日本農芸化学会中部支部 第 151 回例会
若手シンポジウム
「 酸化ストレスに挑む:
抗酸化性物質研究の現在 」
講 演 要 旨 集
日時:2007 年 11 月 17 日(土)13:00 より 会場:静岡県立大学 5211 講義室
日本農芸化学会中部支部
〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院生命農学研究科内
主催:日本農芸化学会中部支部
共催:静岡県立大学グローバル COE, 静岡生命科学若手フォーラム
日本農芸化学会中部支部 第 151 回例会 若手シンポジウム
「酸化ストレスに挑む:抗酸化性物質研究の現在」
日時:2007 年 11 月 17 日(土)13:00-17:30
会場:静岡県立大学 5211 講義室 参加費:無料
プログラム
13:00 開会の挨拶
座長:熊澤 茂則(静岡県立大学食品栄養科学部)
13:05 「酸化ストレスによる神経細胞死に対して保護作用を有する低分子化合物」
原 宏和(岐阜薬科大学医療薬剤学大講座)
13:35 「イソプレノミクスを基盤とした抗酸化剤の分子設計」
宇都 義浩(徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部)
14:05 休憩
座長:下位 香代子(静岡県立大学環境科学研究所)
14:10 「肝臓の脂質代謝に対するカテキンおよびカフェインの効果」
茶山 和敏(静岡大学農学部応用生物化学科)
14:40 「生物有機化学的展開を志向したカテキン類の合成」
古田 巧(静岡県立大学薬学部)
15:00 「カテキン類の安定性と蛋白質との反応性」
石井 剛志(静岡県立大学食品栄養科学部)
15:20 休憩
座長:杉山 靖正(静岡県立大学食品栄養科学部)
15:30 「環境ストレス(化学物質、心身ストレス等)が生体に及ぼす影響の解析
およびそれを調節できる因子の探索」榊原 啓之(静岡県立大学環境科学研究所)
15:50 「緑イ貝中の微量抗酸化活性脂質と抗炎症作用について」
脇本 敏幸(静岡県立大学薬学部)
16:10 「 酸化修飾タンパク質の X 線結晶構造解析」
伊藤 創平(静岡県立大学食品栄養科学部)
座長:坂井田 和裕((株)ポッカコーポレーション)
16:30 維持会員によるプレゼンテーション
17:35 懇親会(一般 1,000 円、学生 500 円)
問合せ先 : 〒422-8526 静岡市駿河区谷田 52-1 静岡県立大学 食品栄養科学部
酒井 坦 Tel: 054-264-5576
E-mail: [email protected] 杉山 靖正 Tel: 054-264-5555
E-mail: [email protected]
中部支部問合せ先 : 中部支部庶務幹事 小田 裕昭
〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院生命農学研究科
Tel: 052-789-4124,E-mail: [email protected]
静岡県立大学周辺地図
徒歩の場合: JR「草薙駅」又は静岡鉄道「草薙駅」 「県立美術館前駅」下車 徒歩 15 分
バスの場合: JR「草薙駅」前より静鉄バス「三保草薙線」 「草薙団地行き」へ乗車
「県立大学前」下車(所要時間 3 分)
講 演 要 旨
酸化ストレスによる神経細胞死に対して保護作用を有する低分子化合物
原 宏和(岐阜薬科大学医療薬剤学大講座 臨床薬剤学研究室)
高齢化社会を迎えた現代において、老化に伴いその発症頻度が増すパーキンソン病(
PD
) などの神経変性疾患の原因解明と治療薬の開発は重要な課題である。PD
は黒質緻密層のドパ ミン神経細胞の脱落・変性を主病変とする神経変性疾患であり、症状として筋固縮、振戦な どの運動機能障害を特徴とする。PD
発症の原因は解明されていないが、PD
患者の黒質では、抗酸化タンパク質の減少や酸化型グルタチオンの増加などが認められることから、
PD
の発症 および病態の進展に酸化ストレスの関与が示唆されている。神経細胞は酸化ストレスに対し て脆弱であることから、この脆弱性を改善させることができれば、PDのような酸化ストレスが 関与する神経変性疾患の治療につながると考えられている。NF-E2 related factor 2
(Nrf2
)は抗酸化タンパク質の発現を調節している転写因子である。Nrf2
は通常、細胞質因子Keap1
と結合した状態で細胞質に局在しているが、活性酸素種(
reactive oxygen species; ROS
)などの刺激によりNrf2
はKeap1
から解離し、核内に移行する。核内で小
Maf
因子群と複合体を形成したNrf2
は、遺伝子の調節領域に存在する抗酸化剤応答 配列(antioxidant response element; ARE
)に結合し、抗酸化タンパク質(ヘムオキシゲナーゼ1; HO-1
、など)の発現を促進させる。抗酸化タンパク質発現の亢進は、酸化ストレスに対する細胞の抵抗性を増強させると考えられることから、
Nrf2-ARE
経路を活性化させる化合物は 神経保護薬になる可能性がある。1.
