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正則関数の Taylor 展開

ドキュメント内 複素関数論 (ページ 70-75)

を満たす多項式f1(z)と複素数β が存在する.0 =f(α1) =β よりf(z) =f1(z)(z−α1)が 成立し,f1(z)の次数は n−1 である.もしn = 1であれば zの係数を比較してf1(z) =a1

であることがわかるから定理の主張が示された.もし n≥2 であれば,f1(z) に前半の議 論を適用してf1(α2) = 0 を満たす複素数 α2 が存在することがわかる.以下この議論を 繰り返せば定理の主張が示される.□

上の定理において,f(z) =an(z−α1)· · ·(z−αn) の右辺を展開して係数を比較すれば,

−an(α1+· · ·+αn) =an1,

an(α1α2+α1α3+· · ·+αn1αn) =an2,

· · ·

(1)nanα1· · ·αn = a0

を得る.これを根と係数の関係という.

問題 5.3 γ を虚数(実数でない複素数)として f(z) =z2+γz+ 1 とおき,α, βf(z) の根とする.

(1) βγα で表せ.

(2) αβ のうち一方の絶対値は 1 より大きく,もう一方の絶対値は 1 より小さいこ とを示せ.

(3) |α| <1, |β|> 1 として,C を単位円周 |z| = 1 とするとき,

C

dz

f(z) を α で表せ.

6 正則関数の Taylor 展開とその応用

定理 6.1 f(z) を C の開集合 D で正則な関数として z0 D とする.実数 R > 0 を U(z0;R) = {z C | |z−z0| < R} ⊂ D となるようにとる.このとき,an = f(n)(z0) (n = 0,1,2, . . .)とおくと,任意の z ∈U(z0;R) について n!

f(z) =

n=0

an(z−z0)n (9)

が成立する.(9)を f(z) の z0 における(または z0 を中心とする)Taylor展開またはべ き級数展開という.

z z

0

D

R r

証明: z−z0 をあらためて z とおくことにより,z0= 0 としてよい.|z|< R を満たす複 素数 z を固定して,|z| < r < R を満たす実数 r をとる.Cauchy の積分公式により

f(z) = 1 2πi

|ζ|=r

f(ζ)

ζ −zdζ (10)

が成立する.|ζ|= r >|z| に注意して等比級数の公式を用いると 1

ζ−z = 1 ζ

1 1 z

ζ

= 1 ζ

k=0

(z ζ

)k

=

k=0

zk ζk+1 を得る.これと(10)を合わせて

f(z) = 1 2πi

|ζ|=r

k=0

f(ζ) zk

ζk+1 =

k=0

zk 2πi

|ζ|=r

f(ζ)

ζk+1 (11)

が成立することを示そう.ここで1番目の等式は自明であるが,2番目の等式は無限和と 積分の順序交換であり自明ではない.そこで以下ではこの2番目の等式が成立することを 示す.|z| < r= |ζ| のとき

k=n+1

zk ζk+1

=

zn+1 ζn+2

1 1 z

ζ

=

(z ζ

)n+1

1 ζ −z

(|z| r

)n+1

1 r− |z|

より,円周 |ζ|= r 上での |f(ζ)| の最大値をM とおくと,

f(z)

n k=0

zk 2πi

|ζ|=r

f(ζ) ζk+1

=

1 2πi

|ζ|=r

f(ζ)

k=0

zk

ζk+1 1 2πi

|ζ|=r

f(ζ)

n k=0

zk ζk+1

=

1 2πi

|ζ|=r

f(ζ)

k=n+1

zk ζk+1

2πr 2π

M r− |z|

(|z| r

)n+1

−→0 (n→ ∞) よって,(11)が |z| < r のとき成立する.定理5.3により

1 2πi

|ζ|=r

f(ζ)

ζk+1 = 1

k!f(k)(0) =ak であるから,|z| < r のとき

f(z) =

k=0

akzk

が成立する.rR にいくらでも近くとれるから,上の等式は |z| < R のとき(右辺の 無限級数は収束して)成立する.□

6.1 f(z) =ez は Cで正則であり,f(n)(z) =ez であるから,任意の z∈C について ez =

n=0

1

n!zn = 1 +z+ z2 2! + z3

3! +· · · が成立する.

6.2 Logz を C\ {x | x R, x 0} における logz の主値とする.|z| < 1 のとき Re (1 +z) = 1 + Rez >1− |z|> 0 であるから,f(z) := Log (1 +z) が定義できる.よっ て Log (1 +z) は単位円板U(0; 1) で正則である.

d

dzLog (1 +z) = 1

1 +z, dn

dznLog (1 +z) = (1)n−1(n−1)!

(1 +z)n (n 2) より f(0) = 0,f(n)(0) = (1)n−1(n−1)! (n 1)であるから,

Log (1 +z) =

n=1

(1)n1(n−1)!

n! zn =

n=1

(1)n1

n zn (|z|< 1) が成立する.

次に Taylor展開の一意性(一通りであること)を示そう.それによって,上の証明の

方法とは異なる方法で求めた展開が Taylor展開と一致することが保証される.

