2 . 集合に関する基本と 全称命題・存在命題
科目: 基礎数学A及び演習(演習)(2‐1組)
担当: 相木
このプリントの本題は全称命題と存在命題を解説することである.そのためにまず,
命題関数というものを導入する.
命題関数
前回のプリントで命題とは,真偽がはっきりしている主張であると定義した.一方で,
我々は実数値関数f(x)のように「xを決めるごとに値が定まる」という性質を持ったも のを扱うこともある.命題に対しても似たような対応物を導入すると応用上便利である.
その準備として集合という概念を定義する.
集合
集合とはものの集まりである.例えば (i) 自然数全ての集まり
(ii) 自動車全ての集まり (iii) 正の偶数全ての集まり
などはそれぞれ集合である.厳密なルールではないが,集合に記号をあてる際には大 文字のアルファベットを使うことが多い.例えば,
全ての自動車の集合をSとおく
などと言ったり,中身を指定せずに「集合」というものを抽象的に扱う際には Xを集合とする
などと説明を始めることが多い.
トしたものは,本授業においても断りなく使ってよい.
よく使う集合
N:全ての自然数の集合 Z:全ての整数の集合 Q:全ての有理数の集合 R:全ての実数の集合 C:全ての複素数の集合
なお,人や本によっては上の表記以外にN,Z,Q,R,Cというフォントを使う場合もあ るが,アルファベットと集合の対応は同じである.Nという白抜きのフォントは紙や 黒板に書く際に書きやすくするために作られた記号である.この授業ではどちらを用 いて書いてもよいが,白抜きのフォントの方が他の文字とはっきり区別が着くと思う.
集合の要素
集合Xが与えられたとき,Xに入っているもの1つ1つを集合Xの要素,あるいは 元(げん)という.
また,集合Xに対してxがXの要素であることを x∈X
と表し,xはXに属すという.必要に応じてX ∋ xと,書く順番を入れ替えること もあるが,意味は同じである.
ある集合の要素がなにであるかは当然,集合によって異なる.例えば,集合Nの要素 は1や2などの数であるし,Rの要素には1,1.3,√
2などの数が含まれる.また,数 であるとも限らず,例えばアルファベット全体の集合においては要素はaやbなどの アルファベットである.
集合に関しては,次回のプリントでより詳しく解説する.今回は全称命題と存在命題を説 明するために必要最低限のことのみ記載した.
ここまで準備したところで,命題関数の定義をする.
命題関数
Xを集合とする.Xの要素xを1つ決めるごとに,xに依存した主張P(x)が命題に なっているとき,P(x)のことをXに関する命題関数という.
具体例を使ったほうが感覚的に分かりやすいと思うのでいくつか例を挙げる.
例1) 自然数の集合Nに対してP1(x)を
xは偶数である
という主張で定めると,P1(x)はN に関する命題関数になっている.実際,1や4など,
x∈Nを1つ決めるごとにそれが偶数であるか否かははっきり決まるので,xごとにP1(x) は命題になっている.
例2) 実数の集合Rに対してP2(x)を
xは奇数である
という主張で定めると,P2(x)はRに関する命題関数 ではない.なぜなら1.4など,整数 でない数に対しては偶数,奇数という概念は定義されていないため,このようなx ∈ R に対しては「xは奇数である」という主張は真偽を決めることができない.したがって,
命題になっていない.考える集合をRからNに替えて考えた場合,P2(x)はNに関する 命題関数にはなっている.
例3) 実数の集合Rに対してP3(x)を x≤0
という主張で定めると,P3(x)はRに関する命題関数である.
注意: 命題関数を定義する際に,P(x)のように「変数」にあたるものをxに統一して記載 したが,xでなくてはならない訳ではない.基本的には,どのような記号を用いてもよい.
全称命題
命題関数を用いて定義される重要な命題に全称命題というものがある.