tert-
ブチルヒドロキノン(tBHQ
)による酸化ストレスに対する抵抗性の獲得抗酸化剤
tBHQ
は、Nrf2-ARE
経路を活性化する作用を有していることが報告されている。そこで、
Nrf2-ARE
経路を活性化させるためのモデル化合物としてtBHQ
を用い、酸化ストレスに対する保護作用発現における
Nrf2-ARE
経路の関与を検討した。酸化ストレスは、PD
の モデル動物の作製に用いられる神経毒6-
ヒドロキシドパミン(6-OHDA
)により惹起させた。その結果、
tBHQ
で前処置した細胞では、6-OHDA
によるROS
の産生や神経細胞死が抑制さ れた。また、tBHQ
はHO-1
の発現やグルタチオン産生量を亢進させることが明らかとなった。これらの結果から、
6-OHDA
の神経障害に対するtBHQ
の保護効果は、tBHQ
の前処置により 神経細胞の抗酸化能が亢進したことで発揮されていると考えられた。以上より、Nrf2-ARE
経 路は神経細胞が酸化ストレスに対する抵抗性を獲得する上で重要な経路であることが明らか となった。2.酸化ストレスによる神経細胞障害に対するアポモルフィン(Apo)の保護作用
酸化ストレスによる神経細胞障害に対して保護作用を有する低分子化合物を探索し、我々 は、欧米でパーキンソン病治療薬として使用されているドパミン受容体アゴニストの
Apo
に 神経保護作用があることを明らかにした。6-OHDA
により惹起されるROS
の産生や神経細胞 死がApo
存在下で抑制されたことから、この保護作用にはApo
のラジカル消去剤としての作用が関与していると考えられた。一方、
Apo
で前処置した細胞では6-OHDA
による細胞障害 が軽減されることが明らかとなった。それゆえ、tBHQ
処置時と同様に、神経細胞はApo
の 前処置により酸化ストレスに対する抵抗性を獲得したのではないかと考えられた。このApo
前処置の保護効果は、ドパミン受容体アンタゴニスト存在下でも阻害されなかった。また、Apo
はNrf2
の核移行、ARE
の活性化、HO-1
の発現を亢進させた。以上の結果から、酸化ス トレスによる神経細胞死に対するApo
の保護作用には、抗酸化作用に加え、Nrf2-ARE
経路の 活性剤としての作用が関与していると考えられた。本研究により、
Nrf2-ARE
経路は新たな作用機序に基づく神経保護薬を開発するための重 要な創薬ターゲットの一つになると考えられた。イソプレノミクスを基盤とした抗酸化剤の分子設計
宇都義浩(徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部)
【序論】
微生物,植物や動物が産生するテルペン,ステロイドやカロテンなどのイソプレノイド系 化合物は,メバロン酸もしくは非メバロン酸経路により合成される炭素5個(
C
5)を基本単 位とするイソプレン骨格を有する化合物の総称であり生理活性物質として重要なものが数多 く同定されている.一方,フェニルプロパノイドやフラボノイドにおいては,シキミ酸経路 による骨格合成後位置選択的にイソプレン鎖の修飾を受けた化合物の存在が報告されている が,それらの生理活性や存在理由についてはほとんど明らかになっていない.そこで私は,イソプレノミクス(
isoprenomics
,微生物,植物や動物が産生するイソプレン鎖修飾化合物を 探索して生物活性を調べ,合成に関わるDNA
やタンパクを同定してchemotype
を明らかにし,医薬品開発に応用する研究)を提唱し,この問題の解明に取り組んでいる.本シンポジウム では,アルテピリンC及びトコフェロール(ビタミンE)に対するイソプレノミクスから得 られた抗酸化剤分子設計に関する知見について報告する.
