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障害者の就労支援

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Academic year: 2021

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はじめに  20 代・30 代の理学療法士の方に「就労支援とは」と聞くと あまりピンとこない人も多いであろう。しかし,40 代後半か ら年配の方々にはなんとなく想像がつくのではないだろうか。  就労支援の話をするとすればリハビリテーションという言葉 の意味を理解しないといけない。リハビリテーションという言 葉は,現在では一般的に用いられ,認知されてきている言葉で ある。理学療法は,リハビリテーション(リハビリテーション 医療)の一部を構成するが,周知のとおりリハビリテーション と同一でもリハビリテーションの中にすべて含まれるというわ けでもない。しかしながら,我々の実際の職場や診療報酬上で は,リハビリテーションの中に位置づけられており,一般的な 認知度もそのようになっている。このようにリハビリテーショ ンと我々理学療法士は密接な関係があるわけであるが,そのリ ハビリテーションという言葉が元々もっている意味を我々は 知っているだろうか?  リハビリテーションという言葉は医療の中だけでなく,職 業的や教育的など様々な方面でも使用されている。また,こ の言葉は第 1 次世界大戦後に負傷した兵士のためにつくられ た言葉とされている。この言葉の意味の中には,負傷した者が 再び社会復帰することで,社会保障費を抑制するだけでなく Taxpayer(納税者)ともなり得るということで,政治的にも 重要な意味をもっていたのである。我々はリハビリテーション という言葉を聞くと,医療の中で機能回復や社会・家庭復帰へ 向けたアプローチといったニュアンスを思い浮かべるが,本来 は職業復帰・就労といった事項までを示す概念のものである。  20 数年前までは,我が国でもひとつの病院で急性期から職 業復帰までの過程を行っていた時期も実際にあり,そこには当 然ながらリハビリテーション科の一員として理学療法士も普通 にかかわっていたのである。  本論では,就労支援について障害をもった方,一時的に機能 低下をきたした方の復職などの支援を中心に理学療法士の立場 から述べることにする。また,本論で述べる対象は,筆者の回 復期および急性期病院からの経験をもとにおもに身体に中途障 害を負った方に限局させていただくこととする。 障害者の就労支援政策  最初に我が国の障害者就労支援政策について簡単に述べるこ ととする。詳細については,厚生労働省のホームページ1)を 参照していただきたい。  厚生労働省の調査によると障害者の総数は約 744 万人で雇用 施策対象者(18 ∼ 64 歳の在宅の方)は約 332 万人,その内身 体障害者は約 124 万人とされている。平成 24 年度のデータによ ると身体障害者は雇用者が 291,013.5 人であり,前年比 2.3%増 という結果がでている。身体障害者の調査結果を見ると製造業 がもっとも多く次に卸売・小売業,運輸・郵便業と続いている。 また,その業務内容では,事務的職業がもっとも多く,生産工 程・労務の職業,専門的・技術的職業となっている。実際に雇 用されている人数も身体障害者が精神障害者・知的障害者より はるかに多いことが示されている。しかし,近年は知的障害者 や精神障害者の増加率が高く,厚生労働省の施策もそちらに重 点が置かれている印象がある。実際の支援策は 7 つの施策があ り,その中には就労移行支援や就労継続支援 A 型,B 型といっ た職業リハビリテーションセンターなどの職業訓練関係や福祉 的就労などの支援策も挙げられている。我々理学療法士もこの ような情報をしっかりと把握しておくことも重要であろう。 理学療法(医療)と就労支援 1.就労支援に関する学術的発表  その分野にどのような職種や施設が興味があり研究対象にし ているかを知る方法として,その分野の研究発表や学術論文な どを調べることがある。今回,就労支援や職場復帰,復職の キーワードで近 3 年間の国内の様々な医学検索システムなどを 調べた結果,理学療法士が筆頭にて学会発表抄録・学術論文・ 総説などがあったものは 7 件ほどであった。多職種共同にて 行っているものは数多くあったが,医師・作業療法士が筆頭の 場合が多かった。また,医師・作業療法士はその職種のジャー ナルで就労支援の特集が組まれるほどであり,関心の高さがう かがわれた。特に(一社)作業療法士協会は就労支援について まとめた総説2)もあり,一体となって進めている印象である。 看護師サイドも近年,ジャーナルにて特集が組まれているもの があり関心が向いていることをうかがわせている。しかし,残 念ながら理学療法士関係にはまったく就労支援への対応は見ら れず,関心の低さが目立っている傾向であった。

