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小学校英語授業における教員の実践的英語力育成に関する実践研究

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小学校英語授業における教員の実践的英語力育成に関する実践研究

-教員養成課程での日英文比較教材を用いて-

坂本 南美・吉田 安曇

岡山理科大学教育学部中等教育学科

*兵庫県立大学環境人間学研究科博士後期課程

1.はじめに

本研究の目的は、小学校英語授業において、教員に必要な実践的英語力を育成するための 手法として、小学校教員を目指す学生に、日英文比較教材を用いた活動を実践し、その効果 と学生の意識を検証した上で、必要な活動デザインを示唆することである。日本の小学校英 語教育は、その導入以降、急速に展開してきた。学習指導要領では

2002

年に「総合的な学 習の時間」に外国語活動も実施することが明記されたことが始まりである(文部科学省,

2002

)。その後、

2008

年に改訂された学習指導要領では、外国語活動として

5, 6

年生の学習 課程に年間

35

時間が位置付けられた(文部科学省, 2008)。さらに、2017年改訂版では、外 国語活動が

3, 4

年生での実施へと移り、

5, 6

年生では教科としての外国語科が明示され、

2

年間の移行期間を経て

2020年 4

月から全国でこれらが全面実施となった(文部科学省, 2017)。 導入以降、授業や教材についても研究・開発が進められており、教育現場では教員研修が活 発に行われ、各校での授業研究も進められている。小学校の英語教育では、児童が英語に「慣 れ親しむ」ことやコミュニケーション能力を育成することが目標に掲げられており(文部科

学省

, 2002, 2008, 2017

)、授業では、音声を中心としながら実践的に英語を使用する授業デザ

インが求められてきた。その中で、教室内で教師自身が自然に英語を使用していくことは、

児童の英語によるコミュニケーション能力を高める上でも、今後ますます重要になってい くだろう。これらを背景に、教員養成の学部において、学生に小学校での授業実践を見通し た適切な実践的英語力を育成していくことは、喫緊の課題であると言える。本実践研究では、

小学校教員養成段階の学生に、身近な素材を取り上げた日英文比較教材を用いて帯学習を 実践し、学生の日本語と英語の言語的気づきを引き出すことで、実践的英語力への意欲や意 識にどのような影響が見られるのかを検証する。

1-1 実践的英語運用力育成の必要性

2020

4

月から全国の小学校では

3, 4

年生で外国語活動、

5, 6

年生では外国語科が全面 実施となり、中学年に英語活動を残しながら、高学年では教科としての英語授業が始まった。

授業については、2008 年改訂の学習指導要領で外国語(英語)活動が導入されて以来、小 学校では、英語を用いてコミュニケーション力育成を目指し、英語を使用する場面設定をも とにした教材を軸に授業が展開されてきた。

小学校での外国語活動及び外国語科では、児童が外国語に「慣れ親しむ」授業をデザイン することが目標として掲げられており(文部科学省, 2002, 2008, 2017)、現在、コミュニカテ

(2)

ィブな授業展開や

Assistant Language Teacher

ALT

)とのティーム・ティーチングを通して、

様々な言語活動が実践されている。具体的には、

3, 4

年生では、「聞くこと」「話すこと[発 表]」「話すこと[やり取り]」を総合的に取り入れ、発話など音声面を軸とした授業づくり を目指す。

5

6

年生では、これらの

3

領域に加えて「読むこと」「書くこと」の

2

領域を取 り入れ、バランスよく英語の力を身に付けていく授業が目指されている。これらを背景に、

教員養成課程で小学校教員を目指す学生にとって、小学校での英語授業を想定して実践的 に英語を運用できる力を育成することは、喫緊の課題の一つと言えるだろう。

前・現行の学習指導要領(2008, 2017)で英語に「慣れ親しむ」授業づくりが目標の一つ として挙げられていることからも、各授業では、教師によるティーチャー・トーク(

Teacher Talk)等の実践的な英語を用いて、自然な形で児童が学ぶ英語への導入や本時の話題の共有

が行われてきた。ティーチャー・トークとは、教師がその授業の学習内容に関わる話題や事 項を選んで、学習者の言語の熟達度や発達段階に合わせて、分かりやすいように外国語を調 整しながら行う話のことである。その特徴や学習者の理解への影響や効果については、学校 現場での多様な教科で検証されているが、特に外国語習得の分野において、外国語によるテ ィーチャー・トークの研究は広く進められてきた(Walsh, 2002; Hitotuzi, 2005; Sharpe, 2008;