【アルテピリンCのイソプレノミクス】
アレクリン(キク科)を起源植物としブラジル産プロポリスの主成分の1つであるアルテ ピリンCは,メタ位に2つの
C
5イソプレン鎖を有するp
-ヒドロキシケイ皮酸(p
-クマリ ン酸)アナログであり,抗菌・抗酸化・抗腫瘍・アポトーシス誘導・免疫調節・発がん抑制・神経保護・腫瘍誘導性血管新生阻害活性・抗変異原性などの興味深い薬理活性を有すること が
1994
年から現在までに報告されている.しかしながら,アルテピリンCの合成に関する報 告は全くなく,また入手経路が限られていた(現在は和光純薬がプロポリスから抽出したも のを販売しているが非常に高価である)ため,アルテピリンCの全合成を試みた.スキーム1.アルテピリンCの逆合成解析(経路1~3)
アルテピリンCの逆合成解析(スキーム1)より,
p
-ヒドロキシケイ皮酸を出発原料と してメタ位をプレニル化するroute1
,p
-ヒドロキシベンズアルデヒドを出発原料としてメ タ位をプレニル化後Knoevenagel
縮合反応によりα,β-不飽和カルボキシル基を導入するroute2
又は,p
-ハロフェノールを出発原料としてオルト位をプレニル化後Mizoroki-Heck
反応によりα,β-不飽和カルボキシル基を導入する
route3
を計画した.結果として,route1
では多くの生成物が確認され目的物の収率は1%以下であり,また,route2
ではモノプレニ ル化しか進行せず目的物は得られなかったが,route3
ではオルトジプレニル化に成功しアル テピリンC を総収率33%で得た.さらに,本合成経路を利用してイソプレノミクスを基盤 とした35種類のアルテピリンCアナログ(図1)を分子設計・合成した.図1.アルテピリンCアナログの化学構造(29種類)
上記の分子設計・合成したアルテピリンCアナログの抗酸化活性について,
DPPH
ラジカ ル及びABTS
ラジカル反応性,ラット肝臓ミトコンドリア(RLM
)に対する膜脂質過酸化阻 害活性,ヒトLDL
抗酸化活性(共役ジエン生成阻害法およびTBARS
法)により評価した.その結果,アルテピリンCは抗動脈硬化剤として知られるプロブコールと比べて約1
/
3と低 いDPPH
ラジカル反応性を示す一方,約2倍高い共役ジエン生成阻害活性を示した.アルテ ピリンCをメチルエステル化すると共役ジエン生成阻害活性は低下し(TX-1960
),プレニル 基の伸長に伴い阻害活性は低下した(TX-2013, 2007, 2136
).これらの結果は,ラット肝臓ミ トコンドリア膜の脂質過酸化阻害活性の結果と逆相関を示した.モノプレニルp
-クマリン 酸アナログ(TX-1959, 2012, 2101, 2145
)は鎖長C
15(ファルネシル基)を,対応するハイドロ プレニルp
-クマリン酸アナログ(TX-2149, 2223, 2227, 2263
)では鎖長C
10を頂点とする二次 放物線型のLDL
抗酸化活性を示した.アルテピリンCの1つのプレニル基をメトキシ基に置 換したプレニルフェルラ酸アナログ(TX-2142, 2147, 2146
)では,鎖長C
10(ゲラニル基)が 非常に高い共役ジエン生成阻害活性を示し,その度合いはキレート作用をもつカフェー酸と 同程度であったがプレニルフェルラ酸アナログにはキレート形成能は見られなかった.また,ハイドロプレニルフェルラ酸アナログ(
TX-2248, 2249, 2250
)では,対応するプレニルフェル ラ酸アナログよりも高い共役ジエン生成阻害活性を示した.フィチル基をもつTX-2143
は,アルテピリンCアナログの中でも最も低い
LDL
抗酸化活性を示した.以上の結果より,RLM
膜脂質過酸化阻害活性とLDL
抗酸化活性との間に明確な相関関係はなく,RLM
膜脂質過酸 化阻害活性と疎水性には正の一次の相関が,また,LDL
抗酸化活性と疎水性には二次の相関 があり最適な分子の疎水性はlogP
値で約6,すなわち,鎖長C
10(ゲラニル基)をもつ分子 が最も効果的なLDL
抗酸化剤であることが示唆された.【トコフェロールのイソプレノミクス】
トコフェロール類はビタミンE群の構成成分であり,生体膜脂質に対する強力な抗酸化活 性を示し血管の酸化的損傷を防御することが知られている.そこで,イソプレノミクス的視 点からトコフェロール類の生合成鍵中間体のフィチル化キノールに着目し,ベンゼン環上の メチル基の位置や数の異なるδ型(
TX-2231
)とγ型(TX-2242
)の天然,およびα型(TX-2254
)とβ型(
TX-2247
)の非天然フィチル化キノールを分子設計した.合成に関して,対応するメチル置換フェノールを出発原料としてフィチル化後,酸化によりキノンに変換し,次いで還 元して目的物であるフィチル化キノールを得た(スキーム2).
スキーム2.α,β,δ,γ型フィチル化キノールの合成
δ型はすべてのフィチル化キノールの中で最も高い
DPPH
ラジカル反応性を示し,その度 合いはDL
-α-トコフェロールと同等であった.また,γ型,β型,α型の順に反応性が低 下した.LDL
抗酸化活性に関して,すべてのフィチル化キノールはDL
