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がんのリハビリテーション診療

ドキュメント内 高齢者がん医療 Q&A 総論 (ページ 81-103)

第 3 章 支持・緩和治療

7. がんのリハビリテーション診療

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害を診断・治療することで自立度を高め、QOLを向上させるものである」と定義される5。 4.がん患者に生じうる障害の種類

リハビリテーション診療の対象となる障害は、がんそのものによるものと、その治療過程におい て生じた障害とに分けられる(表1)5。前者には、がんの直接的影響と遠隔効果による間接的影響 があり、後者には、がん治療中や治療後の全身性の運動能力の低下、活動性低下、廃用症候群、手術 および化学療法・放射線療法によるものが含まれる。

5.がんのリハビリテーション診療の病期

がんのリハビリテーション診療の内容は病期によって4つの段階に分けられる(図1)67。入 院患者においては、手術や化学・放射線療法などの治療中・後の合併症や後遺症の予防・軽減、病 棟でのセルフケアの自立や退院準備が主な目的となる。一方、外来患者においては、通院治療中や 緩和ケア主体の時期の疼痛や全身倦怠感などの症状緩和や自宅での療養生活への支援など、がん患 者のQOLの維持・向上を目的に、地域医療や福祉との連携をとりつつ、生活を支援し、社会復帰 を促進する。

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6.高齢がん患者のリハビリテーション診療において用いられる評価法 6-1.全身状態(Performance Status)

全身状態を評価する指標であるPerformance Statusは、がんのリハビリテーション診療の効果 の評価のみならず、生存期間の予測因子としても重要である。

標準的に用いられる評価法としては、ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group, USA) のPerformance Status Scale8(PS)、Karnofsy Performance Scale9 (KPS)がある。

化学療法など治療期における全身状態の評価のために、がん医療の現場で一般的に用いられてい る。しかし、病的骨折や運動麻痺などの機能障害のために活動性が制限されている場合には、たと え全身状態が良好であっても低いグレードになってしまい、必ずしも全身状態を示すことにはなら ないことに注意が必要である。

6-2.身体機能評価

高齢がん患者は、ベースとなる機能的能力のレベルが多様な集団であり、加齢にともなう筋・骨 格器系の機能障害が、歩行能力やADLに影響することが多いので、治療前から治療中・後に継続的 にそれらの評価をしていくことが重要である。

高齢者の評価としては、リハビリテーション医学で一般的に用いられる徒手筋力テスト(Manual muscle testing:MMT)による四肢や体幹の筋力、関節可動域 (Range of motion: ROM)、寝返り・

起き上がり・座位保持・椅子や床からの立ち上がりなどの基本動作の評価とともに、簡便に身体機 能を定量的に評価する指標として、下記の検査が行われる。

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「フレイル」を有する可能性のある高齢がん患者の全身状態を総合的に判断する指標としては、高 齢者機能評価(Geriatric Assessment; GA)がある。定量評価が可能なGAのスクリーニングツー ルとしてGeriatric 8(G8)、Vulnerable Elders Survey-13(VES-13)等がある。

また、Cancer Functional Assessment Set (cFAS) は、がん患者の機能障害に焦点をあて、関節 可動域、筋力、感覚機能、バランス、最大動作能力、活動性の各領域を4段階もしくは6段階で評 価する。がん患者の身体機能の障害の程度を包括的に評価可能であり、リハビリテーションプログ ラムの作成やリハビリテーション治療の効果判定に役立つ24

6-3.ADL

日本リハビリテーション医学会では、ADL を「ひとりの人間が独立して生活するために行う基本 的な、しかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の身体動作群をいう。この動作群は、食事・排 泄等の各動作(目的動作)に分類され、各動作は、さらにその目的を実施するための細目動作に分類 される。リハビリテーション診療の過程やゴール決定にあたって、これらの動作は健常者と量的・

質的に比較され、記録される」と定義している25。すなわち、ADLは食事をする、顔を洗う、歯を 磨く、着替えをする、排泄する、入浴する、などの日常生活を営むために欠かすことのできない動作 群としての活動を意味する。

ADL評価の目的は以下のとおりである。

1)患者の自立度・介護度を知る。

2)リハビリテーション治療の計画を立てる。

3)リハビリテーション治療の効果を判定する。

4)機能予後を予測する。

5)他施設や多職種医療職・介護職との情報交換を行う。

6)リハビリテーション治療の費用対効果分析を行う。

ADLの評価尺度としては、疾患を問わず使用できるFIM、Barthel index、Katz indexが用い られる。

筋力 握力10

等尺性膝伸展筋力(膝屈曲90度)11

30秒椅子立ち上がりテスト(30-sec chair-stand test : CS-30) 12 5回反復立ち座り動作時間13

バランス 片足立ち14

functional reach test(FR) 1516 Berg balance scale(BBS) 1718 four square step test(FSST) 19 運動耐容能 6 分間歩行テスト2021

