【建設工学研究所論文報告集第56号〔論文〕2014年11月】
cFRPストランドシート接着によるRCはりの曲げ補強効果
FlexmalPerfbmanceofExtemally−StrengthenedRCBeams
byBondingCFRPStrandSheets
川 島 洋 平 森 川 英 典 Yohei Kawashima Hidenori Morikawa
1.はじめに 近年,社会基盤として重要な役割を果たしてきた鉄筋コンクリート(以下,「RC」)構造物の劣化が社会問題化してお り,RC構造物に対する維持管理の重要性が高まっている.RC構造物が劣化し性能が低下した場合,性能の回復あるいは 向上を目的として補修・補強が行われることが一般的である.現在,RC構造物の補強には様々な工法が存在しているが, 近年ではシート状にした炭素繊維やアラミド繊維などのドライシートを施工現場において樹脂で接着することで補強を 行う連続繊維シート接着工法が普及している.この工法は,軽量かつ高強度の連続繊維を用いるため施工が容易であり, 耐久性に優れていることが利点として挙げられる.その反面,施工時には施工現場において樹脂の含没と接着を同時に 行う必要があるため,浮きや膨れなどの施工不良が生じる可能性もある.このような施工不良を避けるためには,シー トの接着前における入念な不陸修正や,シート含浸・接着時における入念な脱泡作業が必要であるなど,作業手順が多 く施工品質が作業員の技量に依存してしまう課題がある1).また,必要な補強量が大きい場合には連続繊維シートを複 数回に分けて施工する必要があり,工期が長期化する問題点もある. このような課題から,工場にて連続繊維ストランド1本ずつにあらかじめ樹脂を含浸・硬化させ,これをすだれ状に した連続繊維補強材(以下,「CFRPストランドシート」)が開発された.CFRPストランドシートはあらかじめ工場にて樹 脂を含浸させているため,施工現場において樹脂を含浸させる必要がない.また,CF贈ストランドシートはすだれ状で あるため,接着時にはプライマーと不陸修正パテを兼ねたパテ状の樹脂が連続繊維ストランドの隙間を通って連続繊維 ストランドを取り囲み,連続繊維ストランドと一体化するため気泡を巻き込む恐れも少ない利点がある.しかし,従来 から用いられてきた炭素繊維のドライシート(以下,「炭素繊維シート」)を使用した連続繊維シート接着工法とはシー トの形状や接着方法などが異なるため,補強量が同一の場合であっても補強効果が異なる可能性が予想される. そこで本研究では,RCはり部材に対してCF贈ストランドシートを接着した場合の曲げ補強効果を評価し,既往の炭 素繊維シートを接着した場合の曲げ補強効果と比較し検討を行った. 2.実験概要 2.1 供献体概要 前述のとおり,本研究ではCF評ストランドシートおよび炭素繊維シートをそれぞれRCはりに接着し,その曲げ補強 効果を検討することを目的としている.図−1に本研究で用いるRCはり供試体の概要を示す.供試体は曲げスパン1600m, 幅150m×高さ200mmの矩形断面を有する曲げ破壊先行型のRCはりであり,引張側となる供試体下面にCFRPストラン ドシートまたは炭素繊維シートを接着した.各シートの接着範囲はいずれの供試体においても同様とし,幅75m,長さ 1500mmの範囲としている.
