物理学D
No.01
気体の状態変化と
仕事・熱
準静変化
変化の途中が常に平衡状態であるような変化を準静変化という 状態がじわじわ変化していくような変化
例:
ゆっくりピストンを押す/引く
容器の中にゆっくり仕切りを挿⼊する ゆっくり温度を上げる
準静変化ではない例 はげしくかきまわす
両側が平衡でない場合に,仕切りをはずす
⾃然界の現象のほとんどは準静的変化ではない
準静変化の特徴
準静変化では,途中の状態(平衡状態)が完全に把握できる
準静変化は可逆変化
温度や圧⼒が常に定義できている
A→Bという準静変化が起こせたとすると,
この変化と完全に逆の変化をたどって
B→Aという準静変化を起こすことができる
フィルムを逆回ししたような現象が現実に起こせるということ
理想気体の状態変化
理想気体の状態をいろいろなやりかたで変化させる 例: 閉じた系の気体に対して,圧⼒を⼀定に保ちつつ体積 を膨張させる(定圧膨張)
物質量nと圧⼒pは固定 V を変化させる
T が⾃動的に変化 状態⽅程式
特に準静変化に注⽬する
物質量⼀定の気体の変化を考える 際にはp-V 図を⽤いることが多い
V(体積) n=⼀定 p(圧⼒)
各点で温度が決まって いる(状態⽅程式)
p-V 図上の曲線が,
気体の準静変化を表す
当⾯,物質量は⼀定にしたの変化を考える
準静変化の例:等温変化
温度⼀定の変化
V0
p0
V1
p1
p = nRT0 V
定数
p
温度が⼀定の場合,体積が膨張すると,それに反⽐例して 圧⼒が下がる。
等温曲線
温度の等⾼線みたいなものを描いてみると…
V p
温度が⾼い
温度が低い
Tが⼀定
準静的でない変化の場合
準静的でない変化の場合は,変化前の状態と,
変化後⼗分⻑い時間がたった後の状態は表せるが,
途中は全くどうなっているのか分からない
(体積は分かっても,圧⼒と温度が定義されない)
V0
p0
V1
p1
p 途中の状態は定義できない
準静変化で気体がする仕事
様々な変化の際に,気体がする仕事に注⽬する。
仕事の復習
物体の変位
物体に作⽤する⼒
r F
⼒Fがする仕事は
W = F · r = |F || r| cos
⼒が物体の移動をサポートした場合:
⼒が物体の移動を邪魔した場合:
F
r
W > 0 W < 0
仕事をするためには,何かを動かさなければならない
準静変化で気体がする仕事
ピストンつきシリンダーを
考える。 断⾯積S
体積V0 圧⼒p0
圧⼒を⼀定に保って ピストンを引く
体積V1
圧⼒p0
x
気体がピストンを押す⼒は⼀定で,その⼤きさは
F
F
よって,気体がする仕事Wは
V = S x だから W = p0 V
F = p0S
W = F x = p0S x
準静変化で気体がする仕事
ピストンを押し込む場合
断⾯積S 体積V0
圧⼒p0
圧⼒を⼀定に保って ピストンを押す
体積V1 圧⼒p0
x
F
気体がする仕事は F
マイナスになる。
W = F x = p0S x = p0 V
気体の体積が膨張する場合
気体は正の仕事をする。(気体が実際仕事をする) 気体の体積が収縮する場合
気体は負の仕事をする。(実際には気体が仕事をされる) 仕事の正負
⼀般の準静変化の場合
断⾯積S
体積V 圧⼒p
体積V=V+dV 圧⼒p=p+dp
F
F
dx
圧⼒の変化dpが無視できるくらい ちょこっとだけピストンを動かす
無視する
dW = pSdx = pdV
dV
dxずつじわじわピストンを動かすことをくりかえすと…
圧⼒を測定しなおす
pi+1 = pi + dp
W = p0dV + p1dV + p2dV + · · ·
dVが微⼩量だと思うと,この式は積分の定義と⼀致する。
W =
V1 V0
pdV
W =
V1 V0
pdV 体積:V0→V1 状態変化に応じて
圧⼒を体積の関数として表す
p-V 図上の曲線をV で積分すると気体がする仕事が求まる
V p
V0 V1
ここの⾯積が 仕事Wを表す
V p
V0
V1
圧縮→気体がする仕事は負
体積が膨張
⾯積=‒W 体積を圧縮
準静変化の際に 気体がする仕事
膨張→気体がする仕事は正
準静変化の際の仕事
定積変化
V p
V0
p0 p1
T0 = p0V0 nR T1 = p1V0
nR
W =
V0 V0
pdV = 0
V p
V0
p0
V1
T0 = p0V0
nR T1 = p0V1 nR
定圧変化
W =
V1 V0
p0dV = p0 [V ]VV10 = p0(V1 V0)
=nR(T1 T0)
等温変化
V0
p0
V1
p1
p = nRT0 V
定数
p
準静変化の際の仕事
W =
V1 V0
pdV =
V1 V0
nRT0
V dV
=nRT0
V1 V0
dV
V = nRT0 [log V ]VV10 = nRT0 log V1 V0
次のp-V 図で表される変化の際に,気体がする仕事は?
