解 説
センサ情報に基づく行動決定のための環境モデリング
Mo delingofEnvironmentforSensor-BasedBehaviorPlanning
三浦 純3 3大阪大学大学院工学研究科電子制御機械工学専攻
JunMiura 3
3
Dept.Computer-ControlledMechanicalSystems,OsakaUniversity
1. は じ め に
ロボットは視覚などの外界センサによって環境を認識 し,認識結果を基に行動を計画・実行する.したがって,
環境をなんらかの形で計算機上にモデリングする必要があ る.知能ロボットの初期の研究では,できるだけ一般的か つ詳細な環境のモデルを生成することを目指していた.し かし,実世界の動的性や不確実性の下で一般的な機能を求 めれば求めるほど,必要な処理が膨大になり実時間動作が 困難になる.そこで,感覚-計画-行動の情報の流れを強 化して行動結果の感覚へのフィードバックを高速に,何回 も繰り返すことにより,ロボットの知的な振舞いを実現す るアプローチが重要視されてきている[1].
環境のモデリングは,そのようなフィードバックループ を規定する大きな要因であるが,どのようなモデリングが 適切かは状況に依存する.例えば,視覚移動ロボットが障 害物を避けながら移動するとき,ロボットが通る可能性の 高い場所についてはある程度詳細な形状のモデリングが 必要だが,通る可能性の低い場所は粗くモデリングしてお けばよい.また,超音波センサを用いた局所的な障害物検 知・回避システムが備わっていれば,視覚情報からは大域 的な経路選択に必要な情報だけをモデリングすればよい.
衝突しても問題のないロボットおよび環境であり,最終的 に目的地に着きさえすればよいのであれば,環境のモデル はほとんど持たずに動き回ればよいかも知れない.
一般により多くの情報をモデリングするためには,より 大きいコストがかかる.そこで計画・行動系に必要十分な 情報だけをモデリングするのが望ましい.しかし,計画・
行動系にどのような情報が必要かはロボットの行うタスク に依存するので[2],タスクの解析が必要になる.さらに,
モデリングの評価もタスクの達成度に基づいて行う必要が ある.
原稿受付 2000年3月1日
キーワード:Environmentmo deling,Task-orientedmo deling, Sceneunderstanding
3〒565-871吹田市山田丘2{1
3
Suita,Osaka565-0871
本稿では,まず環境のモデリングというプロセスの一 般的な解釈を提示し,次にその解釈にしたがって従来研究 を分類・評価する.最後に環境モデリングにおける重要な 考え方をまとめる.なお,本稿では主に視覚をもつ移動ロ ボットのナビゲーションを対象として考えることにする.
2. 環境モデリングの一般的な解釈
ここでは,環境モデリングとは,タスク達成のためにロ ボットが環境から抽出すべき情報を規定するものと定義す る.本章ではこの定義の下で,タスクとモデリングの依存 関係を解析し,環境モデリングの一般的な解釈を与える.
2.1 タスク
本稿ではタスクは,以下の3つ組によって規定されるも のと考える(図1参照):
ロボット: ロボットのセンサ系,行動系などのハード ウェアとそれによって実現される基本機能.
環境:ロボットの動作する環境.
作業目標:ロボットが行動によって達成すべき目標.
これは,同じ目標(例えば,指示された目的地へ到達す るという目標)であっても,ロボットや環境が変われば適切 な環境モデリングが異なる可能性があることを意味する.
robot target
obstacle
図1 モデリングを規定する3つ組:
1視覚を持つ移動ロボットが
2動的・静的障害物の存在する環境で
3障害物を避けながらターゲットを捕捉する というタスクの例.
I M I A
図2 情報の流れ
2.2 環境モデリングの解釈
環境の持つ情報から計画・行動に用いられる情報への変 換を概念的に表したのが図2である.環境中に存在する広大 な情報のうちセンシングにより獲得できる情報はその一部 である.そのセンサ情報から,必要と思われる部分をモデ リングしてロボット内部に表現する.さらに,モデリング された情報(IM
)から,計画・行動決定に必要な情報(IA )
を引き出して利用する.図中の矢印の太さは大まかな意味 での情報の量を示す.右へ行くほど情報の量は減少する.
