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τ >0ですべての債券の満期がT < τ とする。

Definition 3.6. 満期T,額面1のゼロクーポン債の時点tでの価格をP(t, T) (∀t∈[0, T])とし,

時点tでのフォワードレートf(t, T)を

f(t, T) =−∂logP(t, T)

∂T (0≤t≤T) (3.4)

とする。また,時点tでのイールド(最終利回り)Y(t, T)を Y(t, T) =logP(t, T)

T−t (0≤t≤T) (3.5)

とする。さらに(3.4)と(3.5)より,

P(t, T) = exp µ

Z T

t

f(t, s)ds

(3.6) Y(t, T) =

RT

t f(t, u)du

T −t (3.7)

となる。また,時点tでのスポットレートを下記のように定義する。

r(t) =f(t, t) (3.8)

Remark 3.7. ゼロクーポン債とは期中にクーポン支払が無い債券である。またこの修士論文内

では信用リスクが無い,即ち債務不履行とならない債券のみを考える。一方,フォワードレート f(t, T)は時点tにおけるT での瞬間的な利子率を表しており,一方スポットレートr(t)は現時点 tでの瞬間的な利子率,イールドは時点tから満期Tまでの平均利子率を表している。

また,P(t, T)をtを止めるごとにT の関数として見たものを時点tにおけるP(t, T)の期間構 造といい,特にP(t, T)の時は割引関数という。同様にY(t, T)の時点tでの期間構造をイールド カーブといい,f(t, T)の時点tでの期間構造をフォワードカーブという。

一般に満期が遠いほうが不確実性が増すため,イールドカーブは「右上がり」になる。しかし,

現在の金利が高く将来的に金利が下がると予想される場合,イールドカーブは逆転し,「右下がり」

となる。このようなイールドカーブを逆イールドカーブというときもある。

Definition 3.8 (HJM). 任意にT [0, τ]を固定しておく。このとき,f(t, T)は次を満たすと する。

df(t, T) =α(t, T)dt+ Xd n=1

σn(t, T)dWt(n),(0≤t≤T) (3.9) ただし,上の式は次のような意味である。

1. f(0, T) =f0(T)は決定論的な関数で,以下固定しておく。

2. α :{(t, s); 0≤t≤s≤T} ×RはB{(t, s); 0≤t≤s≤T} × F -可測で,Ft-適合であ る。また,RT

0 (t, T)|dt <∞(a.e.)とする。

3. σn∈ L2 (1≤n≤d)とする。

(3.8),(3.9)より,

dr(t) =α(t, t)dt+ Xd n=1

σn(t, t)dWt(n),(0≤t≤T) (3.10) また,無リスク預金をBt= exp(Rt

0 r(y)dy) (∀t∈[0, τ])とする。このとき,0< Bt<∞である。

これは次を仮定することで保障される。

Assumption 3.9. Rτ

0 |f(0, v)|dv <∞ とRτ

0

nRt

0(v, t)|dv o

dt <∞ a.e.が成立する。

3.2.2 債券価格過程の算出

ここでは,フォワードレートが(3.9)を満たすときに,これから算出される債券価格がどのよう な確率微分方程式を満たしているかを考える。まず,債券価格過程が良い動きをするための十分 条件を与えておく。

Assumption 3.10. 1. Rt

0E[(Rt

vσn(v, y)dy)2]12dv <∞ ∀t∈[0, τ] and n= 1· · ·d 2. Rt

0E[(RT

t σn(v, y)dy)2]dv <∞ ∀t∈[0, T], T [0, τ] and n= 1· · ·d 3. t−→RT

t [Rt

0 σn(v, y)dWv(n)]dy <∞はP-a.s.に連続である。

次の定理で,相対価格Pe(t, T) = P(t,T)B

t を満たす方程式を考える。

Theorem 3.11. Assumption3.9およびAssumption3.10を仮定しておく。フォワードレートが

(3.9)の形で与えられたとき,割引債券価格は次の確率微分方程式を満たす。

dP(t, Te )

Pe(t, T) =b(t, T)dt+ Xd n=1

an(t, T)dWt(n) (3.11)

ただし,an(t, T) =RT

t σn(t, u)du, b(t, T) =RT

t α(t, u)du+12Pd

n=1a2n(t, T)とする。

Proof. (3.6)より,logP(t, T) =RT

t f(t, u)duである。この右辺に(3.9)の積分形を代入する。

logP(t, T)

=

Z T

t

f(0, u)du− Z T

t

·Z t

0

α(v, u)dv

¸ du−

Z T

t

"

Xd n=1

Z t

0

σn(v, u)dWv(n)

# du

= Z T

t

f(0, u)du− Z t

0

·Z T

t

α(v, u)du

¸ dv−

Xd n=1

Z t

0

·Z T

t

σn(v, u)du

¸ dWv(n)

=

Z T

0

f(0, u)du− Z t

0

·Z T

v

α(v, u)du

¸ dv−

Xd n=1

Z t

0

·Z T

v

σn(v, u)du

¸ dWv(n)

