VII. 検診方法の評価
7. 乳がん検診の精密検査(生検・細胞診)の精度【全検査共通】
乳がん検診で要精検となった病変に対し施行される穿刺診断として、20-23Gの注射針を 用いる穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration cytology: FNAC)、14-18Gの穿刺針による針 生検(core needle biopsy: CNB)、8-14Gの穿刺針に吸引装置を組み合わせた吸引式乳房組織 生検(vacuum-assisted biopsy: VAB)がある。FNACは細胞診で簡便、安価、低侵襲性であ るが、最近は治療前にホルモン・レセプターやHER2蛋白の発現の有無を確認するために 組織診である針生検や吸引式乳房組織生検が選択される傾向にある 90)。日本乳癌検診学会 の平成20年度調査によればマンモグラフィ検診受診者のうちFNAC、CNB、VABを受け る割合はそれぞれ 0.9%、0.26%、0.08%である 91)。これらの穿刺診断手技別の精度を調べ た (表25)。
1) 穿刺吸引細胞診 (fine needle aspiration cytology: FNAC)
日本臨床細胞学会のワーキンググループが、12施設で施行された30,535件のFNACの うち組織診断が確定した10,890人を対象に、その診断精度を検討している。細胞診診断を、
検体不適正、正常または良性、鑑別困難、悪性疑い、悪性の5段階に分類し、悪性のみを正 診断とした感度は76.7%、悪性と悪性疑いを正診断とした感度は96.7%、特異度は84.3%、
陽性反応適中度は99.5%、正診率は88.0%であった。また、検体不適正は17.7%、鑑別困難
は7.8%、偽陰性は3.31%、偽陽性は0.25%であった。これらの結果は、英国などと比較し
て良好な結果であり、画像所見との整合性を考慮して施行することで、侵襲性、診断の迅速 化、経済性などの利点を有すると述べている90)。
2) 針生検 (core needle biopsy: CNB)
CNBは、以前は触知下で施行されたが、マンモグラフィ検診にて非触知病変が多くみつ かるようになり、現在ではほとんど超音波ガイド下で行われている。滝らの報告 92)では、
超音波下で148 人162 病変に対して Tru-cut型(18G)バイオプシーガンを用いて術前組織 学的検査を施行し、それ以前に行った112人113病変に対するSure-cut針(18G吸引式)の 成績と比較して検討している。Tru-cut型の診断精度は、感度89.2%、特異度94.9%、正診
率92.7%、検体不適正2%であった。両者ともに、処置を必要とする合併症は認められなか
った。診断的外科的生検数とがん手術数の比率は、吸引式針生検の導入により2.9から2.0 に、バイオプシーガンの導入により、さらに 0.5 にまで減少したとしている 92)。台湾から
の2,053人の報告では、FNACをCNBと併用することで偽陰性が2.5%から1.1%に減り、
診断精度が向上したとされる93)。
3) 吸引式乳房組織生検 (vacuum-assisted biopsy: VAB)
① ステレオガイド下VAB
スペインの報告では126人(132病変)の超音波検査で描出不能な非触知乳がん(29~81歳) にX線透視によるステレオガイド下VABを行い、診断精度を検討している。62.1%の症例 が石灰化所見であり、132 病変に対して VAB を施行し、130 病変の採取に成功し、感度 97.9%、特異度84.3%、正診率 99.2%であった。8例に後出血が認められたが、外科的処置 が必要となる重篤な合併症はなかった94)。
② 超音波ガイド下VAB
イタリアの報告では、超音波ガイド下VAB(11G)を379人404病変に施行し、その診断 精度を検討している。感度97%、特異度100%、正診率99%、陽性反応適中度100%、偽陰 性0.6%であった。合併症は9%(34/404)に認めたが、出血が64.7%、血腫が17.6%、クリッ プの遊走が1.4%で、その後に外科的処置を必要とした例はなかった。
超音波ガイド下VABは、細胞診よりも診断精度が高く、安全で有用な検査であるが、不 要な検査は避けるべきであり、特に触知しないカテゴリー4(悪性疑い)の症例に対して適応 になると結論づけている95)。
90) Yamaguchi R, Tsuchiya SΙ, Koshikawa T, Ishihara A, Masuda S, Maeda I, Takimoto M, Kawamoto M, Satoh H, Narita M, Itoh H, Kitamura T, Tsuda Y, Ogane N, Abe E, Ikeda K, Nakamura T, Kamaguchi H, Tokoro Y. Diagnostic accuracy of fine-needle aspiration cytology of the breast in Japan: report from the Working Group on the Accuracy of Breast Fine-Needle Aspiration Cytology of the Japanese Society of Clinical Cytology. Oncol Rep. 2012; 28(5): 1606-12.
91) Kasahara Y, Kawai M, Tsuji I, Tohno E, Yokoe T, Irahara M, Tangoku A, Ohuchi N.
Harms of screening mammography for breast cancer in Japanese women. Breast Cancer.
2013; 20(4): 310-5.
92) Taki S, Kakuda K, Kakuma K, Annen Y, Kiyohara K, Kosugi M. US-guided core biopsy of the breast with an automated biopsy gun: comparison with an aspiration core needle device. [Article in Japanese] Nihon Igaku Hoshasen Gakkai Zasshi. 1997; 57(1):
1-4.
93) Kuo YL, Chang TW. Can concurrent core biopsy and fine needle aspiration biopsy improve the false negative rate of sonographically detectable breast lesions? BMC Cancer. 2010; 10: 371.
94) Apesteguía L, Mellado M, Sáenz J, Cordero JL, Repáraz B, De Miguel C. Vacuum-assisted breast biopsy on digital stereotaxic table of nonpalpable lesions non-recognisable by ultrasonography. Eur Radiol. 2002; 12(3): 638-45.
95) Cassano E, Urban LA, Pizzamiglio M, Abbate F, Maisonneuve P, Renne G, Viale G, Bellomi M. Ultrasound-guided vacuum-assisted core breast biopsy: experience with 406 cases. Breast Cancer Res Treat. 2007; 102(1): 103-10.