例題
p
V0 2V0 p0
2p0
p-V 図のグラフの線と,V を表す軸の間の⾯積を求めればよい W = 1
2 (p0 + 2p0) (2V0 V0) = 3p0V0
2 [J]
例題
物質量nの理想気体を考える。最初,この気体の体積はV0 であり,このときの圧⼒がp0であった。気体の状態を
p=aV ‒2 (aは定数)という関係を満たすように変化させた。
(a)最初の状態の温度T0を求めよ。ただし,気体定数をR とする。
理想気体の状態⽅程式より,
T0 = p0V0 nR
例題
(b)この変化の際に温度は上がるか?それとも下がるか?
点線は温度が⼀定の変化 を表す等温線である。
グラフから,この変化の ときには温度が下がって いっていることが分か
る。
p
V p0
V0
温度が⾼い
温度が低い
物質量nの理想気体を考える。最初,この気体の体積はV0 であり,このときの圧⼒がp0であった。気体の状態を
p=aV ‒2 (aは定数)という関係を満たすように変化させた。
例題
(c)この変化によって,気体の体積が2V0まで膨張した。
気体がした仕事を求めよ。 p
V p0
V0 2V0 図に⽰した⾯積を求めれば
よい。W = 2V0
V0
a
V 2 dV
= a V
2V0
V0
= a
2V0 + a V0
= a 2V0
物質量nの理想気体を考える。最初,この気体の体積はV0 であり,このときの圧⼒がp0であった。気体の状態を
p=aV ‒2 (aは定数)という関係を満たすように変化させた。
仕事と内部エネルギー
仕事と熱の等価性
例えば,摩擦による熱の発⽣を考える。
ブレーキをかける
タイヤと地⾯との摩擦⼒が(負の)仕事をして⾞は⽌まる 同時に熱が発⽣している
⾞が当初持っていた運動エネルギーはどこへ⾏くのか?
素朴な仮説: ⾞の運動エネルギーが熱に変わってしまった 仮説が正しければ,⼀定量の⼒学的エネルギーは常に⼀定 量の熱に変換されるはず(予⾔) 実験による検証
ジュールの実験
おもりの質量と落下距離 重⼒がした仕事
ジュールは,この実験の結果,⼀定量の仕事によって,
⽔の温度が⼀定温度上昇することを確認した。
15℃の⽔1gの温度を1K上昇させるのに必要な仕事の量
=4.1855J 熱の仕事当量という
⼒学的仕事は熱の出⼊りと同じ働きをする
J. P. ジュール 1818ー1889 wikipediaより
このときの⽔の状態変化は準静的ではない
断熱変化
熱の出⼊りを遮断したまま起きる変化を断熱変化という 閉じた系において,任意の2つの平衡状態の間は,断熱変化 で結ぶことができる。ただし,いつでも双⽅向の変化が可能 なわけではなく,「少なくともいずれか⼀⽅向の変化が可
能」であるということである。
体積の変化はピストンを⽤いて⾃在にひきおこせる
温度については,外から仕事を加えることで,好きな分 だけ上昇させることが可能。(下げることはできない)
A→BもしくはB→Aのいずれかは断熱変化で実現可能 (準静的な変化の場合は双⽅向可能)
内部エネルギー
系の内部に保持されているエネルギーを内部エネルギーという ミクロな世界の⾔葉で表すと,分⼦達の持っている運動エネ ルギーと分⼦間のポテンシャルエネルギーの総和。
(ただし,系の重⼼の運動エネルギーを引いたもの)
系全体が⼀定⽅向に動いていても,そ の運動エネルギーはカウントしない。
別な⾔い⽅: 系の重⼼が静⽌しているときの系全体の エネルギー
内部エネルギーは状態を決めれば値が決まる状態量である。
熱⼒学第1法則
熱⼒学第1法則
系の内部エネルギーは,外とやりとりした仕事および熱の分 だけ変化する。
系
仕事 Win
Wout
Qout Qin
熱
U = Win Wout + Qin Qout
「熱」というのはエネルギーの移動形態の⼀つである。
「系」と「外の世界」全体のエネルギーは常に保存する
内部エネルギーは,⼊ってきたエ ネルギーの分だけ増えて,出て
いった分だけ減る
気体の内部エネルギー
ジュール・ゲイリュサックの実験 (断熱⾃由膨張)
気体 真空 気体 気体
このとき,気体の温度はほとんど変化しなかった