この図にしたがい,望ましい環境モデリングとその設計 プロセスについて考える.タスク遂行に必要十分な情報を モデリングすればよい,という原則から考えるとIM =IA となることが望ましい.IAはタスクの解析結果から決まる が,一般に作業目標を達成するための計画・行動の手段は 複数あり,それぞれに異なるIA がある.そこで,望まし い環境モデリングを選択するということは,タスク達成の 評価が高くなり,かつできるだけIM
=I
A に近づくよう なIA,IM の組を,可能なセンサ入力の処理方式を考慮し ながら選択することになる.そのような選択のためには,
モデリングの定義域とその評価法を考える必要がある.
2.3 可能なモデリングの空間
可能なモデリングの空間を構成する軸を考える.まず,
どのような情報をどのような構造で表現するか(環境の表 現法)の軸がある.次に,その構造の上でどの程度詳細に 表現するか(表現の詳細度)という軸がある.さらに,表現 された情報の時間的・空間的な変動や不確かさをどのよう に表現するか(不確かさの表現法)という軸がある.
環境の表現法については,タスクに必要な情報(IA )に応
図3 モデリングの分類軸
じて,以下のようなさまざまなものが使われる.
グリッド表現: 対象領域をグリッドに分割し,各グリッ ドごとに物体の有無や存在確率を記述する.
境界表現: 物体の境界を記述する.2次元平面上をロ ボットが移動するときには多角形あるいは閉曲線で表 現される.
特徴物の位置: ナビゲーションに用いるランドマーク の位置を記述する.
センサデータ列: 学習時,あるいはティーチング時に 獲得したセンサデータの系列をそのまま,あるいは圧 縮して記述する.
不確かさの表現法とは,誤差や時間的変動を陽にモデリ ングするときの表現法であり,不確かさを確率的に記述す るもの,不確かさの範囲だけを記述するものなどがある.
表現の詳細度とは,環境あるいは不確かさの表現法に基 づいて,どの程度詳細にデータを記述するかを決めるもの である.空間的な詳細度と時間的な詳細度がある.
2.4 評価の空間
次に評価の尺度について考察する.ロボットの目的は与 えられたタスクを達成することであるから,タスクの達成 度を基にモデリングを評価する.達成度をどのように評価 するかもタスク仕様の一部なので,事前に与えられている と考えてよい.ここでは,タスク達成の広い意味での性能 という軸(パフォーマンス)と,環境の比較的短期の変動や 不確かな入力に対する安定度という軸(ロバスト性)を考え る(図4参照).
図4 評価空間
パフォーマンスの評価基準としては,作業達成時間,作 業達成に要するエネルギなど,タスクに応じたさまざま なものが考えられる.一般に詳細な情報を利用すると行動 の効率は向上するが,詳細な情報を取得・維持するコスト も増大する.そこで,モデリングのコストと作業遂行のパ フォーマンスのトレードオフを考慮して評価する.
ロバスト性が重要なのは,実世界では一般に環境は動的 であり,センサ入力にも誤差などの不確かさが含まれるか らである.タスクに規定された,環境の比較的短期的かつ 小さな変動や入力の不確かさの下でも作業目標を確実に達 成できる必要がある.
例えば,視覚移動ロボットが障害物間を抜けて目的地に 到達する,というタスクの場合には,パフォーマンスとし て目的地に到達するまでの時間の期待値などを,ロバスト 性としては衝突せずに目的地到達する確率や到達時間のば らつきなどを考えることができる.パフォーマンスとロバ スト性にトレードオフの関係があるときそれをどのように 評価するかは,タスク仕様とモデル設計者の意図に依る.
3. 事 例 紹 介
本章では,タスクに基づいて適切な環境モデリングを 行っている研究事例をいくつか取り上げる.
3.1 環境表現法の変化→パフォーマンスの向上 以下の研究は,モデリングする情報IM を行動に必要な 情報IA に近づけることにより,感覚-行動ループの高速 化を図るものである.3次元再構成を明示的に行うことな く,画像やセンサ入力から行動に有用な情報を直接取り出 している場合が多い.
3.1.1 視覚特徴と行動のマッピング
森[3]は動物行動学の知見に基づき,サインパターンに基 づくロボットのナビゲーションを提唱している.サインパ ターンとはある特定の行動を誘発する刺激(サイン刺激)の ことを指し,比較的単純な処理で特定の刺激(ある一入力 における特徴に限らず,動きのリズムなど時間的に広がる パターンでもよい)を抽出し,それに対して決められた行 動を実行する.
Srinivasanらは,昆虫の視覚にヒントを得たロボット視
覚を実現している.例えば,狭い通路を通り抜けるときに,
左右の壁までの距離を計測するのではなく,左右に向けた カメラのオプティカルフローを等しくするようにロボット の進行方向を制御する方式を実現している[4].
