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CSR経営を進めることで 外国人持ち株比率は上昇するか

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(1)

CSR 経営を進めることで

外国人持ち株比率は上昇するか

―パネルデータ分析による検証―

上智大学経済学部経済学科

森洋介

2016 1 27

(2)

概 要

バブル経済崩壊以降、日本の株式市場において外国人投資家の 参入が進んでいる。外国人投資家は一般的に、コーポレート・ガバ ナンス、人材活用への取り組みや環境経営といったCSR活動を重 視する傾向がある。そのようなことから、政府として、外国人投資 家のさらなる株式市場参入のため、企業のCSR経営の推進を押し 出している。本研究では、『CSR企業ランキング』(東洋経済新報 社)のデータをもとに、企業の「人材活用」「環境」「企業統治+ 会性」の指標が外国人持ち株比率に与える影響をパネルデータ分析 により検証を行った。また、本研究の特徴として、CSR活動に関し て単一の要素だけでなく、複数の変数をモデルに導入し、CSR経営 と外国人持ち株比率の関係について、分析をした点が挙げられる。

 分析の結果、「人材活用」「環境」「企業統治+社会性」の3つの 指標すべてにおいて、外国人持ち株比率に正の影響があることがわ かった。また、特に「人材活用」「企業統治+社会性」に対する取り 組みに関して、外国人投資家が関心を持つことが判明した。

キーワード:CSR、外国人投資家、外国人持ち株比率、パネルデータ 分析、人材活用、環境経営、企業統治

(3)

目 次

1 はじめに 1

2 先行研究 2

3 研究の目的 3

4 実証分析 3

4.1 利用データ . . . . 3 4.2 推定方法 . . . . 8 4.3 推定結果 . . . . 9

5 おわりに 11

表 目 次

1 外国人持ち株比率の平均と標準偏差 . . . . 5 2 基本統計量 . . . . 7 3 推定結果 . . . . 10

図 目 次

1 外国人持ち株比率の推移 . . . . 4

(4)

1 はじめに

近年、不正会計問題や、製品データ改ざん、経営権をめぐるお家騒動 など企業体制に関わる問題が多く生じている。このようなことが起こる 要因の一つとして、脆弱なコーポレート・ガバナンス(企業統治)が考え られる。1990年代後半以降、コーポレート・ガバナンスに対して、世界 的に関心が高まってきている。特に、日本において、バブル崩壊後、金 融機関の過剰債務問題などに伴い、コーポレート・ガバナンスが注目さ れるようになった。企業のコーポレート・ガバナンス強化への取り組み は、投資家含め、企業経営において重要な要素の一つとなっている。 

 バブルの崩壊以降、株式の持ち合いが少なくなり、企業同士で保有さ れていた株式が市場に放出されるようになった。株式市場に放出した株 式を、外国人投資家が積極的に購入することで、日本企業の株主の国際 化・多様化が進んできている。また、経済活動のグローバル化に伴って、

日本企業の株式保有構造が大きく変化している。以前の株式の持ち合い が多い状況下では、経営者が株主の利益に注意を払う必要性は低かった。

つまり、株主利益のための効率的な経営を行うインセンティブは現在よ り小さかったと考えられる。しかし、株式持合いの解消や、外国人株主 の比率が増加することで、投資先企業に対して、株主利益を重視した経 営をするように圧力がかかるようになった。このような背景から、外国 人株主が求める、非財務諸表の開示などの透明性の高い経営を行うため、

コーポレート・ガバナンス改革に積極的に企業が取り組むようになった。

このように外国人投資家のプレゼンス向上がもたらす影響は大きい。そ のようなことから、外国人持ち株比率と企業パフォーマンスの関係につ いて分析した研究が多く行われている。多くの既存研究では、外国人持ち 株比率と企業パフォーマンスには正の相関があることを示している。反 対に、外国人投資家は高パフォーマンス企業の株式を好んで選択する傾 向があることを示しているだけという見方もある。しかし、宮島・新田

(2011)は、外国人投資家が業績の良い企業を選好するという逆の因果関 係も考慮した推計を行った上でもなお、外国人投資家は企業価値を上昇 させると述べている。また、海外投資家保有比率が上昇することで、経 営の規律付けに繋がり、取締役会の改革や適切な経営・組織戦略の採用 が促されると示している。 

