テーマ1 小課題番号1.2-1
既存袖壁付き柱の曲げ補強の新技術について
キーワード:既存集合住宅の補強,住まいながら補強,袖壁付き柱補強 近藤龍哉*1 山本泰稔*2 加藤三晴*3 曲げ補強,増し厚補強,鉄骨枠付き湿式パネル 伴 幸雄*4 大和征良*5 鈴木隆志*6 立川沙緒美*6
1.はじめに
耐震改修促進法(建 物の耐 震改修に関する法律,
平 成 7 年 1 0 月 2 7 日 法 律 第 百 二 十 三 号 , 最 終 改 正:平成18年6月2日法 律第五〇号)に基づき,
1981年以前に建てられ た学校校舎・公共建物・
病院等の耐震診断と耐震補 強が進められている。ま た,旧公団や各自治体が所 有する集合住宅も耐震診 断・補強を進めていて,東 京都が所有する都営住宅 は 2013 年を目途に診断と 補強の完了を目指してい る。
既存建物の耐震補強 は,構 造設計的な必要性と建 物の使用性や建物価値の保 全が裏腹に有ることが多 く,在来型の工法を用いる ことが困難な場合がある。
例えば,学校校舎の耐震補 強で一般に用いる「枠付 き鉄骨ブレース」を集合住 宅に用いようとすると,
南側構面が閉塞されて使用 性が低下ことや,工事中 には生活環境を悪化するこ とや,特定の住戸のみが 工事対象になる不公平感な どを生じる。建物ごとに 最適な補強工法を必要とされる。
本研究では中低層鉄 筋コン クリート造集合住宅を 対象に「住まいながら補強」「建物の外側から補強」
する新しい補強工法の開発 を行った。新しい補強工 法は既存袖壁付き柱の袖壁 を「鉄骨枠付き湿式パネ ル(以後,補強パネルと記す )」で増し厚する工法で,
建物の外側から補強工事を 行い,袖壁付き柱の耐震 性能を向上させる工法である。
実験研究は 2009 年4月か ら開始した。 2009 年度 はせん断性能の検証を行った。2010 年度は曲げ性能 の検証を行った。せん断性 能の検証に関する報告は 参考文献 1)から 6)に記す。本稿では曲げ性能の検証 について記す。
2.実験
2010 年 度 に 行 っ た 袖 壁 付 き 柱 曲 げ 補 強 効 果 の 検 証実験では比較試験体(無 補強試験体 :NN型)1体 ,
在来工 法に よる袖 壁増 し厚 試験体 :NH 型1 体,補 強パネルを柱梁枠内に入れ て袖壁を増し厚した試験 体:WI型1体,さらにこれ に引付材を補強パネルの 端部に添えて基礎梁と緊結した試験体:WIL型1体,
補強パネルを柱梁枠外付け して袖壁を増し厚した試 験体:WOL型1体 ,さらに これでベランダ等のスラ ブが有ることを想定した試験体:WOS型1体の合計 6体の性能試験を行った。 加えて,補強パネルは既 存躯体とあと施工アンカー で接合する。その接合部 の強度を検討するために「 あと施工アンカー要素試 験体」を18体作成して,強度検証実験を行った。
2.1 袖壁付き柱袖壁増し厚試験体
NN 型およ び袖 壁増 し厚 補強試 験体 の既存 部分の 諸元を表1に記す。試験体は概ね実大の 1/2 で,1 階部分を想定して基礎梁と2階床梁を着けた。また,
上下の梁の外側に試験体を 加力装置に据え付けるた めのスタブを設けた。使用 した材料強度を表2と表 3に記す。袖壁付き柱の既 存部分は普通コンクリー トを使用した。在来工法に よる袖壁増し厚部も普通 コンクリートを用いた。補 強パネルは無収縮モルタ ルを用いた。なお,詳細は参考文献1)に記す。
NH 型試験 体の 袖壁 増し 厚部の 配筋 状況を写真1 で示す。増し厚部袖壁の縦 横筋はD6@50,水平接合 部アンカー筋はD10を5本均等配置,鉛直接合部ア ンカー筋は D10を 11本均 等配置した。また,スパ イラル筋はR3.2を使用した。
補強パネルによる増し厚 部の配筋状況を写真2と 写真3に示す。補強パネルは L-60×60×3.2 の山形 鋼を枠材にして,これに縦横筋D6@60を溶接した。