明示的なモデリングを行わずに,ティーチング時に得た 画像入力の系列をそのまま蓄えておき,実行時には画像 データベースと入力画像との比較によって位置同定や運動 制御を行う方法もある[5][6].これらの方法は画像そのも のを視覚特徴としていると考えることができる.
3.1.2 環境構造の利用
Kollerら[7]は,ステレオカメラ入力から,道路の平面
性を仮定して明示的な対応づけを行うことなく道路領域と 障害物領域(他の車)を識別する手法を提案した.対象物が 平面のときには左右のカメラ間の変換は線形変換となるこ とを利用し,その変換からずれた場所を障害物として検出 する(図5参照).Onoguchiら[8]も同様の手法を提案して いる.
left image right image
transformation
compute difference
図5 道路の平面性を仮定した障害物検出[7]
3.2 環境表現法の変化→ロバスト性の向上
3.2.1 定性情報の利用
ロボットの絶対位置・姿勢といった定量的情報は,セン サデータの不確かさの影響を受けるのに対し,ロボットが 物体に沿って移動しているか,あるいは2つの物体の間を 通っているか,といった定性的な情報は比較的安定して得 ることができる.
Kuip ersら[9]は,distinctiveplace(DP)と名付けた環 境中の特徴的な場所(廊下の交差点など)の記述とその接 続関係のネットワークとして環境を表現することを提案 した.DPの位置やDP間の距離といった定量的情報なし にDP間を移動することができる.ただし,DPの認識と
DP間の移動が(ほぼ)完全に行えることが必要である.宮 下ら[10]は環境中の骨格線を抽出することにより,同様の ネットワーク(T-Netと呼ぶ)を形成し環境を準定性的に記 述している.
3.2.2 相対情報の利用
ステレオ視で障害物を認識する場合,各特徴点の3次元 位置を求めて床面よりある程度の高さにあるものを障害物 とすることが多い.しかし,3次元位置を正しく求めるた めには,カメラ系が精密にキャリブレーションされている 必要がある.Rob ertら[11]は,カメラ間のエピポーラ幾 何だけがわかっている(weakly-calibratedという)ステレ オカメラ対を使い,ある既知の高さのものを基準にした相 対的な高さを計測する手法を考案し,屋外での移動ロボッ トの障害物回避に応用した.エピポーラ幾何は両画像上で の対応点の組からロバストに求めることができる[12]の で,結果としてロバストな障害物認識が実現されている.
3.3 詳細度の変化→パフォーマンスの向上
必要以上に細かい情報を獲得・保持することはコスト パフォーマンスの低下を招く.環境記述の詳細度を適切に 制御することにより,IM をIA に近づけることは重要で
(a)入力となる特徴点群
group 1
group 2
group 3 impassable
undecided
(b)特徴点間の関係の分類
critical region
obstacle 3 obstacle 2
obstacle 1
(c)モデリング結果 図6 2Dセグメントデータからの障害物のモデリング.[13]の図を一部変更.
ある.一般に必要な情報の詳細度は場所によって異なるの で,重要なところは詳細に,そうでないところは粗くモデ リングするような,非均質な表現が有用である.
3.3.1 タスクにおける重要度に基づいた詳細度の決定
Miuraら[13]はステレオ視覚による環境モデリングに
おいて,ナビゲーション上重要な領域とそうでない領域を 識別し,非均質な環境記述を行う手法を提案した.移動ロ ボットが静止障害物を回避しながら目的地へ向かうときに は,環境すべてにわたる詳細な情報は不要であり,可能な 経路の構造と通過可能性が明らかでない狭い領域の情報が あれば十分である.このような考えに基づく環境記述手法 の基本的処理を図6に示す.ステレオによって各特徴点の位 置と不確かさが得られる.特徴点間の位置関係を,その間 を通過可能,通過不可能,不明の3通りに分け,通過不可 能関係にあるものを集めて仮想的な障害物とする.その障 害物間で特徴点間の位置関係が不明な部分を囲むように危 険領域とし,そこでは詳細な情報を保持するが,それ以外 のところは大まかな仮想障害物の形状だけを覚えておく.
滝沢ら[14]は,通過可能性が不確かな領域のうち,ロ ボットの経路計画上重要と考えられる領域を注視・ズーム して再観測することにより,重要な領域を選択的に精密化 する手法を提案した.環境情報はドローネ三角形[15]を用 いて記述し,再観測した部分は新たに観測したデータを加 えてさらに細かいドローネ三角形で記述される.
