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日本酒の消費量減少の規定要因分析に 基づく販売戦略の考察

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(1)

【 研究ノート 】

日本酒の消費量減少の規定要因分析に  基づく販売戦略の考察

須 藤 鉄 也

【要 旨】

 日本酒の消費量は減少傾向にある。要因として日本政策投資銀行(2013)は,人口減少と高齢化,生活 習慣・嗜好の変化,代替品の台頭,日本酒イメージの低下及び業界のマーケティング不足であると報告し ている。本研究の目的は,特に「消費世代」と「他の酒類との競合関係」の視点から日本酒の消費量が減 少していることの規定要因を明らかにし,その結果を基に販売戦略を提示することである。

 本研究では国税庁統計から得られた各都道府県の日本酒をはじめとする各酒類の消費量や,総務省統計 局から得られた人口動態的データを基に重回帰分析を行った。その結果,日本酒の消費量は高齢世代の多 い地域で多く,若い世代が多い地域で少なくなること,日本酒と他の酒類間にも強い相関が認められるこ とが明らかになった。最後にデータ分析の結果から進めるべき販売促進戦略として,地理的表示を積極的 に活用すべきであることを指摘した。

【キーワード】

日本酒,消費世代,競合関係,重回帰分析,販売戦略,地理的表示

1. は じ め に

1-1. 研究の背景

わが国の日本酒の消費量は全国的に縮小傾向にある。国税庁の統計資料(図

1)によると,2005

会計年度では

719,311 ㎘であった消費量が,2014

会計年度には

557,435 ㎘となり,161,87㎘の減少

が確認できる。製造者数では,2005年の

1,804

者が,2014年には

1,495

者となっており1,309者が 減少している。消費量の減少が製造者に与える影響は大きく2,製造者は早急な対応策を講じる必要 がある。対応策の策定にあたっては,日本酒の消費構造の解析により,消費量の減少要因を明らか にし,それに対する販売戦略の考察が必要と考える。

1 「清酒製造業の概況」(国税庁)による。調査対象は,各年101日で日本酒の製造免許を有する日本酒製

造業者(共同びん詰法人を含み試験製造及び期限付免許者を除く)である。

2 たとえば,近年では,20166月に福島県の代表的な中規模製造者である榮川酒造株式会社が,地域経済活 性化支援機構の再生支援を受け,食品関連会社の完全子会社となると発表した(『福島民報新聞』20166 28日付)。

(2)

1-2. 先行研究

日本酒の消費に関する先行研究として,消費構造の解明のための研究としては,『日本醸造協会誌』

に掲載された鈴木による一連の研究(2003 ; 2006 ; 2010a ; 2010b)があげられる。鈴木(2006)は,

全酒類の販売量における日本酒の構成比(以下「構成比」という)を基に日本酒の消費構造を検討 している。県別の構成比と気温,日照時間,雨量等の気象データとの相関分析を行い,それらの関 連を明らかにした。その後,鈴木(2010a)では対象をさらに広げ,県別の構成比と気象データ以 外も含めた自然環境,人口,世帯関係,住居関係等々の項目について相関分析を行った。分析の結 果,共働き世帯,高齢親族のいる世帯及び一般世帯の平均人員の減少などは,構成比の減少につな がり,人口の集中化,3次産業の就業者,未婚女性及び生活保護被保護高齢者の増加によっても構 成比は減少することが示された。さらに構成比の経年変化の研究により,近年の構成比減少のあり 方は将来も続くと予測し,日本酒が酒類間の販売競合に弱く無防備であると指摘した。これらの研 究が,他の酒類による日本酒の販売量への浸食の著しい時期に行われたこともあり,構成比を検討 素材としたことには一定の評価ができる。しかし,消費者嗜好が多様化し,日本酒市場がグローバ ル化された今日においては,構成比という枠に縛られることがない現状把握と対策が必要であると 考える。

消費者のニーズを把握する研究としては,消費者が酒類の何に興味があり,何を求めているのか について研究した倉光ほか(2008)がある。この研究からは,消費者の消費行動を洞察することに より,過去にはなし得なかった新しい戦略を構築できる可能性がある。しかし,消費行動は性別,

年代等により様々であり,真の消費者の態度や意識を把握することは困難である。実際には,消費 者自身がそれに気づいていない可能性もあると推測できる。まずは,日本酒消費の減少要因の把握 が必要であると考える。

著者が注目した先行研究に,日本政策投資銀行(2013)の報告(以下「投資銀行報告」という)

がある。この報告では日本酒消費の減少要因として

5

つの要因を指摘している。1つ目の要因は人 口減少と高齢化である。人口減少社会に突入し,飲酒可能な人員の絶対数が減少している。さらに,

(単位: ㎘)(年: 西暦)

(出所: 国税庁統計年報から著者作成)

1 全国の日本酒消費量の推移

(3)

これまで日本酒に親しんできた世代が高齢化したことにより,酒量が減少して需要減になっている。

2

つ目の要因は生活習慣・嗜好の変化である。以前は,家庭で日本酒を一升瓶からコップに注いで 飲むという晩酌習慣があった。最近では,缶容器や少量を飲みきるスタイルに変化している。また,

「低アルコール商品」が好まれる傾向にあり,日本酒がこれに対応しきれていない。3つ目の要因 は代替品の台頭である。市場にはビールをはじめ,しょうちゅう及び果実酒など多種多様な酒類が あふれており,日本酒はその選択肢の一つでしかなくなった。4つ目の要因は日本酒イメージの低 下である。果実酒やウイスキーなどの洋酒は「おしゃれ」,「かっこいい」というイメージがある。

反面日本酒は「おやじくさい」,「悪酔いしそう」というマイナスの印象が強い。さらに,パック酒 などの低価格酒の増加がイメージ低下につながった。5つ目の要因は業界のマーケティング不足で ある。日本酒業界は歴史のある業界であるが,その分,他の業界とくらべ外部環境に対応できてい ないことが日本酒離れに拍車をかけている。というものであり,要因の報告内容には説得力がある。

しかし,これらの要因が日本酒の消費数量に及ぼす影響について,数量的な検証報告はなされてお らず,根拠となる検証結果を示すべきではなかったかと考える。

1-3. 研究の目的

本研究は,日本酒の消費構造から消費量の減少要因を,特に消費世代の偏りと他の酒類との競合 の観点から明らかにし,著者なりの日本酒の販売戦略を提示することを目的としている。

具体的には,投資銀行報告で指摘されている日本酒の消費量減少要因のうち,消費世代の偏りと 他の酒類との競合に関して重回帰分析により検証し,その結果から日本酒業界がとるべき販売戦略 を考察する。重回帰分析のための変数選定にあたっては,先例研究である鈴木(2003 ; 2006 ;

