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咀嚼・嚥下に役立つ筋群の形態と機能

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Academic year: 2024

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title 咀嚼・嚥下に役立つ筋群の形態と機能

Author(s)

髙木, 貴博; 渡辺, 元次; 関谷, 紗世; 谷口, 修一朗;

杉山, 雄紀; 今井, 琴子; 田中, 智人; 宮本, 依利; 楊, 天意; 廣内, 英智; 山本, 将仁; 松永, 智; 阿部, 伸一

Journal 歯科学報, 123(2): 139‑141

URL http://hdl.handle.net/10130/6209 Right

Description

(2)

―――― カラーアトラス ――――

咀嚼・嚥下に役立つ筋群の形態と機能

たか たか ひろ

髙 木 貴 博,

わた なべ げん

渡 辺 元 次,

せき

関 谷 紗 世,

たに ぐち しゅう いち ろう

谷 口 修 一 朗,

すぎ やま ゆう

杉 山 雄 紀,

いま こと

今 井 琴 子,

なか とも ひと

田 中 智 人,

みや もと

宮 本 依 利,

よう てん

楊 天 意,

ひろ うち ひで とも

廣 内 英 智,

やま もと まさ ひと

山 本 将 仁,

まつ なが さとる

松 永 智,

しん いち

阿 部 伸 一

東京歯科大学解剖学講座

139

― 67 ―

(3)

カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説

はじめに

咀嚼と嚥下は,生きていくために最も基本的な行 動で,高齢化社会を迎えた現在,生涯を通じて楽し く食べることができるようにすることは重要な課題 である。摂食行動は,食物が口から入り,胃に至る までの動作で,この中の大部分を咀嚼と嚥下が占め ている。口腔内で食塊を形成するために行われる咀 嚼運動では,下顎を上下左右に大きく動かす咀嚼 筋,前頸筋が中心となり口腔領域の多くの筋が機能 する。その中で,上下の歯に側方から密接し,唾液 をすくい上げ,食塊を練り上げ,舌奥,すなわち咽 頭に送り込んで嚥下運動へつなげるのは表情筋(特 に頰筋)と舌である。今回は特に咀嚼と嚥下の連動

(協調運動)にとって重要な部位の形態観察結果と 歯を喪失した口腔周囲筋の変化に関する解析結果に ついて解説を行う。

1.口腔周囲に停止する顔面筋

顔面筋(表情筋)は主に顔面の皮下に存在し,表 情を変化させる薄くて小さい筋群であり,主に骨・

腱組織・腱膜から起始し,顔面皮膚(眼,鼻,口,

耳の周辺)に停止している(図1)。表情筋は顔面 神経の支配を受ける(図2)。

1)モダイオラス(口角結節)

頰筋,笑筋,口角下制筋,下唇下制筋など多くの 表情筋が口角部に集まる。この部位をモダイオラス

(口角結節・口角筋軸)と呼ぶが,この位置は口角 より外方約1cm その下方約1cm 付近にある(図 1)。咀嚼時にはモダイオラスがスムーズに動くこ とが大切であり,義歯床の位置によってはモダイオ ラスが十分に働かず,食塊が咬合面からこぼれた り,頰粘膜を咬むことにもなる。

2.頰筋の走行形態と機能

多くの表情筋の中で頰部の大部分を占める頰筋 は,特に咀嚼,嚥下に深く関与している。頰筋は,

上,下顎大臼歯部の歯槽部外面と下顎大臼歯後方に ある頰筋稜ならびに翼突下顎縫線から起始し,口唇 に向かって前走し,上半部の筋束は上唇へ,下半部 の筋束は下唇へ入り,口輪筋の大部分をつくる(図 2)。義歯を装着した場合,上顎義歯を抱きかかえ るように走行するため,頰筋の咀嚼,嚥下時の収縮 が上顎義歯の維持安定に役立つ。頰筋の機能として は,口の開閉に応じて,頰に一定の緊張を与え,咀 嚼時の歯牙による損傷を防ぐ。すなわち,開口時は 弛緩し,閉口とともに収縮する。また,口角を外後 方にひき,口裂を一直線とし,口腔前庭を小さくす る。しかしこれら頰筋の機能は,適切な補綴がなさ れていない場合発揮されない。

3.中咽頭(咽頭口部)の形態と機能 頰筋の主な起始部である翼突下顎縫線によって,

口腔内には翼突下顎ヒダが形成される。また翼突下

顎縫線からは上咽頭収縮筋も起始し,筋束は後方へ 走行し反対側の同筋と合し,咽頭縫線を形成する1)

(図3)。口腔の最後方を口峡といい,その後方の 空間である中咽頭粘膜の内面には上咽頭収縮筋が後 走している。すなわち,口腔・咽頭という一つの空 間を前方から「口輪筋−頰筋−上咽頭収縮筋」が包 み,歯列または補綴物に外側から圧をかけ,咀嚼と 嚥下機能を担っている。さらに軟口蓋から口蓋咽頭 筋が中咽頭の粘膜下を縦走(下走)し,スムーズな 咀嚼と嚥下機能の連動に役立っている2)(図4)。そ してこの咽頭を縦走する筋群は,下咽頭と食道の境 界である食道入口部を越え食道粘膜や内喉頭の筋膜 とも連続性をもち,咀嚼,嚥下,さらには呼吸の動 きも連動して行われていることが近年明らかとなっ てきている3)