このように日本企業において、外国人持ち株比率を上昇させることは 企業において正の影響があると考えられている。そのようなことから、現 在、政府として、外国人投資家の日本の資本市場参入を促進させるため

(5)

に、コーポレート・ガバナンスの強化だけでなく様々なことに取り組ん でいる。多様な人材の活用の推進、環境経営の後押しなどである。この ような取り組みをCSR(corporate social responsibility : 企業の社会的責 任)1と呼ぶ。そのための具体的な手段として、女性取締役数の拡大といっ たダイバーシティ推進、社外取締役の導入や独立性の強化などがあげら れる。このような施策によって、日本の資本市場への外国人投資家の参 入を進めようとしている。本研究は、政府として推進している、CSRに 対する取り組みが外国人持ち株比率に与える影響について分析を行って いく。 

以下の構成は次の通りである。次節では先行研究についてサーベイす る。第3節では本研究の目的について述べる。第4節は、パネルデータ 分析についての説明と、実証分析の結果である。第5節は、全体のまと めである。

2 先行研究

企業のCSRに関わる取り組みと外国人持ち株比率の関係を取り扱った 研究については、下記の通り様々な研究が行われている。

まず、児玉・高村(2014)では、非財務情報の開示が外国人投資家の保 有比率に影響を与えるのかについて、パネルデータ分析により検証して いる。そして、特にリーマンショック後、非財務情報の開示企業では外国 人保有比率が高まっていることを示した。

このようにCSR経営が外国人持ち株比率に正の影響を与えると述べる 先行研究がある反面、影響がないことを示す研究もある。亀山翔平・河 本絵梨子・北原成憲・杉浦智史・近岡知美(2010)は社外取締役の導入と 外国人投資家の関係について検証している。その結果、社外取締役を導 入することに外国人持ち株比率を上昇させる効果がないことを明らかに した。

以上のように、CSR経営と外国人持ち株比率の関係は指標ごとに異な る結論が示されている。

1持続可能な発展のための世界経済人会議(World Business Council for Sustainable

Development)は、「CSRとは持続可能な経済の発展、従業員の労働、その家族、地域

社会と全体としての社会に生活の質を改善するために貢献する企業の関与である」と定 義している(WBCSD,1999)また、金原・村上(2015)は、CSRは論者によって少し ずつ定義が異なると、述べている。そして、「企業が環境保全、社会的公平性や従業員 の雇用において社会に期待される機能を果たしつつ、社会的存在として正当性を得るた めに求められる責任のこと」と定義している。

(6)

3 研究の目的

前章で述べたように、既存の研究では、CSRの一つの項目に注目して、

実証研究を行っている。例えば、社外取締役の導入や非財務情報の開示 などを変数におき、分析している。しかし、CSRに対する取り組みは人 材活用・環境経営・企業統治など多岐にわたる。そのようなCSRの取り 組みに対して、横断的に考慮した分析は行われていない。

そこで、企業のCSR経営について幅広く考慮して、指数化したデータ を掲載している『CSR企業ランキング』(東洋経済新報社)がある。こ こでは、「人材活用」「環境」「企業統治・社会性」2の項目ごとに個別企業 の取り組み具合を数値化しており、本研究ではこのデータを使用するこ とで、CSRに対する取り組みと外国人持ち株比率の関係について検証を 行う。以下では、これらのデータをまとめてCSRスコアと記す。また、

データについての詳細な説明は次章で述べている。

本研究の目的は、企業が人材活用・環境・企業統治に取り組むことで、

外国人投資家に注目されるのかを検証することである。つまり、上記の CSRスコアと外国人持ち株比率の相関を分析することである。本研究を 行うことで、外国人投資家が財務面だけではなく、CSR経営についても 関心を持っているのかどうかを明らかにできると考える。また、その中 で、どの要素を重視しているのか検証することを目的としている。以上 を通じ、外国人投資家の日本の株式市場参入の推進に視点を置いた、政 策立案に役立つことができれば幸いである。