2010a ; 2010b)の一連の研究手法を踏襲する。

1-4. 仮説の設定

(1) 消費世代に関する仮説

投資銀行報告の

1

つ目並びに

4

つ目の要因の内容から,日本酒は若い世代よりも高齢世代に多く 消費され,消費世代に偏りがあると考えられる。日本酒のマイナスイメージから,日本酒が新規飲 酒者に受け入れられにくい酒類となり,かつての愛飲者だけの酒類となっている可能性がある。日 本酒が,今後,若い世代に受け入れられるための対応策を考察するにあたり,消費世代の現状を把 握することは重要である。

仮説として,日本酒の消費量と高齢世代には正の関係がある(仮説

1)及び日本酒の消費量と若

い世代には負の関係がある(仮説

2)という設定をした。

(2) 他の酒類との競合に関する仮説

同じく投資銀行報告の

2

つ目並びに

3

つ目の要因の内容から,他の酒類は日本酒と競合し,日本 酒の消費量へ影響を及ぼすと考えられる。

競合する他の酒類としては,まず,同じ国酒であり,飲酒世代並びに飲酒形態が近似していると 考えられるしょうちゅう類との競合がある。次に,酒類の消費数量としては絶対的に数量の多いビー

(4)

ルとの競合が考えられる。さらに,同じ醸造酒であり,日本酒と同じく料理との相性が重視される 果実酒との競合が考えられる。最後に,若い世代には,飲料習慣として清涼飲料水の延長上にある 酎ハイ等のリキュールとの競合が考えられる。

仮説として,日本酒の消費量としょうちゅう類の消費量とは負の関係にある(仮説

3),日本酒

の消費量とビールの消費量とは負の関係にある(仮説

4),日本酒の消費量と果実酒の消費量とは

負の関係にある(仮説

5)及び日本酒の消費量とリキュールの消費量とは負の関係にある(仮説 6)

という設定をした。

2. 方   法

前章の

6

つの仮説を検証するために,本章では消費世代の偏りの把握(以下「研究

I」という)

並びに他の酒類との競合関係(以下「研究

II」という)について,それぞれ重回帰分析を行う。

2-1. データセット

(1) 研究I

国税庁及び政府統計の総合サイト(e-

Stat)のデータ,並びに一部加工したものを分析に用いる。

被説明変数は,先行研究において鈴木(2010a)が用いた構成比ではなく,日本酒の一人当たり消 費量である。国税庁統計から各都道府県の

2014

会計年度の日本酒の消費量を収集して,総務省人 口推計統計の

2014

10

1

日現在の成人人口で除して算出する。説明変数は,総務省統計局が公 表している「統計でみる都道府県のすがた

2016」のデータを活用する。当資料は 444

項目を

12

に 区分して掲載している。本研究は,その内の人口・世帯区分

40

項目から関連性の高いと考えられ る人口動態的データを説明変数として抽出した。詳細は表

1

のとおりである。資料は

2014

年のデー タを基本としているが,統計調査が未実施の場合には

2014

年近時のデータを用いる。各変数のデー タ年については巻末資料に示した。

1 研究Iの説明変数

変   数   名 変   数   説   明 出   所

老 年 人 口 割 合 65歳以上人口/人口総数 

統 計 で み る 都 道 府県のすがた 2016(総務省)

率 (出生数─死亡数)/人口総数  率 出生率/人口総数[人口千人当たり]  

年 齢 別 死 亡 率 死亡数(65歳以上)/老年(65歳以上)人口[人口千人当たり]

核 家 族 世 帯 割 合 核家族世帯/世帯数(一般世帯)    

高 齢 世 帯 員 世 帯 割 合 65歳以上の世帯員のいる世帯割合/世帯数(一般世帯)

高 齢 夫 婦 世 帯 割 合 高齢夫婦世帯数(夫婦のみ)/世帯数(一般世帯) 

高 齢 単 身 世 帯 割 合 高齢単身世帯数/世帯数(一般世帯) 

共 働 き 世 帯 割 合 共働き世帯数/世帯数(一般世帯) 

(5)

(2) 研究II

データの出所は(1)同様,国税庁及び政府統計の総合サイトのデータを用いる。被説明変数は,

研究

I

に同じく日本酒の一人当たり消費量であり,算出方法も同じである。説明変数は,同じ資料 から日本酒以外の酒類について,同算出方法によりそれぞれの一人当たり消費量を算出した。詳細 は表

2

のとおりである。資料はすべて

2014

年のデータを用いている。

2 研究IIの説明変数

変   数   名 変   数   説   明 出   所

酒 合成清酒の年間消費数量/101日現在の成人人口   

国税庁統計年報

(国税庁)

統計でみる都道 府県のすがた 2016(総務省)

留 連続式蒸留しょうちゅうの年間消費数量/101日現在の成人人口 留 単式蒸留しょうちゅうの年間消費数量/101日現在の成人人口 ん みりんの年間消費数量/101日現在の成人人口

ル ビールの年間消費数量/101日現在の成人人口 酒 果実酒の年間消費数量/101日現在の成人人口  酒 甘味果実酒の年間消費数量/101日現在の成人人口  ー ウイスキーの年間消費数量/101日現在の成人人口  ー ブランデーの年間消費数量/101日現在の成人人口  酒 発泡酒の年間消費数量/101日現在の成人人口  ツ スピリッツの年間消費数量/101日現在の成人人口  ル リキュールの年間消費数量/101日現在の成人人口  他 その他の醸造酒,雑酒及び粉末酒の年間消費数量/101日現在

の成人人口

2-2. 分析の方法

IBM SPSS Statistics 23

を用いて重回帰分析を行う。分析手順と用いる基準は研究

I

と研究

II

で 同様である。まず,前節により設定した被説明変数と説明変数を用いて重回帰分析を行う。次に分 散分析表の有意確率が十分に小さな値であることを確認し,外れ値の検討を行う。外れ値は標準化 残差が±3に収まらない個別データをそのつど検討し,必要に応じて除去する。次に多重共線性の 検討を行う。多重共線性は,各説明変数間の相関係数が

0.9

以上,並びに

VIF

10

以上の変数を 検討対象とする。該当変数がある場合には,被説明変数や他の説明変数との相関などを考慮しなが ら総合的に判断して,一方の変数を削除する。次に各説明変数の有意性を検討する。有意確率の大 きな値となった変数を除去し,改めて重回帰分析を行うという作業を,最終的に偏回帰係数の検定 結果がすべて有意となるまで繰り返す。また,決定係数(R2)の値や自由度調整済み決定係数(補 正