-α-トコフェロー ルよりも低活性であったが,活性の順序はDPPH
ラジカルに対する反応性と異なり共役ジエ ン生成阻害活性ではα型が最も高く,次いでβ型,γ型,δ型の順であった.しかしながら,TBARS
法では活性の順序が逆転した.対応するフィチル化キノンには抗酸化活性は見られなかった.また,すべてのフィチル化キノールと
DL
-α-トコフェロールの鶏胚漿尿膜血管に 対する障害性は観察されなかった.以上の結果より,フィチル化キノールからトコフェロー ルへの環化は抗酸化活性の発現に必須でないこと,また,フィチル化キノールではトコフェ ロール類と異なりメチル化率と抗酸化活性との相関が低いことが示唆された.肝臓の脂質代謝に対するカテキンおよびカフェインの効果
茶山和敏(静岡大学農学部)
演者らは、マウスを用いて緑茶および緑茶成分の脂肪蓄積抑制作用について研究を続けて きた。これまでの成果として、緑茶が強い脂肪蓄積抑制作用を揺することを報告するととも に、緑茶成分のうち、カテキンとカフェインがこの作用に強く関与していることを明らかに している。しかしながら、この作用についての詳細なメカニズムは検討されていない。
そこで本研究では、第一に、脂質代謝の主要な器官である肝臓における脂質代謝関連酵素 の量および活性に対するカテキンおよびカフェインの効果について検討を行った。また、第 二に、カテキンの主要成分である
EGCG
とカフェインの肝臓脂質代謝に対する効果を検討し た。☆研究(1):肝臓の脂質代謝に対する緑茶、カテキンおよびカフェインの効果
【方法】 2%緑茶,0.3%カテキン,0.05%カフェインおよび
0.3%カテキン+0.05%カフェイ
ン混合飼料を10
週齢のマウスに4
週間投与した。投与実験終了後,肝臓および腹腔内脂肪の重量 を測定するとともに,血清を採取して,血中脂質,グルコース,インシュリンおよびレプチン量 を分析した。さらに,脂肪酸合成に関係する脂肪酸合成酵素活性と肝臓の脂肪酸分解に関係する 酵素であるカルニチンパルミトイル転移酵素Ⅱおよびアセチル-CoA酸化酵素活性を測定した。【結果・考察】 体重増加はいずれの投与群においても対照群と有意な差は見られなかったが,
カフェインおよびカテキン+カフェイン投与群では体重増加の抑制傾向が見られた。また,腹腔 内脂肪重量はカフェインおよびカテキン+カフェイン投与によって有意に減少し、カテキン+カ フェイン投与群では血中レプチン濃度も有意に低下した。さらに、カテキンとカフェインの組み 合わせ投与によって,脂肪酸合成酵素の活性は有意に低下し,アシル-CoA酸化酵素およびカルニ チンパルミトイル転移酵素Ⅱの活性は有意に上昇することが判明した。
以上の結果から,カテキンとカフェインは、組み合わせて投与することによって単独よりも強 い脂肪酸合成抑制作用および分解促進作用を発揮し,それらの作用によって腹腔内脂肪蓄積が強 く抑制されることが示唆された。
☆研究(1):肝臓の脂質代謝に対する
EGCG
およびカフェインの効果【方法】 カフェインと
EGCG
を単独あるいは組み合わせて添加した、0.05%
カフェイン、0.1% EGCG
、0.05%
カフェイン+ 0.1% EGCG
、0.1%
カフェイン+ 0.1% EGCG
、0.05%
カフェイン
+ 0.2% EGCG
およびコントロールの6種類の投与飼料を作成し、投与実験を行った。投与実験及びその他の実験は研究(1)と同様の方法で行った。
【結果・考察】 体重は
0.1%カフェイン+0.1%EGCG
投与群で減少が見られた。腹腔内脂肪重 量は0.1%EGCG
以外のすべての投与群で有意に減少していた。脂肪酸合成酵素とアシルCoA
酸 化酵素の活性は、カフェインとEGCG
による影響は見られなかった。一方、カルニチンパルミト イル転移酵素Ⅱの活性は、0.05%カフェイン+0.2%EGCG以外の群で増加傾向が見られた。しか しながら、EGCG
とカフェインの組み合わせ投与による相乗効果は見られなかった。肝臓中のTG、
TC
濃度は0.1%カフェイン+0.1%EGCG
の投与により減少したが、血清中の脂質量には両物質の投与による影響は見られなかった。
以上の結果から、マウスの肝臓において、カフェインとカテキンによって引き起こされた脂質 代謝の改善には、少なくとも
EGCG
が単独では関与していないことが示唆され、EGCG 以外の カテキン、もしくはEGCG
を含むカテキンの複合的な作用によって引き起こされたと考えられた。しかしながら、0.1%カフェイン+0.1%EGCG を投与したマウス肝臓中の脂質代謝は、改善傾向 にあったため、さらに詳細な実験を行っている。
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(–)-Epigallocatechin gallate (EGCG, 1)
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EGCG
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theaflavin (2)
࡛ㄇᑙࡌࡾᏽ࡚࠵ࡾࠊO O