また,既存部(柱・梁)と の接合は山形鋼にルーズ ホールを開けて,これにあと施工アンカー(D10)を通 した。補強パネルは湿式で 配筋完成後に無収縮モル タルを流し込む。よって, アンカー筋とルーズホー ルとの隙間は無収縮モルタルで充填される。
試験体形状を写真4から写真9に示す。
*1:工学院大学建築学部建 築学科,*2:芝浦工業大学 名誉教授,*3:㈱ピタコラ ム技術部
*4:矢作建設工業㈱技術研 究所主任研究員,*5:㈱日 本ヒルティ,*6:工学院大 学大学院生
表1 試験体諸元
20.1 230
幅b(mm) 250
せいDc(mm) 250
有効せいd(mm) 217.5
厚さtw1(mm) 60
長さLw1(mm) 450
β 1.8
1150 全主筋断面積ag(mm2) 8-R13 1062 引張鉄筋断面積at(mm2) 3-R13 398
pt(%) 0.64
主筋の降伏強度σ y(N/mm2) 323
面積aw(mm2) 2-R6@170 56.5
間隔X(mm) 170
pw 0.0013
降伏強度σ wy 307
縁縦筋断面積aw(mm2) 1-R6 28.3 そで壁縁からそで壁縁縦筋までの距離dwt(mm) 25 縦・横筋断面積ah(mm2) 1-R4@100 12.6
間隔Xs(mm) 100
ps 0.0021
降伏強度σ sy 705
1500
幅b(mm) 150
せいDb(mm) 500
引張鉄筋断面積at(mm2) 3-R13 398
あばら筋断面積 2-R6@200 56.5
あばら筋の降伏強度σwy(N/mm2) 307
梁幅b(mm) 150
梁せいDb(mm) 250
梁引張鉄筋断面積at(mm2) 3-R13 398
あばら筋断面積 2-R6@200 56.5
柱 主 筋
コンクリート圧縮強度Fc(N/mm2) 柱軸力N(kN)
柱
そ で 壁
袖壁付き柱せいL'(mm) L'=Dc+2×Lw
帯 筋
そ で 壁 補 強 筋
反曲点高さhCWo(mm)
床 梁 基 礎 梁
写真1 在来工法による袖壁増し厚補強の配筋 表2 コンクリート材料
無補強・既存部 在来型増し厚部 補強パネル 圧縮強度(N/mm2) 20.1 24.2 73.4 割裂強度(N/mm2) 2.3 2.3 5.6 ヤング率(N/mm2) 26174 27498 27153 単位重量(kN/m3) 21.1 21.3 21.4
表3 鉄筋材料 E σ y σu ε y (N/mm2) (N/mm2) (N/mm2) (μ )
R4 204010 705 781 3454 既存袖壁縦横筋 R6 204363 307 457 1500 既存部帯筋・あばら筋 R13 198850 323 427 1624 既存柱梁主筋
D6 190014 408 517 2145 在来工法増厚縦横筋 D10 183053 368 496 2012 在来工法端部補強筋 D10 183053 368 496 2012 アンカー筋 R3.2 185736 569 607 3064 スパイラル筋R3.2mm
備考
凡例 E:ヤング率、σy:降伏強度、σu:最大強度、ε y=(σy/E)
写真2 WI型補強パネル の配筋
写真3 WOL型補強パネル の配筋
テーマ1 小課題番号1.2-1
写真4 NN型試験体 写真5 NH試験体
写真6 WI型試験体 写真7 WIL試験体
写真8 WOL型試験体 写 真9 WOS型試験体
2.2 あと施工アンカー要素試験体
あと施工アンカー要素試 験体は補強パネルを基礎 梁を想定したスタブに鉛直 抵抗型に留め付けたもの 16体とせん断抵抗型に留 め付けたもの2体の合計 18体を作成した。
鉛直抵抗型に留め付けた1 6体は,アンカー筋本 数(2本,3本),アンカー筋 径(D16,D19),埋め込み深 さ(le=10da,le=15da), 加 力 点 高 さ(ho=1150mm, ho=2300mm)を変動因子にし た。なお,加力点高さの 変化はアンカー接合面に生 じる曲げモーメントとせ ん断力のバランスを変え, アンカー筋に加わる鉛直 力とせん断力のバランスの 違いが接合部の耐力に及 ぼす影響を調べることを目的にした。