R

2)の値の変化も参照する。最後に重回帰式を作成し,モデルの説明力や各説明変数の重要度 を比較する3

3 モデルの説明力は決定係数(R2)を用いる。また,通常,各説明変数の重要度は標準化偏回帰係数を用いて 判断するところだが,本研究では各説明変数の単位が,研究I,研究IIともにそろっていることから,偏回 帰係数で判断する。

(6)

3. 結   果

3-1. 研究Iの結果

分析に用いたデータセットは巻末資料

1

である。まず,すべての変数を含めて重回帰分析を行っ たところ,分析結果は表

3

のとおりであった。次に外れ値の検討を行うため標準化残差を確認した ところ(巻末資料

3),「15

新潟県」の標準化偏差の値は

3.696

であり,外れ値の除外対象を標準化 残差の値±3と設定したため,外れ値として除外した。次に多重共線性の検討を行った。各説明変 数間の相関係数から相関関係の強さを検討し,VIFを算出した結果,多重共線性の疑わしい変数は みられなかった。続いて,有意でない変数を順番に一つずつ削除しては重回帰分析を行う,という 作業を繰り返した結果,すべての説明変数が有意となった(表

4)。最終残差出力は巻末資料 4

の とおりであった。

3 初期分析結果(研究I)

有意確率 0.000

重相関 R 0.865 重決定 R2 0.748 補 正 R2 0.687

変    数    名 偏回帰係数 p 95%信頼区間

(下限/上限) 平均値 標準偏差 VIF 切         -5.610 0.756 -41.885 30.664 5.682 1.951

1.224 0.082 -0.163 2.610 27.521 2.711 132.754

29.727 0.053 -0.392 59.847 -0.334 0.222 420.211

-3.921 0.018 ** -7.143 -0.700 7.764 0.850 70.437

0.766 0.121 -0.211 1.744 35.692 2.736 67.131

核 家 族 世 帯 の 割 合 -0.125 0.243 -0.339 0.089 56.320 3.421 5.028 高 齢 世 帯 員 世 帯 割 合 0.130 0.346 -0.145 0.404 41.489 5.508 21.524 高 齢 夫 婦 世 帯 割 合 -0.541 0.208 -1.396 0.314 10.715 1.486 15.170 高 齢 単 身 世 帯 割 合 -0.121 0.675 -0.702 0.459 9.411 1.851 10.853 共 働 き 世 帯 割 合 -0.027 0.803 -0.247  0.192 27.405 4.353 8.579 

** 5%有意, 10%有意

(7)

4 最終分析結果(研究I)

有意確率 0.000

重相関 R 0.885 重決定 R2 0.783 補 正 R2 0.762

変    数    名 偏回帰係数 p 95%信頼区間

(下限/上限) 平均値 標準偏差 VIF 切         24.221 0.000 17.347 31.094 5.535 1.691

6.632 0.000*** 3.391 9.873 -0.330 0.223 8.468

-1.627 0.000*** -2.141 -1.113 7.778 0.854 3.126 核 家 族 世 帯 の 割 合 -0.228 0.000*** -0.307 -0.148 56.409 3.403 1.201 高 齢 者 世 帯 員 世 帯 割 合 0.217 0.000*** 0.116 0.318 41.357 5.493 4.996

*** 1%有意

 最終分析結果から求められる重回帰式は次のとおりである。

  Y=

24.221

6.632X

a1-1.627Xa2-0.228Xa3

0.217X

a4

   (ただし,Xa1

:

自然増減率,Xa2

:

粗出生率,Xa3

:

核家族世帯割合,Xa4

:

高齢者世帯員世帯 割合)

3-2. 研究IIの結果

分析に用いたデータセットは巻末資料

2

である。まず,すべての変数を含めて重回帰分析を行っ たところ,分析結果は表

5

のとおりであった。次に外れ値の検討を行うため標準化残差を確認した ところ(巻末資料

5),特に外れ値に該当する値はなかった。次に多重共線性の検討を行った。各

説明変数間の相関係数から相関関係の強さを検討し,VIFを算出した結果,多重共線性の疑わしい 変数はみられなかった。続いて,有意でない変数を順番に一つずつ削除しては重回帰分析を行う,

という作業を繰り返した結果,すべての変数が有意となった(表

6)。最終残差出力は巻末資料 6

のとおりであった。

5 初期分析結果(研究II)

有意確率 0.000

重相関 R 0.845 重決定 R2 0.714 補 正 R2 0.602

変    数    名 偏回帰係数 p 95%信頼区間

(下限/上限) 平均値 標準偏差 VIF

5.148 0.004 1.735 8.560 5.682 1.951

酒       8.217 0.000 *** 4.355 12.079 0.350 0.126 1.739 -0.101 0.649 -0.548 0.346 3.458 1.902 5.311 -0.177 0.081 -0.377 0.023 5.330 4.002 4.696

(8)

変    数    名 偏回帰係数 p 95%信頼区間

(下限/上限) 平均値 標準偏差 VIF -0.557 0.394 -1.869 0.755 0.930 0.334 1.409 0.179 0.010 *** 0.045 0.313 22.751 4.562 2.744 -0.300 0.098 -0.658 0.058 2.656 1.668 2.620 2.240 0.459 -3.848 8.328 0.093 0.075 1.512 0.132 0.934 -3.107 3.371 0.970 0.333 8.523 -17.085 0.117 -38.656 4.487 0.062 0.021 1.528 9.752×10-5 0.999 -0.312 0.313 8.070 2.517 4.543 -0.081 0.833 -0.858 0.696 2.795 0.783 2.722 -0.103 0.375 -0.336 0.130 18.564 3.336 4.428 -0.144 0.504 -0.577 0.290 6.583 1.916  5.062

***1%有意, 10%有意

6 最終分析結果(研究II)

有意確率 0.000

重相関 R 0.834 重決定 R2 0.695 補 正 R2 0.650

変    数    名 偏回帰係数 p 95%信頼区間

(下限/上限) 平均値 標準偏差 VIF

4.188 0.002 1.590 6.787 5.682 1.951

7.953 0.000*** 4.868 11.037 0.350 0.126 1.277

-0.200 0.000 *** -0.292 -0.108 5.330 4.002 1.148

0.163 0.002 *** 0.066 0.260 22.751 4.562 1.648

-0.215 0.067 -0.445 0.016 2.656 1.668 1.249 -18.964 0.039 ** -36.888 -1.039 0.062 0.021 1.214 -0.117 0.050** -0.235 0.000 18.564 3.336 1.301 