障害者の就労支援

武 田 正 則

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大会テーマ

Supported Employment for People with Disabilities **

独立行政法人労働者健康福祉機構 岡山労災病院 (〒 702‒8055 岡山県岡山市南区築港緑町 1‒10‒25)

Masanori Takeda, PT, PhD: Japan Labour Health and Welfare Organization Okayama Rousai Hospital

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 職場復帰や就労などは,現実的なアウトカムであり,関節可 動域や筋力,歩行状態などがアウトカムとして指標とされてい る理学療法士の学術的発表よりも社会的には認知がされやすい のではと思われる。理学療法士の治療は,基本的動作や機能 的・能力的なものを中心に行われるので,アウトカムに関して は身体的なことが中心にならざるを得ないが,一般社会からは わかりにくいと思われる。もっと我々も社会的に認知されやす いアウトカムの結果をだす必要もあるのではないかと考える。 2.医療側の考える就労支援  我々,医療に携わる理学療法士や医療職の中には,病院の中 での考え方をそのまま社会に置き換えようとしてしまう傾向が ある(図 1)。たとえば,電話の応対が可能であれば,事務職と して対応できそうだ,というあいまいで単純な構造である。し かし,ここで自分自身が雇用側の立場で考えてみれば,電話応 対だけでは事務職としては成り立たないことは明白であろう。  また,就労支援にてよく使われる就労という言葉と雇用とい う言葉を挙げてみる。国語辞典によると就労とは,「仕事に就 くこと・仕事をはじめること・仕事をしていること」を示して いる。また,雇用とは「人を雇い入れること・当事者の一方が 相手方のために労務に服し,これに対して相手方が報酬を支払 うことを約束する契約」とある。  一般的に企業側からは,雇用という言葉がよく使用されてい るのでその理解が必要である。また,我々が治療としてめざし ている就労支援は,就労をさすことが多いのではないだろう か。その点で雇用側の企業と医療側との意見のすれ違いも起き ていると思われる。つまり,仕事をするという観念だけが先行 し,採算のことなど社会では通常考えられている概念が抜け落 ちているといったことはないだろうか。企業としては,生産効 率が高く社屋の改造や不定休がない社員のほうが重要視される のである。  我々,医療側は企業の障害者の法定雇用率という後ろ盾はあ るものの,どちらかといえば企業側の好意を期待していること も多いのではないだろうか。また,我々理学療法士の行える支 援といえば,職場との調整などといった社会的な支援よりは一 般的な理学療法の延長としての支援が中心となる。これらは理 学療法士以外の職種でも同様である。その一般的な各職種の就 労支援への役割を表 1 に示す。このアプローチでは理学療法士 の役割は,階段昇降が必要であれば階段昇降が実際の状況で行 えるように練習することや就業時間内に休まずに働ける持久力 をつけるといったことになる。しかし,このアプローチだけで は,特に重度の障害をもっている方であれば本当に復職などの 就労支援として十分かは疑問である。我々は,自分の知識や技 術そして就労支援に対する組織の体制を認識し,その状況に応 じて自分ができること・しなければいけないこと,他の専門的 な施設や職種に依頼しなければいけないことを明確に把握する ことが必要である。それは,患者にとってなにをすることが一 番よいことなのかを考えるということであると思われる3)。 3.職業リハビリテーション  次に職業リハビリテーションという言葉を捉えてみる。我々 の中では,職業リハビリテーションというと作業療法士が行っ ているような職業前トレーニングを思い出す方も多いのではな いだろうか。しかし,職業リハビリテーションとはリハビリ テーションのひとつの分野であり,ILO(国際労働機関)など も定義をしている言葉である。国際労働機関第 159 号条約「障 害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約」では, 職業リハビリテーションの目的を,「障害者が適当な職業に就 き,これを継続し及びその職業において向上することを可能に し,それにより障害者の社会における統合又は再統合の促進を 図ること」としている(第一条の 2)。また,「障害者の雇用の 促進等に関する法律」では,職業リハビリテーションを「障害 者に対して職業指導,職業訓練,職業紹介その他この法律に定 める措置を講じ,その職業生活における自立を図ること」と定 義している(第二条の 6)4)。したがって,一般就労に対応でき る人材の育成をめざし,就職率も高く保つことが目的とされて いる。国際的にも職業リハビリテーションセンターとして公的 に存在するものは,高い就職率を誇っており,そのために入所 図 1 医療側の考える就労支援 表 1 各職種の役割 PT(障害に応じた基本的動作,運動強度耐性・持久力) ①復帰後の業務内容の分析,動作分析 ②治療計画作成 ③理学療法の実施 OT(障害に応じた応用的動作,作業シミュレーション,作 業環境・住環境の調整) ①復帰後の業務内容の分析 ②治療計画作成 ③作業療法の実施(職業前トレーニング) Dr ①職業復帰計画 ②職業復帰リハプログラム ③職業復帰前評価 MSW ①対象者・家族の就労意志の強化 ②復職条件への対策(復職時期や形態の確認) ③カウンセリング

