Soryushiron Kenkyu
NII-Electronic Library Service
Soryushiron Kenkyu
「原 子核 集団 運動の非 線 形 動 力学 」
一
B73一
高
ス ピ ン実
験 デー
タ に み る回 転
の 三次
元性
筑 波 大 物 理
松 崎 昌 之 a )
1
.
序閉 核
か ら離
れ た 原 子核
の 平均
場 は 基 底 状 態 近 傍 で は軸
対称
変形
して い る と 考 え られ て い る。 こ れ らの 原 子 核 に 回』
転 運 動 が 励 起 さ れ る と 次 の 二 っ の 機 構 に よ り非 軸 対 称 変 形 が 誘 起 さ れ る。
1
)’
gradual
”
:集 団 回 転 運 動 は 通 常 γ 〈
0
の 変 形 を 引 き 起 こ す。2
)”
abrupt ”
: バ ン ド交 差 が 起 こ る と整 列 す る 準 粒 子 の 高
j
殻 内 で の位 置 に よ り
7
>0
(低 フ ェ ル ミ面 の場
合) ま た は γ 〈0 (高
フ ェ ル ミ面 の 場合 〉
の 変 形が 起 こ る。
非 軸
対称
変 形 は 原 子 核 の 性 質 に種 々 の 変 化 を も た らす。 そ の 中 で 最 も重 要 な もの は 三 次 元 回 転 が 可 能 に な る こ と で あろ う。 軸 対 称 な 原 子 核 で は 対 称 軸 (以 下
z 軸 と す る) の ま わ り の 回 転 が 量 子 力 学 的 に 禁 止 さ れ る の で 、 こ れ に 垂 直 な 面 内 の 一 つ の 軸 (以 下 x 軸 と す る ) の ま わ り の 二 次 元 的 な 回転 の み が 可 能 で あ る が、 変
形 が 非 軸 対 称 に な れ ば
z
軸 の ま わ り の 回 転 が許
さ れ る よ う に な る。
す な わ ち 回 転 運 動 は そ の 軸 が 変 形 の 主 軸 か らず れ た 三 次 元 的 な も の に な る の で あ る。 三 次 元性
の 度 合 は γ や 全 角 運 動 量 1 の 大 き さ に 依 存 す る。
1
γ1
が あ ま り大 き くな い b )場 合 に は 三 次 元性
は 弱 く、 x 軸 ま わ りの 主 回 転 の ま わ りの 揺 ら ぎ と し て 扱 え る と 考 え られ る が、 1 γ 1が 大 き く な れ ば 回 転 運 動 は 本 質 的 に 三 次 元 的 に な る で あ ろ う。
2 .
バ ン ド$冬 糸吉
原 子 核 が 角 運 動 量 の 増 大 に 伴 っ て γ
一
〇 か ら60
° へ 大 き な 形 状変
化 を す る と 考 え ら れ る 現 象 に バ ン ド終
結 が あ る。 最近158Er
で、
γ・
160°
に 達 す る と理 論 的 に 予 想 さ れ て い た 角 運
動
量lc ・
t40 ま で 回 転 バ ン ド内E2
遷 移 が 測 ら れ2
}、 回 転 子 模 型 で の 表 式13
(E2
:1 → 1
−
2 ) β2co32
(γ +30
° ) (1
)と
同 様
に高 ス ピ ン で ほ ぼ0
まで 減 少 して い る こ と か ら、
そ の形 状 変 化
の過 程
で大
a
)b
)1991 .
4.