この実験結果から「気体の内部エネルギー」の性質を考える 状態の変化: (V0, T0, n) (V1, T0, n)
外部との熱,仕事のやりとり: なし
つまり,内部エネルギーは前後で変化していない
U (V0, T0, n) U (V1, T0, n) 内部エネルギーが体積によらない
定積準静変化
体積⼀定のじわじわした変化
V
n=⼀定
p
V0
p0 p1
T0 = p0V0 nR T1 = p1V0
nR T0 T1
この変化で吸収する熱は
Q = ncV (T1 T0)
この変化の際には外部と仕事のやりとりはないので,
U = Q = ncV (T1 T0)
cV は定積モル⽐熱
理想気体の定義
定積変化の解析から,
ジュール・ゲイリュサック実験→
U = ncV (T1 T0)
U (T, V, n) = ncV T
※T=0のときをU=0とすると
これを理想気体が満たすべき性質として採⽤する 理想気体の熱⼒学的定義:
理想気体の状態⽅程式 内部エネルギーの表式
pV = nRT U = ncV T
cV =
3
2R 単原子分子理想気体
5
2R 2 原子分子理想気体
· · ·
定積モル⽐熱は気体の種類による:
U (V0, T0, n) U (V1, T0, n)
実際には…
定積モル比熱 cV/R
⽔素の場合
定積モル⽐熱が温度に依存している 回転
振動
第98回薬剤師国家試験より
状態変化の例
定圧変化
V p
V0
p0
V1
T0 = p0V0
nR T1 = p0V1 nR
T = p0 nRV 定数
このときの内部エネルギーの変化は, U = ncV (T1 T0)
気体がする仕事Wは,
W = p0(V1 V0) = p0V1 p0V0 = nRT1 nRT0 = nR(T1 T0)
吸収する熱をQとすると,熱⼒学第⼀法則より U = Q W
Q = U + W = n(cV + R)(T1 T0)
定圧モル⽐熱 cp = cV + R マイヤーの公式
V0
p0
V1
p1
p = nRT0 V
定数
p
等温変化
W =
V1 V0
nRT0
V dV = nRT0 log V1 V0 気体がする仕事は
内部エネルギーの変化は
U = ncV T0 ncV T0 = 0
吸収する熱は Q = U + W = nRT0 log VV1
等温変化では,吸収した熱は全て気体の膨張に使われる0
(温度変化には使われない)
温度が変化しない≠熱の出⼊りがない
断熱準静変化
熱の出⼊りを遮断して,じわじわ変化させる。
準静変化なので,可逆変化である。
熱の出⼊りがないので,Q=0
(T0, V0, n) (T1, V1, n)
内部エネルギーの変化は, U = ncV (T1 T0)
気体がする仕事は,熱⼒学第1法則より U = Q W
W = U = ncV (T1 T0)
熱が出⼊りしなくても温度は変化する!
断熱準静変化
断熱変化で微⼩な体積変化dV を考える。
気体がする仕事dWは,圧⼒が⼀定だと近似して dW = pdV 温度変化がdT だとすると,dU = ncV dT
熱の出⼊りは遮断されているから,微⼩な体積変化のときも Q=0であり,
dU = dW
ncV dT = pdV状態⽅程式を⽤いると ncV dT = nRT
V dV cV
T dT = R
V dV 両辺を積分すると, cTV dT = VR dV
cV log T = R log V + C
log(T cV V R) = C 積分定数
すなわち,T cV V R = 定数 (ポアソンの関係式)
ポアソンの関係式
理想気体に対して,断熱準静変化の際には,
T cV V R = 定数
が成り⽴つ。この式をもうすこし変形して,
T V cVR = 定数 ここで,cR
V
= cp cV
cV = cp
cV 1 cp
cV > 1 とすると,
⽐熱⽐
T V 1 = 一定
pV = 一定
例:断熱準静膨張す ると温度が下がる 状態⽅程式
断熱変化のp-V図
V p
V0
p0
等温準静変化 断熱準静変化
p 1/V
p 1/V > 1 V が⼤きいところの落ち込み⽅は 断熱変化のほうが急になる
等温線の図と重ねてみる
V
p 温度が⾼い
温度が低い
断熱準静変化