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陸上で最も多くの炭素が蓄積されている植物細胞壁 は,化石資源の乏しいわが国が循環型社会を構築するた めに欠かせない生物資源(バイオマス)であると言え る.しかしながら,植物細胞壁の主要成分であるセル ロース,ヘミセルロース,リグニンは,お互いに水を排 除しながら複雑なマトリックスを形成して固体となり,

多くの生物による分解・資化を妨げるようにデザインさ れている.一方で担子菌の一種である木材腐朽菌は,菌 体外酵素を利用することで,この難分解性の植物細胞壁 を栄養源として生きている.近年,木材腐朽菌による植 物細胞壁成分の分解機構を理解するために,多くの木材 腐朽菌の全ゲノム配列情報が取得されているが,その結 果,褐色・白色といった腐朽菌に特徴的な木材の分解様 式に遺伝情報がどのようにかかわっているのかという理 解が進むとともに,植物と腐朽菌の進化が「植物細胞壁 と分解酵素の攻防」で表現されることが明らかとなって きている.本稿では,筆者らがかかわってきた木材腐朽 担子菌のゲノム・ポストゲノム解析の動向について解説 すると同時に,細胞壁を壊されないように進化する植物 と,より強力な分解力を手に入れようとする腐朽菌の

「いたちごっこ」を紹介したい.

木材腐朽菌が生産する分解酵素に関する研究の背景 木材腐朽菌研究の歴史は,古くは1800年代後半にま

でさかのぼることができる.主に担子菌類に分類される 木材腐朽菌によって木が分解されると,腐朽後に材が白 くなる「白色腐朽菌」と褐色になる「褐色腐朽菌」があ ることが経験的に知られていたが,1878年にHartig(1)

「Zersetzungserscheinungen des Holzes(木材の腐朽状 態)」の中で,腐朽された木材の色が「白色」と「赤色」

に分類されることに触れており,これが現在の「白色腐 朽菌」と「褐色腐朽菌」の分類につながっていると考え られている(図1.その後1900年代に入ると,さまざ まな腐朽菌において木材の組織(細胞壁)がどのように 壊されるのかが顕微鏡観察されるとともに,腐朽前後の 木材成分の差から,腐朽過程において各腐朽菌がどのよ うな成分を分解しているのかが詳細に調べられた.その 結果,褐色腐朽菌では腐朽初期におけるセルロースとヘ ミセルロースの急激な低分子化が起こっているがリグニ ンがほとんど分解されていないこと,白色腐朽菌ではセ

図1白色腐朽菌(左)および褐色腐朽菌(右)によって腐朽 された木材

セミナー室

植物細胞壁の情報処理システム-4

木材腐朽担子菌のゲノム・ポストゲノム解析から植物 細胞壁と分解酵素の共進化を考える

堀 千明 *

1

,五十嵐圭日子 *

2

,鮫島正浩 *

2

*1理化学研究所環境資源科学研究センター,*2東京大学大学院農学生命科学研究科

(2)

ルロース,ヘミセルロース,リグニンがほぼ均一に分解 されていくことが明らかとなった(2)

1980年前後になると石油危機を契機として,腐朽菌 が生産するセルロース・ヘミセルロースなどの糖質分解 活性およびリグニン分解活性についてモデル培養系を 使って調査されるようなった.特にリグニン分解能力が 高く,分生胞子を形成することから実験に用いやすい白

色腐朽菌 において研究が

進められた.そのようななか,1983年にリグニン分解 酵素:リグニンペルオキシダーゼ(LiP)が本菌から見 いだされたことは,最も重要な発見であると考えられ る(3).次いで,マンガンイオン依存性ペルオキシダーゼ

(MnP)が発見され,それ以前から知られていたラッ カーゼとともに,リグニン分解関連酵素がさまざまな木 材腐朽菌から単離・特性解析された(4).また,ペルオキ シダーゼに過酸化水素を供給する酵素についても探索が 行われた結果,グルコース酸化酵素,脂質酸化酵素,グ リオキサル酸化酵素(GLOX),メタノール酸化酵素,

