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ラマン散乱分光法による単層カーボンナノチューブ温度測定

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Academic year: 2025

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      No.04-28 日本機械学会熱工学コンファレンス2004講演論文集〔2004.11.13-14, 仙台〕

  Copyright©2004  社団法人  日本機械学会

       

ラマン散乱分光法による単層カーボンナノチューブ温度測定 Temperature measurements of single-walled carbon nanotubes by Raman scattering

○  正  千足  昇平(東大院学)  正  村上  陽一(東大院学)

正  宮内  雄平(東大院学)  正  丸山  茂夫(東大院)

Shohei CHIASHI, Yoichi MURAKAMI, Yuhei MIYAUCHI and Shigeo MARUYAMA The University of Tokyo, Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo

Raman scatterings from various SWNT samples were measured at a wide range of temperatures (from 4 K to about 1000 K). With increase in sample temperature, both the Raman shift and the intensity of G-band of SWNTs decreased, while the peak width increased. Through the comprehensive calibration, the temperature of SWNTs can be measured by using the temperature dependence of Raman shift and the intensity in the G-band. The temperature distribution of SWNTs induced by the Raman excitation laser was measured with this temperature measurement technique of SWNTs.

Key Words: Single-Walled Carbon Nanotubes, Raman Scatterings Temperature Measurement         

 

1.はじめに 

単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube, SWNT)は多くの分野でその生成方法やデバイスへの応用 に関して盛んに研究されている.例えば,構造によって変 化する電気伝導性(金属性または半導体性)や,高い機械 的強度など注目すべき数多くの物性が期待されているが,

その1つとして軸方向の非常に高い熱伝導性が挙げられる.

耐熱性も高く(燃焼温度約500 °C)熱デバイス素材として の応用も研究されてきているが,単層カーボンナノチュー ブのサイズ(太さ数nm,長さ数µm)のため,その熱物性 を実験で直接測定することは現在のところ非常に困難であ る.

本研究では単層カーボンナノチューブ熱物性の実験的研 究の第一歩として,ラマン散乱分光法を用いた単層カーボ ンナノチューブの温度測定を目的とする. 

 

2.実験方法 

単層カーボンナノチューブサンプルの温度を変化させて ラマン散乱スペクトルの測定を行った.高温条件下でのラ マン測定においては,マイクロラマン散乱測定システムを 設定した真空チャンバー付原子間力顕微鏡(AFM)装置を 用いた1.この装置はAFMスキャナ上のサンプル温度(室

温∼900 °C),サンプル雰囲気ガス及びその圧力の制御がで

き,また,真空チャンバー上部の石英窓を通じ,AFM測定 と同時にラマン散乱スペクトル測定も可能である.測定に 用いた単層カーボンナノチューブサンプルは,ACCVD 法

(それぞれゼオライト2,シリコン及び石英(3)に金属触 媒を担持し生成)とレーザーオーブン法4により合成し たもの,及び HiPco サンプル5である.これらのサンプ ルをシリコン基板上に分散または接着し,真空下でシリコ ン基板を熱電対で温度測定しながら交流通電加熱した.ラ マン散乱スペクトル測定は,励起レーザーとして波長 488 nmのArレーザーを用い,スポット径は約100 µm,出力は 2 mW(レーザーパワー密度約104 mW/cm2)で行った.

低温測定では真空チャンバー内でサンプルを液体ヘリウ ム冷凍機により冷却し,測定を行った.ラマンスペクトル

は波長488 nmのArレーザー(スポット径1.5 mm,出力

100 mW,レーザーパワー密度約104 mW/cm2)を用い,マ

クロラマン装置により測定した.

また,通常のマイクロラマン装置を用い,励起レーザー によって生じる単層カーボンナノチューブの温度分布を測 定した.Arレーザーをラマン散乱の励起(出力1.3 mW)

と,レーザー照射(出力 1.7∼10 mW)による単層カーボンナ ノチューブの燃焼の2通りに用い,ラマンスペクトル測定 とレーザー照射を交互に行った.照射レーザーパワーを段 階的に上げていくと,単層カーボンナノチューブがレーザ ースポットの中心から燃焼していく.この時得られるスペ クトルの減少分から焼失した単層カーボンナノチューブの 面積及びその領域内での単層カーボンナノチューブ温度が

G-bandの温度依存性から分かり,レーザースポット内の半

径方向の温度分布が求まる.サンプルは石英基板上に生成 した垂直配向単層カーボンナノチューブ(6)を用いた. 

1400 1500 1600 1700

500 550

Raman Shift (cm–1)

Intensity (arb. units)

(i) 25 °C (ii) 290 °C (iii) 600 °C

(iii) (ii) (i)

G–band silicon

Fig.1 Raman scatterings of SWNTs and silicon at different temperatures.

250 500 750 1000

505 510 515 520

0 250 500

0.07 0.08 0.09 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

Temperature (K)

IAS/IS

(wAS/wS)3exp(–hv/kT) Raman Shift (cm–1)

M. Balanski et al.

Temperature (°C)

Fig. 2 Temperature dependence of Raman shift and the intensity ratio of anti-stokes and stokes scatterings by silicon.