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する際には選抜試験が実施されているのである。  筆者は,現在は急性期病院に勤務しているがその前には回復 期病院(独立行政法人労働者健康福祉機構吉備高原医療リハビ リテーションセンター)に勤務していた。その病院の隣には職 業リハビリテーションセンター(独立行政法人高齢・障害・求 職者雇用支援機構国立吉備高原職業リハビリテーションセン ター)が併設されている。回復期に勤務している際には,患者 や他の医療関係者から回復期病院に入院すると自動的に職業リ ハビリテーションセンターに行けるのではないか,どうして自 分は職業リハビリテーションセンターに行けないのか,といっ た質問をよく受けていた。これらは,職業リハビリテーション センターの意義がよく理解されていないためにおきていたこと である。古澤ら5)によると医療側が職業リハビリテーション の制度や対象者を理解していないという返答が多くみられたと いう報告もある。  現在では,逆に職業リハビリテーションセンターは入所する のが難しい,機能的・知能的に非常に高くないと入所できない といった風潮にもなってしまっているが,入所の基準や回復期 病院に入院しながら短期間の講習を受けられるコースなど様々 な取り組みがされているので興味がある方は,国立吉備高原職 業リハビリテーションセンターのホームページ6)や吉備高原 医療リハビリテーションセンターのホームページ7),または直 接施設に問い合わせてみていただければ幸いである。 4.急性期・回復期の理学療法と就労支援  現在の医療は急性期・回復期・生活期のように段階に分かれ たアプローチがされている。シームレスな医療というようにそ の各段階では切れ目がないように様々な工夫や努力がされてい るが,実際の現場ではけっしてスムーズに進んでいる症例ばか りではない。急性期は救命処置や機能回復に主眼が置かれるこ とは当然であるが,次の回復期に転院すればその先のことは まったく関係がないというその場限りでの治療が行われている ことも多い。また,入院期間も短期であり,医療スタッフも回 復期や生活期の経験がないものも多く,患者の最終的なゴール がわからないのでどう進めてよいかわからないという意見も多 い。このことは,その患者の最終的なゴールを見据えた理学療 法は急性期ではあまり行えていないということを示している。 近藤ら8)によると急性期でもリハ対象患者の約 57%は就労支 援を希望し,その中では運動器疾患が 73%を占めていたとい う報告もある。治療初日には,リハビリテーション総合実施計 画書の作成が義務づけられている。この中には復職を含む仕事 関係のことや患者,患者の家族の希望を書きこむ欄がある。当 然ながら計画書を作成すれば患者が復職などの就労支援を希望 していることは明らかになっているはずである。本当に我々 は,その希望に真摯に応えているのだろうか。急性期であろう とも患者の希望に応えながらプログラムを進めていくことが必 要であることは明白であり,次の回復期には急性期で得た情報 をもとに伝達し,本当に患者の希望に沿った切れ目のないリハ ビリテーション医療・理学療法を展開していくことが求められ ているのではないだろうか。 就労支援の実際  この項では,実際のケースを用いて就労支援の可能性を探る こととする。ここに紹介した例が正しいということではなく 様々なアプローチや考え方があると思われるが,今後の就労支 援に対する進め方の一助になれば幸いである。 1.中枢疾患に対する就労支援 1)脳血管疾患  脳血管疾患の復職をはじめとした就労支援は難しいという印 象がある方が多いのではないかと思われる。それは一般的に脳 血管疾患は,①発症が中・高年齢であること。②身体的には上 下肢・体幹筋の麻痺があり,移動動作や物をもつ動作などが制 限されやすいこと。③高次脳機能障害を合併しやすく,作業効 率や判断能力が落ちることがあること。が関係していると思わ れる。したがって,復職などのアプローチが行いやすい場合 は,①若年者であること。②運動麻痺が軽く,日常生活動作に 支障がないこと。③高次脳機能障害などがないこと。④元々が ホワイトカラー(管理職)であること。となる。特に④は重要 であり,経営者の親せきや功労のあった重役の方であれば,運 動麻痺が強い・軽い高次脳機能障害があるといった不利な状態 でも,医療側の心配をよそにあっさりと復職する例があること を経験することもある。  このような脳血管疾患に対する職業復帰に対しては,労働者 健康福祉機構が労災疾病等 13 分野医学研究報告として調査や 新しい試みをホームページ9)や論文10‒12)にて発表している ので参考されたい。  ここで今回紹介する症例は,一般的な回復期にて治療した患 者である。 (症例 1) 40 代,男性。 診断名:脳出血による左上下肢運動麻痺。軽度の高次脳機能障 害あり。 職業:自動車部品製造。 退院時 ADL:T 字杖歩行可能。(装具なし)ADL 自立。 問題点:上肢の運動麻痺,歩行能力低下,耐久性低下,高次脳 機能障害残存,現職復帰困難。 理学療法アプローチ:上肢の機能回復,歩行練習,応用歩行練 習,耐久力向上。 復職へのポイント:一般的な環境で生活可能な移動能力の獲 得,一般就労に耐えられる耐久力の獲得。  その後の経過としては,雇用者側が事務職への配置転換を決 定した。そして,その事務的な能力取得のため職業リハビリ テーションセンターへ入所し,発症後 1 年 6 ヵ月で職場復帰と なった。本症例の就労支援のポイントとしては,対象者が若年 であったということ,ADL が自立していたこと,高次脳機能 障害が復職の妨げにならない程度であったことが挙げられ,職 業リハビリテーションセンターでの専門的な技術取得が可能で あったことも要因と考えられる。この症例は脳血管疾患の中で も復職しやすい症例の典型であろう。

