2019 年 12 月現在、トルコで避難生活を送るシ リア難民は約 370 万人である。シリアは世界で最
も多くの難民を生み出している国であり、トルコ は世界で最も多くの難民を受け入れている国であ る。日本では、難民は難民キャンプで生活してい る、というイメージが強いようであるが、トルコ のシリア難民のうち難民キャンプで生活している 人たちは 1.7% に過ぎない。大多数の難民は、ト ルコの普通の街中で家を借りて生活している。難 民は自分たちで収入を得て、自活していかなけれ ばならないのである。トルコ政府は難民に対して 寛 容 な 政 策 を 取 っ て お り、 一 時 的 保 護 の 登 録 (Temporary Protection)を済ませれば、医療や教 育などの公的サービスに無償でアクセスすること ができる。その意味では、トルコで避難生活を送 るシリア難民の権利は、受け入れ国であるトルコ 政府によってある程度保障されているといえる。 しかしながら、難民が何の問題もなく生活でき ているかと言うと、必ずしもそうではない。一時 的保護の登録の方法を知らない、あるいは登録が 完了するまで何ヵ月も待たなければならないこと がある。そして、登録が完了しても言葉が通じな いため適切な医療を受けることができない、ある いは、トルコの公立学校への登録がスムーズに進 まないなど色々な問題が起きている。また、シリ ア難民は故郷からトルコに逃れてくる際に、家族 や親族などと離れ離れになるケースが多く、避難 先において知り合いがおらず、孤立した生活を送 る難民が存在する。加えて、トルコ社会がシリア 難民に向ける感情は年々険しくなっている。当会 が事務所を構えるトルコ南東部のシャンルウル ファ県においては、2018 年 9 月にシリア人がト ルコ人を口論の末に銃で殺害する事件が発生した ことにより、一部のトルコ人が暴徒化し、事件に 無関係のシリア人商店を襲撃する、あるいは、シ リア人の住居に投石するなどの事態に発展した。 そのような状況を踏まえ、AAR Japan はシャ ンルウルファ県にコミュニティセンターを設置し、 子どもと女性を主なターゲットとして以下の 3 点 を運営目的とした活動を実施している。
Show more
17
Read more