全称命題
Xを集合とし,P(x)をXに関する命題関数とする.このとき,
Xの全ての要素xに対してP(x)は真である
という主張は命題であり,このような形式の命題を全称命題とよぶ.上の全称命題を 省略して
∀x∈X, P(x)
などと表す.ここで,∀は全称記号と呼ばれる記号で,口頭で読み上げる際には
∀x∈X
は,「Xに属す全てのx」あるいは「Xに属す任意のx」などと読む.
これも例を挙げよう.
例4) 「全ての自然数は実数である」という命題を全称命題を用いて表すと
∀x∈N, x∈R
となる.上の表現法では「xは実数である」というNに関する命題関数を「x∈R」で表 している.
存在命題
もう1つ重要な命題として存在命題というものがある.
存在命題
Xを集合とし,P(x)をXに関する命題関数とする.このとき,
Xの要素xでP(x)が真となるものが少なくとも1つ存在する
という主張は命題であり,このような形式の命題を存在命題という.上の存在命題を 省略して
∃x∈X, P(x) あるいは
∃x∈X s.t.P(x) と表す.ここで,∃は存在記号と呼ばれる記号で,
∃x∈X
は,「あるXの要素x」あるいは「Xの要素xが存在して」などと読む.
また,s.t.は such that の略で,英語で「〜を満たす」といったニュアンスで用いら
れている.
例5) 「実数には少なくとも1つ整数が存在する」という命題を存在命題を用いて表 すと
∃x∈R, x∈Z となる.この命題は真であるが,これを全称命題
∀x∈R, x∈Z にすると偽な命題になる.
全称命題
∀x∈X, P(x)
は「全てのxに対してP(x)が真である」ということであった.この命題が「成り立たな い」ということは
P(x)が偽であるようなxが少なくとも1つある ということである.これは,
¬P(x)が真であるようなxが少なくとも1つある という意味なので,存在命題
∃x∈X, ¬P(x) に他ならない.
全称命題の否定
Xを集合とし,P(x)をXに関する命題関数とする.全称命題
∀x∈X, P(x) の否定命題は
∃x∈X, ¬P(x) である.
同様にして存在命題
∃x∈X, P(x)
は「P(x)が真であるようなxが少なくとも1つ存在する」という意味だったので,この 主張を否定すると
P(x)が真であるようなxは1つもない ということになり,これは言い換えると
全てのxに対してP(x)は偽である となるので,全称命題
∀x∈X, ¬P(x)
である.
存在命題の否定
Xを集合とし,P(x)をXに関する命題関数とする.存在命題
∃x∈X, P(x) の否定命題は
∀x∈X, ¬P(x) である.
以上の考察から全称命題および存在命題の否定を作る際のパターンとして (i) ∀を∃に,∃を∀にそれぞれ置き換える
(ii) 結論となる命題関数をその否定命題で置き換える
となっていることが分かる.このように覚えれば機械的に否定命題を構成できるので便利 であるが,元の命題が複雑になると必ずしも明らかではないので,慣れるまでは命題の意 味をしっかりと考えて否定命題を作ることをおすすめする.
予約制問題
(2-1) 以下の命題の意味を述べ,その真偽を判定せよ.
(i) ∀x∈R, x∈N (ii) ∀x∈Z, x∈Q
(2-2) 以下の命題の意味を説明し,その否定命題を書け.
(i) ∃x∈N,0< x
(2-4) 以下で与えれられるP(x)がRに関する命題関数になっているか理由と共に述べよ.
P(x) : x2 <0
早いもの勝ち制問題
(2-5) 以下の命題の意味を述べ,その真偽を判定せよ.
(i) ∃x∈R, x∈N (ii) ∃x∈Z, x∈N
(2-6) 以下の命題の意味を説明し,その否定命題を書け.
(i) ∃x∈Z,−1≤x <3 (ii) ∀x∈N, x∈Z
(2-7) 存在命題を用いて以下の命題を表現せよ.
負の実数は少なくとも1つ存在する
(2-8) 以下で与えられるP(x)がCに関する命題関数になっているか理由と共に述べよ.
P(x) : x >0