***1%有意,** 5%有意, 10%有意

 最終分析結果から求められる重回帰式は次のとおりである。

  Y=

4.188

7.953X

b1-0.200Xb2

0.163X

b3-0.215Xb4-18.964Xb5-0.117Xb6

   (ただし,Xb1

:

合成清酒,Xb2

:

単式蒸留,Xb3

:

ビール,Xb4

:

果実酒,Xb5

:

ブランデー,

X

b6

:

リキュール)

4. 考   察

4-1. 研究Iの考察

研究

I

の分析結果の偏回帰係数から,「自然増減率」及び「高齢世帯員世帯割合」は日本酒の消
(9)

費量と正の関係があり,「粗出生率」及び「核家族世帯割合」は負の関係にあることが明らかとなっ た。変数個々の考察は次のとおりである。「自然増減率」は日本酒の消費量と正の関係にあり,人 口増加が大きい地域は日本酒の消費量も多い。偏回帰係数の数値が他に比べ大きく,影響力が大き い。出生数から死亡数を減じ人口総数で除した数値であり,日本酒の消費量と人口増減に関連性が あることが示された。各都道府県の変数値は,東京都,愛知県,滋賀県及び沖縄県以外は減少値で あり,総体的に日本酒の消費量は少なくなる。「粗出生率」は出生数を総人口で除した数値であり,

消費量と負の関係にある。粗出生率が高い地域,すなわち若い世代の多い地域ほど日本酒の消費量 が少ないと考えられることから,若い世代に日本酒がうまく受け入れられていないと推測される。

「核家族世帯割合」は大家族世帯と対となる表現であり,消費量とは負の関係にある。核家族が多 い地域,すなわち若い世代の多い地域ほど日本酒の消費量が少ない。「高齢世帯員世帯割合」は消 費量と正の関係にある。「高齢者が多い世帯」が多い地域ほど日本酒の消費量は多く,高齢世代に 日本酒が愛飲されていることが推測される。

以上の考察を総括すると,日本酒の消費量は人口の増減と関連があり,若い世代が多い地域で少 なく,高齢世代の多い地域で多いという結果となった。このことから,日本酒の消費量と消費世代 には偏りが生じていると推測される。これらは,投資銀行報告が指摘している日本酒の消費動向の 内容であり,設定した仮説

1

及び仮説

2

が支持された。

4-2. 研究IIの考察

研究

II

の分析結果では,偏回帰係数から「合成清酒」及び「ビール」の消費量と日本酒の消費 量は正の関係にあり,「単式蒸留」,「果実酒」,「ブランデー」及び「リキュール」の消費量は負の 関係にあることが明らかとなった。鈴木(2003)も酒類間の相関については,ビールは正,リキュー ルは負の関係であると報告しており,本研究の結果と一致する。個々の変数について,日本酒の消 費量との関係を考察する。「合成清酒」の消費量は日本酒の消費量と正の関係にあり,合成清酒の 消費量が多い都道府県は日本酒の消費量も多い。開発経緯から日本酒の補完酒類といえ,その消費 動向は日本酒に追従し同調関係にあるといえる。「単式蒸留」の消費量は日本酒の消費量と負の関 係にあり,単式蒸留の消費量が多い都道府県は日本酒の消費量が少ない。日本酒から単式蒸留しょ うちゅうへの乗り換えデータとして,日本政策投資銀行新潟支店(2012a)の報告がある。2000年 度から

2005

年度にかけての単式蒸留しょうちゅうブーム時に,「家のみ」消費依存度の高い世代の 日本酒消費量が大きく低下したとしている。これは単式蒸留しょうちゅうの消費量が,日本酒の消 費量に大きく影響することを示していると推測される。「ビール」の消費量は日本酒の消費量と正 の関係にあり,ビールの消費量が多い都道府県は日本酒の消費量も多い。この内容は,著者の仮説 と相反する結果となった。ビールは新ジャンル製品開発による品目移行もあり,消費量が複雑に推 移していると推測される。また,昨今では若者のビール離れも業界では大きく問題視されており,

日本酒と共通の課題を抱えている。「果実酒」の消費量は日本酒の消費量と負の関係にあり,果実 酒の消費量が多い都道府県は日本酒の消費量が少ない。果実酒は

AOC

法等4,国際的に商品表示の

4 山本(2009)によれば,AOC法(フランスの統制原産地呼称法)は,EUワイン規制に大きな影響を与えて いる。ワインの生産に関し条件を定めている。産地区画(AOC21条)。植えることができる原料ブドウの

(10)

規制で保護がされている酒類である。2015年

10

月の環太平洋経済連携協定(以下「TPP」という)

の大筋合意では輸入果実酒の関税引き下げが予定されており,輸入拡大が予想される。これに対抗 するため,国は告示で『日本ワイン』表示による国内果実酒の保護強化を図っている5。国際的潮流 からワイン法制定の話題もあり,日本酒消費量への影響力はますます強まると推測される。「ブラ ンデー」の消費量は日本酒の消費量と負の関係にあり,ブランデーの消費量が多い都道府県は日本 酒の消費量が少ない。その変数値は他の酒類消費量と比較すれば小さいが6,偏回帰係数は高く,グ ローバルな取引を考慮した場合,国際的に認知されている「ブランデー」の影響力は大きいと推測 される。「リキュール」の消費量は日本酒の消費量と負の関係にあり,リキュールの消費量が多い 都道府県は日本酒の消費量が少ない。倉光ほか(2008)では,リキュールは男女ともに若い世代の 興味が高く,調査期間中に

20

代の

98.5%

を占める学生ではリキュールが一番飲まれていたと報告 している。若い世代のリキュール飲酒は,清涼飲料水の延長線上にあると考えられる。日本酒業界 が根本的に対処するには,幼年期からの嗜好の変革を推進することが必要であり現実的ではない。

実際には,若い世代のリキュール飲酒の隙間に日本酒がどのように入り込むかが課題となり,拙速 な対応はできないと考える。日本酒業界にとっての救いは,日本酒ベースのリキュール商品の開発 が期待されるということである。

以上のことから,日本酒と競合する酒類として対処すべき酒類は,「単式蒸留」,「果実酒」及び「ブ ランデー」であると考察する。これらの酒類に共通しているのは,いずれも商品表示が国際協定で 追加保護されている酒類ということである7。倉光ほか(2008)の調査では,調査対象者が興味のあ る酒類として,年齢が上がるにつれ,男性では,単式蒸留しょうちゅう又は日本酒に,女性では,