ピラノース酸化酵素をはじめとした酸化酵素についての 研究も同時に進められた(4).1980年代になると分子生物 学的解析が可能となり,分解酵素をコードする遺伝子の 単離とアミノ酸配列の決定,さらに変異導入された酵素 の解析などによって触媒残基が解明された.さらに 1990年代以降になると代表的な酵素の立体構造が明ら かにされることにより,これら分解酵素の理解が分子レ ベルで進んだ.これらのことを受け,それまでは基質特 異性によって分類されていたセルロースやヘミセルロー スなどの多糖の分解に関与する糖質関連酵素(Carbohy- drate-Active enZymes; CAZymes)(5)が,アミノ酸配列 から予測される疎水性クラスターに基づいて各CAZy ファミリーに分類されることとなった.一方,リグニン 分解に関連する酵素については,当初真菌由来酸化的リ グ ニ ン 分 解 酵 素(Fungal Oxidative Lignin Enzymes; 

FOLy)データベース(6)に遺伝子配列情報が登録されて い た が,現 在 はCAZyデ ー タ ベ ー ス 内 の 補 助 活 性

(AA)ファミリーにカテゴリー化されている(7).最近見 い だ さ れ た 多 糖 溶 解 性 モ ノ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ

(LPMO)(8〜11)およびセロビオース脱水酵素(CDH)に 加 え て 最 近 発 見 さ れ た 新 規 ピ ロ ロ キ ノ リ ン キ ノ ン

(PQQ)依存性糖酸化酵素といった糖分解に関与する酸 化還元酵素についてもAAファミリーに分類されてい る(12)

2000年代になると,ゲノムの全塩基配列をDNAシー ケンサーで解読し,既知タンパク質や転写産物配列との 類似性およびエキソン・イントロン境界の規則性から,

得られたゲノム配列中に存在する全遺伝子を予測するこ とが可能となった.同時に,DNAマイクロアレイや質 量分析器の発達により,トランスクリプトームおよびプ ロテオームといった網羅的な発現情報を取得することが ポストゲノム解析として可能となった.2004年にはこ れら技術が木材腐朽菌分野に用いられ,白色腐朽菌

の全ゲノム配列情報が,木材腐朽菌とし て初めて公開された(13).それ以降の技術発達により,

ゲノムおよびポストゲノム解析が加速され,現在では 20種以上の腐朽菌のゲノム情報が報告されており(14), さらには今後1,000種以上の菌類のゲノム情報を取得す ることが米国エネルギー省JGIを中心として計画されて いる(15)

白色腐朽菌のゲノム・ポストゲノム解析

ほかの腐朽菌に先駆けて白色腐朽菌のモデル菌である の 全 ゲ ノ ム 解 析 が 米 国 農 務 省

(USDA)の先導で1999年から始まり,その配列解析の 結果が2004年に公表された(13).その中にはリグニン分 解 に 関 連 す る と 考 え ら れ る10個 のLiPお よ び5個 の MnPを含む17個のペルオキシダーゼ遺伝子の存在が明 らかとなった.加えて,GLOXをはじめとした18個の 酸化酵素遺伝子の存在も予測された.驚くべきごとに,

セルロースやヘミセルロースなどの木材多糖の分解に関 与すると推測されるCAZymesが240個以上,その中で も糖質加水分解酵素(GH)遺伝子を166個も保有する ことが予測された.当菌から単離されたリグニン分解酵 素の裏づけがされた一方,糖質分解酵素についてはより 多くの代謝系を保有していることが示唆された.さら に,機能が明らかとなっていない機能未知酵素を多く コードしていることも明らかとなり,木材腐朽菌がほか の生物と比較して特徴的な分解酵素を利用することで,

ほかの生物に分解できない植物細胞壁を効率よく分解し ていることが推測された.

