新型インフルエンザ対策の目的は、①国内での感染の拡大を可能な限り抑制し、健康被害の発 生を最小限に留めること、②流行の拡大によって、医療体制を含めた社会の機能や経済の活動を 破綻させないことの 2 点であることは当初から現在に至るまで一貫して変わっていません。保育 所は、新型インフルエンザが国内に侵入、発生した際には、集団感染の場となる可能性が高く、 臨時休業等の措置の検討の対象となると考えられます。一方、保育所は地域の労働力の確保の面 から平常時には重要な役割を担っており、新型インフルエンザが日本国内で発生した場合、当該 の地域での医療体制の確保や社会機能・経済活動の維持に果たすべきとして期待される役割は決 して小さくないと思われます。このように、新型インフルエンザ対策の 2 つの目的に対して保育 所が行うべき対応は相反するものとなる可能性が高く、おそらくこれは保育所の新型インフルエ ンザ対策にとって、今後とも大きな課題となってくるものと予想されます。実際に 2009 年の新 型インフルエンザの流行時には、保育所の対応は地域によって異なっていましたし、保育の現場 では混乱した印象を持った方々も少なくなかったと思われます。保育所は学校とは違って、感染 症の流行に伴って臨時休業を行う法的根拠は元々なく、季節性インフルエンザが集団発生した場 合でも保育所を休園することはありませんでした。一方、この新型インフルエンザ等対策特別措 置法が施行されることによって、地域の自治体の判断によっては法的根拠をもった保育所の臨時 休業が行われることになるかもしれません。しかし、新型インフルエンザ対策の根幹である 2 つ の目的のいずれを優先するのか、その判断は一律に決定できるものではありません。発生した新 型インフルエンザの病原性、感染伝播力、地域での患者の発生状況等を勘案して決定されていく べきでありまたその決定も状況に応じて適宜、的確に変更されていくべきであると思われます。
Show more
65
Read more