4 線積分とコーシーの積分定理
複素関数の曲線に沿っての積分(線積分)を定義し,正則関数の閉曲線に沿っての積分 が 0 になるというコーシーの積分定理を証明する.
を得る.これより α̸= 0 ならば任意の c, d∈R に対して
∫ d c
eαtdt = [1
αeαt ]d
c
= 1
α(eαd−eαc) が成立する.
命題 4.1 f(z) を C の開集合 D で定義された複素関数として,u(x, y) = Ref(x+iy), v(x, y) = Imf(x+iy) とおく.u(x, y) と v(x, y) は D で C1 級であるとする.y を固定 して f(x+iy) を実変数 x の複素数値関数とみなすと,
∂
∂xf(x+iy) = ∂
∂xu(x, y) +i ∂
∂xv(x, y) =ux(x, y) +ivx(x, y), x を固定して f(x+iy) を実変数 y の複素数値関数とみなすと,
∂
∂yf(x+iy) = ∂
∂yu(x, y) +i ∂
∂yv(x, y) =uy(x, y) +ivy(x, y) となる.このとき Cauchy-Riemannの方程式は
∂
∂xf(x+iy) +i ∂
∂yf(x+iy) = 0 と同値である.
証明: fx と fy を u と v の偏導関数を用いて表すと
∂
∂xf(x+iy) +i ∂
∂yf(x+iy) =ux(x, y) +ivx(x, y) +i{uy(x, y) +ivy(x, y)}
=ux(x, y)−vy(x, y) +i{uy(x, y) +vx(x, y)}
となり,この式の実部と虚部が共に 0となることが Cauchy-Riemannの方程式である.□ 例 4.2 αと β を複素数の定数として f(z) =αz+βz が C で正則になるための条件を考 察しよう.
∂
∂xf(x+iy) =α ∂
∂x(x+iy) +β ∂
∂x(x−iy) =α+β,
∂
∂yf(x+iy) =α ∂
∂y(x+iy) +β ∂
∂y(x−iy) =iα−iβ より
∂
∂xf(x+iy) +i ∂
∂yf(x+iy) = (α+β) + (−α+β) = 2β よって f(z) が正則となるための条件は β = 0 である.
補題 4.1 f(t) を区間 [a, b] で定義された連続な複素数値関数,h(s) を区間 [c, d] で定義 された実数値の単調増加な C1級関数でh(c) =a,h(d) =b を満たすものとすると,
∫ b a
f(t)dt=
∫ d c
f(h(s))h′(s)ds
が成立する.また,h(s) が単調減少で h(c) =b, h(d) =a を満たせば
∫ b a
f(t)dt= −
∫ d c
f(h(s))h′(s)ds が成立する.
証明: f(t) =u(t) +iv(t) (u(t), v(t) は実数値)として u(t), v(t) について置換積分の公式 を適用すればよい.□
補題 4.2 f(t) を区間 [a, b] で定義された複素数値関数とすると ∫ b
a
f(t)dt ≤
∫ b a
|f(t)|dt が成立する.
証明: α=
∫ b a
f(t)dt とおく.α= 0 ならば補題の不等式は成立するから α̸= 0 としてよ い.このとき θ= argα とおくと,α =|α|eiθ より e−iθα= |α| は実数であるから,
∫ b a
f(t)dt
=|α| = e−iθα=
∫ b a
e−iθf(t)dt= Re (∫ b
a
e−iθf(t)dt )
=
∫ b a
Re (
e−iθf(t)) dt ≤
∫ b a
e−iθf(t) dt=
∫ b a
|f(t)| dt
□
命題 4.2 f(z) を C の開集合 D で定義された正則関数,φ(t) を区間 [a, b] で定義された 微分可能関数(t = a, b では片側微分可能とする)で任意の t ∈[a, b] に対して φ(t) ∈ D をみたすものとする.このとき d
dtf(φ(t)) = f′(φ(t))φ′(t) が任意の t∈[a, b] について成 立する.
証明: u(x, y) = Ref(x+iy), v(x, y) = Imf(x+iy), φ1(t) = Reφ(t), φ2(t) = Imφ(t) と おくと合成関数の微分の公式とCauchy-Riemannの方程式より
d
dtf(φ(t)) = d
dtu(φ1(t), φ2(t)) +i d
dtv(φ1(t), φ2(t))
=ux(φ1(t), φ2(t))φ′1(t) +uy(φ1(t), φ2(t))φ′2(t) +ivx(φ1(t), φ2(t))φ′1(t) +ivy(φ1(t), φ2(t))φ′2(t)
=ux(φ1(t), φ2(t))φ′1(t)−vx(φ1(t), φ2(t))φ′2(t) +ivx(φ1(t), φ2(t))φ′1(t) +iux(φ1(t), φ2(t))φ′2(t)
={ux(φ1(t), φ2(t)) +ivx(φ1(t), φ2(t))} {φ′1(t) +iφ′2(t)}
=f′(φ(t))φ′(t)
□
例 4.3 nを自然数として f(z) =zn とおく.g(z) =zn は Cで正則で,f(z) =g(z) とな る.φ(x, y) =x−iy を実変数 x (または y)の関数とみなして命題4.2を適用すると,
∂
∂xf(x+iy) = ∂
∂xg(φ(x, y)) =g′(φ(x, y)) ∂
∂xφ(x, y) =g′(x−iy) ∂
∂x(x−iy) =g′(x−iy),
∂
∂yf(x+iy) = ∂
∂yg(φ(x, y)) =g′(φ(x, y)) ∂
∂yφ(x, y) =g′(x−iy) ∂
∂y(x−iy) =−ig′(x−iy) よって f に対する Cauchy-Riemannの方程式は
0 = ∂
∂xf(x+iy) +i ∂
∂yf(x+iy) = 2g′(x−iy) = 2n(x−iy)n−1= 2nzn−1
となる.これは n = 1 ならば成立しない.n ≥2 ならば z = 0 のときのみ成立する.以 上により f(z) =zn は n= 1 ならばどの点でも複素微分不能であり,n≥2 ならば z = 0 でのみ複素微分可能であることがわかった.
問題 4.1 α, β を複素数の定数,z = x+iy (x, y ∈R)とするとき,
f(z) =ex(αcosy+βsiny)
が C で正則となるためのα, β に対する必要十分条件を求めよ.また,そのとき f(z) と f′(z) を z で表せ.
問題 4.2 α,β, γ を複素数の定数とするとき,f(z) =αz2+βzz+γz2 が Cで正則となる ための α, β, γ に対する必要十分条件を求めよ.また,そのときf(z) と f′(z) を求めよ.
問題 4.3 t を実数の変数として F(t) = exp(eit) とおく.
(1) F′(t) を求めよ.
(2)
∫ π 0
exp(eit)eitdt の値を求めよ.