果実酒又は日本酒に興味を示す割合が増加すると報告している。結果考察にあたり非常に興味深い 内容である。結果は,投資銀行報告が指摘している他の酒類との競合による影響を示している。設 定した仮説では,仮説

3,5

及び

6

について支持されたが,仮説

4

については支持されなかった。

4-3. 販売戦略

日本酒の販売戦略について,日本政策投資銀行新潟支店(2012b)では,世代需要の拡大,高付 加価値化,情報力の強化,さらには地理的表示等あらゆる観点から販売戦略を提示している。しか し,その内容が多岐の分野に及ぶため焦点が定まりにくい。そこで本研究では,分析結果と考察か

品種(AOC21条)。単収の上限の設定(AOC21条)。ブドウ糖度の最低水準を確認し収穫日について の言及(農業法典D.644条の24)。添加物のない自然製法を前提とした補糖・補酸の規制(AOC21条)。

灌漑の規制(農業法典D.644条の23)。醸造に関し伝統に従った忠実で継続的な用法の維持。出荷前の第三 者による分析・官能検査での品質の確認。「原産及び品質全国機関」(INAO)が発行する合意証明書の流通 時添付義務(AOC1条)。出荷時期規制により早期出荷の原則禁止(19751115日付「原産地呼称ワ インの販売関する政令」)。であり,これらの法規制を根拠として,国際協定により商品表示が保護されている。

5 平成27年国税庁告示第18号。

6 2014会計年度における全国総計の一人当たり消費量は,日本酒が5.315 ㎘,ブランデーが0.063 ㎘であった。

7 後述する国際協定の地理的表示では,ぶどう酒及び蒸留酒について追加保護が定められている。国際的に有 名な地理的表示としては,果実酒では,「ボルドー」,「シャンパーニュ」,「ブルゴーニュー」などがあり,

ブランデーでは「コニャック」がある。

(11)

ら若い世代への対応と,日本酒消費に脅威となる酒類への対応を基に販売戦略を考察する。

1) 販売戦略の提示

著者が研究

I

及び研究

II

の結果を踏まえて提示する販売戦略は,日本酒の地理的表示(Geograph-

ical Indication)の取得である。

研究

I

から,日本酒の消費構造は世代によって大きく異なり,日本酒が若い世代に受け入れられ ていないことが考察された。その対応策の一つとして,日本酒のラベル改良が考えられる。倉光ほ か(2008)では,お酒に興味がある者でも年代が下がるにつれて,調査期間中の飲酒者の割合は減 少傾向にあったと報告している。しかし,その実態を精査した日本政策投資銀行新潟支店(2012a)

では,他の世代と比べて

20

代・30代男女の飲酒者の割合が特段低いわけではなく,飲酒頻度の少 ないライト・ドリンカーが多いため,同世代の消費量減少につながっていると考察している。さら に,これらの者が潜在的な飲酒者となりうると報告している。また,同じく倉光ほか(2008)の調 査では,日本酒は様々な飲まれ方があり8,種類と飲み方の組み合わせも多様であるため9,「日本酒 は難しい」といった先入観が消費者にあると指摘している。須藤ほか(2004)の日本酒ラベル調査 では,日本酒の成分から酒質や特徴が判断できる消費者は少数であること,改善要望として風味や 特徴を分かりやすくしてほしいという意見があった。また,買いたくなるラベルは,「シンプル」,「和 紙」,「毛筆」,「わかりやすい」ものであるという内容であった。これらは若者の日本酒離れの背後 にある要因の一つと推測される。ラベルの情報は,消費者にとって大変身近であるとともに商品選 択の重要な情報である。それを見直すことにより,潜在的な飲酒者を取り組むことができる。若い 世代に「おいしい・うまい」の良さを知ってもらうためには,先ずは日本酒を手に取ってもらうこ とである。わかりやすいシンプルなラベルが必要であり,これが著者の研究

I

から導き出される戦 略となる。

研究

II

から日本酒消費量に脅威となるのは,単式蒸留しょうちゅう,果実酒及びブランデーで あると考察した。これら酒類が共通するのは,地域との関係が密接であり,地方色が豊かなことで ある。これが背後にある要因となり,日本酒消費量に影響を与えていると推測される。これらの酒 類と情報発信時において同じ土俵に立たなければならない。果実酒及び蒸留酒は10,その地理的表 示が国際的にも保護されている。髙橋(2011)が指摘しているように,商品の付加価値を高めるた めの国際的な潮流は,地理的表示の保護体制の強化である。TPPの大筋合意により,日本産酒類 の地理的表示の保護手続きが動き出した。2015年

12

月に『日本酒』が日本独自の保護規定で地理 的表示の指定を受けることとなったが,それだけでは果実酒及び蒸留酒に対抗することはできない。

日本酒は全国各地に

1,500

場ほどの醸造蔵が存在し,その地域性は日本酒の強みといえる。日本酒 産地による地理的表示の積極的な活用は,国内外で他の酒類に対抗するための有益な手段となり得

8 日本酒には,冷と燗といった飲み方があるが,その温度により「熱燗」,「ぬる燗」,「人肌燗」等々の表現が ある。

9 日本酒には,「大吟醸」,「純米」,「本醸造」等の特定名称酒のほか「普通酒」があり,それぞれ飲み方の違 いがある。その違いを楽しむまでには,経験が必要となる。

10 単式蒸留しょうちゅう及びブランデーは,蒸留酒に含まれる。

(12)

る。地理的表示はその背後に品質管理機関があり,多くの説明を要することなく消費者に品質情報 を提供できる。現に輸入果実酒のラベルはシンプルである。このことは,研究

I

から導き出された シンプルなラベル戦略にも対応できる。

以上のことから,著者が提示する日本酒の販売戦略は,知的地域財産である地理的表示を,日本 酒産地が積極的に活用することである。鈴木(2010b)は日本酒の販売戦略について,地域性を生 かしたローカル的な市場展開に力を入れるべきであると提案している。昨今の市場のグローバル化 傾向によって,ローカル的市場展開が,全国的にさらには国際的に広がる可能性を秘めている。

2) 地理的表示の内容

販売戦略となる地理的表示は,地域に由来する品質や特徴を備えている産品にその原産地を表示 するものである。その定義を,わが国が加入している世界貿易機構(以下「WTO」という)の

