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Ⅰ  使用済み自動車処理の現状と問題点

ドキュメント内 日本の廃棄物問題への提言 (ページ 39-44)

使用済み自動車(以下ELV:End of Life Vehicle)のリサイクルは、自動車が豊富な鉄、

非鉄金属を含んでいることや、部品市場がある程度発展していることから、ビジネスとし て従来から成立しており、他の製品に比べ、回収ルートも整備され、リサイクル率も高い。

しかし、その量が毎年 500 万トンと非常に大きいことから、依然問題視されている分野で ある。さらに近年では香川県豊島の最終処分場における鉛流出の問題から、適正処理の徹 底に関して、一層の取り組みが望まれている。以下ではまず従来のELV処理におけるフロ ーを見ていくとともに、その現状を述べる。

ELVのリサイクルフローは図で表すと以下の様になっている。

図表1  ELV処理フロー

出所:『使用済み自動車リサイクル・イニシアティブの策定・公表について』通産省 及び、『豊かな環境を次の世代に』日本自動車工業会  より作成

日本の従来のシステムでは、ELV はディーラーや中古車へ有償(最終ユーザーへ料金が 支払われる)で引き取られ、その後有価物としてシュレッダー事業者まで取引されていく 状態となっており20、現在のリサイクル率は75%〜80%と言われている21

20 これはあくまでも一般的な例であり、解体業者からシュレッダー業者の間で逆有償になっていたりする場合も存 在する。 

21  『豊かな環境を次の世代に』日本自動車工業会  p.27 より 

最終ユーザー

新車ディーラー及び

中古車ディーラー 新車ディーラー及び中古車ディーラー 解体事業者 シュレッダー事業者 最終処分︵安定型︶

部品として再使用

または

素材にリサイクル 素材にリサイクル

  ・・・  物の流れ   ・・・  金の流れ

次に、フローに基づく各主体の現状を述べたい。

(1) 最終ユーザー

最終ユーザーは、上記のシステムにおいては、自らが使用した自動車を販売会社である ディーラーへ持ち込む。一般的にその際ディーラーは最終ユーザーに対して対価を支払う が、廃車手続き22には諸費用が必要になるため、ここで逆有償になるケースも存在する。

(2) 新車ディーラー及び中古車ディーラー

各ディーラーはユーザーより引き取ったELVを解体事業者へ持ち込む。ここでは解体事 業者から見てELVは資源の塊であるため、有価物として引き取られる。

なお、最終ユーザーから解体事業者へ直接持ち込まれるケースもある。

(3) 解体事業者

解体事業者は、引き取ったELVから有用な部品や、非鉄金属、バッテリーなどを抜き取 り、有用な部品は中古利用(以下リユース)、または海外へ輸出され、非鉄金属、バッテリ ーは素材としてリサイクル(以下マテリアルリサイクル)する。リユース製品やリサイク ルされた製品の販売収入が解体事業者の収入となる。

解体事業者にてリユース・マテリアルリサイクルされる 割合は自動車一台全体の中で

25%程度なっている23。また、日本の解体事業者は約5,000社と推定されている24

(4) シュレッダー事業者

シュレッダー事業者とは、主にマテリアルリサイクルを行う主体であり、具体的には、

解体事業者から引き取ってきたELVを粉々に潰すなどして、鉄、非鉄金属を分別する。可 能な限り鉄、非鉄金属を分別した後の残りは、シュレッダーダストと呼ばれる産業廃棄物 となり、最終処分場にて埋め立てされる。実際は埋立処分事業者へ処理費を支払い、引き 渡す形となる。シュレッダー事業者の収入は鉄、非鉄金属の販売によることとなる。シュ レッダーダストは解体事業者より引き取ってきたELVの25%程となっており、シュレッダ ー事業者は残りの 75%をマテリアルリサイクルしていることになる25。また、日本のシュ レッダー事業者の数は約140社と言われている26

ELVのリサイクルは上述のように、そのシステムがある程度出来上がっている。しかし、

年間500 万台とELVの量が多いことから、75%〜80%というリサイクル率をさらに上昇さ せなくてはならない。と同時に、ELV に関してはこれ以外にもさまざまな問題があり、近

22 廃車手続きを行うことで、最終ユーザーは自動車の所有権を手放すと共に、自動車税の支払い義務もなくなる。 

23  『使用済み自動車リサイクル・イニシアティブの策定、公表について』  通産省作成資料  p.Ⅰより 

24  『使用済み自動車処理技術の開発と実証に関する取り組みについて』  日本自動車工業会  資料 1 より 

25  注 5 に同じ 

26  注 4 に同じ 

年それが顕在化している。以下Ⅰ章の残りでは、そうした問題を明確にし、対策への問題 提起とする。

ELVが注目された契機は、1990年に発覚した香川県豊島のシュレッダーダストからの有 害物質による汚染問題である。同時にこのころから処分場の不足といった問題も浮上して きた。上述のように、ELV は販売事業者等を経て解体事業者、シュレッダー事業者等に渡 り、そこで解体・破砕処理される。この過程で有用部品がリユース、鉄・非鉄金属等がマテ リアルリサイクルされ、残りがシュレッダーダストとして埋め立て処分されている。使用 済み自動車の処理ルートは以上のように確立されているのだが、以下に述べるような問題 が明らかになってきている。