移動・歩行 timed up & go test(TUG)22 最大歩行速度(10m)23

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・FIM

FIMは介護量(Burden of care)の測定を目的とし、「しているADL」を評価する。すなわち患 者に動作をさせて採点するのではなく、日常生活では実際にどのように行っているかを観察などに よって採点する。大項目2(運動項目と認知項目)、中項目 6(セルフケア、排泄コントロール、移 乗、移動、コミュニケーション、社会的認知)、小項目18から構成され、これらの項目を共通の採 点基準(1点~7点)で評価する2627。従って、運動13項目の合計点(運動FIM)は13~91点、

認知5項目の合計点(認知FIM)は5~35点になる。

リハビリテーション治療の効果を示す臨床指標としては、FIM利得(退院時FIM点数-入院時 FIM点数)やFIM効率(1日あたりのFIM利得=FIM利得/入院日数)が用いられる。また、FIM運動

項目が50-60点台の半介助群の場合は「移乗やトイレ動作に介助が必要であるが、食事、整容、排泄

管理は出来る」、70点台のセルフケア自立群の場合は「入浴の際には、介助を有し、歩行/車椅子は一 部介助だが、他の項目は自立している」、80点台後半では「階段を含め自立している」と表現するこ とができる28。IADLに関する評価項目が含まれていないので、自立生活が可能か否かは評価できな い。

・Barthel index (BI)

Barthel index 14 (以下BI)は、FIMと同様に介護量(Burden of care)の測定を目的とし、「し

ているADL」を評価する。ADL評価法としては歴史が古くデータも豊富である。評価項目は10項

目から構成される。評定尺度は自立、部分介助、介助の3段階でそれぞれの項目に5点から15点の 配点がなされ、すべて自立であれば総得点は100 点、すべて介助であれば0点となる2930。採点 が簡便であるが、一方では、整容や入浴では評定尺度が2段階(5点と0点)、他の項目でも3~4 段階であり、FIM と比較するとリハビリテーション治療の効果を細かくとらえることができない。

また、認知項目が含まれていないことが欠点である。

・Katz Index

評定尺度は、2段階(自立か介助)である。評価項目はADL動作を6項目から構成される。それ らの項目の難易度が決められており、難易度の高い順に、入浴、更衣、トイレ、移乗であり、難易度 の低い項目は排泄、食事である3132

主に、高齢者や悪性腫瘍(がん)の治療・予後研究や投薬治療効果比較などの臨床研究で用いられ ている。利点は簡便に評価可能なことであるが、評定尺度が粗いことや機能障害の状況により、難 易度の順番が通常と異なる場合には評価が困難になることが欠点である。

6-4.手段的ADL(IADL)

ADLに近い概念としてIADLがある。IADLとは、周辺環境や社会生活に関連した日常の活動で ある。具体的には、料理・掃除・洗濯などの家事、育児、買い物、公共交通機関の利用、服薬の管理、

金銭の管理などで構成され、在宅生活での自立的な生活能力を評価する。ADLはヒトが自立して生 活するための基本的な身体的動作を指しているのに対し、IADL はより応用的な動作や社会的自立 に必要な活動を指す。

IADLは、重要な項目が年齢・性別・生活環境(家庭内での役割・住居の状態・生活スタイル)な

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どによって異なるため、国際的に統一された評価法の開発・普及は進んでいない。比較的よく用い られるものとして、LawtonのIADL評価法やFrenchay Activities Index (FAI)がある。また、IADL を中核に含む評価法として、老研式活動能力指標、JAST版活動能力指標がある。

・LawtonらのIADL評価法

Lawtonら33のIADL評価法は、1960年代に開発され、その後に開発された評価法の基礎とな

っている。8項目から構成され、女性は8項目すべてに回答するのに対して、男性はそのうち5項 目についてのみ回答する3334。IADLへの関わりが男女で異なっているという前提で、男女間で評 価項目(質問内容)が異なる点が特徴的であるが、時代とともに生活様式は開発された時期とは変 化してきており、性差を勘案することは必ずしも妥当ではないとの意見もある。

・Frenchay Activities Index (FAI)

15項目から構成され、評定尺度は4段階で各項目共通である35。日本語版も開発されているが、

日本人には日常的作業といえない項目が含まれている点が問題となることがある36

・老研式活動能力指標・JST版活動能力指標

高齢者を対象とした評価尺度としては、東京都老人総合研究所が開発した老研式活動能力指標37) や老研式活動能力指標を基盤に新しく開発されたJST 版活動能力指標 38がある。いずれの指標と も、高齢者の活動能力全般を測定することが目的のため、IADL以外の項目が含まれている点に注意 が必要である。

7. がんのリハビリテーション診療の実際.

7-1. リハビリテーション診療の進め方

リハビリテーション医療の最大の特徴は、患者を臓器レベルのみでとらえるのではなく、個人や 社会的レベルにおいても評価を行い、多職種チームで治療にあたるところにある。病気は治ったも のの、その後に残された運動障害を中心とする様々な障害に対してリハビリテーション医療を行う には、従来の国際疾病分類(ICD)による医学的モデルでは不十分であることから、リハビリテーシ ョン医学においては、1980年にWHOによって制定された国際障害分類(ICIDH)およびその発展 版である国際生活機能分類(ICF)にもとづいて、問題点を機能障害、活動制限、参加制約の3つの レベルに分け、リハビリテーションプログラムを作成する39(図2)。

リハビリテーション診療を進めて行く上での基本的な流れを図3に示した40

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