OH OH OH
OH HO
1 O
OH OH
OH
O OH
OH OH
OH HO
2
O OH O
OH
HO
OH
CH3CN O
OH OH
OH
8 HO
OH
NsCl, H3BO3/NaOH toluene-H2O, rt
(pH 9.0)
O OH
OH OH
9 NsO
ONs
O OH
O O
10 NsO
ONs +
O OH
OH OH
11 NsO
ONs
OH 1) CH3CN/CH2Cl2
2) H2O O
OH OH OH
ONs NsO
12 O OH O
ONs
NsO
OH
2
Pb(OAc)4
1) DMDO
3 4
OTBS BnO
OBn OBn
Br
OH BnO
OBn B OBn
MOMO 5
O
O OH
OH
OH H2N
O OH
OH OH
PdCl2(dppf) 3M NaOH aq 1)
2) TBAF
1) NaI, TMSCl 2) NsNHCbz, PPh3 DEAD 3)
5
5
HOOC OBn OBn
OBn O
OH OBn
OBn
OBn
5
5 OMOM OMOM
2) CSA
WSCI, DMAP O
O OBn
OBn
OBn
O OBn
OBn OBn
5
6 NsNCbz A
B
7
カテキン類の安定性と蛋白質との反応性
石井 剛志(静岡県立大学 食品栄養科学部)
緑茶に含まれるカテキン類は、抗酸化作用や抗ガン作用、血糖上昇抑制作用、血小板凝集 抑制作用など様々な生理機能を有することが報告されており、ガンや動脈硬化などの生活習 慣病のリスク低下に効果を発揮することが期待されている。カテキン類の生理機能は、一般 に非常に強い抗酸化活性が担っていると考えられているが、作用機序に関しては充分な解明 がなされていない。
近年、培養細胞を用いた実験系において
67 kDa
ラミニンレセプターやビメンチンなどの蛋 白質にEGCg
が結合し、その機能を制御することでガン細胞の増殖抑制に働くことが報告さ れた。これらの発見は、生体内におけるカテキン類の ”標的蛋白質” の存在を示唆してお り、カテキン類の新しい生理作用発現機序としての蛋白質との相互作用の重要性が注目され た。ここ数年の論文発表を見ても、STAT-1
、マトリックスメタロプロテアーゼ、プロテアソ ーム、熱ショック蛋白質など、新しい標的分子の存在が報告されつつあり、カテキン類の有 する生理作用との関連性が示唆されている。一方で、細胞内に存在する蛋白質とカテキン類 との結合を直接的に示した報告例は少なく、カテキン類による蛋白質機能や細胞機能の制御 機構の理解には至っていない。このような背景として、カテキン類が結合している標的蛋白 質を分離あるいは濃縮し、簡便かつ高感度に検出する方法がこれまでほとんど構築されてい なかったことが挙げられる。我々は、カテキン類と蛋白質との相互作用の解析方法として、
(1)
転写膜上においてNBT
還元反応の結果生じる色素沈着を利用した相互作用の検出法(2)
ホウ酸結合ビーズによる相互作用蛋白質の精製法(3)
質量分析を用いたカテキン結合蛋白質の検出法および結合部位の解析法をそれぞれ構築し、in vitroにおいてカテキン類がタンパク質中のシステイン残基に共有結合 することを見出した。また、カテキン類と蛋白質との反応性が、カテキン類が酸化され易い 不安定な条件で高くなることを明らかにした。
本発表では、これらの相互作用解析法を組み合わせたモデル蛋白質における解析例を中心に、
カテキン類の安定性と蛋白質との反応性について紹介する。
環境ストレス(化学物質、心身ストレス等)が生体に及ぼす影響の解析および それを調節できる因子の探索
榊原啓之 (静岡県立大学 環境科学研究所 生体機能学研究室)
我々は、様々なストレスが氾濫した環境の中で 生活をしている。そのストレス要因は、ダイオキシン やベンゾピレンのような化学物質に起因するもの(化 学的要因)、熱や騒音、紫外線などによる物理的要 因、ウィルスや細菌などによる生物的要因、そして人 間関係などの拗れが“こころ”に作用する社会的要 因等多岐にわたるが(図
1)、通常は何れの環境スト
レスが生体に負荷しても、我々の身体は様々な防御 機構を有しているため、ストレスから身を守ることが 出来る(恒常性の維持)。しかしながら、過度のストレ ス、あるいは慢性的なストレスが負荷すると恒常性が破綻し、様々な疾患が誘発されることが知られている。従って、日々の生活の中で我々が感じている ストレス状態を知ることは、そしてストレス負荷が生体に及ぼす影響を調節できる因子を探索すること は、疾病の予防学的観点から非常に重要である。特に、社会的要因により惹起される“こころ”の病、
すなわち精神疾患の罹患率の上昇が重篤な社会問題となっている今日では、社会的要因によるスト レスが生体に及ぼす影響に関する詳細な研究データの蓄積が急務と考えられる。本講演では、社 会的環境ストレスが生体に及ぼす影響およびそれを調節できる因子について、我々の知見を交えて 紹介する。
現在、精神疾患を予防・改善できる因子を検索できる様々な動物モデルが開発され、医薬品、