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2)脊髄損傷  脊髄損傷,特に対麻痺の方は,身障者スポーツにみられるよ うに障害をもった方の社会復帰の典型的な形として見られてい るのではないだろうか。頸髄損傷などの四肢麻痺の方は,家庭 復帰が目標になり就労までは考慮に入りにくいと思われるが, 若年者や特別な技能や免許などを取得していると復職しやすい 側面ももっている。 (症例 2) 30 代男性。 診断名:脊髄損傷 左鎖骨遠位端骨折 左前腕開放骨折 胸部 大動脈瘤 障害名:第 12 胸髄残存完全対麻痺 復職への問題点:移動動作の変更(車いす)による職場環境と 生活環境(寮)の変化 理学療法アプローチ:車いす動作の自立,職場・家庭環境調整 復職へのポイント:職場・住環境で移動動作を評価し,適切な 改造指導が必要。直接の上司をはじめ職場の方に障害を理解し てもらうことが必要。 退院時:車いすにて ADL 自立。 その後の経過としては,雇用者側の協力が得られ,職業リハビ リテーションセンターでの事務的能力取得を行い会社とその寮 を改造し職場復帰となった。  本症例の就労支援のポイントとしては,若年者であるという こともあるが,会社にとって必要な人材であることが大きく影 響した症例である。入院当初から企業側の面接も多く,受け入 れも良好であった。したがって,会社・生活する寮への入り口 やドア類・トイレなどの改造点を積極的に医療側にアドバイス を求めてくるほどの対応であった。こういった症例は,企業側 からのアプローチが早く,またほぼ本人や医療側の希望がその まま採用されるケースが多い。医療側から見ても理想的な復職 のケースであろう。 3)その他  典型的な脳卒中,脊髄損傷以外のケースを示す。 (症例 3) 30 代男性。 仕事:地方自治体農林公社勤務 インフルエンザ脳症による両下肢不全麻痺。 機能的には,両松葉杖,AFO にて近位監視歩行 25 m 可能, 車いす ADL 自立。 雇用側は,職場復帰には積極的であり配置転換や職場の改造も 可能。ただし,事務所は 2 階にある。 問題点:事務所が 2 階であり,階段昇降が常に必要である。手す りは昇りの右側のみである。事務所内のトイレに行く場合に通 路が狭く,松葉杖歩行が行いにくい状況にある。本人の障害に 対する認識が薄く機能回復や復職に対して非常に楽観的である。 理学療法アプローチ:階段昇降練習,特に片手把持と杖をもっ て階段昇降を行う。杖なしまたは片ロフスト杖での歩行練習。 歩行持久力向上。早期からの本人との作業確認。(家庭訪問と 職場訪問) アプローチの結果:階段は両方に手すりを設置。事務職へ復 帰。当初は奥さんの介助あり。机の配置を考慮した。職場のト イレの改造。トイレまでの通路の確保。本人の病識などへの認 識の甘さから当初はかなり医療側は職場復帰に対して心配して いたが,実際に職場訪問を行い,本人・家族・職場とも相談し て確認と練習が行え,スムーズに復帰ができた症例である。こ のケースは,事前の患者側,雇用側,医療側での協議がいかに 重要かを示しているケースである。 2.整形疾患  急性期病院でもアプローチする機会が多いのが整形疾患であ る。しかし,機能的に改善するケースが多く患者側も医療側も 就労支援まで考慮せず退院となるケースが多いのも特徴であろ う。図 2 に腰椎椎間板ヘルニア術後の場合について,職場復帰 を考えるうえでの流れを示した。腰痛関係の場合,通常でも運 動の指導や日常生活での姿勢指導は,よく行われていることで ある。しかし,一歩踏みこんで職場での姿勢・動作の確認と分 析,指導といったことが十分になされていることは少ないので はないだろうか。我々,理学療法士は動作分析という手法を もっており,その技術を使用して上記のような就労・復職にお ける支援をすることは,けっして困難ではないと思われる。急 性期病院でも我々が行える就労支援のひとつではないだろう か。次に示す例は,整形疾患であり,急性期病院で復職に対す るアプローチを行ったが困難であった例を示す。 (症例 4) 40 代男性。仕事内容:大型車の整備 C4/5 での脊髄圧迫による上肢のしびれ,歩行障害(つま先歩 行),膀胱障害あり。椎弓形成術施行。その後,C5 領域の運 動麻痺出現。歩行・膀胱障害は術後改善。24 日間入院治療後, 外来移行になる(2 回/週)。筋力(MMT)はすべて 5 レベル に戻る。医師。作業療法士と相談し,復職は可能と判断し,本 人に雇用者側と相談するように指導した。その後,現職に職場 復帰となった。 職場復帰後,1 週間ほどで上肢の身体的負担の訴え出現し,本 人と雇用者側との相談があり外来でのリハを再開することと なった。8 週間週に 2 回外来にて施行した。その後,状態的に は職場復帰可能と医療側および本人が判断し,復職となった。 しかし,2 回目復帰後に 1 週間ほど勤務の後,技術的や環境な どの心理的ストレスがあり退職することとなった。 本症例では,①手術前より職場復帰が目標であった。②上肢の 筋力的な問題は発生したが,文献などにより回復は十分に行え 図 2 整形疾患(腰椎椎間板ヘルニア術後)