せん断抵抗型に留め付けた試験体は2体で加力点
写真10 鉛直抵抗型に留め付けた試験体
写真11 アンカー定着部の詳細
写真12 せん断抵抗型に留め付けた試験体
図13 アンカー定着部詳細
高さのみを変動因子にした。
試験体の配筋状況を写真 12と写真13に示す。
補強パネルの構面内剛性は 山形鋼の向きと縦横筋の 配筋位置の影響で偏心して いる。よって,スタブに 補強パネルを対称に2面取り受けた。
無収縮モルタルを打ち込 んだ後の試験体を写真1 4と写真15に示す
写真14 鉛直抵抗型 写真15 せん断抵抗型
3.実験結果
袖 壁 付 き 柱 の 袖 壁 増 し 厚 曲 げ 補 強 実 験 の 実 験 結 果を記す。また,補強パネ ルを留め付けたあと施工 アンカーによる接合部の要 素実験「アンカー要素実 験」の実験結果を記す。
3.1 袖壁付き柱補強実験結果
耐力 性能 と変形 性能 を無 補強試 験体 (NN 型)と 増し厚補強した試験体とを 比較した。また,在来工 法によ る増 し厚補 強試 験体 (NH 型)と 補強 パネル による増し厚補強試験体とを比較した。
表4に最大強度・80%Bi-LinearModeling時の初期
表4 最大強度・変形性能・割線剛性比較
NN型 NH型 WI型 WOL型 WIL型 WOS型 最大強度
Qcmax(kN) 134 249 291 334 289 339 最大強度時層間
変形角(rad) 0.0042 0.0079 0.0040 0.0080 0.0081 0.0081 R1(rad) 0.0019 0.0025 0.0025 0.0036 0.0026 0.0038 R2(rad) 0.0155 0.0122 0.0213 0.0220 0.0239 最大強度の比較
値 1.00 1.85 2.17 2.49 2.16 2.53 剛性
(80%Qcmax/R1) 57442 79560 91266 74738 88018 71447 塑性率(R2/R1) 0.0 6.2 4.8 6.0 8.4 6.3 凡例 R1:最大強度前の最大強度の80%時層間変形角 、 R2:最 大強度後の最大強度の80%時層間変形角
-200 -100 0 100 200
-0.02 -0.01 0 0.01 0.02
Q (k N )
R(rad)
NN
-139kN
134kN
図1 NN型試験体のQ-R曲線
-300 -150 0 150 300
-0.04 -0.02 0 0.02 0.04
Q (k N )
R(rad)
NH
134kN (無補強)
-139kN (無補強)
248.5kN
239.5kN
図2 NE型試験体のQ-R曲線
-400 -200 0 200 400
-0.05 -0.025 2E-17 0.025 0.05
Q (k N )
R(rad)
WI
291kN
243kN 134 (無補強 )
139 (無補強 ) 249( 在来補強 )
240( 在来補強 )
図3 WI型 試験体のQ-R曲線
テーマ1 小課題番号1.2-1
-400 -200 0 200 400
-0.06 -0.03 0.00 0.03 0.06
Q (kN )
R(rad)
WIL型249(在来補強)
134(
既存)
139(
既存)243(
在来補強) 289kN
283kN
図4 WIL型試験体のQ-R曲線
-400 -200 0 200 400
-0.06 -0.03 -3E-17 0.03 0.06
Q (k N )
R(rad)
WOL
134(無補強) 139 (無補強)
249(在来補強)
243(在来補強 ) 327kN
334kN
図5 WOL型試験体のQ-R曲線
-400 -200 0 200 400
