地域交流事業=駿大・地域フォーラムの 活動の今まで
鎗 田 英 三 2010年度より経済研究所を中心にして展開された地域交流事業が、地域 ネットワーク推進室に移管されることになった。2000年度から準備が始ま り、2001年度から10年、この地域交流事業は、「学生参加による〈入間〉
活性化プロジェクト」、「森林プロジェクト」、「地域とゼミによる総合的 キャリア教育」など文部科学省の「現代的教育ニーズ取り組み支援プログ ラム(現代GP)」の助成を三度も獲得するというように、他大学では例を みない大きな教育的成果を生み出した。本学のこのようなユニークな教育 取組みが全国の大学に知れわたったのも、経済研究所の地域交流事業のお かげである。今回、さらにこのような試みを全学的なものにするために、
全学的組織に移管されることになった次第である。そこで、今一度、経済 研究所が行った事業を振り返り、その意義と成果を再確認してみたい。
¸ 地域交流事業のスタート
経済研究所は、経済学部創設から6年後の1997年に設立された。研究所 は、当初から単なる研究機関としてだけではなく、地域問題特別研究助成 金を設け、地域社会の経済・経営問題の実践的解決も大きな目的としてい た。そして、そのような方向性を一歩進めたのが、二代目研究所長の小池 賢治教授であった。小池所長は、『経済研究所所報』(以後、所報と略す)
第4号(2000年度)で、「来年度の予算要求と並行して、新規のプロジェ クトとして地域社会の交流をより一層深めるための『地域交流』事業の立 ち上げ準備を進めた。まず、地域の実業家の方々との懇談会を開催し、地 元の方がたから強力な反応を得ることができた。」と報告している。
¹ 「駿大・地域フォーラム」の誕生
2001年度、若生忠彦氏をリーダーとする地域の実業家、市役所職員、
NPO関係者と経済学部教員が中心となって、「駿大・地域フォーラム」(以 後、フォーラムと略す)が誕生した。フォーラムは、NGOならぬNUO(非 大学組織)とも呼べる非常にユニークな組織であり、研究所からの助成を
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受けながらも、研究所や大学とは独自に「大学と地域の共生をめざして」
両者の活性化に取組もうとしたのである。初年度は、地域の活性化に関す るミニ講演会が行われた。
º フォーラムの発展
フォーラムはじょじょに活動を発展させていった。2002年度には、駿輝 祭で「元気のでる『まちづくり』をめざして」をテーマにシンポジウムを 開催した。そして、同年度末には、フォーラムの活動報告集『駿大・地域 フォーラム』が創刊された。以後、現在まで8号を数える。
さらに、2003年には、活動が新たな方向に発展していった。講演会に よって、広く市民に情報を発信することを目的に、経済学部の教員による ミニ大学講座が開かれた。さらに、地域の「教育力」を活かし、学生に生 の経済・社会を伝えることを目的として、フォーラムが中心となって「地 域人講師団」が組織化された。地域人講師団による講義「経済と社会」、「経 済Today」が経済学部で実施された。
2003年の駿輝祭では、「地域通貨は私たちの生活をどう変えるのか」を テーマにシンポジウムを開催した。また、地域研究交流の一環として地域 のノーマライゼーションの普及のための催し「ふれあいチャリティーコン サート」に協賛した。そして、年度末にはフォーラムのホームページを立 ち上げた。
2004年度で特筆すべきことは、フォーラムのメンバーである鴇田節男氏 と経済学部教員によって、現在本学のキャリア教育の大きな柱になってい るインターンシップが実現したことである。また、同年の駿輝祭ではシン ポジウム「世界の仲間が本音で語る・地域と私」を開催した。
» 森林・環境プロジェクトの開始
2005年からは新たに「森林・環境プロジェクト」がスタートし、この活 動を中心に、今までの例会の開催に加え、運営委員会が組織され、フォー ラムは一層活発な活動を展開することになった。2006年には、5回の例会 と5回の運営委員会が開催された。駿輝祭では、フォーラムの森林・環境 プロジェクトの牽引車である岡部素明氏の基調講演と5名のパネラーによ る「森林・環境シンポジウム」が開催された。さらに、今までの座学では
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なく、2回にわたる森林の間伐体験や、「名栗の森林資源と入間川の源流 視察の旅」を行い、学生も参加した。
2006年に駿河台大学創立20周年記念プロジェクトとしてスタートした
「森林・環境プロジェクト」を実質的に支えたのは、地域と大学のフォー ラム会員であった。フォーラムの活動も森林作業などが多くなっていった。
9月1〜2日に山形県金山町に「森づくり視察ツアー」を行った。これを きっかけとして、各地の取組を訪れる活動が新たに加わった。平成19年度 の現代GPに本学が申請した「『駿大の森』百年協定に基づく飯能活性化」
