その他の 自然科学的分析
2)花
粉群集の特徴①北壁 (図47)
(5層
〉(配3)と (4層
〉(配2)で
は、イネ科、アブラナ科などが検出されたが、い ずれ も少量である。 また、
(4層 )で
は寄生虫 卵 (回虫卵)が
認め られた。(3層
)(No l) では草本花粉が約95%を
占める。草本花粉で はアブラナ科が卓越 し、次いでイネ科 (イネ 属型 を含む)が
多 く、ソバ属などが伴われる。アブラナ科やソバ属 は虫媒花であ り、風媒花 と比較 して現地性が高 く花粉の生産量 も少な いことか ら、他の分類群 と比較 して過大 に評 価する必要がある。樹木花粉ではコナラ属 コ ナラ亜属、マツ属複維管束亜属 などが検出さ れた。 また、同層では寄生虫卵 (鞭虫卵
)が
認め られた。
②東壁 (図48)
下位の (18h層〉(No 5)では樹木花粉が約
95%を
占める。樹木花粉ではヨナラ属アカガ シ亜属が卓越 し、次いでエノキ属 ―ムクノキ が多 く、 ヨナラ属 ヨナラ亜属、マツ属複維管 束亜属、イチイ科 ―イヌガヤ科 ―ヒノキ科 な どが伴われる。草本花粉ではヨモギ属、イネ 科 などが認め られた。(16層)(No 4)で
は樹 木花粉の占める割合が約65%で
ある。樹木花 粉ではコナラ属 コナラ亜属、 ヨナラ属 アカガ シ亜属、スギが優勢で、イテイ科 ―イヌガヤ 科 ―ヒノキ科、 シイ属、 クリ、マツ属複維管 東亜属などが伴われる。草本花粉ではイネ科、自然科学的分析
バ などを栽培す る農耕が行 われていた と考えられる。アブラナ科には、アブラナ (ナタネ)、 ダイコン、ハクサ イ、 タカナ、カブなど多 くの栽培植物が含 まれている。周辺に森林 は少な く、やや遠方に二次林 とみ られるナラ 類、マツ類などが分布 していたと推定 される。
(4層 )と (5層 )で
は、花粉があまり検出されないことか ら植生や環境の推定は困難であるが、イネ科、ア ブラナ科 などが認め られることか ら、(3層 )と
おおむね同様の状況であった可能性が考えられる。花粉が検出さ れない原因としては、乾燥 もしくは乾湿 を繰 り返す堆積環境下で花粉などの有機質遺体が分解 されたこと、土層 の堆積速度が速かったこと、および水流や粒径 による淘汰・選別 を受けたことなどが考えられる。なお、
(3層 )で
は寄生虫卵の鞭虫卵、(4層 )で
は回虫卵が認め られた。 これ らの寄生虫卵については人糞施 肥の影響 も示唆されるが、いずれ も低密度であることか ら、集落周辺などの人為環境における通常の生活汚染 に 由来するものと考えられる。回虫 と鞭虫は、 どちらも中間宿主を必要 とせず、糞便 とともに排泄 された寄生虫卵 が付着 した野菜・野草の摂取や水系 により経口感染する。文献
金原正明 (1993)花粉分折法による古環境復原
新版古代の 日本 第10巻 古代資料研究の方法、角川書店、p248‑262 金原正明 (1999)寄 生虫
考古学 と動物学
考古学 と自然科学、2、 同成社、p15卜158
島倉 巳三郎 (1973)日 本植物の花粉形態
大阪市立 自然科学博物館収蔵 目録 第5集、60p 中村純 (1967)花粉分析
古今書院、p82110
中村純 (1974)イ ネ科花粉について、 とくにイネ (Oryza saiva)を 中心 として 第四紀研究、13、 p18作193 中村純 (1977)稲 作 とイネ花粉
考古学 と自然科学、第10号、p2130
中村純 (1980)日 本産花粉の標徴
大阪自然史博物館収蔵 目録 第13集、91p
c.植 物遊酸体分析
株式会社
古環境研 究所
(1)は
じめ に植物珪酸体 は、植物 の細胞 内に珪酸 (Si02)が蓄積 した もので、植物が枯 れたあ ともガラス質の微化石 (プラ ン ト・オパ ール
)と