Hermanto, 2015)

。Chaudron(1988)をはじめとする研究者は、“Teacher Talk”の特徴を、①ゆ っくりと話す、②ポーズを頻繁に入れ、長めに取る、③発音を強調したり、はっきりと発音 したりする、④難しい構文を避け、基本的な語彙を用いる、⑤長文を避け、従属節を少なく する、⑥疑問文よりも平叙文を多く用いる、⑦特に言いたいところは自分の発話を繰り返す、

と挙げている。

日本の英語教育についても、村野井(

2006

)はティーチャー・トークに関して、学習者が 理解しやすい内容・語彙で「教師が学習者に向かって話す目標言語」と定義している。また、

和泉(2009)は、その特徴を、話すスピードを調整する、単純な語彙や文法を多用する、繰 り返しや言い換えを多く行うと説明しながら、教師が学習者のレベルに合わせて英語によ るコミュニケーションを図る際の話であると定義づけている。つまり、教師の外国語による 話の中に、学習者に学ばせたい内容を取り入れ、学習者が理解しやすくなるように、外国語 に修正を加えながら話すのである。日本の英語教育現場においても、ティーチャー・トーク は英語に「慣れ親しむ」授業づくりに必要な要素として位置付けられ、指導教員によって積 極的に取り入れられている。

これらを背景に、小学校教員養成段階の学生に、ティーチャー・トークをはじめとする実 践的英語力を育成していくためには、①児童に合った話題の選択、②児童の英語熟達度、③ 各学年の発達段階、さらに④身に付けさせたい英語能力を視野に入れながら、教育実践を行 っていく必要がある。しかし、大学の授業の中で、実際の小学生を想定して、適切な内容や 表現を見極めて行うティーチャー・トークや、教員となった時に英語による自然な発話が行 える力を実践的に育成する場面は、非常に少ないのが現状である。本教育実践研究では、小 学校教員を目指す学生に、日本語と英語による比較教材を用いた教育実践を通して、英語・

日本語らしい表現やその言語特有の言い回しなど、日本語と英語の両言語の洗練と実践的 な言語力の育成を目指す。そして、小学校での教育実践に向けた英語使用に対する学生の意 欲・意識の向上を図る。

(3)

2.教育実践調査 2-1 調査目的

本教育実践研究の目的は、英語授業に必要な実践的英語力育成を目指して、小学校教員を目 指す学生への日英文比較教材の教育実践を実施し、その効果と学生の意識を検証することで ある。具体的には、教員養成課程において初等教育学科で学ぶ大学

2

年生を対象に、日英文比 較教材を用いた帯活動を実践し、学生への質問紙調査の結果からその効果を考察する。

2-2 教育実践調査及び参加者

本実践研究は、教員養成学部初等教育学科で「初等英語科教育法」を履修した大学

2

年生

61

名を対象に実施した。この講義は、2020年

4

月から

8

月まで行われた春学期通期の科目 であり、教員免許状取得のための必修科目である。講義では、昨今の学習指導要領の変遷を 踏まえ、外国語活動と外国語科との違いを確認しながら具体的な言語活動を学んでいく。そ

の上で

Can-Do

リストやデジタル教科書の使用、教材の開発や教育現場の現状を踏まえた議

論など、実践的な内容を取り扱った。日英文分析の実践は、全

15

回の講義の中で、ティー チャー・トークやクラスルーム・イングリッシュの意義及び授業での位置づけについて学ん だ第

2

回目講義の後、4回にわたって帯活動として実施した。そして、4回目の実践最終日

2020

6

5

日)に質問紙調査を行った。

講義の中では、本実践研究で採用した日本文と英文を比較し分析的に読み込む活動を「日 英文分析」と名付けた。活動の流れは以下の通りである。

① 講義の最後に小学校でのティーチャー・トークのヒントとなる素材や内容を提示する。

② 講義後、課題として、学生は日本文と英文が対になって掲載されているハンドアウトを 個人活動として読み深める。ハンドアウトのトピックは、小学校の教室で取り上げやす く児童にとって馴染みのある素材とする。

