r 行動する市民」を育む環境教育
比屋根 哲 連 合大学 院 ( 環境 教 育 学 )
環境コミュニティづくり
梶 原 昌五 教 育学 部 ( 生物学・環境教育)
r 行動する市民」を育む環境教育
比屋根 哲 ( 連合農学研 究科 環境 教育論 )
1 .はじめに
都市の自然再生に取 り組む主役は.他 な らぬ都市に暮 らす 人々 ( ‑市民)ですO 自 然再生の耶 L )組みには、市氏が助力で実行 で きることもあ ります し、J 】 民の側か ら行 政等の扶関に協力 を求めて共に実行す る場 合 もあ りますが,いずれにせ よ市民が主体 的に行動することが求め られ ます。 ここで は、行動するT T I 比への成長を促す環境教育 について考 えます。
2. なぜ環境教育が必要か
人問が生 きてい / .ためには、自然 はどう して も必嬰だといわれています。品田椛氏 ( 20 04 年) は. このことを科学的 に災証 し た研究者の一 人です。品田氏は、首都 圏 を 中心 に膨大なアンケー ト調査 を実施 し、 ま た明治期以降の観光就割か らそれぞれの時 代における人々のf r 動佃な どを詳細 に調査 し,様 々な角度か ら検討 した結 取、 どうや ら人口哲院が L平方 キロ メー トルあた り 2 , 000‑3. 000 人を超 えると, 人々の 自然環 境 に対する満足度が低下 し.花 を買った り 日帰 りの レジ1 ・ ‑に出かけた りといった、
自然を求める代慣行動が増加することを明 らかに しました。生蟻学では、生物の僻体
数は長期的にはほほ一定 に保たれ.ある程 度個体数が増えれば密匠の増加によって増 殖が低下 させ られる密度劾‑ B I t が知 られてい ます。品田氏 は,人の場合 も雷皮効果が生 活圏を^tぴr r , す行動 となって現れるとい う 興味戻い括采 を明 らかに したのです。
ここでい う人n密使が 1平方 キロメ ‑ ト ルあた l )200 0‑3, 0 00 人 とは どの ような機 所か というと、品田氏 はまだ線が姓かな閑 静な住宅地 として特徴づけてい ます。筆者 はかつて、盛岡市近郊 のJ l l滝沢駅J d辺や 娘子の住宅地の 人r l密度 を鯛べ たことがあ i )ますが、1 992 年時点で も3. O O O人/ h7 前 後あ r )ました。 このうち娘子の住宅地 はそ の後 さらに宅地造成がすすめ られましたが、
筆者 らが2 00 5 年 に火砲 した住民の意識調査 によると、典子の人 々はそれで も生活圏の 自然に耽ね満足 しているという結果で した。
このことは、私たちが実際に感 じているR 然の豊か さの悠覚 とは別に、生物 としての ヒ トはすでに自然の減少 について虹意識に 反応 し、た とえば 「 花 を買 う」等の自然 を 求める行軸 を耽 っていることを示 してい ま す。いいかえると、 この事実 は都市圏の自 然環境は私たちが意弘的に伽全する努力 を していかない と、知 らず知 らずの うちに快 適 な生活環境が失われることを強 く示唆 し
写真 l 滝沢村菓子の住宅地 閑静な住宅地でも人は自然を求めている。
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ているといえます 。
都市のR然環境 を怒紙的に保全す る努力 をつづけるのき ま、簡単なことではあ りませ ん.そのためには,人々の自然に対する意 識 を高め、都市の自然 を保 全あるいは再生 しようとする行動力 を培 う収 r J組みが是非 とも必要ですO環境教育は、T r T 民の自然環 境 に対す る意純 を高め、その鎚全 ・再生に 取 り組む態度を醸成するためにも重要 な役 割 を持 っているといえます。
3 .環境への気づき .理解 ・ 行動
環境教育について、学問的に統一 きれた 足並はまだあ りません. しか し . 国際的な 説諭のなかで、現職教育の円標や理念につ いてはかな り明稀 にされて きました.