翌年の2005年には,セルロースを炭素源としたとき に本菌が生産する菌体外タンパク質についての全分泌タ ンパク質解析(セクレトーム解析)が行われた(16).そ の結果48種類のタンパク質が同定され,そのうち32個 がGHファミリーに属することが明らかとなった.セル ロース分解にかかわる酵素として,GHファミリー 6ま たは7に属するセロビオハイドロラーゼおよびエンドグ ル カ ナ ー ゼ と い っ た セ ル ラ ー ゼ に 加 え て,CDHや LPMOなどの酸化還元酵素が検出された.これらセル ロース分解関連酵素と同時に,さまざまなヘミセルロー

(3)

ス分解酵素が生産されていることも明らかになった.一 方,グルコースを炭素源とした標準リグニン分解培養系 でのセクレトーム解析結果も報告されたが(17),この培 養系ではLiP, MnPおよびGLOXのほかに,多くのヘミ セルラーゼやペクチナーゼ,プロテアーゼが検出された が,セルラーゼは検出されなかったことから,リグニン 分解時と多糖分解時では異なる酵素系が用いられている ことが示唆された.さらに木粉を炭素源とした培養系で のセクレトーム解析および次世代DNAシーケンサーを 用いたトランスクリプトーム解析から,一連の分解酵素 の多くが木質バイオマスを分解する過程で生産されてい ることが示された(18〜20)

木材中に存在するまたは生成されるほかの成分に対す る の応答に着目した比較セクレトー ム解析結果においても興味深い現象がいくつか報告され ている.リグニン代謝産物の一つと考えられるバニリン を添加すると,本菌によるGLOXやMnPといったリグ ニン分解関連酵素の生産が上昇することが明らかとなっ た(21).またわれわれは,セルロース分解性培養系にキ シランやデンプンを添加した場合に,本菌による多糖の 認識・分解において相互に影響を与えることを明らかに

している(22, 23).すなわち,デンプンを添加すると,セ

ルロースおよびヘミセルロース分解酵素の生産が減少す るが,キシランを添加するとキシラン分解酵素だけでな く,CDHやLPMOなどのセルロース分解に関与すると

考えられている糖酸化酵素の生産が増加することを示し た(表1.これら網羅的な発現応答の結果は,本菌が 木材分解過程でさまざまな物質を認識し,その状況に合 わせて分解酵素の生産制御を行っていることを示してお り,木材腐朽菌の木材分解について基本となる情報が 次々と明らかにされている.

モ デ ル 白 色 腐 朽 菌 の よ う に セ ル ロースおよびヘミセルロース,リグニンを同時に分解す るグループに対し,セルロースを残してリグニンを優先 的に分解する白色腐朽菌は選択的リグニン分解菌と呼ば れるグループが存在する(24).2012年に白色腐朽菌の中 でも特に選択的リグニン分解菌として研究が進んでいる の全ゲノム配列が明らかに さ れ と の 比 較 ゲ ノ ム 解 析 が 行 わ れ た(25). は,ゲノム上に13個のMnP遺 伝子を有していることが明らかとなり,

の5個と比較して多くのMnP遺伝子を保有している ことがわかった.さらに,従来のLiP, MnPおよび多機 能型ペルオキシダーゼとは基質特異性が異なる高い酸化 能力をもつペルオキシダーゼ遺伝子を有していたことか ら,このような酵素系の違いが両菌によるリグニン分解 様式の違いを与えると推測された.一方,糖質分解酵素 に関しては,両菌が保有している遺伝子には大きな違い はないが,木粉培地におけるトランスクリプトームおよ びセクレトーム解析結果から,セルロースやヘミセル ロース分解にかかわると考えられる酵素の転写,翻訳,

分泌のレベルで異なっていることが明らかとなった.さ らに,木紛培地における経時的なセクレトーム解析によ り,本菌は木材分解初期からリグニン分解酵素を高発現 する一方,糖質分解酵素の生産は経時的に増加すること が明らかとなった(26) (図2.これらのことから,

では と比較して,MnP

を代表としたリグニン分解関連酵素遺伝子の発現が分解 初期から高いことが,本菌による選択的リグニン分解様 式を決定していると考えられた.

