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コーシー (Cauchy) の積分定理

ドキュメント内 複素関数論 (ページ 53-57)

三角形 ∆n の重心を zn = xn +iyn とする.三角形 ∆n の3頂点のx座標の最小値を an, 最大値を bn とする.また,三角形 ∆n の3頂点のy座標の最小値を cn, 最大値を dn

とする.ancn は単調増加,bndn は単調減少であり,

a1≤an < bn ≤b1, c1 ≤cn < dn ≤d1, lim

n→∞(bn−an) = lim

n→∞(dn−cn) = 0

であるから,anbn はある共通の極限値 x0 に,cndn はある共通の極限値 y0 に収 束する.z0= x0+iy0 とおく.an ≤xn ≤bn かつ cn ≤yn ≤dn であるからznz0 に収 束する.自然数 k を固定すると n k のとき zn n k であり,∆k は閉集合だか ら,zn の極限 z0 も ∆k に属する.特に z0 ⊂D であるから,f(z) は z0 で正則であ り,補題3.1より

f(z) =f(z0) +f(z0)(z−z0) + (z−z0)φ(z), lim

zz0

φ(z) = 0

を満たす複素関数 φ(z) が存在する.f(z0) +f(z0)(z−z0) は1次関数であり Cにおいて 原始関数を持つから,定理4.1により任意の n について

n

{f(z0) +f(z0)(z−z0)}dz = 0 すなわち

n

f(z)dz =

n

(z−z0)φ(z)dz が成立する.φ(z) は ∆ で連続であるから(z)| の ∆n における最大値 Mn が存在する.

n の3辺の長さの和を δn とすると(∆0 = ∆ としておく)任意の自然数 n について z0n であったから,z ∈∂n のとき |z−z0| ≤δn であり,命題4.5より

|I(∆n)|= ∫

n

f(z)dz =

n

(z−z0)φ(z)dz

≤l(n)δnMn = δn2Mn = δ204nMn

が成立する.これと(4)より

δ024nMn ≥ |I(∆n)| ≥ 4n|I(∆)| ≥0 すなわち δ20Mn ≥ |I(∆)| >0

を得る.z∈n のとき |z−zn| ≤δn 0 であることと z →z0 のとき φ(z) 0 となる ことから limn→∞Mn = 0 である.以上により I(∆) = 0 であることが示された.□ 定義 4.5 D を C の開集合とする.

(1) D が凸集合であるとは,D の任意の2点に対して,その2点を結ぶ線分が D に含 まれることである.

(2) D が(α に関して)星形であるとは,D の点 α が存在して,任意の z ∈D に対し てαz を結ぶ線分が D に含まれることである.

凸集合 D 星形集合

α z

D

注意 4.1 (1) D が凸集合ならば DD の任意の点について星形である.

(2) Dα について星形ならば,任意の z1, z2 D に対してz1, α, z2 を順に結ぶ折れ 線は D に含まれるから D は(弧状)連結である.

4.17 複素数平面 C,上半平面 H = {z C | Imz > 0},開円板 U(α;r) = {z C |

|z−α|< r},はすべて凸開集合,従って,その中の任意の点について星形開集合である.

D = C\ {x R|x 0} はたとえば 1 に関して星形である.一方 C\ {0} は星形でない.

定理 4.3 f(z) が C の星形開集合 D で正則ならば,D で正則な関数 F(z) であって F(z) =f(z) を満たすもの,すなわち f(z) の D における原始関数が存在する.