-0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06
Q (kN )
R(rad) WOS
249(
在来補強)
243(
在来補強) 134(
既存)
139(既存) 339kN
328kN
図6 WOS型試験体のQ-R曲線
剛性と変形性能を記す。また,図1から図6に荷重・
柱せん断力(Q)と層間変 形角(R)の関係曲線を示 す。さらに,写真16から写真21に各試験体の最 終破壊状況を示す。
NN 型では 圧縮 側袖 壁が 滑落し て, 基礎梁 上端を 破 壊 面 に , 柱 圧 縮 側 を 支 点 に 曲 げ 破 壊 し た (写 真 1 6)。NH型では圧縮側袖壁 外端を支持点に引張側袖 壁縦筋・柱全主筋が伸びた 。破壊面は基礎梁上端よ り基礎梁側にある(写真17)。WI型はNH型と類 似している他,引張側袖壁 端部でアンカー筋が基礎 梁主筋を上方に引張曲げていた(写真18)。WIL
写真16 NN型試験体の 破壊状況
写真17 NH型試験体の 破壊状況
写真18 WI型試験体の 破壊状況
写真19 WIL型試験体の 破壊状況
写真20 WOL型試験体の 最終状況
写真21 WOS型試験体の 最終状況
型では基礎梁上端筋の下側 が破壊面に,引張側袖壁 下から柱を貫通して割れ裂 けた。また,引張側で引 付材と基礎梁の接合用アン カー筋がせん断破断した
(写真19)。WOL型では 補強パネルの損傷は極め て軽微で,補強パネルをせ ん断抵抗型に留め付けた あと施工アンカー筋付近で 基礎梁が割れ裂けた(写 真20)。WOS 型ではスラ ブが大きく変形したほか はWOL型 と 類 似 し た 最 終 状 況 で あ る (写 真 2 1)。
表4の最大耐力の比較値 を見る。袖壁を増し厚補 強すると無補強に比べて 1.8 倍から 2.5 倍程度強度 上 昇 す る 。 補 強 パ ネ ル を 枠 外 付 け し た WOL 型 と WOS型は在 来工法(NE型)と比較しても耐力性能が 高い。塑性率を見る。塑性率は 4.8 から 8.4 と大き く ,80%耐 力 時 の 層 間 変 形 角 は R=12/1000rad か ら 24/1000radと大きく,F=2.0以上の変形性能を有する。
3.2 アンカー要素実験結果
鉛直抵抗型にあと施工ア ンカー筋を埋め込んだ試 験体16体のうち8体(① 型~⑧型)の破壊状況を 写真22から写真29に示 す。また,接合部アンカ ー筋本数・アンカー筋径・埋め込み深さ・最大強度・
破壊形式を表5に記す。こ こで,基礎梁(有筋であ る)に埋め込んだあと施工 アンカーの破壊形式がコ ンクリート破壊(コーン状 破壊)だとした時の実強 度は設計強度値の2倍だと 仮定して,加えて,アン カー筋の降伏はあと施工ア ンカーの接合強度に関わ りが少ないと仮定したとき の破壊部位判定値を併記 した。
アンカー筋の埋め込み深さを深くする(le=15da)
とアンカー筋を補強パネル に定着した側が破壊する。
アンカー筋の埋め込み深さを浅くする(le=10da)と 埋め込み部(基礎梁側)が 破壊する。あと施工アン カーの強度はアンカー筋の 降伏強度より大きい。以 上の実験結果を得た。
写真22 ①型 写真23 ②型
テーマ1 小課題番号1.2-1
写真24 ③型 写真25 ④型
写真26 ⑤型 写真27 ⑥型
写真28 ⑦型 写真29 ⑧型
写真30 ⑰型 写真31 ⑰型解体観察
表5 鉛直力抵抗型に埋め込んだんあと施工アンカー要素試験体の耐力性能
D16 D16 D19 D19 D16 D16 D19 D19
2 2 2 2 4 4 4 4
10da 15da 10da 15da 10da 15da 10da 15da 10da 10da 10da 10da 10da 10da 10da 10da