漢方薬、食品の分野で広く用いられている。中でも、Porsolt 等によって報告された抗うつ薬の評価 手法であるラット強制水泳試験は 1)、投与成分の抗うつ様活性を簡便かつ迅速に評価できるだけで なく、本試験で得られる効果と抗うつ薬の臨床試験での薬効とが高い確率で相関するという特徴を 有していることから、抗うつ薬のスクリーニング手法として広く利用されている。我々はラットへのイチョ ウ葉抽出物やタマネギ粉末の反復経口投与が、ラットの自発運動活性を上昇させることなく強制水 泳試験における無動時間を有意に減少させたことから、これらの成分が顕著な抗うつ様活性を有す ることを報告した2, 3)。さらにその作用機序として、ストレス負荷時の視床下部内モノアミン含量の変動 を抑制する効果が関与する可能性を示唆した3, 4)。
慢性的な社会的ストレスの負荷は、精神疾患以外にも様々な疾患の発症に関与すると考えられ ている。従って、慢性的なストレス負荷が生体に及ぼす影響について評価することが重要である。し かしながら、慢性的な社会的環境ストレスを負荷できる最適な動物モデルは数少ない。例えば先の 強制水泳試験は、水を溜めた逃避不可能な水槽内にラット入れ、短時間の間に泳ぐことをあきらめる との心理作用を利用して、投与成分の抗うつ様活性を測定するものであるため、慢性的なストレス負 荷モデルとは言い難い。そこで我々は、飼育環境を変えることによって、より人間社会に近い緩和な
図 1.身の回りに氾濫する環境ストレス
物理的要因
熱、騒音等、紫外線
化学的要因
ダイオキシン、BaP等
生物的要因 ウィルス、細菌等
社会的要因
人間関係、トラブル等
物理的要因
熱、騒音等、紫外線
化学的要因
ダイオキシン、BaP等
生物的要因 ウィルス、細菌等
社会的要因
人間関係、トラブル等
慢性的ストレスを反映した動物モデルを作製し、社会的環境ストレスが生体に及ぼす影響の解析を 試みている 5-7)。これは、5 匹/ケージの標準飼育に対して、単独隔離(1 匹/ケージ)や過密(20 匹/ケ ージ)、対面(1:1 匹/ケージ)の各条件で飼育することにより、マウスに慢性的なストレスを負荷する動 物モデルである。何れの飼育条件においてもマウスへの社会的環境ストレス負荷の
7
日目および30
日目で副腎の肥大、胸腺の萎縮、さらに血中コルチコステロンの増加という、ストレス負荷時に見られ る典型的な生体応答が見られる。さらに、ストレス負荷により末梢血細胞で酸化的なDNA
損傷が増 加すると共に、ビリルビンの酸化産物であるバイオピリンの尿への排泄量が上昇したことから、慢性的 な社会的環境ストレスの負荷により、生体内酸化が亢進するとの知見を得た。今後、これらストレス負荷モデルを用いて、社会的環境ストレス負荷時の生体応答に関する詳 細なデータをさらに蓄積することで、眼に見えないストレス要因が身体に負荷していることを示唆する バイオマーカーが見つかることが期待される。同時に、ストレス負荷時の生体応答を調節できる因子 の探索を通じて、社会的環境ストレスに起因した様々な疾患を予防・改善できる可能性を追求した い。
【引用文献】
1. Porsolt R.D., Le Pichon M., and Jalfre M., Nature, 266, 730-732 (1977).
2. Sakakibara H., Ishida K., Oliver G., Nakajima J., Seo S., Butterweck V., Minami Y., Saito S., Kawai Y., Nakaya Y., and Terao J., Biol., Pharm., Bull., 29, 1767-1770 (2006).
3. Sakakibara H., Yoshino S., Kawai Y., and Terao J., Biosci., Biotech., Biochem. (2007) in press 4. Sakakibara H., Izawa Y., Nakajima J., Seo S., Tamaki T., Kawai Y., and Terao J., ACS books
(2007) in press
5. Miyashita T., Yamaguchi T., Motoyama K., Unno K., Nakano Y., and Shimoi K., Biochem.
Biophys. Res. Commun., 349, 775-780 (2006).
6. Motoyama K., Miyashita T., Yamaguchi T., Hirabayashi S., Naito H., Ohashi N., Unno K., Sakakibara H., and Shimoi K., Book of Abstracts at 2nd World Conference of Stress, pp 134 (2007).
7. Nishio Y., Nakano Y., Deguchi Y., Terato H., Ide H., Ito C., Ishida H., Takagi K., Tsuboi H., Kinae
N., and Shimoi K., Genes Environ., 29, 17-22 (2007).