褐色腐朽菌のゲノム・ポストゲノム解析

2009年に褐色腐朽菌 の全ゲノム塩基 配列が解読され,前述した白色腐朽菌

とのゲノムワイドな比較解析が行われた(27).その結果,

褐色腐朽菌 は,リグニン分解にかかわるLiP やMnPだけでなく,結晶性セルロースを分解するため に必要なGHファミリー 6や7のセロビオハイドロラー ゼ,さらにはセルロース吸着ドメインをコードする遺伝 表1二次元電気泳動法により決定されたキシラン存在下で

が生産する量が増加するタンパク質スポット

C:セルロース培地,CX:セルロース+キシラン培地)

*Cに対するCXのタンパク質スポットの蛍光強度の相対値を表す.

(4)

子をもたないことが明らかとなった.その翌年には,

は と比較してヘミセルロース 分解酵素を多く生産するが,セルロース分解にかかわる 酵素をほとんど生産しないことが示された(28).これら セルラーゼを生産しない特徴と鉄酸化酵素の生産性が高 かった結果は,金属イオンと過酸化水素の存在でヒドロ キシルラジカルが生成され(フェントン反応:Fe2++ H2O2→Fe3++OH・+OH),さまざまな植物細胞壁成 分を分解できるという既往の研究結果を裏付けるもので あった.さらに2012年に報告された褐色腐朽菌ナミダ タケ( )のゲノムワイドな解析にお いても,鉄酸化酵素による活性酸素種を介した初発の分 解後にエンドグルカナーゼやキシラナーゼなどの糖質加 水分解酵素による主鎖分解が進むことが提唱された(29). 上述した代表的な白色腐朽菌および褐色腐朽菌の成功 例 を 受 け, や , 

などの多くの木材分解能力の高い腐朽菌が属す る担子菌,ハラタケ網,サルノコシカケ目に属する11

種の腐朽菌について比較ゲノム解析およびセクレトーム 解析が行われた(30)(表2.上述したように,褐色腐朽 菌は結晶性セルロースを分解するために必要なGHファ ミリー6や7のセロビオヒドロラーゼ,セルロース吸着 ドメインに加えて,GHファミリー 9セルラーゼをコー ドする遺伝子を保有していないこと,GH45セルラーゼ 遺伝子数が少ないことが明らかとなった.また,セル ロース分解にかかわる酸化還元酵素に関しては,褐色腐 朽菌ではCDH遺伝子を保有していないこと,また,

LPMOについては褐色腐朽菌では平均保有遺伝子数が3 個であるのに対して,白色腐朽菌では平均16個の遺伝 子を保有していた.実際に,木粉培地でのセクレトーム 解析を行ったところ,GH6, GH7, CDH, LPMOは白色腐 朽菌においてのみ同定された.ヘミセルロース分解につ いても,褐色腐朽菌と比較して白色腐朽菌ゲノム中に保 有している遺伝子数が多いファミリーとして,GHファ ミリー79

β

-グルクロニダーゼ,GHファミリー74グルカ ナーゼ,GHファミリー10キシラナーゼ,さらに,キシ 図2木紛培地においてリグニン選択分

解白色腐朽菌 が生産

する菌体外タンパク質の経時発現量変化 のクラスター解析

(5)

ラン分解に関与する糖質エステラーゼ(CE)ファミ リー1および15が挙げられた.これらのことから,セル ロースだけでなく,ヘミセルロース分解においても褐色 腐朽菌と比較して,白色腐朽菌は多様な酵素群を利用し ていることが明らかとなった.注目すべきは,セクレ トーム解析において白色腐朽菌では検出されず,褐色腐 朽菌で検出された唯一の酵素がキノン還元酵素であった ことだ.キカイガラタケ目に属する褐色腐朽菌キチリメ

ンタケ( )において,リグニン

代謝産物であるヒドロキノン‒キノン酸化還元サイクリ ングによって過酸化水素の供給とFe3+を還元すること が提唱されており,キノン還元酵素が重要な働きをする 可能性が示唆されている(31).したがって,このような キノンを介した木材分解システムが広く褐色腐朽菌に存 在する可能性が示された.