calQc1(kN) 24.1 24.1 35.1 35.1 38.5 38.5 56.2 56.2 軸降伏 calQc1'(kN) 34.3 34.3 51.9 51.9 54.9 54.9 83.1 83.1 軸破断 calQc2(kN) 25.3 40.8 31.6 49.3 30.6 43.1 35.8 49.9 コンクリート calQc3(kN) 26.6 39.9 37.5 56.3 42.6 63.8 60.0 90.0 付着 cQcsy(kN) 29.2 29.2 29.2 36.4 36.4 36.4 36.4 36.4 降伏 cQcsu(kN) 37.4 37.4 37.4 46.7 46.7 46.7 46.7 46.7 破断 定着部破壊 calQcf2(kN) 16.2 16.2 18.2 18.2 20.7 20.7 22.3 22.3 コンクリート
26.0 29.0 32.8 37.8 33.0 41.0 35.3 53.8 定着部 定着部 基礎梁 定着部 基礎梁 定着部 基礎梁 定着部
1/83 1/83 1/250 1/125 1/250 1/125 1/125 1/83
26.6 32.3 31.6 36.5 36.4 41.4 36.4 44.7 α =2.0 引張側アンカー筋本数
アンカー筋 アンカー筋
有効埋め込み深さ 定着長 埋め込み部
破壊
基礎梁破壊
testQcu(kN)
実験結果 最大耐力時変形角(rad)
損傷部位
試験体名 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 備考
破壊部位判定式(kN)
写真30と写真31はせ ん断抵抗型に補強パネル を留め付けた⑰型の実験最 終状況と,実験後に補強 パネルをはつり取ってアン カー埋め込み部の損傷状 況を観たものである。補強 パネルは剛体回転して加
力方向に従って右に傾いて いる。しかし,補強パネ ル表面にひび割れ等の損傷 は極めて軽微だ(写真3 0)。はつり調査の結果,アンカー埋め込み部に損傷 は無い(写真31)。
以上から,せん断抵抗型 に補強パネルをあと施工 アンカーで留め付けたもの の破壊形式はアンカー筋 のせん断力による降伏である。
4.おわりに
既 存 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 構 造 集 合 住 宅 の 耐 震 補 強 技術開発として「住まいながら補強」「建物の外側か ら補強」に配慮して,既存 袖壁付き柱を鉄骨枠付き 湿式パネル(補強パネル) で増し厚して補強する提 案を行った。昨年度に行っ たせん断補強効果の検証 に続いて,今年度は曲げ補強効果の検証を行った。
補 強 パ ネ ル は あ と 施 工 ア ン カ ー を 用 い て 既 存 躯 体に留め付ける。そのあと 施工アンカーの接合部強 度の検証に関する「アンカ ー要素実験」の結果以下 の知見を得た。
① 補 強 パ ネ ル を鉛 直 抵 抗型 にあ と 施 工 ア ンカ ー で 留め付けたとき埋め込み深さが深い(le=15da)
と ア ン カ ー 筋の 補 強 パネ ル部 定 着 側 で コン ク リ ート破壊する。
② 埋め込み深さを浅くする(le=10da)と埋め 込み 側 で コ ン ク リー ト 破 壊す る。 た だ し , 埋め 込 み 部 は 有 筋 の 梁な ど で は設 計強 度 の 2 倍 程度 の 強 度に達する。
③ あ と 施 工 ア ンカ ー の 破壊 形式 の 一 つ で あ る 「 ア ン カ ー 筋 の 降伏 」 は あと 施工 ア ン カ ー の強 度 設 計に含めなくてよい。
④ 補 強 パ ネ ル をせ ん 断 抵抗 型に あ と 施 工 アン カ ー で 留 め 付 け たと き , 接合 部破 壊 は ア ン カー 筋 の せん断降伏である。
既存袖壁付き柱の袖壁を 補強パネルで増し厚して 曲げ補強した。実験で得た知見を以下に記す。