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かぶせ,脱泡ローラーにより入念に含浸・接着作業を行った. その後,接着樹脂の上塗りを行い,離型シートにより表面を 均一に整えて養生を行った. 各シートの接着界面の構造を図−2に示す.CF贈ストランド シートではプライマーとパテを兼用した専用樹脂を用いてい るため,プライマーおよびパテを用いていないことによる曲 げ補強効果への影響が懸念される.プライマーは,塗布する ことによりコンクリート表層部を強化するとともに,コンク リートとシートとの界面における接着強度を向上させる役割 がある.また,パテは接着面の不陸を修正するために用いら れるが,既往の研究5)ではパテの塗布により応力分散性能 が発揮されることで付着応力が増大し,付着性能が向上する と報告されている. CFRPストランドシート 炭素繊維シート コンクリー ト プブイマー パ テ 締 着 樹 脂 (下 塗 り) 篤整竃竃軍ミミを整軍ミミをヾ登場を篤雑霊場く篤農を、 炭 素 組 織 シー ト 接 着 樹 脂 (上 塗 り) 図−2 各シートの接着界面の構造 8.5 載荷試験方法および測定項目 供試体への載荷は,図−1に示すように等曲げ区間200mの中央2点載荷により行った.測定項目は荷重,中央点変 位,鉄筋ひずみ,シートひずみ,ひび割れ発生状況(各荷重段階におけるひび割れのスケッチ)である.図−3にÅ配合 の供試体におけるひずみゲージ貼付位置を,図−4にB配合の供試体におけるひずみゲージ貼付位置をそれぞれ示す. 旦=1 卓二2 旦=3 〇二1 〇二2 皐ゴ 6 :も 臣事 c−4 旦ゴ c −5 ; ; ; 旦=9 ∠ ゝ ∠ ゝ ※8−5のみ両側の引張鉄筋にひずみゲージを貼付 (a〉 鉄筋ひずみゲージ 7 0 0 [ 2 0 0 「 7 00
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(b)シートひずみゲージ 図−4 ひずみゲージの貼付位置くり’.cF300供試体)3.cFRPストランドシートおよび炭素繊維シートの接着によるRCはりの曲げ補強効果
3.1 強度試験結果
表−6に各配合における円柱供試体の強度試験結果を示 す.配合によって若干の違いはあるものの,コンクリート 強度は概ね同様であることが確認できる. 3.2 載荷試験結果 表−7に載荷試験結果を,図一5に荷重一中央点変位関係を 示す.以下,各々の供試体に対して考察を行う. (1)配合による耐荷性状の違い 各配合の無補強供試体であるN供試体とN’供試体を比較 すると,N’供試体は部材降伏荷重,最大荷重が若干低い傾 向がみられるものの,概ね同様の耐荷性状を示した.これ より,補強供試体においても配合による耐荷性状の違いは 小さいと推察できる. (2)cFRPストランドシートと炭素繊維シートの補強効果 の違い HT600供試体とCF600供試体を比較すると,部材降伏荷 重および最大荷重は同程度であり,シートはく離直前まで は両者の耐荷性状に明確な違いは確認できなかった.しか し,CFRPストランドシートを用いたHT600供試体では比 較的早期にシートはく髄が生じており,比較的脆性的な破 壊挙動を示した.CF贈ストランドシートによる曲げ補強効 果を検討した既往の研究1)においてぽCF陣ストランドシ ートにより補強した供試体が炭素繊維シートを用いた供試 体よりも最大荷重が大きくなった結果が得られているが, その実験では炭素繊維シートの施工時に不陸修正パテを塗 布していない.そのため,パテの有無が曲げ補強効果に影 響を及ぼした可能性が予想される. 表−6 強度試験結果 供試 体 名 配 合 名 圧 縮 強 度 弾性 係 数 引 張 強度 (N /血 2) (kN /血 2) (N /m 2) N A 配 合 38 .6 2 5 ,4 3.0 7 HT 60 0 CF 60 0 N’ B 配 合 3 7,9 31.2 3.4 6 CF 30 0 5 0 7 0 5 0 5 0 釦 5 0 2 0 1 0 0 g 冊 捏 7 0 0 0 5 0 釦 5 0 如 1 0 0 ︵ 昌 鵬 程−●