1995

年に発効した「世界貿易機関を設立するマラケッシュ協定附属書

1C

知的所有権の貿易関連の 側面に関する協定」(以下「TRIPS協定」という)では,「ある商品に関し,その確立した品質,

社会的評価その他の特性が当該商品の地理的原産地に主として帰せられる場合において,当該商品 が加盟国の領域又はその領域内の地域若しくは地方を原産地とするものであることを特定する表 示」としている11。一定の生産・品質等の基準を満たした産品だけに用いることを認め,知的財産 として表示を保護することにより,地域ブランドの信用を高めることができる。特に食文化はその 土地との関係が深く,商品の名前に産地名を付すことでその特徴を識別することができる。このこ とは需要者にとっては便利な情報であり,マーケティング戦略の一環として,わが国でも古くから 使われてきた。

TRIPS

協定に対応するため,1994年

12

月に国税庁は酒類業組合法に基づき「地理的表示に関す

る表示基準」を告示した12。さらに告示の見直しがなされ,保護をされる対象酒類は,国産酒にお いては

2015

10

月から全酒類に拡大された。日本国の酒類の産地のうち国税庁長官が指定するも の,並びに

WTO

加盟国のぶどう酒,蒸留酒の産地を表示する地理的表示のうち当該産地以外の地 域を産地とするものについて使用が禁止される13。国税庁長官の指定は「酒類の産地に主として帰 せられる酒類の特性に関する事項」,「酒類の原料及び製法に関する事項」,「酒類の特性を維持する ための管理に関する事項」並びに「酒類の品目に関する事項」を判断してなされる14。現在指定さ れている産地名は,果実酒が「山梨」,単式蒸留しょうちゅうが「壱岐」,「球磨」,「琉球」及び「薩 摩」,日本酒が「白山」,「山形」と

2015

12

月に国レベルで指定された「日本酒」である15

TRIPS

協定の地理的表示で「追加的保護」を規定していのは,ぶどう酒と蒸留酒であり16,その他

の酒類については日本独自の保護となる。

11 TRIPS協定第221項。

12 酒類業組合法第86条の6・TRIPS協定第231項。

13 平成6年国税庁告示4号第2項。

14 これらを「生産基準」という。

15 直近の指定は,20161216日に指定された日本酒の「山形」である。

16 TRIPS協定第23条。

(13)

地理的表示は,酒類産品では

EU

のぶどう酒表示を中心に国際的な潮流となっている。知的財産 権である地理的表示は,品質信頼性を確保するものであり,需要者はそれにより安心して商品を購 入することができる。日本酒市場がグローバル化していく中で17,国際レベルでのブランド構築が 必要であり有益な販売戦略となる。

5. お わ り に

1) 今後の課題

本研究では,日本酒の消費構造について重回帰分析により,消費量の減少要因の解明をおこなっ た。しかし,消費構造のすべてを一研究で捉えることはできない。結果と要因の間には,擬似的,

媒介的な関係が入り込んでいることは十分に考えられる。商取引並びに消費者嗜好が多様化すれば,

そのリスクは増加する。正確な結果考察にはその見極めが必要であり,対応としては層化が重要な 作業となる。先行研究である倉光ほか(2008)の結果でも,飲酒嗜好の男女相違が指摘されており,

層化により結果が大きく変わる可能性がある。また,単年の分析だけではなく,他の年度でも分析 検討を行い,重回帰式の比較を行う必要がある。さらに,日本酒の消費量と消費世代の関係,酒類 間の競合関係について考察を深める手法として,消費者対象のアンケートの実施が考えられる。

本報告の販売戦略については,結果と考察を基に著者なりの考えを提示した。地理的表示の取得 は,グローバルな市場取引及び国際的な潮流を考慮すれば,日本酒業界が最低限とるべき施策と考 えられる。ただし,実現のためには地理的表示の性質から取得に向けた地域連携が重要であり,地 道な体制づくりの活動が必要となる。また,地理的表示に対する知覚や販促効果を検証するため,

日本酒の地理的表示を先行実施している「白山」の実態調査をすべきと考える。

(2) まとめ

日本酒の消費量は近年では減少傾向にある。その要因として投資銀行報告では,人口減少と高齢 化,生活習慣・嗜好の変化,代替品の台頭,日本酒イメージの低下及び業界のマーケティング不足 を指摘している。本研究では,この投資銀行報告の指摘を重回帰分析により検証し,その結果を基 に日本酒業界がとるべき販売戦略を考察した。分析結果の考察から,研究

I

では日本酒の消費量は 人口増減と強い関連があり,高齢世代の多い地域で多く,若い世代が多い地域で少なくなることが 推測された。研究

II

では,日本酒と他の酒類間に強い相関が認められた。これらの内容は,投資 銀行報告が指摘している日本酒の消費量減少要因と合致するものである。この分析結果と考察を踏 まえて,販売戦略として地理的表示の積極的な活用を提示した。

17 昨今の経済取引のグローバル化は日本酒業界においても例外ではなく,日本酒は国内では消費量の縮小で苦 戦しているが,海外に目を向けると世界規模での人口増加,発展途上国の経済成長及び世界的な日本食ブー ムにより市場の拡大が見込まれている。国税庁統計年報(国税庁)では,20048,796 ㎘であった輸出量が,

2013年では16,202 ㎘と10年間で1.8倍になっており,その後も増加傾向にある。促進策の一環として,宇

都宮ほか(2006)では,日本酒の品質評価規格の国際的な統一を図っている。

(14)

研究

I

から,若い世代に日本酒をまずは手に取ってもらうため,わかりやすいシンプルなラベル が必要であると考察した。研究

II

では,日本酒の消費量と負の関係があり,かつ対策が急がれる のは,単式蒸留しょうちゅう,果実酒及びブランデーであることが確認された。これらの酒類は,

国際的に地理的表示により保護されている酒類である。日本酒においても,全国各地に製造者が存 在し,それを生かせる地理的表示の積極的な活用は,日本酒の魅力を伝える有益な施策になると考 えられる。また,地理的表示は背後に品質管理機関があり,安心した品質情報を消費者に提供でき る。よって,シンプルなラベルが可能であり,研究

I

の戦略にも対応できる。

多くの問題を抱える日本酒業界ではあるが,近年,その製造技術は格段に向上している。著者の 郷土である福島県は,全国新酒鑑評会では常に多くの酒蔵が上位入賞している。さらに海外の酒類 コンテストでも高い評価を得ており,その品質には定評がある18,19。その結果

,

日本酒に興味を持つ 女性並びに若者が増えており,そこに一筋の光が見える。宇都宮,橋爪(2008)の調査報告によれ ば,日本酒を飲む機会が増えた者の理由は「おいしい・うまい」であり,他の理由と比較して飛び ぬけて高い。今まで飲まなかった日本酒を飲んでみて,その良さをあらためて知ったものであると 考えられる。地理的表示を積極的に活用し,今こそ,その高い技術力と高品質に裏付けられた日本 酒の良さを,国内外に発信すべきと考える。

参 考 文 献

宇都宮仁,磯谷敦子,岩田博,中野成美(2006),「清酒の官能評価分析における香味に関する品質評価用語及び標 本見本」『酒類総合研究所報告』,(175),45-52.