1 9 7 2年、世界各国で環境閉域が噴出 し, 人類の存続 に対す る危機ばか ら、l i f 界が一 丸 となって環境閉週に立 ち向か うために国 連人間環境会誹 は 開催 されました。そこで 採択 されたス トノクホルム宣 告では、私た ち白身 と子孫のために行動 しなければなら ないと述べ られ、塀噴教帯の E =一 別こついて も 「R己を取 り巻 く環境 をR己ので きる範 囲内で管理 した り、規制 した りす る行動 を 歩ずつ確実にす る人間を苛政す ることで ある」 と規定 されています。その後.環境 教育に特化 した盛要な国際会読 ( 1 97 5 年の 国際環境教育専門家会派 =ベオグラー ド会 読、1 977 年の環境教育枚肘間会読 = トビリ シ会議)等が開催 され、環境教育に関する 原則、包括指針, E l 漂段階等が次第に明確
にされてきましたb
これ らの詳細は他の文献にゆず りますが、
ここではその後、わか りやす く捉‑ ' T.された 環境教育の 3 段階 を意味す るキーワー ドに ついて紹介 します。そのキーワー ドとは、
u l .ab o ut 、 f otで.これ らの前置詞は 、Ed uc a t l On i n EnvL r OnmC nt (環境 の なか で の教育 ) 、Educ at i on a boutEnvi r onme nt
( 環境 についての教育 h Educ at 1 0m f orE l l VL r O nme l l I ( 環境 のための教育) の よ う に使 われ ます。
まず 、 I nですが、これは環境の現場 や 白 熊の中に身を置 くということで. とにか く 理屈抜 きで自然 と触れ、自然に対する 「 気 づ き」を促す という教育的アプローチです。
つ ぎに 、about は、碑に朱づ くだけでな く.
その環J 3 2についての 「理 別 」 を深める とい う教育的 アプローチを指 してい ま
す.韻 後 に、f orは、 その蕊味の とお り 「環境 のた めに」 というアプローチで、 これは被教育 者の 「行動」を促すことを恐味 していますO
これまでの環境教掛 こ関する解吉 妃磐では、
ノ J 、 学校低学年では 「 欠づ き 」 ( l n) を中心 に、小学校 砧学年で は 「埋解 」 ( ヱ I bou t) を小 L、 に. そ して小学校 . ' E J 学年 以降 には r l l ・ 動 」 ( l o L ) を呼人 した現墳教育 を行 う とい う図式で説明 されてい ます。 まずは環 境 .自然に対す る 「 気づ き」か ら入 り.汰 第に環境 ・自紙への r理解」に高め、最後 には 「理解」の上に立って 「行動」で きる ように とい う流れで,わか りやすい図式に なってい ます。
しか し.注意 しなければならないことは.
写真 2 森林学習に出かける小学生
/ ‑ . /
た とえば中筋生 には 「 行動」の レベルQ )環 境教育 を要求 して よい等 と横桟的に考える のは危険だとい うことです。大人だって、
自然に対 して必要な 「 気づ き」 を経験 して いない人は少なか らずい ます。「 理解」 と なると、もっと多 くの人が経験 していない 可能性があ ります。 こうした 「 気づ き」や
「 理解」 を斧 ないで、い きな り 「行動」 を 要求 しても、環境教育の勤巣は まった く期 待で きません8位近、中学校の 「 農合的な 学習の時間」で,町内会の活動に生徒を参 加 させ、生徒 を託 された町内会はやるに事 欠いて.説明抜 きで町内の清掃所動 をや ら せたとい う話 をI i t I いた ことがあ ります.こ うした活軸が有効 なのは、+ ども連が小学 生 までの段階でゴ ミ問題 などを対象 に多 く の 「 気づ き」や 「 モ細字 」の体験 をしている 場合で、そうでない域合は執恥が期待で き ないばか りか、む しろ町内会 ( 地域)や学 校 に対す る不信感 を稚 くことに もな りかね
ませ ん。
このように、都市の自然を保全あるいは 再生する活軸につ いて も、は じめか ら 「 行 動」あ りきのf R墳教育の枇 l )組みを考える のではな く,地域 の大人や子 とものせ書 蝕や 経験の有 り様を見極めた、 無 理のない活動 といろんな人々が参加で きる多様 な取 り組 みが求め られているといえます。
4 .環境教育の童
環境教育の虫路的なゴールは、環境のた めに行動する人材 の育成です。 しか し、行 動に奉るまでの環境‑の気づ きと、環境に 対す る理解が重要なことは、先に述べたと お りです。現在.様々な ところで取 り組 ま れている環境敦L f tは、 この 「 朱 づ き」 と
「 確解」 を促す内容 のプログラム といって も過言ではあ りません。
ところが、学校でこの ような環境教育を 実接する際には願書 もあ ります。それは、
最近の 「 学力」低下の問敬 とも関わって、
環境教育にノ Jを捌 くよ り学ノ Jの付 く勉強を させ るべ きだとい う考 え方です。群青 は、
あるシンポジウムで環磁数百 を実践 してい る高校数静か ら、環境教 軌 二一生懸命耽 り 祖 んで も、校長やPTAか ら、 「そんなこと をして遊ばせて何になるんだ」 といわれ、
まった く評価l して もらえないという話 を聞 か されたことがあ りますO環境教育の実践
家 は、その効紫が どれほどの ものか現場体 験的に理解で きるのですが.第三者の Rに はなかなか見えに くいようですo Lか し.