緑イ貝中の微量抗酸化活性脂質と抗炎症作用について
脇本 敏幸
(静岡県立大学・薬学部)
ニュージーランド近海に生息する緑イ貝 (
Perna canaliculus )
はイガイ科に属する二枚貝 である。外見はムール貝と似ているが、外殻が緑色を呈する点が大きな特徴である。ニュー ジーランド先住民であるマオリ族は、古くからこの貝の生理作用に着目しており、滋養強壮 作用を期待して常食してきた。その後の疫学的な研究によって、この貝には関節炎の予防効 果や症状の改善作用が認められるに至る。その結果、抗炎症作用を示すサプリメントとして 開発が進められてきた。しかし活性成分が極めて不安定な成分であったため、緑イ貝の活性 を保持した製品開発は容易ではなかった。当初は貝の凍結乾燥物の粉末が活性を保持した製 品として扱われていたが、現在では凍結乾燥物を超臨界二酸化炭素で抽出したオイル(Lyprinol)
が最も高活性な製品として市販されている1)。我々はこのLyprinol
を用いて、抗 炎症活性成分の探索研究に着手した。Lyprinol
はステロールエステル、ステロール、トリグリセリド、遊離脂肪酸やリン脂質等、代表的な脂質成分がほとんどを占めるオイルである。これまでの活性成分の探索研究におい て、我々のグループならびにオーストラリアのグループともに脂肪酸画分が活性を示すこと を明らかにしている2)。そのため、
GC-MS
を利用した脂肪酸組成の詳細な分析もすでに報告 されている 3)。しかしながら、緑イ貝特有の脂肪酸は見いだされていない。緑イ貝には、他 の海洋生物と同様に高度不飽和脂肪酸 (PUFA) が高濃度で含有されている。EPA
やDHA
に はすでに抗炎症効果が知られている事から、緑イ貝の作用もこれらの高度不飽和脂肪酸が活 性本体だと考えることもできる。しかしながら、一方でそれらは緑イ貝特有の成分ではない 上に、魚油を対照群に用いた活性試験においてLyprinol
が圧倒的に強い抗炎症活性を示す事 から、高度不飽和脂肪酸だけにその抗炎症作用を帰結する事はできない 4)。その上、活性成 分は極めて不安定な性質を有するはずであり、我々は脂肪酸画分に含まれる不安定活性成分 を見いだす必要があった。また一方で、炎症には活性酸素が関与しており、酸化ストレスを軽減できる抗酸化活性物 質は抗炎症活性に寄与する可能性が報告されている 5)。そこで、天然油脂の微量脂肪酸であ り、抗酸化活性を示すフラン脂肪酸に着目した。フラン脂肪酸は
1970
年代にサケ科魚類より 見いだされた新規脂肪酸である 6)。その後の研究において、魚のみならずカエル、カメやオ リーブオイルなどの植物オイルにも検出され、広く天然に存在する微量脂肪酸であることが 分かっている。またin vitro
の評価系において、ビタミンEをしのぐ一重項酸素消去能を示 す事が明らかにされている 7)。フラン環を有する天然物は数多く知られ、珍しいものではな い。ところがフラン環の全ての炭素にアルキル基が置換した4
置換フラン環は非常に電子豊 富であり、その性質が故に強力な抗酸化活性を示す一方、極めて酸化されやすい性質を有す る。そのため、4
置換フラン環を有する天然物はこれまでほとんど報告例がない。フラン脂 肪酸は不安定な性質の上に微量にしか存在しないため、そのin vivo
における生理機能につい てはこれまでまったく不明であった8)。そこで我々は
Lyprinol
の脂肪酸画分よりフラン脂肪酸の探索を試みた。フラン脂肪酸は微 量成分である上に、分離挙動が高度不飽和脂肪酸とほとんど一致するために、フラン脂肪酸 を検出することは非常に困難であった。また前述のGC-MS
による脂肪酸組成の分析研究に おいてもフラン脂肪酸は検出されていない 3)。そこでフラン脂肪酸を分離する目的で化学変 換処理を行った。すなわち、遊離脂肪酸をジアゾメタンでメチル化後、高度不飽和脂肪酸を 接触還元によって飽和脂肪酸へ変換し、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーで分離 した。その結果、Lyprinol
中にフラン脂肪酸が比較的高含量で含有されている事を明らかに した。その含量はF4
およびF6
の合計で5 mg/g
程度であり、オリーブオイル等に比較して 圧倒的に多い含量であった。O OMe
F6 (Me Ester) O F4 (Me Ester)
O OMe
O
つぎにフラン脂肪酸の抗炎症活性を検討するために、フラン脂肪酸の大量調製方法を検討 した。これまでに
4
置換フラン環を含むフラン脂肪酸の全合成例は、数例報告されているの みで収率は低い9,10)。そこで我々はフラン脂肪酸代謝産物に着目した。フラン脂肪酸は側鎖の みがβ-
酸化等の代謝分解を受け、残ったフラン環は脂質代謝の終着点である胆汁に濃縮され る。そこでサメ胆汁を用いてフラン脂肪酸代謝産物を探索したところ、乾重量当たり約10 %
含まれていることが分かった。またこの代謝産物はフラン環の一方の側鎖のみに2
重結合が 含まれており、各側鎖を選択的に修飾することが可能である。そこでこの代謝産物を利用し て フ ラ ン 脂 肪 酸 の 半 合 成 を 行 う こ と に し た 。 両 端 の そ れ ぞ れ の 側 鎖 を オ レ フ ィ ン のOsO
4-NaIO
4酸化およびエステルのDIBAL
還元によって選択的にアルデヒドへ導き、Wittig
反応で側鎖を伸長してフラン脂肪酸へ導いた。この方法によって数百mg
スケールのフラン 脂肪酸を調製し活性試験に供した。HO O OH
O O
O OEt
O Wittig reaction etc.
Shark Metabolite F6 (Et ester)
実際の抗炎症活性試験は、アジュバント関節炎モデルラットを用いた。
0
日目にSD
系ある いはDA
系雌性ラットの右後足にアジュバントを注入し、10
日目以降に発症する2
次炎症の 指標として非処置足の浮腫体積を計測し、抗炎症活性の評価を行った。その結果、フラン脂肪酸は
0.5 mg/kg
の経口投与で浮腫の抑制を示した。一方で、EPA
は同じ投与量ではそのような抑制効果は示さなかった。このことから、
Lyprinol
の脂肪酸画分が示す抗炎症作用の活 性物質はフラン脂肪酸である可能性が高いと考えている。今後はより詳細に分離画分の活性評価を行うとともに、緑イ貝の抗炎症作用におけるフラ ン脂肪酸の寄与率を明らかにしていきたい。また、自然界に広く存在しているにもかかわら ず、機能が未解明なフラン脂肪酸について、その生理機能を明らかにしていきたいと考えて いる。
References
1) Whitehouse MW, Macrides TA, Kalafatis N, Betts WH, Haynes DR, Broadbent J (1997) Anti-inflammatory activity of a lipid fraction (lyprinol) from the NZ green-lipped mussel. Inflammopharmacology 5, 237-246.