3.3.2 データに基づいた詳細度の決定
複雑な形状を効率よく表現・利用するための手法とし て,詳細度の階層を構成して管理する四分木(quadtree)や
八分木(o ctree)がある.登尾ら[16]は四分木を利用した経
路生成アルゴリズムを提案している.環境の非均質性は形 状をモデル化する段階で自然に実現されている.また,経 路探索を階層的に(粗密的に)行うことにより,効率のよい 環境モデルの利用が実現されている.
3.3.3 複数詳細度の並列利用
Zelek[17]は移動ロボットのオンライン計画において,一
定の計画時間内にできるだけよい経路を生成するために,
複数の異なる詳細度のグリッド地図上で並列に経路計画手 続きを実行し,時間内に得られたもののうちもっとも詳細 度が高い地図上での経路を採用する手法を提案した.経路 計画に要する時間は環境に依存して変化し事前に知ること は難しいので,並列に処理することは有効である.
3.3.4 コストパフォーマンスの評価に基づく詳細度の 適応的決定
一般に環境を詳細に調べれば結果としてのパフォーマン スは向上するが,調べるためのコストがかかる.したがっ て必要以上に細かくすることは意味がない.そこで,どの 程度詳細に調べればどの程度のパフォーマンス向上をもた らすかについての知識を利用して適応的に詳細度を決定す る手法が考案されている[18].
3.3.5 学習に基づく状態空間の自律生成
環境表現の適切な詳細度をあらかじめ与えるのが難しい 場合には,学習によって自律的に詳細度を決定する(状態 空間を生成する)ことが考えられる.浅田ら[19]は行動の 履歴を解析し,状態遷移と行動ができるだけ1対1に対応 するように構成する手法を提案している.また,Ishiguro ら[20]は同じ動作が異なる結果を引き起こすような状態を 再帰的に分割することにより,状態空間を生成する手法を 提案している.
3.4 不確かさの表現法の変化→ロバスト性の向上 センサ入力やロボット動作の不確かさが避けられないと きには,それを考慮することによりロバストな行動が可能 となる.
Elfes[21]は2次元の領域をグリッドに分割し,各グリッ
ドで障害物の存在確率を記述するoccupancy gridという 方法を提案し,センサ情報の不確かさの下でも安全にナビ ゲーションできることを示した.
ランドマークによって位置決めを行いながら移動する場
合,異なる時間で観測されたランドマーク同士の対応づけ が必要である.このとき,観測や移動の不確かさを陽に考 慮することにより,ロバストな対応づけが可能となると同 時に,得られた情報を統計的に統合することにより精度よ い位置推定が可能となる.Ayacheら[22]は拡張カルマン フィルタを用いてこのような問題を定式化した.この方式 では推定値とその誤差分散が漸化的に計算できるので,保 持すべき情報量が少ないというメリットがある.ただし,
この方法は推定の誤差は扱えるが,センサ情報の解釈のあ いまいさ(間違い)は扱えない.間違った解釈はロボットの 計画・行動に大きな影響を与えるので,あいまいさが無視 できないときにはそのモデリング[23]が重要となる.
明示的なランドマーク間の対応づけを用いずにセンサ データと地図を直接比較し,統計的に尤もらしいロボット 位置を推定する手法にMarkovLocalizationと呼ばれる手 法がある[24].あいまいさと誤差を統一的に扱っていると ころが特徴的である.
3.5 不確かさの表現法の変化→パフォーマンスの向上 不確かさの表現として,不確かさの範囲を記述する場合 と,その範囲の中での確率分布を記述する場合とがある.
前者はモデリング対象に対する事前知識をあまり必要とし ない[25].後者は,対象の確率的振舞いを知る必要がある が,確率分布を考えることにより(期待値の意味で)より効 率的に行動できる場合がある.例えば図7でロボットの目 的地が図の上方にある場合,範囲を考えるだけでは必要以 上に大回りをする可能性がある.
obstacle
robot possible
obstacle movements
(a) Avoid all possible
obstacle movement. (b) Avoid only probable obstacle movement.
obstacle
robot possible
obstacle movements and their probabilities (darker position is more probable)
図7 不確かさの範囲でなく確率分布を考えることが望ましい状 況[26]
4. タスクを考慮した環境モデリングの一般化に関する従 来の研究
本章では,タスクを考慮して適切な環境モデリングを行 う手法を一般化しようとする試みを紹介する.