③ 学生は、素材について書かれている日本文と英文を比較し、英語表現や日本語での言い 回しの違いなど気づいた点をリストアップする。

④ リストアップした気づきについて、自分なりの解釈や説明を加える。

この流れに沿って4回の帯活動実践を行った後、質問紙調査を実施した。質問紙では、日 本文と英文の相違点への気づき、相違点として気づいた事項、実施後のティーチャー・トー クへの意欲、ティーチャー・トーク準備に必要だと感じるアイテム、英語に関する好意性、

1

日あたりに英語に触れる時間といった項目を取り上げた。質問紙は、オンラインによる

google form

を用いて実施し、学生が自分のペースに合わせて回答できる方法を採用した。

2-3 教材

小学校英語授業でのティーチャー・トーク等の実践的英語力及びコミュニケーション力 の育成を目指す本研究では、

4

種類の日英文分析の課題を取り扱い、各素材やトピック選定 は、英文の内容理解に無理がないよう、学生だけでなく児童にとっても、ある程度の背景知 識があるもの、認知度の高いもの、なおかつ小学校で扱いやすいものといった点を考慮して 作成した(表1)。
(4)

表2 日英文の相違点への気づき 人数

(n=61)

かなりあった

16

少しあった

34

どちらとも言えない

6

どちらかと言うとなかった

2

なかった

2

無回答

1

表1 日英文分析素材の内容

実施年月日 トピック 日本文字数 英文語数 日英文の特徴

① 2020.05.06 名探偵コナン 437 202 ・ナラティブ

・体言止めを使用

② 2020.05.22 ドラえもん 372 188 ・説明文

・具体的説明を多用

③ 2020.05.29 ハリー・ポッター 591 215 ・物語文

・回想的描写

④ 2020.06.05 清水寺 502 198 ・解説文

・客観的事実説明

本教育実践で学生が取り組んだ教材は、実践目的に合わせてオリジナルに作成したもの であり、1回につき1つのトピック(素材)を取り上げ、左ページに日本文、右ページに英 文でまとめたフォーマットのハンドアウトである。学生は、その日英文比較教材を読み、日 本文と英文を比較し、日本文と英文の違いについて気づいたことを記述式でまとめてい った。今回使用した

4

種類の素材は、いずれも小学校英語授業で活用することができると想 定される素材を選定し、作成したものである。漫画やアニメで有名な「名探偵コナン」、漫 画・アニメに加えて多彩な映画のシリーズも展開している「ドラえもん」、イギリスの児童 文学であり、多くの言語に翻訳され、全シリーズが映画化された「ハリー・ポッター」から

「ハリー・ポッターとアズガバンの囚人」、そして世界遺産に登録されており、京都の中で も観光者数1位の建造物として有名な「清水寺」である。

3.質問紙調査結果 3-1 各質問項目の結果

ここでは、初等教育学部学生を対象に実施した質問紙調査の結果について検証していく。

実践後の質問紙調査では、教員養成課程で小学校教員を目指す学生

61

名から回答が得られ た。まず、日本文と英文を比較する中で「日・英プリントの中に、日本語と英語の相違点に ついて、あらためて気づいたことがありましたか」という質問により、この教材に取り組ん だ結果として経験した気づきについて尋ねた(表2)。

日本文と英文を比較しながら読み進める中、全

61

名に対して約

82%

にあたる

50

名が、何 らかの相違点についてあらためて気づいた点が「かなりあった」「少しあった」と回答して
(5)

表3 気づいた日英文相違点の事項

表4 ティーチャー・トークへの意欲 人数

(n=61)

作ることができる

2

どちらかと言うと作ることができると思う

14

どちらとも言えない

23

どちらかと言うと難しい

18

とても難しい

3

無回答

1

人数(複数回答可)

直訳とは異なるところ

30

文の構造

28

日本語での主語の省略

18

英単語

10

熟語

8

動詞の使い方

5

文法

4

名詞

3

具体的な文法事項

3

無生物主語

3

時制

2

小学生を対象にした表現

1

その他

1

いる。それに対して、「どちらかと言うとなかった」「なかった」と答えた学生は

4

名で、全 体の

6%

であった。

続いて、何らかの相違点にあらためて気づく経験をした

50

名の学生に対して、気づきに おける具体的な事項を尋ねた(表3)。

学生があらためて気づいた日英文の相違点の中で一番多かったのは、「直訳とは異なるとこ ろ」という結果であった。何らかの気づきがあったと回答した

50

名のうち

60%にあたる 30

名が直訳に関する回答をしていた。次いで、気づいた点として、

28

名(

56%

)が挙げた「文 の構造」、

18

名(

36

%)による「日本語での主語の省略」と続いた。「小学生を対象にした表 現」については、わずか

1

名の学生にとどまった。

次に、「小学生を対象としたティーチャー・トークについて、自分で考えて作ることがで きそうですか」という質問により、学生のティーチャー・トークへの意欲について尋ねた結 果を見る(表4)。

