4.急性期・回復期の理学療法と就労支援
現在の医療は急性期・回復期・生活期のように段階に分かれ たアプローチがされている。シームレスな医療というようにそ の各段階では切れ目がないように様々な工夫や努力がされてい るが,実際の現場ではけっしてスムーズに進んでいる症例ばか りではない。急性期は救命処置や機能回復に主眼が置かれるこ とは当然であるが,次の回復期に転院すればその先のことは まったく関係がないというその場限りでの治療が行われている ことも多い。また,入院期間も短期であり,医療スタッフも回 復期や生活期の経験がないものも多く,患者の最終的なゴール がわからないのでどう進めてよいかわからないという意見も多 い。このことは,その患者の最終的なゴールを見据えた理学療 法は急性期ではあまり行えていないということを示している。 近藤ら 8) によると急性期でもリハ対象患者の約 57%は就労支 援を希望し,その中では運動器疾患が 73%を占めていたとい う報告もある。治療初日には,リハビリテーション総合実施計 画書の作成が義務づけられている。この中には復職を含む仕事 関係のことや患者,患者の家族の希望を書きこむ欄がある。当 然ながら計画書を作成すれば患者が復職などの就労支援を希望 していることは明らかになっているはずである。本当に我々 は,その希望に真摯に応えているのだろうか。急性期であろう とも患者の希望に応えながらプログラムを進めていくことが必 要であることは明白であり,次の回復期には急性期で得た情報 をもとに伝達し,本当に患者の希望に沿った切れ目のないリハ ビリテーション医療・理学療法を展開していくことが求められ ているのではないだろうか。
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