4 実証分析

4.1 利用データ

実証分析を行うにあたって、まず利用するデータについて概観する。

本稿で使用するデータは、CSRに関連するものは、『CSR企業ランキン グ』(東洋経済新報社)から2011年度から2015年度のデータを使用し、企 業の所有状況と各種財務変数については「日経NEEDS財務データ」(日 本経済新聞社)より取得した。「日経NEEDS財務データ」は上場企業に ついては有価証券報告書等の開示情報をベースに収集したデータを保持 する。

2それぞれのスコアについて、以下では、人材活用スコア・環境スコア・企業統治ス コアと記す。

(7)

両者はパネルデータであり、両者が共通して保有する証券コードを利 用して接続させることで、CSRスコアと財務情報の双方を持つ企業パネ ルデータを構築した。本研究では、こうして構築した725社の2011年度

〜2015年度3のパネルデータを用い、CSR経営の取り組みが外国人持ち 株比率に与える影響について分析を行う。被説明変数は外国人持ち株比 率、説明変数はCSR経営の取り組み具合を表す指数である、人材活用・

環境・企業統治+社会性の3変数と財務状況等を表す指数である、ROE・ 負債比率・自己資本配当比率・総資産の4変数の計7変数である。

まず、外国人持ち株比率の推移について確認する。図1は対象企業の外 国人持ち株比率の各年の推移を表している。今回分析の対象とする2011年 度〜2015年度の外国人持ち株比率の推移を見ると、年々上昇していること がわかる。特に2011年度から2013年度にかけて、16.34%から19.74%に 上昇しており、外国人投資家が日本の株式市場に大きく参入しているこ とがわかる。

図 1: 外国人持ち株比率の推移

0.00%

5.00%

10.00%

15.00%

20.00%

25.00%

2011 2012 2013 2014 2015

3総観測値数:2917

(8)

表 1: 外国人持ち株比率の平均と標準偏差

年度 2011 2012 2013 2014 2015 対象企業数 562社 564社 570社 601社 620社

平均 16.34% 17.16% 19.74% 21.15% 21.25%

標準偏差 0.1275 0.1336 0.1472 0.1443 0.1355

次にCSRに関連するデータについてである。『CSR企業ランキング』

では、「CSR調査」(東洋経済新報社)をもとに、「人材活用」「環境」「企 業統治・社会性」の項目ごとに企業ランキングを作成している。例えば、

2015年調査の「CSR調査」では全上場企業・主要未上場企業3630社を対 象に調査票を送付し、回答結果等をもとに1325社のCSRデータを取り まとめている。この調査データを使い、「人材活用」「環境」「企業統治・

社会性」の分野別に評価を行っている。そして、評価項目はすべてアン ケート調査により行われており、各評価項目は以下で述べる。評価方法 は原則として全項目加点方式で、「人材活用」「環境」「企業統治・社会性」

のそれぞれを100点満点として指数化している。また、それぞれの項目 のトップ企業を100点に調整し、データを作成している。そして、掲載 企業は各年度ランキング上位の700社である。

人材活用スコア:企業の人材活用の推進具合を指数化している。評価項 目として、外国人管理職の有無・女性管理職比率・男性の育児休業取得 率・LGBTへの対応などがある。係数は正になると推測される。

環境スコア:企業の環境に対する取り組み具合を指数化している。評価 項目として、環境担当部署の有無・気候変動への対応の取り組み・CO2 排出量等削減への中期計画の有無・環境会計の有無などがある。係数は 正になると推測される。

企業統治+社会性スコア:企業の企業統治への取り組みや社会性につい て指数化している。中長期的な経営理念・内部監査部門の有無・CSR方 針の文書化の有無・ESG情報の開示などがある。係数は正になると推測 される。

 次に各種財務変数についてのデータについて述べる。本稿で使用した ものは、ROE・負債比率・自己資本配当比率・総資産である。それぞれ

(9)

について以下にまとめる。

ROE(株主資本利益率/%)4:企業の収益性を測る指標であり、当期純 利益/株主資本で表される。ROEが高ければ効率的な経営を行っている 企業と判断できる。投資家の需要を表す指標の一つとされている。係数 は正になると推測される。