宇都宮仁,橋爪克己(2008),「清酒・ビール・ウイスキーの飲酒動機に関する調査」『酒類総合研究所報告』,(180),

73-92.

倉光潤一,宇都宮仁,橋爪克己(2008),「酒類に関する国民ニーズ調査」『酒類総合研究所報告』,(180),57-72.

鈴木昭紀(2003),「酒類の販売数量間の関係について(その3)」『日本醸造協会誌』,98(2),112-120.

鈴木昭紀(2006),「酒類の販売数量構成比と気象データについて(1)」『日本醸造協会誌』,101(7),487-509.

鈴木昭紀(2010a),「酒類の販売数量構成比について」『日本醸造協会誌』,105(4),188-200.

鈴木昭紀(2010b),「清酒の需要開発及び商品開発を取り巻く諸問題について」『日本醸造協会誌』,105(10),

641-652.

須藤茂俊,篠田典子,高田昭則,木崎康造(2004),「清酒のラベル情報に関する認識度調査」『酒類総合研究所報告』,

(176),79-92.

髙橋梯二(2011),「商標とは異なる独自の地理的表示保護」『知財研フォーラム』,(86),17-24.

株式会社日本政策投資銀行地域企画部(2013),『清酒業界の現状と成長戦略─ 「國酒」の未来─』,株式会社日本 政策投資銀行,9-12.

18 福島県は,全国新酒鑑評会において,2013年から4年連続で金賞受賞蔵数日本一を果している。また,毎年 ロンドンで開催されるインターナショナル・ワイン・チュレンジ(IWC)では,2015年に喜多方市のほまれ 酒造㈱が日本酒部門で最高賞を受賞している。同じ年の全米日本酒歓評会では,会津若松市の花春酒造㈱が 大吟醸の部でグランプリに輝いている。その他,国内の審査会においても県産酒の活躍は,東日本大震災後 の風評被害等にもかかわらず目を見張るものがある。

19 福島県酒造組合は,「県清酒アカデミー職業能力開発校」を1992年に設立し運営している。製造工程のマニュ アル化を行い,経験や感覚頼みだけではない技術伝承に力を入れている。また,「高品質清酒研究会」では,

今まで秘伝とされてきた各蔵の技術や製法を公開し研鑚を積んでいる。福島県酒造業界の技術が向上した要 因の一つであると考えられる。

(15)

株式会社日本政策投資銀行新潟支店(2012a),『酒類業界の現状と将来展望(国内市場)─清酒を中心に─』,株式 会社日本政策投資銀行,15-16,18-25.

株式会社日本政策投資銀行新潟支店(2012b),『酒類業界の現状と将来展望(国内市場)─新潟清酒の場合─』,株 式会社日本政策投資銀行,121-122.

山本博他(2009),『世界のワイン法』,日本評論社,79-93.

国税庁統計年報(国税庁),(参照2016.04.23)

(http://www.nta.go.jp/koho/tokei/kokuzeicho/tokei.htm).

国税庁統計年報(国税庁),(参照2016.05.04)

(http://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/yushutsu/01.htm).

酒税行政関係情報(国税庁),(参照2016.06.04)

(https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/hyoji/minaoshi/pdf/torikumi.pdf).

清酒製造業の概要(国税庁)(参照2016.12.23)

(https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/seishu).

統計でみる都道府県のすがた2016,(総務省),(参照2016.04.23)

(http://www.stat.go.jp/data/k-sugata/gaiyou).

(16)

巻末資料1 データセット(研究I)