2) McPhee S, Hodges LD, Wright PFA, Wynne PM, Kalafatis N, Harney DW, Macrides TA (2007) Anti-cyclooxygenase effects of lipid extracts from the New Zealand green-lipped mussel, Perna canaliculus. Comp. Biochem. Physiol. B 146, 346-356.
3) Murphy KJ, Mooney BD, Mann NJ, Nichols PD, Sinclair AJ (2002) Lipid, FA, and sterol composition of New Zealand green lipped mussel (Perna canaliculus) and Tasmanian blue mussel (Mytilus edulis). Lipids 37, 587-595.
4) Tenikoff D, Murphy KJ, Le M, Howe PR, Howarth GS (2005) Lyprinol (stabilised lipid extract of New Zealand green-lipped mussel): a potential preventative treatment modality for inflammatory bowel disease. J. Gastroenterology 40, 361-365.
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7) 岡田洋二、丘島晴雄、寺内美佐加、小西寛和、劉逸民、渡辺宏 (1990) 一重項酸素による赤血球の溶血に対する フラン脂肪酸の抑制作用、薬学雑誌 110, 665-672.
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酸化修飾タンパク質の X 線結晶構造解析
伊藤創平(静岡県立大学)
リン酸化、糖鎖付加等の翻訳後修飾は、タンパク質の活性、細胞内での局在、安定性の制 御等の機能調節において重要な役割を持っている。一方、老化、生活習慣病、癌等の疾病に より酸化ストレスが生じると、タンパク質は非酵素的な修飾を受け、構造変化や機能障害を 引き起こすことが知られている。近年、生体高分子酸化傷害に関する分子生物学的な研究の 発展は著しく、疾病における特異的な傷害を検出するマーカー
(
酸化ストレスマーカー)
が多数 明らかとなってきており、臨床的有用性が認められつつある。しかし、酸化ストレスの標的 となる生体高分子の構造変化を分子レベルで解明した例は非常に限られる。演者らは、主に X線結晶構造解析の手法を用いて、標的となるタンパク質を含め、酸化ストレスと関与する 解析を行ってきた。今回のシンポジウムでは、主にCu,Zn-Superoixde dismutase (SOD)の
X線結晶構造解析について報告する。【背景】
地球上で活動している生命体のほとんどが最終電子受容体として酸素を利用している。この酸 素を一電子還元して生じるスーパーオキシドラジカル(O2-
)に対し、多くの生物は SOD
を産生し て過酸化水素に還元し、毒性を軽減している。興味深い事にSOD
は、その反応産物である過酸化 水素により自身を失活するという興味深い性質を持つ。量的及び分布の異常、酸化傷害により発 生する構造変化、アミロイド様繊維の形成、銅の遊離による二次的傷害、アミノ酸残基の変異が 家族性筋萎縮性側索硬化症の原因となることから、SOD
はその発見から約40年近くになるにも かかわらず世界的注目を集める酵素であり、2000年以後も毎年300報以上、計7000を 超える論文が発表されている。しかし、これら膨大な知見の積み重ねにも関わらずその失活機構 には不明な点があった。そこで我々は、X線結晶構造解析と質量分析の手法を用いて失活機能の 解明を行った。【方法】
失活機構の解明を分子レベルで行うには、過酸水素処理に耐えうる良質な結晶が必要であると 考え、まず結晶化条件の探索を行った。結晶化サンプルには、ヒト
SOD
に比べてフリーのシステ インの数が少ないく、また金属の遊離もわずかであるウシ赤血球由来Cu,Zn-SOD
を用いた。そ の結果、斜方晶系(P212121)と六方晶系(P6522)に属する2
種の結晶に、シンクロトロン放射光を 利用した高輝度X線を照射することで、1.15Åの分解能を超える回折像を得た。約100
近くに及 ぶSOD
の報告の中でも最も高分解能であったことから、これ以上の探索は無意味であると考え、これらの結晶を
2〜80mM
の過酸化水素濃度を含む結晶化母液中で、30 分〜15 時間室温でイン キュベートした後、90Kの低温下でデータ測定を行った。【結果】
10mM、3時間程度の処理で活性中心の銅の位置に変化がおきた。また 40mM
を超える高濃度で過酸化水素処理を続けるとをすると銅の占有率が低下するとともに結晶が融解しデータ測定が 不可能になった。そこで過酸化水素濃度は最高で40 mM程度、時間は最長で
15
時間程度までの 処理をおこない、2 晶系で計30セット程度のデータ測定を行い構造を決定した。なかでも変化の大きかった