補題 6.2 z0an (n = 0,1,2, . . .)を複素数とする.無限級数 f(z) =

n=0

an(z−z0)nz0 を中心とする開円板 U(z0;R) (∃R >0)で収束すれば,f(z) は z= z0 で連続である.

証明: z0 = 0 としてよい.0 < r < R を満たす実数 r を1つとると,無限級数

n=0

anrn は収束するから,n→ ∞ のとき anrn 0 となる.よって,ある定数 M > 0 があって,

任意の n について|an|rn ≤M が成立する.従って,|z| ≤ r

2 のとき,

|an||z|n−1 ≤ |an|rn1

2n1 = 1

2n1r|an|rn M r

(1 2

)n1

が成立するから,

|f(z)−f(0)|= |a1z+a2z2+a3z3+· · · | ≤ |a1||z|+|a2||z|2+|a3||z|3+· · ·

= |z|(|a1|+|a2||z|+|a3||z|2+· · ·)≤ |z|{M r + M

r 1 2 + M

r (1

2 )2

+· · ·}

= 2M r |z|

z 0 のとき 0 に収束する.よって f(z) は 0 で連続である.□ 命題 6.1 z0an (n = 0,1,2, . . .)を複素数とする.無限級数 f(z) =

n=0

an(z−z0)nz0 を中心とする開円板 U(z0;R) (∃R > 0)で収束して和が 0 であれば,すべての n につ いて an = 0 である.

証明: まず z =z0 を代入して0 =f(z0) =a0 を得る.よって

f(z) =a1(z−z0) +a2(z−z0)2+· · ·= (z−z0){a1+a2(z−z0) +· · ·) = (z−z0)g(z) と表される.仮定より0 <|z−z0|< Rのときg(z) = 0であるから,上の補題よりz→z0

として 0 =g(z0) =a1 を得る.以下同様にして a2= a3= · · ·= 0 が示される.□

定理 6.2 (Taylor展開の一意性) z0 C, R > 0 として,f(z) を U(z0;R) で正則な関数 とする.複素数 cn (n= 0,1,2, . . .)があって,U(z0;R) において

f(z) =

n=0

cn(z−z0)n

が成立すれば,すべての n≥0 について cn = f(n)(z0)

n! が成立する.すなわち,この右辺 は f(z) の z0 における Taylor展開である.

証明: f(z) のTaylor展開を f(z) =

n=0

an(z−z0)n, an = f(n)(z0) n!

とすると,

n=0

(an−cn)(z−z0)n =

n=0

an(z−z0)n

n=0

cn(z−z0)n = f(z)−f(z) = 0

であるから,上の命題によって cn = an となる.□ 例 6.3 f(z) = 1

z2+ 1 の z = 0 における Taylor展開を求めよう.f(n)(z) は複雑なので,

Taylor展開の公式を用いるのは困難である.そこで,等比級数の公式より

1

1 +z = 1

1(−z) = 1−z+z2− · · ·=

n=0

(1)nzn (|z|< 1) が成立することに注意して,zz2 を代入すると,

f(z) =

n=0

(1)nz2n (|z|< 1)

を得る.Taylor展開の一意性により,この右辺は f(z) の z = 0 における Taylor展開で ある.Taylor展開の公式を逆に用いれば,n が偶数のとき f(n)(0) = n!(1)n であり,n が奇数のときは f(n)(0) = 0 であることがわかる.

定理 6.3 (Taylor展開の項別微分定理) z0を複素数,Rを正の実数として,f(z)をU(z0;R) で正則な関数とする.f(z) =

n=0

an(z −z0)nz = z0 における Taylor展開とすると,

f(z) の z0 における Taylor展開は f(z) =

n=1

nan(z−z0)n1 =

n=0

(n+ 1)an+1(z−z0)n で与えられる.

証明: f(z) も U(z0;R) で正則だから,そこで f(z) =

n=0

cn(z−z0)n という Taylor展開 を持つ.Taylor展開の公式より

cn = f(n)(z0)

n! = f(n+1)(z0)

n! = (n+ 1)f(n+1)(z0)

(n+ 1)! = (n+ 1)an+1

が成立する.□

6.4 f(z) = 1

(z+ 1)2z = 0におけるTaylor展開を項別微分定理を用いて求めてみよ う(直接Taylor展開の公式を適用しても計算できる).|z|< 1のとき 1

1 +z =

n=0

(1)nzn が成立するから,項別微分定理により

1

(z+ 1)2 =

n=1

n(1)nzn1 (|z|< 1).

これから f(z) = 1

(z+ 1)2 =

n=1

n(1)nzn1=

n=0

(n+1)(1)nzn = 12z+3z2−· · · (|z| <1) を得る.Taylor展開の一意性により,これは f(z) の z = 0 におけるTaylor展開である.

問題 6.1 次の正則関数f(z)の与えられた点z0 におけるTaylor展開を求めよ.またそれ はどのような範囲で成立するか?

(1) f(z) = 1

(z+ 2)2, z0 = 0 (2) f(z) = 1

(z+ 2)2, z0 = 1 (3) f(z) = 1

2(ez +ez), z0= 0 (4) f(z) = 1

z(z+ 3), z0 = 1 (5) f(z) = 1

(1−z)3, z0 = 0 (6) f(z) = Log1 +z

1−z, z0 = 0

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