1.最終処分場の逼迫

2.ELVの有価物から逆有償化への変化

3.シュレッダーダストに含まれる有害物質による汚染 4.不適正処理・不法投棄

5.不明瞭な静脈産業27の実態

1.の最終処分場の逼迫という問題の背景は二点ある。まず、近年全体的に産業廃棄物 最終処分場が少なくなっていることである28。これに加えて、廃棄物処理法施行令の改正に より、1995 年4月から使用済み自動車から発生するシュレッダーダストについては、それ までの安定型ではなく管理型最終処分場で処分することが義務づけられたことである。 2 によると、安定型処分場は漸増しているのに比べ、管理型処分場は明らかに減少して いる。つまり、管理型においては、最終処分場の新規立地が難しくなっているのである。

最近ではそれがさらに顕著になってきている。

27  静脈産業とは、ELV 処理を行う産業のことであり、図表 1 においては「解体事業者」、「シュレッダー事業者」、「最 終処分」の部分を示す。 

28 『産業廃棄物の排出及び処理状況等について』によると、1996 年時点の全国の産廃最終処分場残余年数は 3.1 年となっており、首都圏ではさらに少なく、1.0 年となっている。 

図表 2  産業廃棄物最終処分場残余容量(単位:万立方メートル)

0 5000 10000 15000 20000 25000

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 安定型

管理型 合計

出所:『産業廃棄物の排出及び処理状況等について』  厚生省ホームページより

2.のELVの有価物から逆有償化への変化は、1.の最終処分場の逼迫と密接な関係が ある。従来、解体事業者やシュレッダー事業者はELVを有価物として金銭を支払って引き 取り、解体した中古部品や、マテリアルリサイクルされた鉄、非鉄金属の販売収入を通じ て利益を上げていた。しかし上記の通り、シュレッダーダストは管理型の最終処分場で処 分することが義務づけられたことで処分費用が高騰し、これまで自動車を有価物として引 き取ってきた解体事業者は、逆に処理費用として料金を取らないと適正な処理ができない という逆有償の状況になっている。以下図表2 は逆有償化した場合のフロー図である。

図表 2  逆有償化した際のELV処理フロー(現在)

最終ユーザー

新車ディーラー及び

中古車ディーラー 新車ディーラー及び中古車ディーラー 解体業者 シュレッダー業者 最終処分︵安定型︶

部品として再使用

または

素材にリサイクル 素材にリサイクル

  ・・・  物の流れ   ・・・  金の流れ

出所:図表1に同じ 3.のシュレッダーダストに含まれる有害物質の主要なものは鉛であるが、この点に関 しては自主行動計画にもあるように有害物質使用量の数値目標が明確に規定されている。

しかしながら、使用量の削減だけでなく使用済み自動車の処理プロセスにおける適切な処 理を同時に進めていく必要がある。

4.の不適正処理と不法投棄は、シュレッダーダストの管理型処分場における処分の義 務付けによる最終処分場の逼迫、それに伴う処理費用の高騰という問題が大きく関わって いる。従来、ELV は有価物として取引されてきたが、埋め立て処分にかかわる規制の強化 に伴い処分費用が上昇し、処理を依頼する側が費用を支払う逆有償化が発生し、不適正処 理、不法投棄増大の懸念が生じており、対策が必要になってきている。上記の 4 つの問題 点に関しては、通産省が使用済み自動車リサイクル・イニシアティブを策定し、それに従 い関係者の取り組みが始まっている。以下図表 3 は通産省の使用済み自動車リサイクル・

イニシアティブにおける数値目標である。

図表3  リサイクルならびに有害物質使用の数値目標

目標年 2002年以降 2015年以降 新型車(重量) リサイクル可能率90%以上

使用済み自動車(重量) リサイクル率85%以上 リサイクル率95%以上 埋立処分容量(容積) 1996年の5分の3以下 1996年の5分の1以下

目標年 2000年末までに 2005年末までに 鉛使用量(重量) 1996年の2分の1以下 1996年の3分の1以下

(参考  通産省  使用済み自動車リサイクル・イニシアティブ)

しかしながら、5.の不明瞭な静脈産業の実態ということに関しては、現状では特別な 対応がとられていない。この問題は、これらの実態を十分に把握できていないというとこ ろに問題がある。現在全国で5000社以上の解体事業者と約 140のシュレッダー事業者が存 在している。欧州における解体事業は認証制度になっているが、日本では解体事業は誰で も、どこでも、どんなやり方でもできるという状態である。つまり日本では5000社以上も の解体事業者と、約 140 社のシュレッダー事業者が組織化されていないのである。そのた め使用済み自動車が適正に処理されているかを把握することが難しくなっている。廃棄物 処理法上、排出事業者は、産業廃棄物を自らの責任において適正に処理するか、または埋 立事業者に適正に処理を委託しなければならないことになっている。しかし現状では、よ り安い処理料金といったことにのみ注目して解体事業者、シュレッダー事業者が選ばれる ことも少なくない。このような状況は、悪質な解体事業者等による不適正処理につながる ことのみならず、適正処理を行おうとする事業者の操業を困難にするといった問題にもつ ながる。さらには、本来適正な処理コストが支払われていたら選択されていたかもしれな

ドキュメント内 日本の廃棄物問題への提言 (ページ 39-44)