問題 3.3 n を自然数とするとき f(z) = z−n は開集合 D = {z ∈ C | z ̸= 0} で正則で,
f′(z) =−nz−n−1 が成り立つことを示せ.
問題 3.4 次の各々の複素関数f(z)はどのような集合で正則になるか?また,導関数f′(z) を求めよ.
(1) f(z) = z
z2+ 4 (2) f(z) = (
z+ 1 z
)6
(3) f(z) = 1 (z2+ 1)2
証明: (1) f(z) が z0 で複素微分可能であると仮定する.補題3.1より,
f(z) =f(z0) +α(z−z0) + (z−z0)φ(z), lim
z→z0
φ(z) = 0 (2)
をみたす複素関数 φ(z) と複素数 α が存在する.α = a + bi (a, b ∈ R), φ1(x, y) = Reφ(x+iy), φ2(x, y) = Imφ(x+iy) とおいて(2)の実部と虚部をとると
u(x, y) =u(x0, y0) +a(x−x0)−b(y−y0) + (x−x0)φ1(x, y)−(y−y0)φ2(x, y), v(x, y) =v(x0, y0) +b(x−x0) +a(y−y0) + (x−x0)φ2(x, y) + (y−y0)φ1(x, y) が成立する.ここで (x, y)→(x0, y0) のとき,
|u(x, y)−√u(x0, y0)−a(x−x0) +b(y−y0)| (x−x0)2+ (y−y0)2
= |(x−x√0)φ1(x, y)−(y−y0)φ2(x, y)|
(x−x0)2+ (y−y0)2 ≤ |φ1(x, y)|+|φ2(x, y)| →0,
|v(x, y)−v(x0, y0)−b(x−x0)−a(y−y0)|
√(x−x0)2+ (y−y0)2
= |(x−x√0)φ2(x, y) + (y−y0)φ1(x, y)|
(x−x0)2+ (y−y0)2 ≤ |φ2(x, y)|+|φ1(x, y)| →0 となるから,u(x, y) と v(x, y) は (x0, y0) で全微分可能であり
ux(x0, y0) =a, uy(x0, y0) =−b, vx(x0, y0) =b, vy(x0, y0) =a よって Cauchy-Riemannの関係式が成立する.
(2) u(x, y) と v(x, y) は (x0, y0) において全微分可能でCauchy-Riemannの関係式を満 たすと仮定する.a:= ux(x0, y0) =vy(x0, y0), b:= vx(x0, y0) =−uy(x0, y0) とおくと,全 微分可能性の定義により,
u(x, y) =u(x0, y0) +a(x−x0)−b(y−y0) +ψ1(x, y), v(x, y) =v(x0, y0) +b(x−x0) +a(y−y0) +ψ2(x, y),
(x,y)→(xlim0,y0)
ψ1(x, y)
√(x−x0)2+ (y−y0)2 = 0, lim
(x,y)→(x0,y0)
ψ2(x, y)
√(x−x0)2+ (y−y0)2 = 0 が成立するような2変数の実数値関数 ψ1(x, y) と ψ2(x, y) が存在する.このとき
f(z) =u(x, y) +iv(x, y)
=u(x0, y0) +iv(x0, y0) + (a+bi){(x−x0) +i(y−y0)}+ψ1(x, y) +iψ2(x, y)
=f(z0) + (a+bi)(z−z0) +ψ1(x, y) +iψ2(x, y) ここで z= x+iy ̸= z0 のとき
φ(z) = ψ1(x, y) +iψ2(x, y) z−z0
とおくと f(z) =f(z0) + (a+bi)(z−z0) + (z−z0)φ(z) であり,z →z0 のとき
|φ(z)| = |ψ1(x, y) +iψ2(x, y)|
|z−z0| ≤ |ψ1(x, y)|
√(x−x0)2+ (y−y0)2 + |ψ2(x, y)|
√(x−x0)2+ (y−y0)2 →0 となるから,補題3.1により f(z) はz0 において複素微分可能であり,f′(z0) = a+bi = ux(x0, y0) +ivx(x0, y0) が成立する.□
系 3.1 f(z) を C=R2 の開集合 D で定義された複素関数として,
u(x, y) = Ref(x+iy), v(x, y) = Imf(x+iy)
とおく.u(x, y) と v(x, y) は D で C1級,すなわち偏導関数ux(x, y), uy(x, y), vx(x, y), vy(x, y) が存在して D で連続であるとする.このとき次の(1)と(2)は同値である.
(1) f(z) は D で正則である.
(2) 任意の (x, y) ∈D について
ux(x, y) =vy(x, y), uy(x, y) =−vx(x, y)
が成立する.(これを Cauchy-Riemannの(偏微分)方程式,略して CR方程式と いう.)
また,このとき
f′(x+iy) =ux(x, y) +ivx(x, y) が成立する.
証明: 解析学概論Iで示したように,D で C1級の関数は D の各点で全微分可能である から定理3.3から結論が従う.□
例 3.5 f(z) = z2 は C で正則で f′(z) = 2z となることは既に示した(命題3.4)が,
Cauchy-Riemannの方程式を用いて確認してみよう.(x+iy)2 = x2−y2+ 2ixy より u(x, y) = Ref(x+iy) =x2−y2, v(x, y) = Imf(x+iy) = 2xy,
ux(x, y) = 2x, uy(x, y) =−2y, vx(x, y) = 2y, vy(x, y) = 2x
であり,Cauchy-Riemannの方程式が任意の (x, y) ∈ R2 すなわち任意のz = x+iy ∈ C について成立する.よって f(z) =z2 は Cで正則であり.導関数は
f′(z) =ux(x, y) +ivx(x, y) = 2x+ 2iy = 2z となる.