「どちらとも言えない」と答えた学生が

23

名(

38

%)と最も多く、「どちらかと言うと難し い」「とても難しい」と答えた学生もほぼ同数の

21

名(34%)であった。一方、全体の

26%

にあたる

16

名の学生が「作ることができる」「どちらかと言うと作ることができる」と実行 可能性について回答している。さらに、この問いに関して「どちらかと言うと難しい」「と ても難しい」との回答者に、どのようなサポートがあれば実行可能かその具体例を尋ねたと ころ、以下の結果が得られた(表5)。
(6)

表6 英語に対する得意意識 人数(n=61)

とても得意

0

どちらかと言うと得意

9

どちらとも言えない

15

どちらかと言うと苦手

23

とても苦手

13

無回答

1

表7 英語に関する得意分野

人数(複数回答可)

文法 4

語彙 2

発音 0

読解 4

リスニング 1

スピーキング 1

ライティング 1

その他 0

表5 ティーチャー・トーク作成に必要なアイテム

人数(複数回答可)

今回のような日・英プリント

8

使える英語表現集

7

絵カード

6

インターネット

5

辞書

3

その他

0

21

名中

38%である 8

名が「今回のような日・英プリント」を、7名(33%)が「使える英

語表現集」を希望するサポートアイテムとして挙げている。それに対して、辞書を挙げた学 生は

3

名であった。さらに、ティーチャー・トークに関連して、小学生(

3, 4, 5, 6

年生)の 授業で取り扱うティーチャー・トークの話題に適すると思われる素材を挙げてもらったと ころ、好きなアニメや漫画、テレビ番組やスポーツ、趣味など、身の回りの事象や時事ニュ ースなどが適切であると挙げている学生が多かった。

また、英語に対する意識調査として、「今現在、英語は得意ですか」と尋ねた結果を以下 にまとめる(表6)。

英語に対する得意意識については、「とても得意」と回答した人はおらず、「どちらかと言う と得意」と回答した学生が

9

名(約

15

%)であった。一番多い回答となったのは、

23

(38%)による「どちらかと言うと苦手」であり、「とても苦手」と合わせると

59%の学生

が英語に対して苦手意識を持っているという結果であった。この問いに関しては、「とても 得意」「どちらかと言うと得意」と回答した学生に、英語での得意な分野について、さらに 具体的に尋ねた(表7)。
(7)

表8 1日に英語に触れる時間 人数

(n=61)

1日120分以上

2

1日60分以上

3

1日30分以上

6

1日1~29分

43

全く触れていない

6

無回答

1

表9 実用英語検定の取得級 人数(n=61)

英検5級

1

英検4級

3

英検3級

8

英検準2級

19

英検2級

5

人数としては少数であるが、「どちらかと言うと得意」と答えた

9

名のうち、約半数の

4

名 が文法と読解が得意であると回答した。発音が得意と回答した学生はおらず、また、リスニ ング・スピーキング・ライティングについて得意だと感じている学生もそれぞれ

1

名にとど まった。

また、英語での読書や洋楽・洋画の視聴など、現在英語にどれくらい触れているかについ て尋ねたところ、以下の結果が得られた(表8)。

本質問紙に回答した学生が英語に触れている時間は、

1

日あたり

30

分以下に集中していた。

全く触れていないという学生も

6

名(約

10%)いる中、1日あたり1時間以上英語に触れて

いると回答した学生は

5

名いた。

最後に、実用英語検定の取得級について尋ねた結果をまとめる(表9)。

61

名の回答者のうち、受験時期については明らかにしていないが、回答者の約

60%の 36

名 が現段階までに実用英語検定受験の経験があり、そのうち約半数が英検準

2

級保持者であ った。また英検

2

級保持は、学生全体の

8%にあたる 5

名であった。

4.考察

4-1 日英文に対する気づきとティーチャー・トークへの意識

本項では、日英文比較教材を通して、小学校教員を目指す学生たちが体験した気づきと、

4

回にわたって本課題に取り組んだ後の彼らのティーチャー・トークに対する意識・意欲に ついて考察していく。

4-1-1 日英文の相違点への気づきとその事項

まず、

4

回にわたって実施した日英文比較教材における学生たちの気づきについて尋ねた 結果を考察する(表1・2参照)。61名中

80%を超える 50

名の回答者が、何らかの形で日 英の相違点に気づいており、そのうち

60

%の学生が「直訳とは異なるところ」に注目して いた。日本語から英語、または英語から日本語へのいわゆる「直訳」は、往々にして文章の
(8)