なって土壌 中に半永久的に残 っている。植物珪酸体分析 は、 この微化石 を遺跡土壌 な どか ら 検 出 して同定 。定量す る方法であ り、 イネをは じめ とす るイネ科栽培植物 の同定お よび古 植生 。古環境 の推定 な どに応用 されてい る (杉山、2000)。 また、 イネの消長 を検討す るこ とで埋蔵水 田跡 の検証や探査 も可能である(藤原・杉 山、1984)。
(2)試
料分析試料は、北壁の
(3〜
5層 〉および東壁の (16層)と
(18h層 〉から採取された計5点
である。試料採取 箇所を分析結果の模式柱状図に示す (図50)。 これらは、花粉分析に用いられたものと同一試料である。(3)分
析 法植物珪酸体 の抽 出 と定量 は、 ガラス ビーズ法 (藤原、1976)を用 い て、次の手順 で行 った。
1)試
料 を105℃ で24時 間乾燥 (絶乾)2)試
料約lgに
封 し直径約40pmの ガラス ビーズ を約0.02g添加 (0.lmgの精度 で秤量)―‑ 52 ‑―
その他の自然科学的分析
3)電
気 炉灰化 法 (550℃ ・6時
間)に
よる脱有機物処理4)超
音波水 中照射 (300W・ 42KHz。 10分 間)に
よる分散5)沈
底法 に よる2勤 m以 下 の微粒 子 除去6)封
入剤 (オイキ ッ ト)中
に分散 してプ レパ ラー ト作成7)検
鏡 ・計数同定 は、400倍 の偏光顕微鏡下で、お もにイネ科植物 の機動細胞 に由来す る植物珪酸体 を対象 として行 った。計 数 は、ガ ラス ビーズ個 数が400以 上 になるまで行 った。これ はほぼプ レパ ラー ト
1枚
分 の精査 に相 当す る。試料1gあた りのガラス ビーズ個数 に、計数 された植物珪酸体 とガラス ビーズ個数 の比率 をかけて、試料
lg中
の植物 珪酸体個数 を求めた。また、お もな分類群 についてはこの値 に試料 の仮比重 (1.0と仮 定
)と
各植物 の換算係 数 (機動細胞珪酸体1個 あた りの植物体乾重、単位:10‑5g)を
か けて、単位面積 で層厚l cmあた りの植物体生産量 を算 出 した。 これ に よ り、各植物 の繁茂状況や植物 間の占有割合 な どを具体 的に とらえるこ とがで きる (杉山、2000)。 タケ亜科 に つ いては、植物体生産量 の推定値か ら各分類群 の比率 を求めた。●
)分
析 結果検 出 された植物珪 酸体 の分類群 は以下 の とお りであ る。 これ らの分類 群 につ いて定量 を行 い、 その結果 を表7 お よび図50に 示 した。主要 な分類群 について顕微鏡写真 を示す (図51)。
〔 イネ科〕
表
7
植物瑳酸体分析結果 イネ、ヨシ属、
シバ属、キ ビ族
型、ウシクサ族
A(チ
ガヤ属 な ど)〔イネ科 ―タケ亜科〕
メ ダケ節 型 (メ ダケ属 メ ダケ 節・ リュウキュウチク節、ヤダケ 属)、 ネザサ節型 (おもにメダケ属 ネザサ節)、 チマキザサ節型(ササ 属チマキザサ節・チシマザサ節な ど)、 ミヤコザサ節型(ササ属 ミヤ コザサ節 など)、 未分類等
〔イネ科 一その他〕
表皮毛起源、棒状珪酸体 (おも に結合組織細胞由来)、 未分類等
〔樹木〕
その他
(5)考
察1)稲
作跡の検討水 田跡 (稲作跡
)の
検証や探査 を行 う場合、一般にイネの植物珪 酸体 (プラン ト・オパール)が
試 料lgあ
た り5,000個以上 と高い検 出密度 (単位:X100個/g)
地点・ 試料
難 一一
分類 群 学名 イネ科
イネ ヨシ属 シバ属 キ ビ族型 ウ ンクサ族A
Gramineae Oっ てαざα″ν, Pれr,卸,之s
多ノd勉 14
Paniceae type 7
Andropogoneae A type 48 13 21 28 12 タケ亜科
メ ダケ節型 ネザサ節 型 チマキザサ節型
ミヤ コザサ節型 未分類 等
Bambusoideae