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る症例であり,実際にも回復がみられ特に問題とはならないと 考えられた。③術後の歩行・膀胱障害の改善により,職場復帰 は十分可能とみられた。④職場復帰に関しては,本人と雇用者 側との相談に任せていた。⑤本人の心理的ストレスに対しての 配慮が行えていなかった。などの点が挙げられる。また,④, ⑤に対して早期からの雇用者側を交えた職場復帰への話し合い や職場訪問といった手段が行えれば,良好な結果になったかも しれない。しかし,急性期病院であり職場訪問などが簡単に行 えないこと,術後に上肢筋力のトラブルは発生したが改善し, 術前よりも明らかに全身状態が改善して復職に特に問題がない 状態になっていることからスムーズな職場復帰が行えると判断 することは通常の対応であると思われる。 3.内部障害  急性期から社会復帰までひとつの病院で行っていた時期に は,中枢神経疾患や整形疾患が代表的な就労支援であった。現 在では呼吸器疾患や循環器疾患など内部障害系の疾患が理学療 法の対象として大きな割合を占めている。運動麻痺などの障害 はみられないが,耐久性など就労に対して様々な障害がみられ るために支援が必要な場合も多い。 1)呼吸器疾患 50 代男性 仕事:パン工場に勤務。 数年前から喘息症状が続いており,アレルゲンは小麦粉と判明 した。職場復帰に対して,マスクを常用することを指導し,発 作時の対処や体力強化,職場配置転換などの検討を行った。そ の結果,本人の意向もあり配置転換は行わず,呼吸法のトレー ニングや体力強化,体操などで職場復帰となった。その後もそ のまま勤務継続可能であった。  本症例は,就労時のアレルゲン対策と発作時の対処,様々な 体力強化を行い気管支喘息を封じこめた症例である。患者本人 が非常にまじめに取り組む性格であり,患者自身でも日々考 慮し工夫をしていたことも良好な結果に結びついたと考えら れる。  がんに対するリハビリテーションの診療報酬化が平成 22 (2010)年より開始された。そのことによりがん患者に対する リハビリテーションは身近になり進んでいる。がん患者の就労 支援を考える場合には,働きながら化学療法などの治療を行う 両立支援が問題となる。しかし,現在はがんリハビリテーショ ン料は入院時だけに対応しているため外来患者の場合は算定が できない。当院でも外来患者が復職のために治療の化学療法と 体力増強の運動療法を希望する場合があり難渋している。今後 の診療報酬の動きにも期待したい。 理学療法士はなにをすべきか  我々,理学療法士は障害をもつ患者の就労支援について基 本的になにをすべきかをまとめてみたい。①労働年齢の障害 をもった方や一時的に身体に支障を生じた方については,早 期から職場復帰や就労支援の可能性を考慮すること。②整形疾 患など急性期でも対応できる場合には,作業内容の確認や動作 分析を行いスムーズな職場復帰へと指導を行うこと。③早期の 職場復帰困難な場合や転職などが必要な場合は,すみやかに専 門の施設や行政へ紹介すること。④就労支援を必要とする人が もっとも適している方向性を的確にアドバイスできること。