1 よ り福 岡 教 育 大 学 物 理 学 教 室通 常 は 零 点 振 幅 γ
o
が 目 安 に な る11
。 す な わ ち1
γ1
く γe
の 場 合 に は 回 転 は本
質 的 に は 二 次 元 的 で あ る と期
待 さ れ る。 た だ し γa
の 大 き さ (7 振 動 の 集 団 性 の強
さ ) は一
般 に
1
に 依 存 して 変 化 す る。N工 工
一
Eleotronio LibrarySoryushiron Kenkyu
NII-Electronic Library Service
Soryushiron Kenkyu
一B74 一
研 究 会 報 告き な
非
軸 対 称 変 形 を して い る と 考え ら れ て い る。し か し現 段 階 で は 形 状 変 化 を
x
軸 ま わ りの ク ラ ン キ ン グ 模 型 + 殻補
正 法 で 計 算 し、 得 ら れ た 変 形 度 (β,γ ) と
(
1
) 式 か らB
(E2
) を 見 積 る と い う こ と が な さ れ て い る だ け で 、 非 軸 対 称 変形
の 結 果 と して 現 わ れ る 三 次 元 回 転 に っ い て の議 論
は ま だ な い。研 究 会 で は
1
γ1
が 比 較 的小
さ く そ の 効 果 を 小 振 幅 の 揺 ら ぎ と して 扱え る よ う な 場 合 に話
を限
り、1 ) 偶 偶 核 で の ウ ォ ブ リ ン グ ・モ ー ド、 2 >そ の 奇 質 量 核 の 性 質 へ の 効 果、 に っ い て 論 じ たo 奇 奇 核の エ ネ ル ギ ー ・ス ペ ク トル の 理 解 の た め
に も ガ ン マ
振
動 や ウ ォ ブ リ ン グ 運 動 を 考 慮 す る こ と が必
要 で あ る こ と に つ い て も 触 れ る 予 定 で あ っ た が、時
間 不 足 の た め割 愛 した 。 こ れ に つ い て は 文 献3
)を 参 照 さ れ た い。3 . 偶 偶 核 で の ウ ォ ブ リ ン グ ・モ ー ド
原 子 核 に お け る ウ ォ ブ リ ン グ
・
モー
ドの存
在 は 理 論 的 に は 古 くか ら 予 想 さ れ て い た4
,冒 8 ,
。
一
方 実 験 的 に は こ れ ま で一
例 も 確 認 され て い なか っ た が
、
筆 者 は 1820sで
s
バ ン ド交 差 後 の ガ ン マ 振 動 バ ン ド と ア サ イ ン さ れ た 9 }回 転 帯 の 奇 ス ピン
系 列
が ウ ォ ブ リ ン グ の 性質
を持
っ もの で あ る可 能 性 を 指 摘 した1B
) 。 ガ ン マ 振 動 バ ン ドの 奇 ス ピ ン 系 列 が非 軸 対 称
変 形 と 回 転の 効 果 に よ り徐
々 に ウ ォ ブ リ ン グ・
モー
ド に性
質 を 変 え て い くこ とは、
以 前 に 文 献5
) で 予 言 さ れ て い た。 筆 者 は 文 献10
)で、 一
様 回 転 座 標 系 で のRPA
に よ っ て、 励 起 エ ネ ル ギー
が 角 速 度 とと も に 増 大 し
、
か っ 慣 性 能 率 が 振 動 的 な も の (θ .〜
θり〉 θ.)
か ら
渦
な し非 対称
回 転 子 的 な もの へ変 化
す る 集 団モー
ドが 存 在 す る こ と を 示 し た。
文 献
11
) で 詳 し く 調 べ られ た16aEr
の 場 合 と 同 様 に、同
じエ ネ ル ギー
領 域 に2 準 粒子 モ ー ド も存 在す る の で、 実 験で み つ か っ た バ ン ド が ウ ォ ブ リ ン グ 状 態で
あ る こ と を 言 うに は エ ネ ル ギ
ー ・
ス ペ ク ト ル 以 外 の情
報 が 必 要 で あ る。 こ の 点 につ い て は、 イ ラ ス ト状 態 との 問 の
B
(E2
: △ 1= 1
) の ス ピ ン 依 存 性 を見 れ ば 集 団 モー
ド と2 準粒 子 モ ー ドを 区 別 で きる こ と を 予 言 し た
。
4 ,
奇 質 量 核 で の ウ ォ ブ リ ン グ 運 動 の 効果筆 者 らは 文 献 12 ) で 提 案 し た 手 法 に よ り
、
ク ラ ン キ ン グ 模型 に 基 い て 奇 質 量核
の 回転
状 態 の エ ネ ル ギー ・
ス ペ ク トル や 電 磁 的性 質
を 調べ て きた。 種 々 の デー
タ や 他 の
模
型計
算 と の 比較
か ら こ の 手 法 の 有 効 性 が明
ら か に な っ た が、K / 1
が 比 較 的 大 き い 場 合 に 限 っ て、
静 的 非 軸 対 称 変 形 (γ <0
) の バ ン ド 内 B (E2
:△ 1
− 1
)へ の 効果 が、
粒 子 回 転 子 模 型 の 結 果 と 定 性 的 に 逆 で あ り 13 )、
こ れ を解 決 す る た め に は
準
粒 子 と ガ ン マ 振 動 との結
合を 考 慮 し な けれ越
な ら な い こ と がわ か っ た。 こ こ で
K
は 全 角 運 動 量 のz 軸成 分 で あ る。
こ の こ と は
、 前 章
で述
べ た、 回 転 す る非 軸
対 称 核 で の ガ ン マ振
勁 バ ン ド の 奇 スN工 工
一
Eleotronio LibrarySoryushiron Kenkyu
NII-Electronic Library Service
Soryushiron Kenkyu
「原 子核 集 団運 動の非線 形 動 力学 」
一
B75一
ピ ン 系 列 の 性
質
変 化 を思 い 出 せ ば 理 解 で き る。 す な わ ち、 ク ラ ン キ ン グ 模 型 で は一
体 場 が 非軸 対
称 変 形 して もx
軸 の ま わ り に 回 転 す る が 、 現実
に は 非 軸 対 称 変 形 は 回 転 の 三 次 元 性 を 引 き 起 こ し、 準 粒子
迎動
に 影 響 を 与 え る。 ウ ォ ブ リ ン グ 的 性質
を内
包 し た ガ ン マ振
動 と 準 粒 子 と の 結 合 に よ り、 小 振 幅
近 似 で の こ の 効 果 が 取り入 れ られ た の で あ る。
5 .