が難関を越えて採択されたのも、フォーラムの活動によるものと断言でき よう。駿輝祭での森林シンポジウムでは、「100年後の子どもたちのために 元気な森の町からのメッセージ」を開催し、山形県金山町から町職員の藤 山一栄氏と農林家の栗林和則氏をお招きし、百数十名の市民が参加し大い に盛り上がった。
さらに「地域の大学から地域の企業へ」を合言葉に近隣5大学、入間市・
飯能市、中小企業家同友会を中心に埼玉県西部地域雇用促進協議会が結成 され、地域企業合同説明会が実現したのも、フォーラムのメンバーの活動 によるものであった。
¼ フォーラムの活動の現状
2007年から、フォーラムの活動のパターンも定着してきた。活動の一つ の大きな柱は、地域活性化に取り組んでいる地域を視察・交流し、活路を 見出す手段を地域で模索することであった。9月には、自然条件をたくみ に生かして、まちおこしに成功している岩手県葛巻町を訪れた。また、08 年2月にはまちおこしで全国的に有名な長野県小布施町に行き、本学卒業 生で地域で働いている卒業生をガイドに見学した。活動の第二の柱は、文 部科学省の現代GPに採択された本学の「森林・環境プロジェクト」のサ ポートである。駿大の森の草刈、学部デーでの駿大の森の間伐、「駿大の さとやま」でのきのこ打ちなど、「森林文化」受講の学生の活動の準備・
支援を行った。第三は、フォーラム例会での地域研究会である。飯能信用 金庫理事長の内田氏などの講演を行った。第四は、地域人講師団による授 業、インターンシップなどのキャリア教育のサポート。さらに埼玉県西部
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地域企業合同説明会も、不況もあいまって、西部地域5大学から300名近 くの学生が参加するほどの「盛況」になっている。現代GPに採択された
「地域とゼミによる総合的キャリア教育」は、フォーラムメンバーの活動 なしには実現しえなかった。第四は、ホームページの更新と「駿大・地域 フォーラム」の刊行による情報の発信である。
昨年度の2008年度の活動もこのような方向に沿うものであった。ミニ講 演会では、飯能の地域をもう一度見直そうとする活動の紹介や講演を行っ た。また、視察では、7月に宮城県気仙沼市「牡蠣(かき)の森を慕う会」
を視察し、9月には木曾の林業地の見学に行った。とくに、2008年で注目 すべきは、第16回「全国雑木林会議in飯能」、「第4回ヤーコンサミットin 飯能」を本学で共同開催したことである。このような活動によって本学が 全国的な「森林・環境問題」の拠点として注目されるようになったのも、
フォーラムメンバーの献身的な活動の賜物である。2009年度については、
所報(本号)の事業報告を参照されたい。
このように現在フォーラムを媒介とした地域交流活動は目覚しい成果を 挙げており、今後の本学の教育活動の充実のみならず、地域と大学の共生 を考える上での必要不可欠な存在となっている。今後本学の個性ある教育 を発展させ、地域との共生を図っていくためにも、フォーラムを中心とし た地域交流の活動に今後とも研究所、経済学部の教員は、さらに惜しみな い努力を傾けていく所存である。
(資料)駿大・地域フォーラムの活動
¸ 講演会
(2001年度)
○高垣行男教授「情報化政策の地域企業への効果」
○栗原桂一氏「地元に生きる経営」
○徳田賢二氏(専修大学教授)「地域活性化をどう考えるか」
○江上範博氏(経営コンサルタント)「『浪費なき成長』に学ぶ」
○明石真和教授、都築敏夫氏(入間市役所)「飯能・入間地域における国 際交流」
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(2003年度)
○尾崎竜彦(経営コンサルタント)「変革期の経営」
○小池賢治教授「日本企業の中国への進出状況」
○前田悦子准教授「公的年金の行方」
○江川雅司教授「財政学から見た日本経済の現状と問題点・対応策」
○若生忠彦氏(武蔵野コンピューター副社長)「IT活用の現状と課題」
○沼田誠教授「飯能市の戦後の歩み」
○小澤伸光教授「マネジメントを考える」
(2004年度)
○千葉保彦氏(環境問題研究家)「警報の鳴る宇宙船地球号」
○明石真和教授「ドイツのはなし」
○原聰教授「目撃者証言の心理学」
○佐古年穂教授「ボサツ―慈悲を生きる者―」
(2005年度)
○岡部素明氏(岡部税理士事務所長)「名栗村の山林状況」
○浅野正敏氏(天覧山・多峰主山の自然を守る会)「飯能市エコツーリズ ムの活動報告」
(2006年度)
○春原秀樹氏(飯能市役所)「飯能のエコツーリズム」
○内山節氏(立教大学教授、哲学者)「森の生活と哲学」
(2007年度)
○内田哲氏(飯能信用金庫理事長)「地域の活性化と地域金融機関」
○小池賢治教授「イギリス貿易商社の『財閥』経営システム」
○小泉明氏(ホテル経営者)「ビジネスホテルの再建と経営理念」
(2008年度)
○政所利子氏(まちづくりオーガナイザー)「マチ・ヒト・モノ 明日の 飯能 誰が創る」
○萩原高明、平沼弘氏(南川小学校跡地利用を考える会)
「『郷(さと)の駅みなみかわの実現―地域活性化をみすえて』」
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