⑤ 袖 壁 増 し 厚 補強 は 既 存袖 壁付 き 柱 の 曲 げ耐 力 を 2倍程度以上上昇させる。変形性能は F=2.0 以 上に上昇させる。
⑥ 補 強 パ ネ ル によ る 増 し厚 補強 は 在 来 工 法に よ る 増 し 厚 補 強 に比 べ て 耐力 性能 と 変 形 性 能が 良 好 だ。
⑦ 補 強 パ ネ ル で袖 壁 付 き柱 を増 し 厚 し た とき , 破 壊面は基礎梁を基礎梁に平行に割れ裂く。
⑧ 曲 げ 強 度 は ,⑦ か ら ,引 張り 側 袖 壁 下 側の 基 礎 梁 あ ば ら 筋と 柱 全 主筋 の 降伏 が 大 き くか か わる。
今後の研究の方向は補強 パネルによる増し厚補強 の設計式をまとめることで ある。また,技術評価を
取得して本補強技術を実建 物に適用することを計画 している。
謝 辞
本 実 験 研 究は 矢 作建 設 工業 の地 震 工 学 技術 研 究所( 愛知 県 長 久 手 町 )で 行 った 。7 月から 9 月 の 3ヶ 月 間 ,宿 泊 施 設 に 泊 ま り込 ん で実 験 に協 力し て く れ た学 生(今 岡 恵理 さ ん , 萩 原 裕太 君 ,吹 田 元樹 君, 徳 田 隆 博君 ) に 感 謝 す る 。
参 考 文 献
1) 近 藤 龍 哉 ・ 山 本 泰 稔 ・ 加 藤 三 晴 ・ 伴 幸 雄 ,既存 建物 袖 壁 付 き 柱 の せ ん 断 補 強 に 関 す る 実 験 的 研 究, コンクリート工学協会年次論文集第32巻(2010), 997-1002,2010/7
2) 大 和 征 良・山 本泰 稔・近 藤 龍哉,接着系あと施工ア ンカーの強度と靭性に関する研究,第13回日本 地 震 工 学 シ ン ポ ジ ュ ー ム(2010),1595-1602, 2010/11
3) 近 藤 龍 哉 ・ 山本 泰 稔 ・加 藤三 晴 ・ 伴 幸 雄・ 鈴 木 隆 史 ・ 立 川 沙緒 美 , 既存 鉄筋 コ ン ク リ ート 造 袖 壁 付 柱 の 補 強方 法 の 提案 と検 証 在 来 工法 に よ る 既 存 片 袖 壁付 き 柱 のせ ん断 補 強 実 験 の詳 細 , 2010年度日本建築学会大会(北陸)梗概集,構 造Ⅳ/543-544,2010/9
4) 立 川 沙 緒 美 ・山 本 泰 稔・ 加藤 三 晴 ・ 伴 幸雄 ・ 鈴 木 隆 史 ・ 近 藤龍 哉 , 既存 鉄筋 コ ン ク リ ート 造 袖 壁 付 柱 の 補 強方 法 の 提案 と検 証 新 工 法に よ る 既 存 片 袖 壁 付 き 柱 の せ ん 断 補 強 実 験 の 詳 細 , 2010年度日本建築学会大会(北陸)梗概集,構 造Ⅳ/545-546,2010/9
5) 鈴 木 隆 史 ・ 山本 泰 稔 ・加 藤三 晴 ・ 伴 幸 雄・ 立 川 沙 緒 美 ・ 近 藤龍 哉 , 既存 鉄筋 コ ン ク リ ート 造 袖 壁 付 柱 の 補 強方 法 の 提案 と検 証 新 工 法に よ る 既存両袖壁付柱のせん断補強実験の詳細, 2010 年 度 日 本 建 築学 会 大 会( 北陸 ) 梗 概 集 ,構 造 Ⅳ /547-548,2010/9
6) 伴 幸 雄 ・ 山 本泰 稔 ・ 加藤 三晴 ・ 鈴 木 隆 史・ 立 川 沙 緒 美 ・ 近 藤龍 哉 , 既存 鉄筋 コ ン ク リ ート 造 袖 壁 付 柱 の 補 強方 法 の 提案 と検 証 袖 壁 付柱 の せ ん断補強工法の提案と効果の比較検証,2010年 度 日 本 建 築 学 会 大 会 ( 北 陸 ) 梗 概 集 , 構 造 Ⅳ /549-550,2010/9
7) 2001 年 改 訂 版 既 存 鉄 筋 コ ン クリ ー ト 造 建 築 物 の 耐 震 診 断 基 準 同解 説 ,財 日 本建 築防 災 協 会
8) 2001 年 改 訂 版 既 存 鉄 筋 コ ン クリ ー ト 造 建 築 物 の 耐 震 改 修 設 計 指針 同 解説 , 財日 本建 築 防 災 協会