負債比率(%):負債総額/自己資本で表される。負債比率が低いほど 企業の安全性が高いと判断できる。係数は負になると推測される。

自己資本配当比率(%):株主資本に対して企業がどれだけの利益を配 分しているかを表す指標であり、年間配当金/株主資本で表される。外 国人投資家は配当による株主還元を重視すると考えられるため、係数は 正になると推測される。

総資産(千億):一般的に企業規模を表す指標である。企業規模が大き な企業ほど多くの外国人投資家に認識されていると考えられるため係数 は正になると推測される。

 本研究では以上のデータを用いて分析を行う。また、分析対象となる データの基本統計量は、表2のようになる。

そして、本稿では、金融機関を除いた5『CSR企業ランキング』を使用 している。そして、財務データの取得ができない理由から、非上場企業 を除いて分析を行っている。そのため、分析結果に、ある程度のバイア スが生じる可能性があり、その点に留意が必要である。

4括弧内は単位を示す

5金融機関は金融機関のみを対象にした、『CSR企業ランキング』が存在する。そこ では、金融機関上位30社が記載されている。

(10)

表2:基本統計量 対象期間2011年度2012年度2013年度2014年度2015年度 平均値標準偏差平均値標準偏差平均値標準偏差平均値標準偏差平均値標準偏差 外国人持ち株比率(%)16.340.1317.160.1319.740.1521.150.1421.250.14 人材スコア(点)54.370.7756.920.7560.880.7864.750.7365.370.70 環境スコア(点)62.570.8761.230.9065.130.9265.700.8667.050.83 企業統治+社会性スコア(点)64.240.7264.640.7768.560.7670.440.6972.210.65 ROE(%)4.460.395.010.527.560.277.580.327.470.32 負債比率(%)144.546.50137.106.57124.404.38120.344.32121.184.06 自己資本配当比率(%)2.160.062.100.052.150.062.200.062.460.10 総資産(千億)6.830.636.690.657.180.697.810.738.080.76 サンプルサイズ562564570601620

(11)

4.2 推定方法

先にも述べたように、先行研究では、パネルデータ分析を用いて、実 証分析を行うケースが多い。そこで、本研究でも先行研究にならって、パ ネルデータ分析を用いた分析を行う。そこで、本節では、パネルデータ の3つの推定方法である、プーリング推定(pooling model)・固定効果モ デル(fixed effects model)、変量効果モデル(random effects model)の 説明と、パネルデータ分析を行う利点について述べる。

はじめに、パネルデータ(panel data)について説明する。複数の経済 主体のデータを、同一時点において集めたものをクロスセクションデー

タ(cross section data)と呼ぶ。同一経済主体について、複数時点のデー

タを集めたものを時系列データ(time series data)と呼ぶ。これを組み 合わせたもの、つまり、複数の経済主体について、複数時点のデータを 集めたものをパネルデータという。そして、すべての個別主体について すべての時点のデータがそろっている場合、バランスしたパネルデータ

(balanced panel data)と呼ぶ。ある個別主体について一部のデータが欠

けている場合、アンバランスなパネルデータ(unbalanced panel data)と 呼ぶ。本研究では、『CSR企業ランキング』に掲載されている企業を抽 出してデータを作成したため、企業の合併や上場廃止などにより一部の データが欠如しているためアンバランスなパネルデータを用いた分析を 行う。

まず、個々の分析主体についての異質性を無視したプーリング推定は 以下の(1)式によって表される。

yit=α+Xitβ+uit (1)

ここで、iおよびti= 1,2,3, . . . , N ;t= 1,2,3, . . . , T)は個別主体と時 系列観測値を表すインデックスである。また、yitは被説明変数ベクトル であり本稿では外国人持ち株比率である。xitは前節で述べた、説明変数 を包含する説明変数ベクトルである。また、uitは誤差項である。 

次に固定効果モデルと変量効果モデルついて述べる。回帰式は以下の (2)式によって表される。

yit =Xitβ+µi+ϵit (2)

(12)

ただし、ϵitは誤差項であり、ϵitiid(0, σ2)である。ここでµiは観測不可 能な経済主体固有の効果を表す個別効果である。個別効果µiを固定的な ものと考えるのが固定効果モデル、確率変数として扱うのが変量効果モ デル6である。