な どが重要と考える。その就労支援の流れを図 3 に示す。我々は 機能・能力障害を治療するプロフェッショナルであり,その知 識・技術を用いて障害をもった方を就労が行える機能・能力へ 改善させることは当然であるが,就労への流れをも理解してい ることが重要である。  我々理学療法士は,関節可動域や筋力などの医学的なアウト カムを求めたがる傾向にあるが,一般社会では理学療法により 復職や就労がどれだけできたかなどの結果がわかりやすく重要 とされやすいのではないだろうか。理学療法士が社会に貢献で きる職種として,今まで以上に受け入れられるためには,就労 支援の取り組みは非常に重要な分野になりうると考える。 文  献 1) 厚 生 労 働 省 ホ ー ム ペ ー ジ  障 害 者 雇 用 対 策.http://www. mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/ shougaishakoyou/index.html(2014 年 9 月 28 日引用) 2) 作業療法士協会保健福祉部(編):作業療法と障害者就労支援.作 業療法.2008; 27(5): 588‒598. 3) 全国労災病院リハビリテーション技師会(編):勤労者医療の実 際─リハビリテーション技術による健康増進と職場復帰支援─. 2007. 4) 日本障害者リハビリテーション協会:リハビリテーション研究. 1972; 6(4): 2‒19. 5) 古澤一成,徳弘昭博:医学的リハビリテーションと職業リハビリ テ ー シ ョ ン の 連 携 上 の 問 題 点.Jpn J Rehabil Med.2005; 42(1): 24‒29. 6) 国立吉備高原職業リハビリテーションセンターホームページ. http://www.kibireha.jeed.or.jp/(2014 年 9 月 30 日引用) 7) 独立行政法人労働者健康福祉機構吉備高原医療リハビリテーショ ン セ ン タ ー ホ ー ム ペ ー ジ.http://www.kibirihah.rofuku.go.jp/ (2014 年 9 月 30 日引用) 8) 近藤大輔,新谷さとみ:急性期における就労支援の現状と課題. 日本職業災害医学会会誌.2014; 62(臨時増刊号): 56. 9) 独立行政法人労働者健康福祉機構労災疾病等 13 分野研究普及サイ ト.http://www.research12.jp/(2014 年 9 月 28 日引用) 10) 豊永敏宏:職場復帰のためのリハビリテーション─第二次研究に 向けて─.日職災医誌.2010; 58: 214‒219. 11) 徳本雅子,甲斐雅子,他:脳血管障害リハビリテーション患者に おける早期職場復帰要因の検討.日職災医誌.2010; 58: 240‒246. 12) 豊永敏宏:脳血管障害の職場復帰モデルシステムの研究・開発 ─第二次研究の経過報告と課題─.日職災医誌.2013; 61: 367‒371. 図 3 就労支援の流れ

参照

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