例 3.6 Cで定義された複素関数 f(z) =z2 を考える.(x−iy)2= x2−y2−2ixy より u(x, y) = Ref(x+iy) =x2−y2, v(x, y) = Imf(x+iy) =−2xy,
ux(x, y) = 2x, uy(x, y) =−2y, vx(x, y) =−2y, vy(x, y) =−2x
となる.Cauchy-Riemannの方程式は 2x =−2x,−2y = 2y となり,これは(x, y) = (0,0) のときのみ成立する.従って f(z) は 0 でのみ複素微分可能であり,f′(0) = ux(0,0) +
ivx(0,0) = 0 である.(ある開集合の各点で微分可能な関数が正則関数なので,このように
1点のみで微分可能な関数は正則関数とは呼ばない.)
例 3.7 a, b, c, d を実数の定数として u(x, y) = ax+ by, v(x, y) = cx +dy, f(x +iy) = u(x, y) +iv(x, y) とおく.Cauchy-Riemannの方程式はa = d, b = −c であるから,f(z) が C で正則であるための必要十分条件はa =d かつ b = −c である.これは (x, y) によ らないから,a̸= d または b̸= −c ならば f(z) はどの点でも複素微分不能である.a= d かつ b=−c ならば
f(x+iy) =ax+by+i(−bx+ay) = (a−ib)x+ (b+ia)y = (a−ib)x+i(a−ib)y
= (a−ib)(x+iy) = (a−ib)z
であり,f(z) は1次関数である.逆に f(z) が1次関数ならば,f(z) は C で正則であり Cauchy-Riemannの方程式が成立するから a= d かつ b= −c でなければならない.
命題 3.5 指数関数 ez は複素数平面C で正則であり,その導関数は ez である.
証明: z= x+iy とすると
ez =ex(cosy+isiny) =excosy+iexsiny であるから,u(x, y) :=excosy, v(x, y) :=exsiny はC1級であり,
ux(x, y) =excosy = vy(x, y), uy(x, y) =−exsiny = −vx(x, y) が成立するから ez は Cで正則である.導関数は
(ez)′ =ux(x, y) +ivx(x, y) =excosy+iexsiny= ez となる.□
この命題と定理3.2により,f(z) がCの開集合D で正則ならばef(z) = exp(f(z)) も D で正則であり,(ef(z))′= f′(z)ef(z) が成立することがわかる.特に,cosz= 1
2(eiz+e−iz) とsinz= −i
2(eiz −e−iz) は C で正則であり,
(cosz)′ = 1
2(ieiz−ie−iz) =−sinz, (sinz)′ =−i
2(ieiz+ie−iz) = cosz が成立する.
命題 3.6 D+ = C\ {x ∈R| x ≤0} における対数関数の主値Logz は D+ で正則であり,
その導関数は 1
z である.D− =C\ {x ∈R|x ≥0} における主値についても同様である.
証明: z0 ∈D+ を固定して w0 = Logz0 とおく.z0 と D+の境界 {x ∈R| x≤0} との距 離をr とすると,r > 0 であり, ∆z ∈ C が|∆z| < r を満たせば z0+ ∆z ∈ D+ である.
このとき
∆w := Log (z0+ ∆z)−Logz0 = Log (z0+ ∆z)−w0
とおけば,z0+ ∆z= ew0+∆w と z0 =ew0 より
∆w
∆z = ∆w
ew0+∆w−z0
= ∆w
ew0+∆w−ew0
ここで Logz が連続であることから ∆z → 0 のとき ∆w → 0 であり,ew の w = w0 に おける複素微分係数が ew0 であることから,
∆zlim→0
∆w
∆z = lim
∆w→0
∆w
ew0+∆w−ew0 = 1 ew0 = 1
z0
が成立する.以上により Logz は z0 で複素微分可能で複素微分係数が 1/z0 であること が示された.□
問題 3.5 次の各々の複素関数 f(z) はどのような点で複素微分可能か?
(1) f(z) =z2+iz2 (2) f(z) = (1 +z)(1−z) (3) f(z) =zez (4) f(x+iy) = 1
2(ex+e−x) cosy+ i
2(ex−e−x) siny
問題 3.6 a, b, c を実数の定数,x, y を実数の変数としてf(x+iy) =ax2+by2+ 2icxy と おく.
(1) f(z) は 0 で複素微分可能であることを示し f′(0) を求めよ.
(2) f(z) が C で正則となるための a, b, c に対する必要十分条件を求めよ.
(3) f(z) が C で正則であるとき f(z) と f′(z) を z で表せ.
問題 3.7 (発展) Logz を D+ =C\ {x ∈R| x ≤0} における対数の主値(−π <argz <
π)とする.α を複素数の定数として f(z) = exp(αLogz) とおくとき次を示せ.
(1) n が整数のとき,任意の z∈D+ についてexp(nLogz) =zn が成立する.
(2) f(z) は D+ で正則であり f′(z) =αexp((α−1)Logz) が成立する.
(3) z ∈ D+ の極形式を z = r(cosθ+isinθ) (r > 0, −π < θ < π) とする.a を実数と するときexp(aLogz) を極形式で表せ.
問題 3.8 (発展) D+ = C\ {x ∈ R | x ≤ 0} における logz の主値を Logz として,
g(z) = 1 +z
1−z, f(z) = Logg(z) = Log1 +z
1−z とおく.また,Cの単位開円板を U ={z∈C| |z| <1} とする.
(1) g(U) ⊂D+ を示せ.
(2) f(z) は U で正則であることを示し,f′(z) を求めよ.
4 線積分とコーシーの積分定理
複素関数の曲線に沿っての積分(線積分)を定義し,正則関数の閉曲線に沿っての積分 が 0 になるというコーシーの積分定理を証明する.