Pttιοう″ざヵざsect Nipponocalamus P形サο♭Jab′ぬsect Nezasa 膨w sect Sasa etc 肋∫α sect CrttsinOdi Others
49 55 05
︲2 86 36 07
︲4 2︲
7︲
︲3 4 19 25 56
そ の他 の イネ科 表皮 毛起源 棒状珪酸体 未分類等
Others Husk httr origin Rodshaped Otters
︲4 35 の 2
. 55 83 34
76 89
樹木起 源 その他
Arboreal
Otters と4
(海綿吾針) Sponge spicules 植物珪酸体 総数
おもな分類群の推定生産量(単位 :鞘/言 cl l):試料の仮比重を10と仮定して算出 イネ
ヨシ属 メダケ節型 ネザサ節型 チマ キザサ節 型 ミヤ コザサ節型
0ヮ宅α dαOフα P力/,=れ,″s
P2,ο♭施drvd sect Nipponocalamus 河¢,οう力drlvd sect Ne″asa 磁勲sect Sasa etc
Sα♂,sect Crassinodi
182 074
006 008 010
48 76 26
090 041 051 011 006
タケ亜科 の比率 (%) メダケ節型 ネザ サ節型 チマ キザサ節型
ミヤ コザサ節型
P′,ο♭ル∫″∫sect Nipponocalamus
P,9,οう協∫″d sect Nezasa S,d,sect Sasa ctc Sttα sect Crassinodi
34
︲6 47 2
ヽIedake ratio メダケ率
―‑ 53 ‑―
自然科学的分析
(北壁)
0 烏
図
25‑
タケ亜科 その他
│ チ ミ 「 司
イネ科
冒 冒 れていた可能性が高い と判断 している骸 山、
な癖譲癖 2000)。 なお、密度が3,000個/g程 度で も水 田
r刊 げ」
遺構が検出される事例があることか ら、 ここ では判 断の基準 を3,000個 /gと して検討 を行 った。
①北壁 (図50上)
(3層
)(No l)、(4層
〉 (h2)、(5層
)(血
3)に
ついて分析 を行 った。その結果、すべての試料か らイネが検出された。このう ち、
(3層
〉(配1)で
は密度力消,200個/gと高 い値である。 したがって、同層では稲作が行 われていた可能性が高いと考えられる。(4層
〉(血2)と (5層
〉(No 3)では、密度が2,500個/gおよび2,100個 /gと比較的低 い値である。イネの密度が低い原因 としては、
稲作が行われていた期間が短かったこと、土 層の堆積速度が速かったこと、採取地点が畦 畔など耕作面以外であったこと、お よび上層 や他所か らの混入などが考えられる。
②東壁 (図50下)
(16層〉(血
4)と
(18h層〉(h5)に
ついて分析 を行 った。その結果、イネはいずれ の試料か らも検出されなかった。
2)イ
ネ科栽培植物の検討植物珪酸体分析で同定 される分類群のうち 栽培植物が含 まれるものには、イネ以外 にも ムギ類、ヒエ属型 (ヒエが含 まれる)、 エノコ ログサ属型 (アヮが含 まれる)、 キビ属型 (キ
ピが含 まれる)、 ジュズダマ属 (ハ トムギが含 まれる)、 オ ヒシバ属 (シコクビエが含 まれ る)、 モロコシ属型、トウモロコシ属型などが
︵海 綿 骨針
︶ 未分 類等 棒 状珪 酸 体 表皮 毛起 源 未 類分 等 ヤコ ザ サ節 型 マキ ザ サ節 型 ネザ サ節 型 メァ ヶ節 型 ウン ク サ族 A キピ 族 型 シ バ
属
中中中中中中中 中中中中中中中 中中﹈ 中中中中中﹃ 一中中中中中中
獅中 封一
的﹈中 中中中中中中中 中中中中中中中 中﹈﹈中中中中 中中中中中中中
中﹈﹈中一0 ︲00
半抄
推 定生産量(kg/ 枷)缶■LE■H■H■f検出密度(万個/g)