+ Z t

0

f(0, u)du+ Z t

0

·Z t

v

α(v, u)du

¸ dv+

Xd n=1

Z t

0

·Z t

v

σn(v, u)du

¸ dWv(n)

= logP(0, T) Z t

0

·Z T

v

α(v, u)du

¸ dv−

Xd n=1

Z t

0

·Z T

v

σn(v, u)du

¸ dWv(n)

+ Z t

0

f(0, u)du+ Z t

0

·Z u

0

α(v, u)dv

¸ du+

Xd n=1

Z t

0

·Z u

0

σn(v, u)dWv(n)

¸ du

= logP(0, T) Z t

0

·Z T

v

α(v, u)du

¸ dv−

Xd n=1

Z t

0

·Z T

v

σn(v, u)du

¸

dWv(n)+ Z t

0

r(u)du となる。ただし4行目から5行目は,通常のFubiniの定理およびStochasitic Fubiniの定理を用 いた。また,5行目から6行目は(3.10)を用いた。

ここで,an(t, T) =RT

v σn(v, u)duを代入し,またdlogBt=r(t)dtであるから,Itˆoの公式から dPe(t, T) = Pe(t, T)dlogP(t, T)−P(t, Te )dlogBt+1

2P(t, Te )dlogP(t, T)dlogP(t, T) dPe(t, T)

Pe(t, T) = r(t)dt+ µ

Z T

t

α(t, u)du

dt+

Xd n=1

an(t, T)dWt(n)−r(t)dt+1 2

Xd n=1

an(t, T)2dt

= b(t, T)dt+ Xd n=1

an(t, T)dWt(n) (3.12)

ただし,b(t, T) =RT

t α(t, u)du+12Pd

n=1a2n(t, T)とした。よって,示せた。

3.2.3 無裁定債券価格と期間構造

この節ではただ1つの同値マルチンゲール測度が存在する必要十分条件を考える。まずは記号 の準備をする。

T1,· · ·, Tk [0, τ]を0< T1 <· · ·< Tk ≤τを満たすようにとる。また,T = (T1,· · · , Tk)と する。さらに,

A(t) =



a1(t, T1) · · · ad(t, T1)

· · · · ·

a1(t, Tk) · · · ad(t, Tk)



b(t) = (b(t, T1),· · · , b(t, Tk))T e

p(t) = (ep(t, T1),· · · ,p(t, Te k))T

PD(t) =

 e

p(t, T1) · · · 0 ... . .. ... 0 · · · p(t, Te k)



とすると,前の定理の中の式は

dep(t) =PD(t)(b(t)dt+A(t)dWt) (3.13) となる。ここで,相対価格P(t, Te )がマルチンゲールとなる確率測度を考える。次を仮定する。

Assumption 3.12. 1. rankA(t) =k∧da.e.

2. 期間Ti(i= 1,· · ·, k)の債券価格に対して共通にFt可測な市場リスク価格過程λ(t)が存在 して,条件

A(t)λ(t) =−b(t) (3.14)

Z T

0

||λ(t)||2dt <∞

E

· exp

µ

Z T

0

λ(t)dWt 1 2

Z T

0

||λ(t)||2dt

¶¸

= 1 を満足する。

このとき,Girsanovの定理からWft=WtRt

0λ(s)dsがRd-値Wiener過程となるような確率測 度Qが存在する。このようなQをリスク中立な確率測度という。すると,(3.13)と(3.14)から,

A(t)dWft = A(t)dWt−A(t)λ(t)dt

= A(t)dWt+b(t) dep(t) = PeD(t)A(t)dWft となり,成分ごとに書くと,

dPe(t, Ti) P(t, Te i) =

Xd n=1

an(t, Ti)dfWt(n) (i= 1,· · ·, k) (3.15) となる。

これをフォワードレートの方で考えると,

df(t, Ti) = α(t, Ti)dt+ Xd n=1

σn(t, Ti)dWt(n)

= α(t, Ti)dt+ Xd n=1

σn(t, Ti)(dWft(n)+λ(t))

となる。ここで,Assumption3.12より,λ(t)はT に依存しないので,(3.14)の第i行目をT = Ti, λ(t) =λi(t)として,T で微分すると

Xd n=1

µ

∂Tan(t, T)λ(t) +an(t, T)

∂Tλ(t)

=

∂Tb(t, T) Xd

n=1

(−σn(t, T)λ(t)) =α(t, T) + 1 2·2

Xd n=1

an(t, Tk)σn(t, T) となり,

α(t, T) = Xd n=1

σn(t, T) µZ T

t

σn(t, u)du−λn(t)

(0≤t≤T) (3.16) となる。なお,Heath,Jarrow and Morton[15]によると,(3.16)が成立することと次の2つはそれ ぞれ同値である。

1. Qが一意の同値マルチンゲール測度である。

2. λ(t)が一意に存在して,満期に依存しない。

以上より,

df(t, T) = Xd n=1

σn(t, T)(−λn(t)−an(t, T))dt+ Xd n=1

σn(t, T)dWft(n)+ Xd n=1

λn(t)σn(t, T)dt

= Xd n=1

³

(−σn(t, T)an(t, T))dt+σn(t, T)dWft(n)

´

(3.17) となる。

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