4.前歯部の喪失によって生じる口輪筋の 形態的・機能的加齢変化

上顎前歯部の喪失によって上唇内面の粘膜が肥厚 し,全体的な形態も内側へ屈曲するように変化する

(図5)。この形態変化は,咀嚼から嚥下の前方部 分の機能を担う口輪筋の機能を低下させると考えら れる。前歯部欠損モデルマウスを用いて調べると(図 6),プロテオーム解析と免疫組織化学染色から,

Keratin6a(Krt6a),Keratin6b(Krt6b),S100 A8/9の発現が,上顎前歯部抜歯群においてコント ロールと比較して有意に上昇していた。この数値は 軟食を与えても回復しなかったことから,補綴物に よる口唇の物理的なサポートが必要であることが考 えられた4)

おわりに

これまでの形態学的研究結果から,口腔・咽頭・

喉頭の機能は協調性を有していることが明らかと なっている。ただしそれら筋群が生涯一定の機能を 発揮するためには,喪失した歯や顎骨を補綴物に よって再建することの重要性を理解することが大切 となる。そして補綴物の外側を取り囲む口輪筋から 頰筋,そして咽頭の筋群の協調的な機能が発揮され ているかについて,定期的な確認を行うことが重要 であると考える。

文 献

1)Tsumori N, Abe S, Agematsu H, et al. : Morphologic characteristics of the superior pharyngeal constrictor muscle in relation to the function during swallowing, Dysphagia,22:122−129,2007.

2)Okuda S, Abe S, Kim H, et al. : Morphologic character- istics of palatopharyngeal muscle, Dysphagia,23:258

−266,2008.

3)Yamamoto M, Hashimoto K, Honkura Y, et al. : Mor- phology of the upper esophageal sphincter or cricopha- ryngeus muscle revisited : a study using adult and fetal specimens, Clinical Anatomy,33:782−794,2020.

4)Takagi T, Yamamoto M, Sugano A, et al. : Alteration of oral and perioral soft tissue in mice following incisor tooth extraction, Int J Mol Sci,23⑹:2987,2022.

140

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(4)

咀嚼・嚥下に役立つ筋群の形態と機能

髙 木 貴 博,渡 辺 元 次,関 谷 紗 世,谷 口 修 一 朗,杉 山 雄 紀,

今 井 琴 子,田 中 智 人,宮 本 依 利,楊 天 意,廣 内 英 智,

山 本 将 仁,松 永 智,阿 部 伸 一

東京歯科大学解剖学講座

図3 咽頭の構造

咽頭は薄い筋層で出来た袋状の構造物で,口腔・喉 頭・食道と筋の連続性をもち,協調的に機能するこ とが可能となっている。

a:軟口蓋,b:舌,c:喉頭蓋,d:咽頭内面を 縦走する筋群,e:喉頭,f:上咽頭収縮筋 A:矢状断面,B:咽頭を後面から観察

図2 顔面筋群深層(A)と咽頭の連続性(B)

顔面筋深層では,翼突下顎縫線から起始した頰筋が 前走し口輪筋に合流する。翼突下顎縫線(※)から 上咽頭収縮筋が起始し,後方へ走行する。

a:口輪筋,b:頰筋,c:上咽頭収縮筋

図4 軟口蓋(A)から咽頭へ向かう口蓋咽頭筋(B)

発音や鼻咽腔閉鎖に役立つ軟口蓋から,咽頭内面を 縦走する口蓋咽頭筋が起始する。これら筋群の走行 により,口腔から咽頭へ送られる食塊をスムーズに 移送が可能となっている。

a:軟口蓋,b:口蓋咽頭筋,c:咽頭内面の縦走 筋,d:舌

図5 無歯顎における上唇形態の変化 歯を喪失することによって,上唇内面の粘膜は 屈曲するように肥厚する。

(東京歯科大学市川総合病院 片山正輝先生,短期 大学 菅野亜紀先生,オーラルメディシン病院歯 科学講座 酒井克彦先生提供:倫理委員会 承認 番号:I 19−77R)4)

図1 顔面皮下を走行する顔面筋(表情筋)(A)

と顔面神経(B)

口裂周囲に集まる顔面筋は,口角の外方約1cm,

その下方約1cm にモダイオラスを形成する。顔面 筋は顔面神経に支配される。

a:モダイオラス,b:顔面神経

図6 前歯欠損モデルマウスの上唇形態の変化 前歯有歯群と比較し,前歯欠損群では,筋層(※)よ り口腔側の粘膜の肥厚が観察された(矢印)4)

141

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参照

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カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説

2)咀嚼・嚥下と大臼歯部咬合支持 ⑴

30.6 ± 9.4 11.5 ± 3.6 p<0.001 するめ咀嚼回数 92.8 ± 30.8 80.0 ± 34.5 n.s 主菜咀嚼回数 27.6 ± 13.3 18.6 ± 13.5 0.013 副菜咀嚼回数 22.3 ± 15.6 17.0 ± 11.5

以上のことから,座位と比較しリクライニング位では咀嚼時の唾液分泌量が減少し,咀