不自然さに繋がることがある。学生が「直訳とは異なるところ」に気づいたということは、

素材の内容を英語・日本語で表現する際のより日本語らしい(もしくは英語らしい)自然な 表現の発見とそれらへの意識と解釈できるだろう。これまでの英語学習経験の中で、多くの 学生が直訳による不自然な日本文(あるいは英文)に出会ってきたことが推測されるが、今 回の日英文比較教材を通して、必ずしも直訳が自然な日本語・英語表現につながるというわ けではなく、日本語・英語らしい表現に向けて修正等がなされているということに気づく力 を有していたことがわかった。それは、日本語・英語の両言語における言語的洗練や読解能 力という視点においても、英作文に必要な言語能力という視点においても、非常に有益な一 歩だと言えるだろう。また、質問紙調査の結果から、半数を超える学生が「文構造の違い」

を意識し、

36%の学生が「日本語での主語の省略」の気づきを体験していた。これらの結果

からは、学生たちが日本語・英語それぞれの言語的特徴に気づき、それらに注意しながら課 題に取り組んだことがうかがえる。各言語の特徴をいかした文章作成や、単に英文を直訳す るのではなく、日本語特有の表現や言い回しを使うことで、内容理解や状況描写を助け、ま た日本人にも受け入れやすい文章になっているという気づきは、注目すべき点であり、本課 題実施の意義という点においても、効果が見られたと言えるだろう。一方、日本文・英文の 相違点として「小学生を対象にした表現」と回答した学生は、わずか1名であったことは、

今後、彼らが小学校教員を目指して、小学生の発達段階や学習段階に合わせた語彙・表現を 運用する必要のある言語能力・指導力に鑑みると、課題が残る結果となった。

4-1-2 ティーチャー・トークへの意欲と補助的アイテム

次に、今回の課題を終えた後の学生たちのティーチャー・トークへの意欲及び、補助的ア イテムについて考察していく(表4・5参照)。参加学生の中で、英語に対して

9

名(約

15

%)

の学生が英語は得意、

36

名(59%)の学生が英語は苦手だと回答した中(表6)、16名(約

26

%)の学生がティーチャー・トークを「作ることができる」「どちらかと言うと作ること ができる」と回答しており、ティーチャー・トークに向けての実現可能性を感じていること が分かった(表4)。つまり、英語が苦手ながらも、ティーチャー・トークに対して意欲的 に取り組もうという前向きな姿勢を持つ学生が確認された。また、ティーチャー・トークに 関して、「どちらかと言うと難しい」「とても難しい」と回答した学生は

34%の 21

名であっ たが、英語を苦手とする学生の数(

36

名・

59%

)と比較すると、比較的小さな数字にとどま っている。またティーチャー・トーク作成を苦手とする学生

21

名のうち、作成のサポート

として、

38%である 8

名が「今回のような日・英プリント」を希望している。これは、今回

用いた日英文の相違点比較ハンドアウトが、自身の言語力・教授力育成に役立ったと実感し ている学生がいることを裏付けており、本教育実践の効果を示している。また、

7

名(33%)

が授業での補助的アイテムとして「使える英語表現集」を挙げていることから、英作文など の際に利用できるアイテムとして、小学校教員の教室英語に必要な英語表現を集めた資料 は学生たちにとってもニーズが高いと判断されたと推測される。これらの学生のニーズの 把握は、今後の教員養成段階での指導にも必要な資料として活用できると言えるだろう。し かしながら、ティーチャー・トークを作成できるかどうか「どちらとも言えない」と回答し た学生が

23

名(

38

%)いたことからは、英語表現に関する自信のなさが垣間見え、今後は、

学生たちが実践を通して自信を培っていくためのより有効的な指導方法やツール、サポー

(9)

