総合的な学習における学力形成と生き方に与える影響の検証
一卒業後の追跡周査による体験者の語りを中心に‑
学 校 教 育 専 攻 総 合 学 習 開 発 コ ー ス 五 十 嵐 健
1.
問題の所在
本研究における学力とは,裁進学力という言 葉に表される知識偏重の狭義の学力ではなく,
[生きるカ]に表される,社会生活に生かされ る広い意味での学力のことをす旨す。
本研究は,総合的な学習が学習者の学力形 成やその後の生き方に与える景怨について,卒 業後の追蹴周査による体験者の語りを中心
i
こ検 証することを目的としている。総合的な学習に よる経験や学びについての,経験の語りという 個別の事例から,校種や内容を越えて総合的な 学習に潜在する普通性を見出すことができるの ではなし、かと考えたからである。なお,本研究においては体験者が総合的な 学習によって身に付し1た力が卒業後に役立つと 語ったことを,総合的な学習で形成された学力 が卒業後の生き方に影響を与えていることとし て捉えた。
2. 研究の手順
①総合的な学習を体験した卒業生に対して,
当時の経験と現在の生き方についての総験 的資料を得るために追蹴局査を行う。
②①の調査で得られた経験的資料を分析し,
そこから浮かび上がった概念をもとに学 習者の学力形成やその後の生き方に景簿を 与えた要因となる総合;的な学習の総験を検 証する。
③同様に,小学校,中学校及び高等学校での
指導教員
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I1 雅弘総合的な学習による学びが学習者の卒業後 の生き方に影響する要因の,校種間の共通 性明虫自性を明らか
i
こする。3. 研究の結果と考察
総合的な学習を経験した卒業生の追跡調査 では,小学校 2校,中学校 1校,高等学校 1 校の 4つの事例を取り上げ,卒業生と当時の 担任耕市を招き,グループ・インタビューを行 った。グループ・インタピューを採用した理由 は,参加者相互のやりとりによって,個別でイ ンタピ、ューを行うよりも広範囲で,豊富なデー タを収集することが可能であると考えられるか
らである。
3.1
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特色jとして例虫自性各事例で,学習者の学力形成にイ系る概念,
及びその要因となった総合的な学習の経験,現 在の生き方に与える影響について語られている 多くの部分が,校種や学校間における独自性だ と意味づけることができる。その独自性は,各 事例の総合的な学習のカリキュラムの違い,取 り組む活動の違い,また,カリキュラムや活動 内容,主たるテーマとして取り上げる題材の違 い等による学習経験の差に起因することが考え
られる。
総合的な学習が,地域や学校及び学習者の 実態等に応じた学習であることを鑑みれば,総 合的な学習の一つひとつに独自性があることは 明白で、あり,それが学力の形成や生き方に与え
つ 山
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る影響と,その経験の語りにも「特色」として 表れるのだと考える。
3.2 語りから見る共通性
しかし一方で、,卒業生の諮りからは,カリ キュラムや活動及び内容に独自性や差異があっ ても,語る学力や経験に共通性を見出すことが できた。(表1)
表1 各事例における学カの概念を整理したもの
事 例 争力罪事成I之 係 る 概 念 共 通 す る 学 力 学 習 冨 揮 と の 関 わ り 事事事例例例24 1 自 己 理 解 自 己 理 解
認 知 的 側 萄 事 例 1 他者を理る解カしようとす
他者の」とをが考でえき理 他 者 理 解 事 例Z 解 す る こ と きる
事事例例34 問 題 解 決 カ 自 ら 謀 題 を 見
山
l事主型例L4 情 報 活 用 力
つ考けえ.判主断体し的.解に 決してし、くこと 事 例4 論 理 的 思 考 力 が で き る
害 要
技 能 的 側 面 表 現 力
わ他る者こととうがまで〈関き
l i
J事事例例z3 コミュニケーションカ る 事 例4 社 会 に 寅 献 す る 力
事 例 1 商 い 学 習 意 欲
自容己のの指海向す化よを・白肉
事 例3 探 究 心
事 例3 進路に対荷す揚る 意 欲 の
事 例 1 困難を乗すりる越カえようと で物や事とりをす遂最るげ後よまう 情 意 的 側 面 事 例2 強 い 責 任 感
事 例 1 仲 間 意 識 の 高 楊
他り.者す他とる者協意!働こ欲貢し献た 事 例2 他 者 に 貢E献 す る 意 欲
事例間に共通して見られる学力が見えてき た。また,学習者の認知的側面・技能的側面・
情意的側面との関連がみられ,各側面において
「自己に関すること J
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他者との関わりに関す ること」としづ視点で束ねることができる。3.2.1自己に関すること
「問題解決力Jや「情報活用力J,
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論理的 思考力j としづ学力は,中学ヰ交と高等学校の事 例において顕著に表れた概含、である。これらの 概念はr
自ら課題を見つけ,主体的に考え,判断し,収集した情報を活用することで解決し ていくことができる力Jとして関連づけ・意味 づけることができる。小学校における事例でも 経験として語られたが,発達段階を経るに従つ
て,そのような技能を習得した経験や卒業後の 生活に生かされている様子が多く語られた。
3.2.2他者との関わりに関すること すべての事例に共通する力として見出され たのは,表現jJやコミュニケーシ'ヨンカといっ た「他者とうまく関わることができる力Jであ る。これは他者との関わりにおける技能的な側 面であると捉えられる。他者とうまく関わるこ とができる力に影響を与える経験として,事例 1における相互割高を用いた協働の経験,事例 2における多様な他者との関わり,事例 3にお ける「交流Jの単元など関連付けることができ る。
3.2.3達成感という経験の共通
卒業生の語りを整理し,本研究における達 成感の意味やその条件を意味づけた。達成感と
は何かを成し遂げることで,深い感銘を受けて 強く心を動かされることである。また,ただ成 し遂げるだけではなく,その過程で行為の主体 となる者(学習者)が誠子錯誤したり,苦労を 感じたりすることが条件である。達成感を感じ た経験は,学力の形成に係るすべての概念、を支 える基盤として,語られた0
4
今後の課題
卒業生の語りは,調査時点での彼らの語り であるといえる。卒業生が,将来の自分につい て語っていることや, [生きる力]が,社会に 出た時に求められる力であることを考えれば,
追蹴周査は今後も繍亮して行うことで,また新 たな成果を得ることができると考える。彼らが,
学校生活の中で、出会った総合的な学習による学 びは,これからも彼らの生き方として継続して いくことがナ餓リされる。
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