Ikeuchiら[2]はロボット用視覚システム設計のアプロー
チとして,タスク指向視覚(task-oriented vision)を提案 した.これは従来の一般3次元ビジョンを目指すアプロー チ[27]でなく,ロボットのタスクごとに適切な表現,処理 方法を考えるものである.ロボットのタスクの分析から始 まり,タスクの対象物の表現が持つべき機能の分析と,そ れに基づく表現の選択,そのような表現を抽出できる視 覚特徴の選択,さらには,そのような表現と特徴を得るた めの視覚処理の設計,といったように後ろ向きに必要な表 現・処理を決定していくことを提案している.ロボットの タスクから対象物の表現が持つべき機能がほぼ一意に定ま る場合に特に有効な考え方である.
Horswill[28]はsp ecializationと呼ばれる視覚システム 設計手法を提案した.そこでは,環境の構造を拘束条件と して用い,タスクに必要な情報を得る手続きをその拘束条 件のもとで可能な限り単純化する.その結果,特定の環境 に特化してはいるが非常に高速でロバストな視覚システム が設計できる.例えば,床にテクスチャがほとんどない,
という知識を用いると,回りの物体までの距離を求める手 続きは,テクスチャのない画像上の点のうち,各 x座標
(横軸)でもっとも上方にある点の位置を求めることに帰着 される.これは環境に関する知識を最大限活用し,最小の
I
M を実現する試みであると言える.
5. 望ましい環境モデリングについての考察 本章ではこれまでの議論をまとめ,望ましい環境モデリ ングとはどのようなものであるかについて考察する.
5.1 I
M
I
A
環境モデリングはタスクの実行に必要十分な情報を規定 すればよいので,対象とするタスクの範囲をできるだけ正 確に定めて解析し,必要な情報IA を決定することが重要 である.IM は実際のセンサ入力の処理方式に依存するの で,どのような方式が実現可能か,あるいはどの方式が効 率的か,といったことを考慮しながら,IM を決定するこ とが必要である.
5.2 非均質な表現
環境内の興味ある場所はタスクによって異なる.すべて の場所を一様に必要な詳細度でモデリングすることはコス トがかかるので,環境モデリングの非均質性(場所によっ てモデリングすべき情報が異なる)を表現できることが重 要である.また,重要な場所が事前にわからない場合や時 間的に変化する場合もあるので,タスクを実行しながら適 応的に情報の内容・詳細度を制御することが必要である.
5.3 不確かさの表現
環境に関する知識やセンサ入力には不確かさが含まれる ので,それらを表現できることが必要である.必要十分な 情報をモデリングするという基本的立場から,行動・計画
系がどのような不確かさ情報を利用するかを考慮した上 で,環境モデリングにおける不確かさの表現法を検討する 必要がある.
5.4 複数表現の利用
タスクがさまざまな種類の作業を含んでいる場合,ある 作業に有効なモデリングが他の作業に有効であるとは限ら ない.すべての作業に有効な一般的な表現を選択すると,
モデリングコストが増大するか,あるいは十分にモデリ ングできなくなってしまう可能性がある.現実的な解は,
複数の表現を同時に保持し作業によって使い分けることで あろう.例えば,障害物の局所的な回避には対象物体の大 まかな形状と位置が必要だが,大域的な経路選択には特徴 的な場所の接続関係を表すグラフ表現が適している.しか し,複数の表現それぞれについて観測を行うのは非効率な ので,複数の表現間の情報の引き渡しが効率よくできるこ とが重要である.
6. お わ り に
本稿では,環境モデリングを,タスク達成のためにロ ボットが環境から抽出すべき必要十分な情報を規定するも の,ととらえ,どのようなモデリングが望ましいかを,主 に例を挙げる形で論じた.モデリングはタスクごとに独立 した作業と考えがちであるが,タスクをよく解析し可能な モデリングの空間を把握した上で,今までに実現したタス ク(およびそれに伴うモデリング)との関係も考慮しながら 行えば,ある程度見通しのよいものになるのではないかと 考えている.本稿がそのための一助となれば幸いである.
参 考 文 献
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三浦 純(JunMiura)
1984年東京大学工学部機械工学科卒業.1989 年同大学院工学系研究科情報工学専攻博士課 程修了,工学博士.同年大阪大学助手.現在 同大学院工学研究科電子制御機械工学専攻助 教授.知能ロボット,人工知能,コンピュータ ビジョンの研究・教育に従事.1994年〜1995 年CMU客員研究員.1997年ロボット学会論文賞受賞.人工知能 学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本機械学会,IEEE,
AAAI各会員. (日本ロボット学会正会員)