学校現場で環境教育V ) 突抜に苦労 している 先生方 を支援す るためには、 まず はPTj l の方々すなわ ち市民に、環境教育活動の重 要性 を理解 していただかなければな りませ ん。そのためには、何 らかの形で環境教育 の効果を示すことが 巳・ 要になってきました。
5 .環境教育の効果を調べる
環境教育のみ成 らず、そ もそ も教育の効 果 を把揺することは.教育実践のあ り方 を 改善 してい くためにも韮%; な作菜です。
それては、 どの ように して環境教育の効 果 を調べればいいので しょうか。封敬や社 会等の教科では、教育効紫の測定はペーパー テス トを実施す ることである帯皮把握で き ます。先生方は、ベ‑/i‑テス ト0 )蒜. 紫か らチ ビもたちの埋僻皮をチェ yクし、B J i 解 で きていない匝所 の教え方 を振 り返 り、改 尊の努力 をすることにな ります。 しか し、
環境教育ではその効果 をペーパーテス トで 測定することが難 しいため、参加醗笥 引こよっ て子 どもの行動 を・ 分 q r L た り、感想文の内 容やア ンケー ト調査結果か ら推測 した りし なければな りません。ただ.感想文は子 ど もが正直な感想 を番 いているとは限 りませ ん し、教育 1ログラム実施直後に行ったア ンケ‑ トでは優等生的な回答 ( 調査者の意 図を察知 した模範的な回答) をして しまう ことが一般( , 二知 られてい ます。 また、参加 横車で教育実践者が 「 子 どもたちのE l が挫 いていた」な どと報告す るだけでは、校長 やPTA (d l民) を説得 で きないこ とは言 うまで もあ りませ ん。
それでは、どのようにすればよいのでしょ うか。以下に.筆者 らが試みた簡単な調査 方法の一端を船介しましょう。それは . フィー ル ド活動の事前 ・事後に行 う自由連想法 と い う7 ンケー ト調秀です。L d由連想法ア ン ケー トとは、「 森林」、「 環境」等の言糞 を 刺激語 として、この青紫か ら連想する別の 言紫 ( 名 詞や形容詞)をどん どん番いて も らう方紋で.回答結果 を. q l r 1 万・邸後で比較 す るものです。 この方法では、回答者は調 査者が どうい うL d谷 をJ g H寺しているのか想 像することが困難で、いわゆる優等生的な 回答 を して しまう恐れはほとん どあ りませ
/
JんO
以下は 2001 年に 「記合的な学習の時間」
で森林活動 を実施 し た盛岡I I l 内の U 小学校 5 年年 ( 約 8 0 名)について、自由連想 アン ケー トを実施 した事例です。 この森林活動 の教育 目棒は.児塵が森の中で様 々な 「余 の繋が り」に気づ くことで した。 ここでは、
利敵語 として 「木」.「虫」、「 草 .「土」、
「 森」 の 5 つ を用 い、それぞれについて児 童が 自由に連想する言菜を背いてもらい ま した。ア ンケー トは、森林活軸前 ( 5 月 1 、 身近 な場所 での森林 7 1 6 . 動接 ( 9 月卜 林 間 学校での森林柄軌後 ( l l f l)の別 3 阿、まっ た く同 じ内容で実施 しました。
図 Lは 、3 回の回答語数の変化 をみた も のです。t g l か らわかるように,回答語数は 森林活動 を韮ねるごとにqHI I J Lてい ますD また.図 2は、回 答 朋歓で陳記入欄V ) 数 の変 化をふた ものです。 ここでは、森林活 動 を重ねるに逃れて軒記入回答が減少 して いることがわか ります。これらのことか ら、
多 くの児封 土 2 何の森林7 Mr J u を経 ることで、
活軸 フィール ドの主賓偶成箪繁である森, 士.葺等についての知紙あるいはイメージ
を徐々に撒持 していった と考 えられ ます。
つ ぎは, もう少 し丁の込んだ分析結果で す 。 この活動の教育 目標 は、児壷が森のr f l で様 々な 「命の繋が り」に気づ くことです。
ここで用いた 5 つの利敵言 責は、孫の中の命 ( 生 き物) 【 こ関わるキー ワー ドになってい ます。 だとすれば、「 命の繋が り」 に気づ くことがで き1 =生徒k、血恵三 崇のうちに.