トを探っていく必要があると言えるだろう。

4-2 実践的英語力育成の可能性

ここでは、いくつかの質問項目間の相関関係から実践的英語力育成の可能性について検 証していく。

まず、日英文の相違点への気づき(表2)とティーチャー・トークへの意欲(表4)の関 係性について見ていく。検定の結果、

r=.99

という強い相関関係を示した。日英文比較教材 に取り組む中で、より多くの相違点に気づいた学生は、ティーチャー・トークに対してより 意欲的であると言える。つまり、今回のような日英文比較教材を通して言語的気づきを促し、

これまでの既習知識とのギャップや、日英の表現の多様性、文構造の違いを再認識させるこ とで、より実践的な英語力の習得、さらにはティーチャー・トーク作成の意欲を向上させ、

その実行可能性へと繋がっていくことを示唆している。これは、「小学校教員を目指す学生 が、小学校英語授業において必要な実践的英語力を育成するための活動デザインの指針を 示す」という本研究の目的達成と、本教育実践の効果を十分示した結果だと言える。

また、日英文の相違点への気づき(表2)と英語に触れる時間(表8)についての関係性 についても、検定の結果、r=.99という強い正の相関が見られた。つまり、より多くの日英 文の相違点に気づいた学生は、普段から英語に触れる時間が長いということが分かった。日 頃の英語への接触が、日本語・英語それぞれの言語的特徴に気づく素地を養うものと推測さ れる。

また、今回の調査では、小学校教員採用試験で加点対象とする自治体が増えている英検

2

級について、

2

級保持者が全体の

8

%にあたる

5

名いたのにもかかわらず、英語が「とても 得意」と答えた学生は存在しなかったことが分かった。彼らの「英語が得意」という概念や 彼らが認識している得意と言えるレベルについては、今後さらに検証しながら自己肯定感 を向上させる授業実践をデザインしていく必要があるだろう。しかし、本実践研究の結果か ら、英語に対して苦手意識を持っている学生も、日英文比較教材を通して、その相違点につ いての気づきを体験したことで、彼らの中で実践的英語力育成への意欲をあらたにした面 も推測できる。このような自発的な学びを通して、彼ら自身が小学生に英語を指導する状況 を想定しながら、今後の英語学習に取り組む姿勢を促し、また、英語指導の際に日本人の弱 点・つまずきを補強する材料になることが考えられる。今回実施した日英文分析のような課 題が、小学校教員を目指す大学生の実践的な英語教授法向上の可能性を引き出すものと期 待したい。

5.まとめと今後の課題

本教育実践研究では、小学校教員を目指す学生に日英文比較教材を用いた帯活動を実践 し、質問紙調査の結果からその効果の検討を行った。質問紙の結果から、日本文と英文を比 較しながら読み込む際に言語的な相違点についてより多くの気づきを体験していた学生は、

ティーチャー・トークへの意欲も高いことも明らかになった。今回、多様な視点から体験し た日本語と英語の相違点への学生の気づきと、ティーチャー・トーク等の実践的な英語使用 への学生たちの意欲向上に、ある程度のつながりがあるという結果が見られた。

今後の課題として、その気づきをいかにして実際に小学校英語の授業に適したアウトカ

(10)

ム作成及び実施につなげていくかという点が挙げられる。日英文比較教材を用いた活動デ ザインは、学生に言語の相違点やその背景にある文化的要素にも着目する機会を与えたが、

まだ受動的な気づきにとどまっている。今後は、それらを実際の教室での言語使用を想定し た実践へと発展させ、検証していくことが必要である。

参考文献

1) 和泉伸一:「フォーカス・オン・フォーム」を取り入れた新しい英語教育,大修館書店(2009) 2) 村野井仁:第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法,大修館書店(2006) 3) 文部科学省:小学校学習指導要領(2002)

4) 文部科学省:小学校学習指導要領(2008) 5) 文部科学省:小学校学習指導要領(2017)

6) Chaudron, C:Second language classrooms: Research on teaching and learning. Cambridge, Cambridge University Press(1988) 7) Hermanto, H:Understanding teacher talk to support students’ communicative competence, Jurnal Sosial Humaniora, 8(2), pp143-

159(2015)

8) Hitotuzi, N:Teacher talking time in the EFL classroom, Profile Issues in Teachers Professional Development, (6), pp97-106(2005) 9) Sharpe, T:How can teacher talk support learning? Linguistics and education, 19(2), pp132-148(2008)

10) Walsh, SConstruction or obstruction: Teacher talk and learner involvement in the EFL classroom, Language teaching research, 6(1), pp3-23(2002)

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