単 位 % % % % % % % % %

データ年 2014 2014 2014 2014 2014 2010 2010 2010 2010 2010 日本酒一人当

たり消費量 老年人口

割合 自然増減率 粗 出 生 率 年齢別

死亡率 核家族

世帯割合 高齢者世

帯員割合 高齢夫婦

世帯割合 高齢単身 世帯割合 共働き

世帯割合

1 5.06 28.1 -0.43 6.86 34.67 57.48 36.58 12.11 10.82 21.24

2 6.38 29.0 -0.62 6.70 38.90 53.65 45.75 9.76 9.88 27.31

3 6.97 29.6 -0.58 6.86 37.79 51.14 48.14 9.95 9.00 29.57

4 6.58 24.6 -0.21 7.76 34.82 52.40 37.88 8.56 7.02 24.60

5 9.34 32.6 -0.88 5.78 40.09 52.08 53.11 11.49 10.14 30.78

6 7.95 29.9 -0.62 7.04 40.29 48.29 52.93 9.55 7.66 36.05

7 8.01 27.8 -0.46 7.50 38.83 52.52 45.56 9.36 8.28 29.76

8 5.48 25.8 -0.29 7.49 35.19 57.75 40.11 9.78 6.93 28.25

9 5.33 25.1 -0.27 7.80 36.28 55.61 39.12 8.77 7.10 29.21

10 5.28 26.8 -0.35 7.35 36.02 59.45 40.62 10.55 8.30 29.41

11 4.39 24.0 -0.08 7.70 30.35 62.17 34.30 9.77 7.20 25.35

12 4.50 25.3 -0.12 7.54 29.66 59.53 34.85 10.14 7.61 23.54

13 6.15 22.5 0.00 8.26 32.03 48.24 28.79 7.61 9.75 17.74

14 神 奈 川 県 4.14 23.2 -0.02 8.03 30.42 59.25 31.57 9.49 8.05 21.39

15 12.42 29.1 -0.51 7.12 37.89 52.19 47.59 9.90 7.77 32.95

16 7.99 29.7 -0.47 7.06 35.72 53.93 47.81 10.57 8.22 35.11

17 7.94 27.1 -0.28 7.75 35.05 54.17 40.25 10.12 8.22 32.18

18 7.40 27.9 -0.34 7.81 36.19 52.08 46.77 10.02 7.77 36.44

19 5.41 27.5 -0.44 7.21 37.75 57.70 42.67 10.94 8.96 30.08

20 7.85 29.2 -0.42 7.51 36.52 56.67 46.30 11.76 8.65 32.90

21 5.87 27.3 -0.32 7.42 34.86 57.38 44.39 11.13 7.79 32.34

22 5.08 26.9 -0.26 7.74 34.05 56.42 41.76 9.92 7.61 30.15

23 4.04 23.2 0.04 8.75 31.50 57.50 33.85 9.50 7.42 26.71

24 5.63 27.1 -0.32 7.52 35.43 58.67 41.41 11.93 8.93 29.21

25 5.61 23.4 0.03 8.99 32.96 57.67 36.77 9.57 6.55 29.08

26 6.32 26.9 -0.23 7.50 32.50 55.20 36.16 10.52 9.85 22.49

27 4.59 25.7 -0.13 7.92 31.37 57.15 35.19 10.14 11.32 19.08

28 5.18 26.3 -0.18 8.00 32.78 60.46 38.23 11.16 10.62 22.74

29 5.10 27.8 -0.31 6.99 32.27 64.02 41.82 12.74 8.97 22.98

30 和 歌 山 県 6.13 30.5 -0.56 7.35 38.55 60.06 46.10 13.15 12.81 25.57

31 7.35 29.1 -0.44 7.89 37.72 52.10 46.84 9.88 9.24 31.98

32 7.54 31.8 -0.58 7.69 38.57 51.52 50.45 11.83 10.45 32.79

33 4.96 28.1 -0.27 8.23 35.21 56.39 41.24 11.68 9.53 26.52

34 5.36 27.1 -0.20 8.39 34.22 57.86 37.45 11.53 10.12 25.35

35 5.40 31.3 -0.55 7.24 36.72 58.85 44.23 13.68 12.65 24.91

36 4.83 30.1 -0.57 7.20 38.59 55.44 44.32 11.54 10.73 26.92

37 5.00 29.2 -0.38 7.90 36.19 57.68 41.69 12.02 9.83 27.62

38 5.17 29.8 -0.51 7.45 37.74 58.58 41.90 12.61 11.76 24.65

39 6.04 32.2 -0.67 6.80 38.08 55.83 44.37 12.06 13.95 24.67

40 4.58 25.1 -0.08 8.88 33.73 55.23 35.23 9.50 9.99 21.82

41 6.22 27.0 -0.31 8.57 38.73 55.29 45.46 9.78 8.83 31.74

42 4.50 28.9 -0.42 8.17 37.93 58.16 42.86 11.64 11.36 25.86

43 2.90 28.1 -0.27 8.67 36.38 55.71 43.08 10.98 10.07 28.10

44 4.41 29.6 -0.41 7.92 36.60 56.76 42.42 12.56 11.11 25.67

45 2.30 28.6 -0.32 8.54 36.45 60.15 41.00 12.71 11.64 27.89

46 鹿 児 島 県 1.33 28.6 -0.43 8.53 39.87 60.13 40.48 13.15 14.09 24.97

47 1.04 19.0 0.35 11.52 34.06 60.51 30.59 6.51 7.78 22.35

(17)

巻末資料2 データセット(研究II)

単 位

データ年 2014 2014 2014 2014 2014 2014 2014 2014 2014 2014 2014 2014 2014 2014 日 本 酒 合成清酒 連続式蒸留 単式蒸留 み り ん ビ ー ル 果実酒 甘味

果実酒 ウイス キー ブラン

デー 発泡酒 スピリッツ リキュール そ の 他 1 北 海 道 5.06 0.36 8.10 1.36 0.76 26.77 3.49 0.08 1.43 0.05 8.56 2.49 23.06 5.72 2 青 森 県 6.38 0.70 8.13 3.06 0.54 23.94 2.49 0.09 1.49 0.11 10.29 3.89 26.00 6.71 3 岩 手 県 6.97 0.38 6.78 3.46 0.78 25.04 2.45 0.04 1.17 0.04 7.79 3.84 23.98 6.37 4 宮 城 県 6.58 0.39 4.43 4.19 0.84 25.40 3.17 0.10 1.61 0.05 7.39 3.52 20.88 5.16 5 秋 田 県 9.34 0.71 7.62 2.68 0.62 24.96 2.18 0.08 1.33 0.05 8.91 3.08 24.32 6.53 6 山 形 県 7.95 0.58 6.93 2.61 0.84 24.10 2.73 0.08 1.31 0.04 5.67 2.73 19.12 4.70 7 福 島 県 8.01 0.38 3.74 5.02 0.78 24.58 2.33 0.05 1.39 0.05 7.01 3.02 19.15 5.09 8 茨 城 県 5.48 0.33 3.73 3.66 0.60 19.14 2.20 0.04 1.13 0.04 5.44 2.31 18.20 5.24 9 栃 木 県 5.33 0.27 4.79 3.14 0.61 19.11 2.31 0.05 1.16 0.11 5.17 2.30 15.55 5.35 10 群 馬 県 5.28 0.28 6.33 2.34 0.71 17.90 2.35 0.05 1.10 0.04 5.58 2.13 16.59 5.11 11 埼 玉 県 4.39 0.23 5.36 2.55 0.61 17.18 2.90 0.04 1.05 0.04 5.47 2.92 18.97 5.59 12 千 葉 県 4.50 0.26 4.14 3.14 2.03 18.75 2.97 0.06 1.18 0.05 5.70 3.15 18.84 5.24 13 東 京 都 6.15 0.40 5.75 3.93 1.26 43.55 8.53 0.24 2.06 0.09 6.74 4.45 22.50 5.24 14 神 奈 川 県 4.14 0.24 4.51 2.96 0.69 22.44 3.62 0.08 1.25 0.06 5.80 3.43 17.73 6.00 15 新 潟 県 12.42 0.68 5.29 2.54 0.98 27.09 2.55 0.05 1.34 0.05 8.25 3.11 22.08 5.38 16 富 山 県 7.99 0.22 3.15 3.26 0.76 26.48 2.08 0.06 0.95 0.07 8.26 3.66 19.20 5.18 17 石 川 県 7.94 0.30 2.65 3.68 0.94 25.57 2.55 0.08 0.83 0.07 7.49 2.91 18.29 5.80 18 福 井 県 7.40 0.45 2.03 4.26 0.92 26.37 1.57 0.08 0.66 0.06 10.68 2.67 16.24 6.14 19 山 梨 県 5.41 0.37 4.36 4.12 0.82 20.80 11.14 0.31 1.43 0.05 5.48 2.21 15.72 4.51 20 長 野 県 7.85 0.29 4.36 3.62 0.91 23.50 3.32 0.07 1.20 0.04 5.76 1.94 17.02 4.67 21 岐 阜 県 5.87 0.41 2.44 3.72 0.86 18.36 2.21 0.06 0.79 0.06 6.60 2.79 15.61 5.35 22 静 岡 県 5.08 0.37 3.78 4.09 0.91 21.22 2.33 0.08 1.00 0.05 5.55

参照

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