木材腐朽菌の樹種選択性に関するゲノム・ポストゲ ノム解析

木材腐朽菌の種類によって分解しやすい樹種が異なる ことはよく知られており,一般的に,多くの白色腐朽菌 が広葉樹を中心として分解するのに対し,褐色腐朽菌は 針葉樹を分解することから,分解樹種の選択性に傾向が あることが指摘されている.実際にモデル白色・褐色腐 朽菌を用いたセクレトーム解析にて,針葉樹または広葉 樹を炭素源とした場合に生産される菌体外酵素の違いが 報告されている(32).特に,針葉樹の樹種選択性に着目

した解析については, の近縁種である

針葉樹分解性の白色腐朽菌 を用

いたカナダのグループによっていくつか報告がなされて いる.なかでも,セルロースや木粉培地でのセクレトー ム解析結果において,糖質分解酵素ではGHファミリー 2のマンノシダーゼ,リグニン分解酵素ではMnPが生 産されることが, と比較して特徴的で あった(33).リグニン分解酵素の中でも,LiPは過酸化水 素存在下で直接的にリグニン基質を分解するのに対し,

MnPはメディエターであるMnイオンを介してリグニ ンを分解することが知られている.これら酵素が広葉樹 と比較して針葉樹に特徴的なヘミセルロース(マンナ ン)や針葉樹に特徴的なリグニン(グアイアシル基が多 く密度が高いリグニン)を分解するのに適しているため に,本菌が針葉樹分解を達成している可能性が示唆され ている.さらに, との比較ゲノム解析 により,抽出物質の分解に関連するシトクロムP450モ ノオキシゲナーゼ遺伝子を多く保有していることが明ら かとなり,抽出物質の分解能の差異も針葉樹分解にかか わっている可能性が示唆された(34).ほかの例として,

伐採直後の抽出物質を豊富に含む針葉樹にいち早くコロ ニーを形成することが知られている白色腐朽菌

についてもゲノム・ポストゲノム解析 が行われた.その結果,植物細胞壁の主成分を分解する 酵素群であるAAファミリーおよびCAZyファミリーを コードする遺伝子数はほかの白色腐朽菌とほとんどほと 表211種の白色・褐色腐朽菌ゲノムにコードされている主な糖質分解に関連する酵素ファミリーの遺伝子数

菌名 GH* PL CE CBM

LPMO CDH 3 5 6 7 9 10 11 12 25 30 35 37 45 74 79 8 1 15 1 20

褐色 12 19 0 0 0 2 0 2 0 10 2 2 2 0 3 0 1 1 0 2 4 0

9 18 0 0 0 4 0 2 0 2 2 4 1 0 3 0 1 1 0 1 2 0 7 22 0 0 0 4 0 2 0 3 1 9 1 0 2 0 1 1 0 1 2 0 褐色腐朽菌の平均値 9.3 20 0 0 0 3.3 0 2 0 5 1.7 5 1.3 0 2.7 0 1 1 0 1.3 3 0

白色 9 19 1 5 1 4 0 2 1 1 4 3 3 2 8 1 2 2 32 2 28 1

 spp 13 18 1 3 1 9 0 3 2 3 7 2 3 1 12 3 2 2 18 3 16 1 8 23 1 4 1 8 0 2 1 2 4 3 4 1 11 2 2 2 28 3 12 1 8 19 1 4 12 5 0 3 2 2 3 3 2 1 13 3 2 2 17 2 15 1 13 22 1 4 1 6 0 5 1 4 2 2 3 1 11 2 4 2 23 4 18 1 7 18 1 3 12 6 1 3 1 1 1 2 2 1 8 2 4 2 16 4 9 1 11 24 1 7 1 6 1 3 1 3 4 2 2 2 13 1 3 3 27 3 11 1 11 19 1 7 1 6 1 2 1 2 3 2 2 2 5 1 5 2 31 2 15 1 白色腐朽菌の平均値 10 20 1 4.6 1 6.3 0.4 2.9 1.3 2.3 3.5 2.4 2.6 1.4 10.1 1.9 3 2.3 24 2.9 16 1