(2)

       

3.結果と考察 

温 度 を 変 化 さ せ た と き の 単 層 カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ

(ACCVD 法,ゼオライト担持)及びシリコンのラマンス ペクトルをFig. 1に示す.ラマンスペクトルには,1590 cm-1 付 近 に 単 層 カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ に 特 有 の 分 岐 の あ る

G-bandと呼ばれるピークと,520 cm-1付近にシリコンから

のピークが現れている.一般にラマンピークはサンプル温 度が上がるに従い,ピーク位置(ラマンシフト)は低波数 側にシフトし,強度は減少,更にピーク幅が増加するとい う温度依存性を持つ.Fig. 1にあるように,シリコン及び 単層カーボンナノチューブの G-band ピークも一般的な温 度依存性を持っていることが分かる.

シリコンのラマンシフト及びピーク強度比と温度の関係

をFig. 2に示す.ラマンスペクトルにおいて,ストークス

散乱ピークとアンチストークス散乱ピークの強度比は,図 中の理論式によって温度の関数で表現されるが,実験結果 はこの理論式と一致し,またラマンシフトは Balkanski ら の実験結果(7)と非常によく一致した.この事から,熱電対 によるサンプル温度の測定やアンチストークス散乱の測定 をしなくても,ラマンシフトの変化のみからサンプル温度 を測定できると言える.

Fig. 3に単層カーボンナノチューブのG-bandのラマンシ

フトと温度の関係を示す.単層カーボンナノチューブのい ずれのサンプルでも,G-bandはほぼ同一の温度依存性を示 した.測定中の単層カーボンナノチューブの温度はシリコ ンからの熱伝導と真空チャンバーへの熱放射のバランスに よって決まり,この場合単層カーボンナノチューブと真空 チャンバーの熱抵抗は,シリコンと単層カーボンナノチュ ーブ間の熱抵抗と比べ非常に大きいと考えられ,ラマン測

定中の単層カーボンナノチューブの温度はほぼシリコン温 度と等しいと考えられる.また,低温領域での測定では,

サンプルホルダーの温度と単層カーボンナノチューブの温 度が等しいとした.G-bandのラマンシフトにおける温度依 存性は,生成方法の違いやそれに伴うサンプル形態の違い には依らず,このことから単層カーボンナノチューブの温

度が G-band のラマンシフトから求められることが分かっ

た.

同様に,G-band 強度の温度依存性について示したのが

Fig. 4である.G-band強度もサンプル種類に依らず,一定

の温度依存性を示している.このことから,原理的には

G-band 強度からも単層カーボンナノチューブ温度を見積

もることが出来ると言える.

G-band のラマンシフト及び強度の温度依存性を利用し

て,マイクロラマン散乱測定における励起レーザースポッ ト内の単層カーボンナノチューブ温度分布を測定した結果

がFig. 5である.この時の励起レーザーパワー密度は約107

mW/cm2(スポット径5µm,出力1.3 mW)と高く,単層カ

ーボンナノチューブは加熱されてしまい,得られたラマン スペクトルの G-band のラマンシフトから平均温度を求め

ると約100 °Cであった.しかし,この温度分布から分かる

ようにレーザースポット中心では約 400 °C と高温になっ ている.通常のラマン測定や,ラマンの温度依存性を用い た温度計測の際にこのような高いレーザーパワーでの励起 を行うと,単層カーボンナノチューブの燃焼やスポット内 での温度差が生じ,正しい結果を得ることが出来ないこと が分かる.

 

4.結論 

単層カーボンナノチューブの G-band ラマンシフト及び 強度の温度依存性を測定し,この結果から単層カーボンナ ノチューブ温度が求められることが分かった.また,この 温度測定法を用い,レーザー照射によって生じた単層カー ボンナノチューブの温度分布を測定することが出来た.

最後に低温ラマン測定では,東京大学レーザーアライア ンスの装置を用いた.

 

参考文献 

(1) Chiashi, S. et al., Chem. Phys. Lett., 386 (2004), 89.

(2) Maruyama, S. et al., Chem. Phys. Lett., 360 (2002), 229.

(3) Murakami, Y. et al., Chem. Phys. Lett., 377 (2003), 49.

(4) Thess, A. et al., Science, 273 (1996), 483.

(5) Nikolaev, P. et al., Chem. Phys. Lett., 313 (1999), 91.

(6) Murakami, Y. et al., Chem. Phys. Lett., 385 (2004), 298.

(7) Balkanski, M. et al., Phys. Rev. B, 28 (1983), 1928.

0 200 400 600 800 1000 1200 1570

1580 1590

–200 0 200 400 600 800

510 520 (b) Laser Oven (c) Direct Growth on Si (d) HiPco

Temperature (K) Raman Shift of G–band (cm–1)

(a) Zeolite (Fe/Co)

Silicon –1Raman Shift of Silicon (cm) M. Balkanski et al.

Temperature (°C)

Fig. 3 Temperature dependence of the G-band in Raman shift.

0 1 2 3 4 5

0 100 200 300 400

Radius (µm)

Temperature (°C)

Fig. 5 Temperature distribution of SWNTs in the excitation laser spot.

0 200 400 600 800 1000

0 0.5 1

–200 0 200 400 600

HiPco

Temperature (K)

Relative Intensity (arb. units)

Directly generated SWNTs on quartz exp(–(T(K)/430)

Directly generated SWNTs on Si Temperature (°C)

Fig. 4 Temperature dependence in the intensity of the G-band.

参照

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6) 富樫,外:マイクロ流体制御による浮遊病原体の検知装置の開発,日本機械学会 城講演会論文集,pp.21∼22 (2013.9)