ま と め本 稿で は、 非 軸 対 称 変 形 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る 回 転 の 三 次 元 性 を 小 振 幅 近 似
(
RPA
) の枠 内
で 取 り扱
う こ と に よ っ て 理 解で き る と期 待
さ れ る 現 象 を、 偶 偶 核 及 び 奇 核 各 々 に っ い て 取 り上 げ た。 い ず れ の 場 合 に も、 エ ネ ル ギー ・
ス ペ ク トル だ けで は な く電 磁 遷 移 を 調べ る こ と が 重 要 で あ る こ と が わ か っ た。 残念 な が ら 電 磁 遷 移 の デ
ー
タ は 全 く 不十 分
で あ り、 こ こ で 述 べ た 理論
的 解 釈 の 正 当 性 は 実 験 的 に は ま だ 示 さ れ て い な い が、 「ク ラ ン キ ン グ模型 + RPA + 粒 子振 動 結 合 」 の 枠 組 み は、 三 次元 回 転 運 動 の 理 解 の た め の 現 実 的 そ し て 有 力 な 手 段で あ ろ う。
文
献
1
)M .Matsuzaki , Nuc1 . Phys . A519
(1990
>, 548 2
)E. M . Beck et a1 ., Phys . Lett . B215
(1988
), 624
3
> 松 崎 昌 之, 「 原 研 タ ン デ ム ・ブ ー ス タ ー領 域 で の 核 物 理 」 研 究 会 (199L2 . 28 − 3.1)報 告, JAERI − M
レ ポー
ト, to be published
4 )
A
・Bohr and B .R .
Mottelson, Nuclear Structure , Vol . II (Benjamin , New
York ,
1975 >5
)1. N . Mikhailov and D , Janssen , Phys . Lett . B72
(1978
), 303
6
)E .R.Marshalek 。 Nucl . Phys . A331 (1979 ), 429 7) N .On正shi , Nucl . Phys . A456(1986 ), 279
8 ) Y , R .Shimizu . T .Kisaka and M .Matsuzaki , 素 粒 子 論 研 究 里 (1990 >, F182 9) P ・ Ch
・wdhury ・t ・r.,
C・・t・ib
・ti・ ・t
・1
・t.
C
・ ・f.
・ ・Nucl
, 、 ,Sh
、p, 、(
Crete , Greece , 1987
)10
)M .Matsuzaki , Nu
¢1. Phys , A509
(1990
>, 269
11
)Y・ R ・ Shi・i・ ・ and K ・ M・tsuy ・nagi ,
P
・ ・9. The
・r . Phys . 皿 (1983 ). 144 ;
ibid .
ヱ2
(1984
),
799
12
>M ・M
・tsuz ・kL
Y ・R ・Shi
・i
・ ・a
・d
K .M
・t・uyanagi.
P
, 。9. Th
, 。r . Phy ,. 79 (1988 ), 836
13
)M ・M
・t・uzaki ・ Y ・R ・Shi・i… nd K.M・t・uyanagi . P・ ・9. Th。。 ,, Phy,. 77
(
1987
),
1302
N工 工
一
Eleotronio Library