*GH:糖質加水分解酵素,PL:多糖リアーゼ,CE:糖質エステラーゼ,CBM:糖質結合モジュール,LPMO:可溶性多糖モノオキシゲ ナーゼ,CDH:セロビオース脱水素酵素

(6)

んど一緒である一方で,抽出成分を分解する酵素をコー ドする遺伝子数のパターンが違うこと(図3,また脂 質代謝関連酵素の発現増加が観察された(35)

木材腐朽菌が保有する分解酵素の分子進化

全31種の真菌類に対して分子系統学的な比較ゲノム

解析を行った結果が報告された(36).まずゲノム上の木 材分解関連酵素遺伝子の数を比較したところ,白色腐朽 菌が複数のクラスII(真菌類の分泌型)ペルオキシダー ゼ(POD)遺伝子を保有していることが特徴として挙 げられた.PODの分子進化解析を行ったところ,リグ ニン分解酵素遺伝子としてMnPが担子菌によって獲得 されたことを契機として,白色腐朽菌はそれらを拡張す 図318種類の木材腐朽菌が保有する糖 質関連酵素およびリグニン分解関連酵素 ファミリーの遺伝子数の主成分解析 上部グループに白色腐朽菌または下部グ ループに褐色腐朽菌に分布した.このこと は糖質関連酵素およびリグニン分解関連酵 素が各々のグループで特徴が似ているとい うことを示している.

図4リグニン分解にかかわるPODの分子時計解析に各種グルカナーゼおよびPOD遺伝子の存在有無を調べた系統樹

図中系統樹の数はそのクレードが分かれた年代(単位100万年)を表している.また,各菌におけるクラスIIペルオキシダーゼの遺伝子数 を学名略称の下に書いた.オレンジ色のバーはそれぞれGHファミリー16のエンドグルカナーゼ,GHファミリー6または7のセロビオヒド ロラーゼ,GHファミリー74のキシログルカナーゼ,およびクラスIIペルオキシダーゼの分布である.Floudasら(35)のデータを和名を変換 し,さらに各酵素の分布を追加した.

(7)

ることによりリグニン分解能力を獲得し,その一方で褐 色腐朽菌は,それらリグニン分解にかかわる遺伝子が進 化過程で欠損したことが明らかとなった(図4.さら に,分子時計解析によって,MnPが発生した時期と PODが増加した担子菌ハラタケ亜門ハラタケ網が進化 した時期が一致する(約2.9億年前)ことが明らかと なった(図4).この時期は古生代における石炭紀から ペルム紀へ移行する時期であり,これまで古生物学にお いて推測されていた石炭紀の終焉と白色腐朽菌によるリ グニン分解能力の獲得が,真菌の比較ゲノム解析からも 検証されることとなった.この結果から,木材腐朽菌の 木材を分解する能力が地球の炭素循環に深くかかわって いることが理解できるであろう.

次に各31種類の真菌類が,

β

-1,4-グルカナーゼ遺伝子

(GHファミリー5, 6, 7, 74)をゲノム中に保有している かどうかを調べた.図4に示すように,主に非晶性のセ ルロースを分解するGHファミリー 5に属するエンドグ ルカナーゼは,担子菌類,子嚢菌類ともに広く分布して いるのに対して,結晶性セルロースを分解できるセロビ オヒドロラーゼ(GHファミリー6および7)をコードす る遺伝子は,ツボカビ門やプクシニア菌亜門の一部,さ らに前述のとおりサルノコシカケ目の中の褐色腐朽菌で は欠損していた.興味深いことに,GHファミリー74に 属するキシログルカナーゼの分布はさらに狭くなってお り,担子菌類ではハラタケ綱にはあるがアカキクラゲ綱 にはなく,子嚢菌類ではチャワンタケ亜門の中の一部の 菌類のみが遺伝子を保有していた.一方,これら酵素の 基質である

