師の協力体制は得点は高くはなかったが,

これは本研究では「外国語活動に関する学校の体制」に限定して質問していることが起因し ているのではないかと考えられる。この結果は,研究課題1の「教師の専門性向上のための