以上がパネルデータの3つの推定方法である。次にパネルデータ分析 を行う利点について述べる。

第1に、経済主体間の異質性などをコントロールできることである。個 別効果を推定モデルにおくことで、時間を通じて一定な観測不可能な個 別的属性に考慮した分析を行うことができる。具体的に、企業の経営資 源などが個別効果に含まれると考えられる。また、日本企業と外資系企 業では外国人持ち株比率に大きな差が生じると考えられるため、本研究 においてパネルデータ分析を採用するメリットは大きい。

第2に、標本数が増えることである。クロスセクションでの分析と比 べ、複数年のデータを使用することで、標本の大きさが増えるため、推 計上の自由度が増し、推計の不偏性が向上する。

以上のような利点が挙げられる。

4.3 推定結果

本節では、前節で述べたパネルデータの3つの推定を行った。推定結 果は次ページの表3の通りである。

モデル選択のための検定結果をみると、F検定7・ハウスマン検定(Haus- man検定)8から固定効果モデルが推奨されることがわかる。表3の(2)か

ら1%水準で有意な変数が人材活用・企業統治+社会性・ROE・負債比率・

総資産、5%水準で有意な変数が環境であることが確認できる。また、係

6変量効果モデルでは、µiを確率変数として、E(µi) = 0と仮定する。そして、µi 説明変数xitは無相関である。つまり、Cov(µi, xit) =E(µixit) = 0である。そして、

µiと説明変数xitに相関があるとき、つまり、Cov(µi, xit) = E(µixit)̸= 0であれば、

固定効果モデルとなる。

7経済主体ごとの個別効果の有無に関する検定である。帰無仮説と対立仮説は次のよ うに設定される。

H0 :µ1=µ2=· · ·=µn

H1 :µ1̸=µ2or µ2̸=µnor· · · or µ(n1)̸=µn

8固定効果モデルと変量効果モデルの選択に関する検定である。E(µixit) = 0であれ ば、変量効果モデルが選択され、E(µixit)̸= 0であれば、固定効果モデルが選択され

(13)

表 3: 推定結果

(1) (2) (3)

Model Pooling Fixed Random

人材活用スコア 0.0017*** 0.0011*** 0.0012***

(8.907) (8.656) (1.835)

環境スコア 0.0010*** 0.0003** 0.0005***

(6.685) (2.006) (9.701)

企業統治+社会性スコア 0.0006** 0.0009*** 0.0009***

(6.685) (5.170) (3.676)

ROE 0.0017*** 0.0006*** 0.0007***

(6.330) (4.527) (5.594)

負債比率 -0.0001*** -0.0001*** -0.0001***

(-5.180) (-3.792) (-3.849) 自己資本配当比率 0.0190*** 0.0006 0.0026***

(14.660) (0.756) (3.382)

総資産 0.0013*** 0.0006** 0.0010***

(9.393) (2.552) (5.725)

F test 0.0000

Hausman test 0.0000

R2 0.3425 0.1221 0.1883

対象企業数 725 725 725 観測値数 2917 2917 2917

***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%水準で有意であることを示す。

()内はt値を表す。

下段の2つの検定項目にはP値を報告している。F検定の帰無仮説に対応するモデルは プーリング推定、Hauman検定の帰無仮説に対応するモデルは変量効果モデルである。

(14)

数が正に有意なものが、人材活用・環境・企業統治+社会性・ROE・負 債比率・総資産、5%水準で有意な変数が環境であることが確認できる。

そして、係数が正に有意なものが、人材活用・環境・企業統治+社会性・

ROE・負債比率・総資産であり、係数が負に有意なものが負債比率であ る。各変数において予想された係数と同様の結果になった。そして、本 研究において最も注目すべき項目は企業のCSR経営に対する取り組み具 合を表す、人材活用・環境・企業統治+社会性の項目である。それぞれの 値は、人材活用スコアは0.0011、環境スコアは0.0003、企業統治+社会性

スコアは0.0009である。このことから、外国人投資家は企業の環境への

取り組みに比べ、人材活用と企業統治・社会性により大きな関心を持って いることがわかる。

5 おわりに

本稿では、CSR経営を進めることで外国人持ち株比率は上昇するのか、

というテーマについて、パネルデータ分析を用いて実証分析を行った。先 行研究と比較して、企業のCSR活動について単一の指標でなく、総合的 に取り組み度合いを指数化した『CSR企業ランキング』を使用し、分析 を行った点が本研究の特徴であるといえる。