β

-1,4-グルカンが植物の進化においていつ獲 得されてきたかを調べると,藻類はすでにセルロースを 合成しており,高結晶性のセルロースを含むものが存在 していること,また,キシログルカンについては,陸上 植物においてセルロースを架橋するようになった(37)こ とから,

β

-1,4-グルカナーゼを保有する菌類の分布と,

植物中の細胞壁成分の植物の進化的な分布には,相関が あると考えられた.図4に示すようにファミリー74に属 するキシログルカナーゼの分布と比較してリグニン分解 酵素を保有する菌類はさらに少なくなっているが,初期 の陸上植物であるコケ類はリグニン様の芳香族化合物を 含有しているだけであり,それ以降の植物はリグニンを 含有している(37).これらのことを考慮すると,植物が 細胞壁中に新しい構造をもつと,それを分解する酵素を 真菌が進化させるという「いたちごっこ」の共進化関係 にあるように感じられる.全ゲノム配列が解析される菌 種が爆発的に増える中で,植物細胞壁とそれを分解する 菌類の共進化のプロセスが明らかになっていくことが期

待される.

謝辞:本稿で紹介した筆者らの研究結果は,主に米国農務省林産研究所 のDan Cullen博士,米国クラーク大学のDavid Hibbett教授との共同研 究による成果である.この場を借りて厚く御礼申し上げる.

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16)  A.  Vanden  Wymelenberg,  G.  Sabat,  D.  Martinez,  A.  S. 

Rajangam, T. T. Teeri, J. Gaskell, P. J. Kersten & D. Cul- len:  , 118, 17 (2005).

17)  A. Vanden Wymelenberg, P. Minges, G. Sabat, D. Marti- nez,  A.  Aerts,  A.  Salamov,  I.  Grigoriev,  H.  Shapiro,  N. 

Putnam,  P.  Belinky  :  , 43,  343 

(2006).

18)  A. Abbas, H. Koc, F. Liu & M. Tien:  , 47, 49 

(2005).

19)  S. Sato, F. Liu, H. Koc & M. Tien:  , 153, 3023 

(2007).

20)  S. Sato, F. A. Feltus, P. Iyer & M. Tien:  , 55,  273 (2009).

21)  M.  Shimizu,  T.  Fujii,  S.  Masuo,  K.  Fujita  &  N.  Takaya: 

(8)

9, 7 (2009).

22)  C. Hori, K. Igarashi, A. Katayama & M. Samejima: 

321, 14 (2011).

23)  C. Hori, H. Suzuki, K. Igarashi & M. Samejima: 

78, 3770 (2012).

24)  R.  A.  Blanchette:  , 29,  381 

(1991).

25)  E.  Fernandez-Fueyo,  F.  J.  Ruiz-Dueñas,  P.  Ferreira,  D. 

Floudas, D. S. Hibbett, P. Canessa, L. F. Larrondo, T. Y. 

James, D. Seelenfreund, S. Lobos  :  , 109, 5458 (2012).

26)  C. Hori, J. Gaskell, K. Igarashi, P. Kersten, M. Mozuch, M. 

Samejima  &  D.  Cullen:  , 80

2062 (2014).

27)  D. Martinez, J. Challacombe, I. Morgenstern, D. Hibbett,  M. Schmoll, C. P. Kubicek, P. Ferreira, F. J. Ruiz-Duenas,  A. T. Martinez, P. Kersten  : 

106, 1954 (2009).

28)  A. Vanden Wymelenberg, J. Gaskell, M. Mozuch, G. Sa- bat, J. Ralph, O. Skyba, S. D. Mansfield, R. A. Blanchette, 

D. Martinez, I. Grigoriev  :  , 

76, 3599 (2010).