証明: Dα ∈D に関して星形であるとする.任意の z ∈D に対して Czα を始点,

z を終点とする線分として

F(z) =

Cz

f(ζ)

により D を定義域とする複素関数 F(z) を定義する.z0 = x0 + iy0 D とするとき F(z0) = f(z0) を示せばよい.D は開集合だから,ある r >0 があって U(z0;r)⊂D と なる.従って |z−z0|< r のときz0z を結ぶ線分 lzD に含まれる.α, z0, z を頂点 とする三角形 ∆ の周を ∆ (この順番に向き付ける)とすると,定理4.2より

Cz0

f(ζ)+

lz

f(ζ)dζ−

Cz

f(ζ) =

f(z)dz = 0 が成立するから lz のパラメータ表示 z = z0+t(z−z0) (0≤t≤1)より

F(z) = F(z0) +

lz

f(ζ) = F(z0) + (z−z0)

1 0

f(z0+t(z−z0))dt よって

F(z)−F(z0) z−z0

=

1 0

f(z0+t(z−z0))dt

が成立する.f(z)はz0で連続だから,任意の正の実数εに対してある正の実数δ があって z ∈D かつ|z−z0| < δ ならば|f(z)−f(z0)|< ε が成立する.従って |z−z0|< min{δ, r} ならば

F(z)−F(z0) z−z0

−f(z0) =

1 0

f(z0+t(z−z0))dt−

1 0

f(z0)dt

1

0

|f(z0+t(z−z0))−f(z0)|dt <

1

0

ε dt =ε が成立するから,F(z) は z0 で複素微分可能であり

F(z0) = lim

zz0

F(z)−F(z0) z−z0

=f(z0).

α z z0

D

Cz

Cz

0

lz

C D

定理 4.4 (星形開集合における Cauchy の積分定理) f(z) が Cの星形開集合 D で正則 ならば,D内の区分的になめらかな任意の閉曲線 C に対して

C

f(z)dz = 0

証明: 定理4.3によって D においてf(z) の原始関数F(z)が存在するから,定理4.1によ り結論を得る.□

4.18 α を複素数の定数として,f(z) = eαz

z2+ 1 とおく.r を正の実数(定数)として,

Cr を円周 |z| = r とする.0 < r <1 ならば Ir :=

Cr

eαz

z2+ 1dz = 0 が成立する.実際,

f(z) は D := C\ {i,−i} で正則である.D は星形ではないが,D= {z C| |z|< 1} は 凸集合だから星形であり D D より f(z) は D で正則である.また 0 < r < 1 より CrD に含まれる.従って Df(z) に定理4.4を適用して結論を得る.一方 r > 1 のときは Cr を含むような D の部分集合であって星形開集合であるものはとれないので,

Ir = 0 とは結論できない.

i

i 0

1

Cr D

C1 C2 D

α β

定理4.3と定理4.1から次の定理(定理4.4と同値であるが)も導かれる.

定理 4.5 f(z) を C の星形開集合 D で正則な関数とし,α, βD の2点とする.C1C2α を始点,β を終点とするD内の区分的になめらかな2つの曲線とすると

C1

f(z)dz =

C2

f(z)dz

なお,定理4.4と定理4.5はD が単連結開集合,すなわち D 内の任意の閉曲線を D内 で連続的に変形して1点にできる(D のホモトピー群が単位元のみからなる)という条 件の下で成立する.(星形開集合は単連結であるが,逆は成立しない.)

問題 4.11 次の各々の線積分について,Cauchy(コーシー)の積分定理(定理4.4)が適 用できて 0 になることが結論できるか?理由も述べること.(0 と結論できない場合は積 分の値を求める必要はない.0 になる可能性があってもよい.)

(1)

C

exp(z)dz (C は 円周 |z|= 1)

(2)

C

ez

z2+ 4dz (C は 円周 |z|= 1) (3)

C

ez

z dz (C は 円周 |z|= 1) (4)

C

1

z416dz (C は4点 1, i, 1, −i を頂点とする正方形の周) (5)

C

z

ez+ 1dz (C は4点 1−i, 1 +i, 1 +i, 1−i を頂点とする正方形の周) 問題 4.12 (発展) Cz = eit (0 ≤t≤π)でパラメータ表示される曲線(半円周)とす るとき,

C

1

z2+ 3dz の値を求めよ.(ヒント:定理4.5を用いて積分路を変える.)

5 回転数と Cauchy の積分公式

ドキュメント内 複素関数論 (ページ 53-57)