晴 れ の 日
外国語学部英語英文学科1年藤間 渚
世界は案外 幸福に満ち溢れている教えてくれたのは 君だっけ学生時代から通っている 美味しい街角のパン屋さん陽だまりでくつろぐ猫 ふわふわのおなか駅前の花屋で買った 贈る花束大切な日だから 洗い立てのスーツを着て 滅多に出さないパンプスを履いてついでに桜色の髪飾りで あの頃より伸びた髪をまとめた綺麗な格好で 君に会うために晴天の並木通り この先で待つ 君に会うために
辿り着いた会場前 蒼白な感情が溢れていたそいつらに足を捕らわれないように 唇を嚙み締める目を濁らせた モノクロの人の列最奥に飾られた 場違いに明るい君の顔写真取り囲む 贈られた花々君の最後の舞台だから しっかり覚えておこうそう決めていたのにこれで最後だと 分かっていたのにこんな夢から早く目覚めて 君と一緒にパンを食べよう今もまだ そんな事すら考えてしまう それでも 嗚呼木製のベッドで 静かに瞼を降ろした君は
人生は案外 遅すぎることはない教えてくれたのは 君じゃないか公園のベンチに座る 空気の読めない日差しが眩しいもしもこの熱で 君と共に灰と帰して 秋風にでも呑まれればしかし しかしだ喉は渇く 腹は鳴る 血は廻るこの脈は 意識せずとも働き続けるいつか訪れるそれを待つ間にも 生はここにだから 黒いネクタイを外して 君から貰った髪飾りを付け直して憎たらしく輝く太陽に 届く気持ちで背伸びをした笑い皺を増やして 君に会うためにずっとずっと後で その先に待つ 君に会うために
そこで ふと気が付いた足元の砂に 数滴だけ雨のような跡が付いていた可笑しいな 雲なんて 一つも出ていないのに まったく
なんて酷い 僕らの人生みたいな そんな晴れの日
『晴れの日』コメント
幸福。一言で表せても、やはり難しいものです。例えば「巨万の富を得むとする男」と「美味い飯だけを望む男」がいたとします。どちらが上質であると言えるでしょうか。私には、天秤に掛けることさえ不可能だと思えます。人それぞれに青春が、夢が、思い出が。そうして積み上げてきた歴史があり、その莫大な遺産から生まれた価値観があります。そんな姿形も原材料も違ったそれを、どうして一つの物差のみで比べられましょうか。
さて、稚拙な詩でありますが、ご覧頂きありがとうございます。本作は、失ってしまった一人分の幸福に別れを告げる、とある少女の話です。太陽に思えた人は、もう目を覚まさない。しかし、未だに街中は幸福に溢れ返っていて、呼吸は続き、自分は生きている。そんな喪失感の中、彼女は一つだけ決意しました。「幸せに生きよう」と。世界は複雑怪奇です。でも、その中から「幸福」を掴もうと動けたのであれば、少しは明るく生きられるのではないでしょうか。
● 詩
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