29)  D. C. Eastwood, D. Floudas, M. Binder, A. Majcherczyk,  P.  Schneider,  A.  Aerts,  F.  O.  Asiegbu,  S.  E.  Baker,  K. 

Barry, M. Bendiksby  :  , 333, 762 (2011).

30)  C. Hori, J. Gaskell, K. Igarashi, M. Samejima, D. Hibbett,  B. Henrissat & D. Cullen:  , 105, 1412 (2013).

31)  A.  Vanden  Wymelenberg,  J.  Gaskell,  M.  Mozuch,  S.  S. 

Bondurant, G. Sabat, J. Ralph, O. Skyba, S. D. Mansfield,  R.  A.  Blanchette,  I.  V.  Grigoriev  : 

77, 4499 (2011).

32)  S. Mahajan & E. R. Master:  , 

86, 1903 (2010).

33)  H. Suzuki, J. Macdonald, K. Syed, A. Salamov, C. Hori, A. 

Aerts, B. Henrissat, A. Wiebenga, P. A. Vankuyk, K. Bar-

ry  :  , 13, 444 (2012).

34)  C. Hori, T. Ishida, K. Igarashi, M. Samejima, H. Suzuki, E. 

Master, P. Ferreira, F. J. Ruiz-Duenas, B. Held, P. Canes-

sa  :  , 10, e1004759 (2014).

35)  D. Floudas, M. Binder, R. Riley, K. Barry, R. A. Blanch- ette, B. Henrissat, A. T. Martínez, R. Otillar, J. W. Spata- fora, J. S. Yadav  :  , 336, 1715 (2012).

36)  横山隆亮,西谷和彦:植物科学最前線,5, 45 (2014).

37)  C. Kremer, F. Pettolino, A. Bacic & A. Drinnan:  ,  219, 1023 (2004).

プロフィル

堀  千 明(Chiaki HORI)

<略 歴>2007年 東 京 大 学 農 学 部 卒 業/

2012年同大学大学院農学生命科学研究科 博士課程修了/同年米国農務省林産研究所 JSPS特 別 研 究 員/2013年 理 化 学 研 究 所 JSPS特別研究員(PD)<研究テーマと抱 負>植物と菌類の両方を研究しながら,植 物バイオマスの利用について考えていきた い<趣味>音楽鑑賞,旅行,スカイツリー 五十嵐 圭日子(Kiyohiko IGARASHI)

<略 歴>1994年 東 京 大 学 農 学 部 卒 業/

1999年同大学大学院農学生命科学研究科 博士課程修了/1999〜2002年日本学術振 興会特別研究員(PD),その間2000〜2001 年までスウェーデン国ウプサラ大学バイオ メディカルセンター博士研究員/2002年 東京大学大学院農学生命科学研究科助手/

2007年から身分名称変更により同上助 教/2009年から同上准教授<研究テーマ と抱負>セルロース分解にかかわるさまざ まな酵素の分子メカニズムを明らかにする ことでバイオマスを利用するためのヒント を つ か み た い<趣 味>子 ど も と フ ラ イ フィッシング,子どもとクローラーラジコ ン,一人でウォーキング

鮫島 正浩(Masahiro SAMEJIMA)

<略 歴>1977年 東 京 大 学 農 学 部 卒 業/

1982年同大学大学院農学生命科学研究科 博士課程修了/同年日本学術振興会奨励研 究員/1983年東京大学農学部助手/1990

〜1992年米国ジョージア大学生化学科博 士研究員/1995年東京大学大学院農学生 命科学研究科助教授/2001年同教授<研 究テーマと抱負>バイオマス利活用推進に 向けた微生物と酵素の利用.応用から基礎 を掘り下げ,再び,応用に向かえるような 研究に対する姿勢をもつこと<趣味>音楽 鑑賞,散歩と山歩き

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会

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