得られた結論は、第1に、外国人投資家はROEや総資産など企業の財 務面に対して関心を持つこと、第2に、CSR経営に積極的に取り組んで いる企業ほど、外国人持ち株比率が高くなる傾向があることである。そ して、先にも述べたよう、外国人投資家は企業の環境への取り組みに比 べ、人材活用と企業統治・社会性により大きな関心を持っていることが判 明した。これは環境への投資はリターンが長期的なものになり、短期的 な成長においては効果が小さいのが理由だと考えられる。現在、世界的 に、環境問題や社会の持続的な発展に対して、関心が高まっている。し かし、人材活用や企業統治などに比べ、投資家の関心は以前低いままで あるということがわかる。

以上のことから、政府として、CSR経営推進を押し出していくことで

る。ハウスマン検定では、帰無仮説と対立仮説が次のように設定される。

H0 :E(µixit) = 0 H1 :E(µixit)̸= 0

つまり、帰無仮説に対応するモデルが変量効果モデルである。

(15)

外国人持ち株比率が上昇する可能性が高いことがわかった。特に、女性 取締役を増やすなどの人材活用面での改革や、社外取締役の導入の促進 などを政策目標にすることで、外国人持ち株比率が上昇することが考え られる。また、環境経営の推進は、他の2つに比べ、外国人持ち株比率 という観点からは効果が見込めないものの、環境への取り組みは、社会 の持続的な発展から欠かせないものであるだろう。

以上が本稿の分析を通じて得られた結果である。最後に、本稿で十分 に検討できなかった問題は次のような点である。

第1は、分析対象企業に歪みが生じている点である。本研究では、『CSR 企業ランキング』を用いて、分析を行った。そこでは、CSRに対する取 り組みの各年度上位700社しか掲載されていない。また、金融機関はラ ンキング対象外となっており、そして、財務データ収集の点から、上場 企業で非金融機関のみを対象とした分析となった。そのため、標本設定 時脱落の問題が生じている。

第2は、推定モデルでの内生性の問題である。CSRに対する取り組み と外国人持ち株比率は相互依存関係を持つため、内生性を考慮した分析 をする方が望ましい。外国人持ち株比率が高いことが理由に、CSRに対 する取り組みが促進されるという、逆の因果関係が存在することが考え られるからである。本研究では、外生変数であるCSRスコアから、外国 人持ち株比率への因果関係しか示していない。そのため、推定結果にバ イアスが生じてしまう可能性がある。この問題に対して、説明変数であ るCSRスコアを内生変数として扱う操作変数法を用いる推計を行うこと で望ましいだろう。

以上の点については今後の課題としたい。

(16)

参考文献

[1] World Business Council for Sustainable Development(1999).Meeting Changing Expectations: Corporate Social Responsibility,WBCSD [2] 金原達夫・村上一真(2015)「CSRは環境経営移転を促進するのか?」

『修道商学』第56巻1号:119-138.

[3] 亀山翔平・河本絵梨子・北原成憲・杉浦智史・近岡知美(2010)

「社外取締役の導入は外国人投資家を引きつけるのか―政府の主張の 検証―」早稲田大学.

[4] 北村行伸(2005)『パネルデータ分析』岩波書店.

[5] 児玉直美・高村静(2014) 「非財務情報の開示と外国人投資家によ る株式保有」,RIETI Discussion Paper Series,14-J-054.

[6] 田中勝人 「パネル・データの分析」,

<http://www-cc.gakushuin.ac.jp/ 20130021/ecmr/panel.pdf>

2017年1月27日アクセス.

[7] 羽森茂之(2009)『ベーシック計量経済学』中央経済社.

[8] 宮島英昭・新田敬祐(2011) 「株式所有構造の多様化とその帰結:株 式持ち合いの解消・「復活」と海外投資家の役割」,RIETI Discussion Paper Series,11-J-011

[9] 「東洋経済CSR企業ランキング2016年(第10回)について」,

<http://www.toyokeizai.net/csr/ranking/aboutCSRRanking2016.html>

2017年1月27日アクセス.

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