それぞれの刺激語 に対す る回答で共通の言 葉をより多 く3 3 , 1 1 けるようになっているはず です。たとえば.一人の児童が刺激語 「 草 」
に対 して 「虫の食べ物」 と回答 し.同 じ児 玉が刺激語 「 ⊥」 に対 して 「 出のすみか 」
と回答 Lt . :とします。 これ ら‑ 2 つの回答に は 「 上 火」 とい う名詞が共通 にみ られ ます。
これは、瀬林 の摘 攻繁栄であ る 「 草」 と
「 土」 を関i g fして とらえることがで きてい ることを示 しています。
ここで 「gi Jに相当す る言柴を共通語 と 定義 します。凶 3 は、すべての回答語のな かでj t ; 池語が山める制令が どのように変化 したかをみた ものです。 この ように 、 2 岡 の森林活軸 を経 ることで、共通語が徐 々に 増加 していることがわか F )ます.教育心理
回 答 語 数 ( 個 )
100ヽ
8 0 1 i
601 i
40ヽ
木 虫 草 土 森 2 。㌔
図 1 3 巨】 の調査時点における回答指数の変化
0ヽ
無 記 入 欄 ( 潤 )
5 月 9 月 11 月 図 2 3 回の調査時点における無回答親の数の変化
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5 月 9 月 1 1月
図 3 3 回の調査時点における共通語の数の変化
学では.こうした認識の深化を知池の構造 化 と呼んでい ますが、この例では、児変が 森の中で r命の繋が り」 を珪織で きるよう になってきたことを/ TC す lつの結果と解釈 で きそうです。
6.過去の野外体験度による 効果の違い
もう少 し、ア ンケー ト調香の話にお付 き 合い くだ さい0 回 4 は 、U 小学校 5 年生児 童で、過去に森林やR旅がいっぱいの場所 に出かけた検度 と、今現在、そうい う場所 に行 きたいか どうかを尋ねた質問をクロス して結果を示 した ものです。この間からは、
過去に自然や森林によく出かけL・ 児亜ほど、
今現在 もそういう場所 に行 きたいと思って いることがわか ります。
このことは、小学 5 年生段階で見た%L 合 も、それ以前の幼稚園や低学年で、 自然や 孫林 と触れる機会 をで きるだけ多 く提供 し
てあげることが大 切なことを示唆 していま す。 ここで、 園 上 目こおいて過去に自然 ・森 林体験 した頻1 9: に よる 3 つのグループの児 童は .U 小学校 の森林活動で,それぞれど の ように変化 したので し上うか。
図 5 は、過去の体験塀皮が異 なる 3 つの グループ別 に 、 5 月 . 9 月.11月の自由連 想ア ンケー トに よる回答語数 ( 平均値)の 変化 を示 したものです。
これをみると、過去 に自然や瀬林 にほと んど行かなかったグループは,他o )2グル‑
プと別の傾向を示 していることがわか りま す。 この解釈 は、比較的鵬単です。すなわ ち.過去にR然体験 をあ まI )してこなかっ た児童 は、近所 にあって い まとんと行 った ことのない森林 で新鮮 な刺激 をせけ、その
結果 9 月には蜘答語数が飛躍的に伸びた と 考 えられます。それに対 して他の 2グルー プの児童は、見慣 れた森林 にはそれほどイ ンパ ク トは感 じず、回答語数の変化 もわず かだったものが、は じめて訪れた林間学校 での森林活動では人きな刺激 を受け、その 後実施 した日月の調査時. r l で回答語数が飛 躍的 に伸びた と考 えられますC
この ように、子 どもの 自然体験の程度に よって、環境教育の効果 には追いが認め ら れ ます。この結果か らいえることは、子 と もたちにはできるだけ異 なるフイ‑ル ドで た くさんの自然や森林 を体験 させた方が よ いということです。多 くの炎 なる場所で森 林や 自然に触れ体験す ることで、子 ども達 は新 たな利敵 と感刺 を受け耽 り、 自然に対 する関心 を満めることが糊符 されます。
自由連想法による7 ンケ‑ トは.記述回 答のつ き災割に骨が折れる点があ り、 また シンブルな調査だけに得 られた典計結果か らそれほど多 くの傾向を引 き出す ことはで きない という F g i
非があ ります。 しか し,そ の方法は非常に的埠で誰で も実施で きます し、先に述べた とお r )優 等生的な回答 を避 けて被験者のいわば 「本音 」に迫ることが で きるメリノトがあ ります。
環境教育の効泉を探 る方法には. この他 にも感想文の分析 など、いろんな方法があ ります。今後.都市の自然再生活動の場 で 行われる様々なJ Rり組みについて も、取 り 組みのねらいに即 して参加者がいかに変化
したかを確認する1 . : めの網杏を実施 し. よ r )効果的で悪衣のある取 L )組みに改善 し、
新たな教育 プログラム を創糾 してい くこと が求め られます。
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