2019年度第3学期始業式式辞
おはようございます。そして、明けましておめでとうございます。生徒の皆さ んにとって2020年、令和2年の幕開けはどうですか。昔から「一年の計は元旦 にあり」と言います。皆さん、それぞれが決意や抱負をもって、気持ち新たにこ の場にいることと思います。
私自身は、今年も出会いを大切にした一年を過ごそうと考えています。昨年4 月に校長に就任して以来、今まで以上に実に様々な人たちと出会い、交流を持つ ことで視野を、自分の世界を広げてきました。世の中には立派な人が多くいるこ と、そして自分ももっともっと勉強しなくてはいけないと改めて実感しました。
生きることは学ぶことだと言われますが、今年も出会いからの学びの年にし たいと考えています。そんなことから、今日は「出会い」についての話をいたし ます。
皆さんも今までいろいろな出会いをしてきたことと思います。物心ついて初 めての出会いは、お母さん、お父さんをはじめ、ご家族だったことでしょう。そ の後、近所の幼馴染や、幼稚園や小学校に通うようになってからは、きっと気の 合う友達との出会い、そして先生との出会いもあったことと思います。そして穎 明館に入学しての中学・高校時代。友達、先輩や後輩などの出会いはもちろんで すが、「もう一人の自分」との出会いも経験したでしょうか。18世紀のフランス の思想家、ジャン・ジャック・ルソーはそのことを「第二の誕生」と呼びました。
「人間はいわば二度生まれる。一度目は生存するために。二度目は生きるため に」。生物的な誕生のあとに、自我に目覚める精神的な誕生を迎えるというわけ です。そして、自我が芽生えてからの中学・高校時代は青年期、ちょうどもう一 人の自分との対話の時期だとも言われます。「自分を見つめるもう一人の自分」
を意識していますか。上手にもう一人の自分とつきあいながら、大人になる、自 我同一性(アイデンティティ)を確立してくことが青年期、中学高校時代のテー マになります。20 世紀のアメリカの心理学者、エリクソンの主張です。自意識 過剰で、精神的なバランスを崩しやすいのも青年期特有のものです。自分が自分 ではなく、疎外感を感じたり、何かに流されたりしながら生きている不安定な気 持ちの人はいませんか。それは特別なことではありません。「もう一人の自分」
との出会いと対話を大切にしながら、人生の難しい時期を生き抜いてください。
さて、よくメディアに登場する人のお話の中に、自分に影響を与えた一冊の本 との出会いや学問や恩師との出会いなどが取り上げられることがあります。1学 期の終業式では、私にとっての 1 冊の本との出会いについての話をしました。
今日は、私にとっての学問・恩師との出会いを少し話したいと思います。
高校2年の時でした。「倫理・社会」(倫社)という表紙はオレンジ色の教科書 を手にして、中身をパラパラとめくってみたのが最初だったと記憶しています。
教室に登場したのは、小柄な男性の先生。いきなり話をこう切り出しました。「1 学期はキリスト教と寛容の精神、2学期は社会契約説、3学期は認識論をテーマ に授業を行う。「試験は論文形式で私見を問う」。
………私にとって社会科の勉強というのは、「とにかく覚えまくって定期試験で 吐き出すもの」と思っていましたから、正直、面食らいました。それでも授業が 始まってみると、その先生の深い教養に支えられた、時にユーモアもある説明に、
すぐに惹かれていったことを思い出します。授業では先生の一言一句を漏らさ ずに聞こうと努力しました。今でも高校時代の倫理社会のノートを持っていて、
先日、久しぶりに開いたら、先生が授業中に飛ばしたギャグまでメモをしていま した。そんな様子ですから、論文試験では少しでも高い評価をもらいたくて、紹 介された関連図書を読んだり、成績優秀な友達に聞いたりして一所懸命に勉強 しました。それでも、なかなか自分の考えが深まらず、まとまらず、試験の出来 もいつも人並みでした。悔しかったですね。ただ、最後の試験で少しだけいい評 価をもらい、先生が「橋本、よかったよ」と笑顔で言ってくれたのは、よく覚え ています。その後、大学の文学部で哲学や思想を学び、教育実習では母校で、や はりその先生にお世話になりました。長く年賀状のやりとりが中心でしたが、数 年前に母校でキャリア教育の講演を頼まれ、再会できたことは幸運でした。昨年 の年賀状で退職されたことを知りましたが、先生の教えは私の中で生き続けて います。何よりも穎明館で長く倫理の授業を担当させていただくことになった のは、高校2年、倫理社会、その先生、恩師との出会いがきっかけであり、人生 は出会いだなあと実感する次第です。
学問、恩師との出会いについて、私の経験を少し話しました。自分のことを話 すのは照れ臭いものです。それでも皆さんに少しでも身近に、何かを感じてもら えればと思い、なるべく紹介しようと心がけています。皆さんにもきっと後から 考えると、自分の人生を変えるような学問、恩師、スポーツ、旅、一人の友人・
親友、一冊の本、一曲の歌、一枚の絵、一本の映画・ドラマ等々、との出会いが あるかもしれない。いやきっとあると思います。ただ、漫然と受け身であるより は、自分から動く、少しでも興味・関心のあるものを深めていこうという姿勢の ある方が、出会いの確率は高まるはずです。そう考えると、日々の授業、学校生 活は出会いの宝庫です。先生方が、皆さんを魅力的な知の世界に導いてくれるか らです。私は先日、二学期の終業式で「三流 二流 一流」の話をしました。穎 明館では生徒も先生も一流を目指そうと呼びかけました。授業をはじめ、学校行 事・部活動で一流を目指す営みの中にきっとかけがえのない出会いが待ってい ると思います。書道家の相田みつをさんに、「その時の出逢いが 人生を根底か ら変えることがある よき出逢いを」という作品があります。また、「人は出会 いによって花を咲かせ、その縁によって実を結ぶ」という言葉もあります。生徒 の皆さん一人ひとりの人生を豊かにしていくような、よりよき出会いがあるこ とを心より願っています。今日は新年にあたり、「出会い」について話しました。
さて、6 年生の皆さん、いよいよセンター試験から始まる大学受験本番です。
現役生は受験当日まで伸びる。高校棟 3 階のメッセージボードに寄せられた後 輩、下級生の心温まる激励の言葉をはじめとして、穎明館全体で皆さんのことを 応援しています。大切なのは「克己」、自分に打ち克つことです。33期生一人ひ とりが強気で挑戦し、目標を実現することを信じて疑いません。受験勉強、大学 受験を通じて、人間的に成長して穎明館から巣立っていく 33 期生の皆さんを、
私は最後までしっかりと見守っていきたいと思います。頑張ってください。
そして穎明館生の皆さん、新年を迎えましたが、学校は3学期、年度の締めく くりの時期でもあります。学年のはじめにたてた目標実現に向けての努力を続 け、先生方からの日々の指摘や注意事項をしっかりと守って、次の学年、新たな 段階への準備をしてください。成長を期待しています。
高尾の冬は寒いです。インフルエンザ・風邪の予防に努め、健康と安全に十分 注意し、3学期も充実した学校生活を送りましょう。
以上、令和元年度3学期始業式の式辞といたします。