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0 2 4 6 8 1012 141618 20 中央点変位(mm) (a)全体図
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一一−30kN(鉄筋) 一一〇一60kN降伏(鉄筋) 一一°−65kN(鉄筋) 一一一一一30kN(シート) 一一一一一60kN降伏(シート) 一一一一一eSkN(シート) 3三治ムニーふ\雨や合理怒 10(関 鍬)00 8000 7000 60(X) 50(X) 0 0 0 0 0 0 0 0 的 3 0 0 0 1 0
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ー500 ー250 0 250 500 750 供試体中央からの距離(nm) (a)HT600供試体(全体図) 10000 9000 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 7 6 5 4 3 3三選ムニーふ\壊慈 3尽笠と−ら\お年合理態 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ∴ 側 ∴ 5 0 5 0 的 ∴ 如 0 紬 00 00 00 00 00 2擦∴m 15 10 5 3尽笠皇Ih\宙や自壊韻 I l  ̄∴▲ i i _ヽ i l l l i ′ _I ′ “」 爪 ‘ 、一 点 ● l l l 1、 ヽl 1 − ′句 ▲ ヽ ヽi ′′I ヽW i 畠 壷 Ⅸ lu
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l l l l _l ● ̄1 l r l I i ● i i l l ′● i ! 工 ー750 −500 ー250 0 230 500 750 億赫体中央からの距離(nm) (b)HT600供試体(拡大図) ー_◆ − 3 0 k N (鉄 筋 ) 一一〇− 6 0 k N 降 伏 (鉄 筋 ) 一一m m − 7 0 k N は く 離 (鉄 筋 ) _____ 3 0 k N (シ ー ト) _____ 6 0 k N 降 伏 (シ ー ト) _____ 7 0 k N は く 髄 (シ ー ト) i l i i l l ; I 畠 I I T 廿 I 吊 I I 左 「 、 i′ 才一′ ヽ′ i ヽ ヽヽ .′ ヽ 」ヽ 、− .−●○ ●○ , ヽ●● ヽゝ ー750 −500 −250 0 250 500 750 供試体中央からの距離(mm) (c)cF600供献体(全体図) o a ∴ ∴ ∴ O Z l 1 3三瀬よこ1人\墳慈 0 0 0 0 0 0 5 0 5 I l 【●i l ヽ ー tIi 漢音 iI l 〃● ーI iI l † ヽ I‖ II I 漢書 i I il i 、 ーt i iIi I ′ l ′ I, i 悶 I I ′.′ ′ 」 l l l r l l ム N ヽヽ ヽ ′ ● ′ ヽ “葛ll ヽ 凶1 ヽ ′′ ′; ( l i II l葛 ー750 −500 −250 0 250 500 750 供試体中央からの距離(Ⅲ山 (d)cF600供試体(拡大図) ー − 3 0 k N (鉄 筋 ) 一 書〇一 4 8 kN 降 伏 (鉄 筋 ) 一一十 一 5 8 k N (鉄 筋 ) 一一一一一 3 0 k N (シ ー ト) 一一一一一 4 8 kN 降 伏 (シ ー ト) 一一一一一 5 8 k N (シ ー ト) 】 i ヽ i i i i i I I I l ヽI iヽ i i l l l i i 、− i ii i i , I i l l i i i i l i iI i l l ii i I i i I l Il ′ ′ ′′ヽ ●●′ 1 1 ‖ i ′ I Y l○○ しメ ヽ i − 」 。 ′ 纂  ̄”r ヽ′ 報 ヽi ′ ○○●〃 堅 国 ー500 ー250 0 230 500 750 供試体中央からの距離(mn) (e)cF300俳論体(全体図) 畑 脚 鮒 0 0 畑 0 0 鮒 へユ︶雨本台でI入\雨や台蛙怒 i Il I i i I I I 1 1 l l l l ′l l l I I 1 I l I l○′V l i 骨 l J ll l I l I 雷 I ) り Il l ▼ I J● I ′ I I l i 柏 hi ′; l 〉 イ l i I 小 ル I l .l I I 肯 l んr Y l l ●IliI l l ! I l ′〃l _V 、l llI i J ノ 重,○○ : ∴′○○ −= 雄 i i i ’て 〈 u _− 蕊 ー750 −500 ー250 0 250 500 750 保護体中央からの距離(nm) (d)cF300供試体(拡大図) 図−6 鉄筋ひずみ分布とシートひずみ分布(a)N供試体 ヽ i 1 (b)N’供試体 図一7 ひび割れ性状(無補強供試体) ∴ 《∴ 、一二 ̄年 輪 中 日言:・●\雪 瑠 璃 匿 里 「 i工 手  ̄畷 一着 諦 Tl 数 i… こ二  ̄一語 一重 1 常 澄 綴 i言 :「丁 し i′ 」瀞 闇 亜 種 運 擬 脅 J l ニI一一 ′“致 缶 昭 子 藩 、.? .+▲ 、集 欝 懇 i ● ^ l− 紳 “掌 ∴∴「 醜 聞 紹 酵 素閣 鱈 1−㌧“ ■1 ,即 、 ∴‘竜 一 ∴∴ 1.意地 章 ‘農i_録.ii 擁 ・、 膝 ! 醸 ノ/・i !霊 . ◆ I ’ :∴詫 法 子‘∴ i a …高′ i i J i 4 5 6 懲 盤 出 盛 虹 盈 親 i i i i 肌 1 2 3 4 ‥ 出 蛙 「 【† i i 5 6 7 9 (a)はく離1(供試体左端から約75mの位置) 蒜稀鵡 捕 手 率 謹 選整 蓋 三 三千 「二で「「「Tr r T ̄∴ ・ “∵∴_11㌢㌧エ ̄− ̄ 琳 − .轡 11騙 蒲 繊 蹄 ). ●J I 、挽 ′ 子日当 _二.○○ 闘 醒 臨 機 ・ ,亀嵩 ′ ’■′′!. 認 舶 一一′ 虫窃寒肥 嬢 ∴調 書○こ rn. 、● 謎 蟹 .膿 雪 祭 ギザ 縫 ニ i園 田 睡 瑠 誼 艶 用 i iii 2 3 4 li〃▲●i〃”○〟.,〇一〇 小 雪 6 7 8 9 直 1 2 i if I I l i 3 4 5 6 7 青 i i e s I 「半∴∴∴ 盤 豊 里 鯉 避 怒 整 理 璽 (b)はく離2(供献体左端から約105mの位置), はく職3(供試体左端から約12mmの位置) 写真−2 はく離箇所の接着界面状況(HT600供試体) HT600供試体では,図−8に示すように部材降伏以降, 3回のシートはく離が生じた.図−8(c),(d),(e)はそ れぞれのシートはく離時におけるシートひずみ分布の 変化を示したものであり,1回目のシートはく既を「は く離1」,2回目では「はく離2」,3回目では「はく離 3」で表している.1回目のシートはく離は約65洲の 段階,2回目は約67鮒,3回目は71kNの段階において 生じた. シートひずみ分布では,いずれの補強供試体におい ても,概ね曲げモーメント分布と同様の形状を保ちな がらシートひずみが徐々に増加する傾向が認められた. しかし,各々のはく離時には図中に丸印で囲った箇所 において,シートひずみが局所的に増加した.シート にはく離が生じた場合,その部分においてはコンクリ ートへの応力の伝達が不可能となるため,シートひず みは局所的に増加すると考えられる.また,それらの
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I 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 中央点変位(mm) (b)荷重一中央点変位関係 0 0 0 5 0 0 0 0 0 ︵ U O O O O O O 4 3 2 1 3 雨 笠 デ T ふ I I i †\\ ̄\ i ) i二 iiil i 「 ̄ ̄「 ;/ i ▼ \ /\ i 「 二 フ 「 「 i一二一一一一一一 ー720 −480 −240 0 240 480 保護体中央からの距離(mID (c)シートひずみ分布 (供試体中央部のひずみの急増:50.2kN) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 ﹂ ︶ − 2 3主薬圭ニーふ申まく離;」
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