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胃術後合併症患者における経鼻経腸栄養の有用性についての検討

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胃術後合併症患者における経鼻経腸栄養の有用性についての検討

鳥取大学医学部 病態制御外科(主任 池口正英教授)

森本昌樹,齊藤博昭,村上裕樹,宮谷幸造,高屋誠吾,黒田博彦,松永知之,

福本陽二,尾崎知博,池口正英

The efficacy of enteral nutrition for patients who had complications

after gastrectomy for gastric cancer

Masaki M

ORIMOTO

, Hiroaki S

AITO

, Yuki M

URAKAMI

, Kozo M

IYATANI

,

Seigo T

AKAYA

, Hirohiko K

URODA

, Tomoyuki M

ATSUNAGA

, Yoji F

UKUMOTO

,

Tomohiro O

SAKI

, Masahide I

KEGUCHI

Department of Surgery, Division of Surgical Oncology, Faculty of Medicine, Tottori University, Yonago 683-8504, Japan

ABSTRACT

 When nutritional supports are needed, enteral nutrition (EN) is recommended since it is more physiologic and effective compared with parental nutrition. However, the efficacy and safety of EN remains unclear for patients who had complications after gastrectomy for gastric cancer. In the current study, 4 patients took EN and 10 patients took total parental nutrition (TPN) due to complications after gastrectomy for gastric cancer from 2012 to 2014. In the EN group, tube was placed through the nose into the small bowel using nasal endoscope and guide wire without any complications. Total calorie given in EN group was significantly higher than that in TPN group (p=0.005). The rates of increase in serum concentration of total protein and albumin in EN group was higher than those in TPN group although there was not significant difference. Furthermore, postoperative length of hospital stay in EN group was shorter than that in TPN group without significant differences. There is no complication attributed to EN while there are three catheter-related bloodstream infection in the TPN group. Our results indicate that EN is effective and safe for patients who had complications after gastrectomy for gastric cancer.

(Accepted on June 19, 2015)

Key words : complication, enteral nutrition,gastric cancer, gastrectomy,

はじめに  手術手技,デバイス,周術期管理の向上により 胃術後の各種合併症は減少しているものの,その 1~20%に縫合不全・膵液瘻・腹腔内膿瘍・肺炎 等の合併症が依然として認められている.1,2)それ らの合併症患者は長期に経口摂取困難となり,何 らかの栄養サポートが必要となることが多い.特

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に縫合不全合併症例においては,消化管の安静を 保つことや吻合部に食物が通過するのを避ける目 的に,従来中心静脈栄養が選択されることが多 かった.しかし近年,胃術後縫合不全に対して経 腸栄養を使用することでカテーテル感染等の感染 性合併症を減少させるとの報告がなされている.3)  当科においても,現在胃術後合併症患者に対し て積極的に経鼻経腸栄養を施行している.今回の 検討では胃術後の合併症のために栄養管理目的 に経鼻経腸栄養を施行した4例と,中心静脈栄養 (TPN)を施行した10例について比較・検討した. 対象および方法 〈患者背景〉  2012年2月~2014年10月までの間に胃術後合併 症に対して経鼻経腸栄養またはTPNによる栄養 投与を要した計14例を対象とした.  内訳は経鼻経腸栄養群4例(縫合不全3例,誤嚥 性肺炎1例)と,TPN群10例(縫合不全6例,膵 液瘻2例,腹腔内膿瘍2例)であった.今回の検討 は後方視的検討であり、経鼻経腸栄養あるいは TPNの選択は担当医によって行われていた。 〈栄養投与法〉  経鼻経腸栄養群においては,経鼻内視鏡下にガ イドワイヤーを介してトライツ靭帯を越えた上部 空腸に8Frの栄養チューブを留置し,ポンプを用 いて半消化態栄養剤の持続投与を行った(図1). 投与量は目標量まで漸増させた.末梢静脈栄養(以 下PPN)として脂肪乳剤,ビタミン糖加アミノ酸 液を適宜併用した.TPN群においては,鎖骨下 静脈または内頸静脈から中心静脈カテーテル(以 下CVC),もしくは上腕皮静脈より経皮的中心静 脈カテーテル(PICC)を挿入し,TPNを施行した. 投与カロリーは目標量まで漸増させた. 〈抗生剤投与〉  合併症の治療として必要な場合,経静脈もしく は経口で抗生剤の投与を行った.抗生剤の選択お よび投与期間は合併症の種類・重症度・臨床経過 を考慮し担当医が判断した. 〈比較〉  投与カロリー,抗生剤使用期間,絶食期間,経 腸栄養施行/TPN施行期間,術後在院期間,栄養 投与法施行前後の血清総蛋白・アルブミンおよび その上昇率,栄養投与法に起因する合併症の有無 について両群間で比較した. 〈統計学的分析〉  数値は平均値±標準偏差で示した.解析は StatViewJ-5.0を用いて行い,P<0.05を有意と判 断した.カテゴリー変数はフィッシャーの正確確 率検定を用いて解析し,連続変数はスチューデン 図1 胃癌にて胃切除施行後(Billroth Ⅰ法再建)の縫合不全症例に対して経鼻内 視鏡およびガイドワイヤーを使用して経鼻栄養チューブを上部空腸に挿入し た後の腹部レントゲン写真.

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トのt検定を用いて解析した. 結  果 〈患者背景〉  患者背景では両群間に差を認めなかった(表1). 一方で投与カロリーでは  経鼻経腸栄養群の1日平均投与kcalは1941 ± 372 kcalであり,TPN群の1435 ± 185 kcalと比 較して有意に多かった(p= 0.005). 〈栄養指標〉  栄養状態のマーカーとして血清総蛋白およびア ルブミン値を栄養療法施行前後で比較した.経鼻 経腸栄養群の治療前総蛋白値は5.5 ± 0.7 g/dLで あったのに対して治療施行後は6.9 ± 0.7 g/dLで あった.一方でTPN群では治療前が5.4 ± 1.1 g/ dLであったが,治療後は6.3 ± 0.5 g/dLであった. さらに血清総蛋白上昇率では経鼻経腸栄養群25 ± 13%,TPN群22 ± 27%であった(表2,3).  血清アルブミン値に関しては,経鼻経腸栄養 群の治療前血清アルブミン値は2.5 ± 0.4 g/dLで あったのに対して治療施行後は3.2 ± 0.5 g/dLで あった.一方でTPN群では治療前が2.6 ± 0.8 g/ dLであったが,治療後は2.7 ± 0.5 g/dLであった. さらに血清アルブミン上昇率では経鼻経腸栄養群 29 ± 15%,TPN群12 ± 37%であった(表2,3). 血清総蛋白およびアルブミンともに栄養療法施行 後の上昇率は有意差はないものの,経鼻経腸栄養 群のほうがTPN群に比較して高値であった. 〈臨床指標〉  抗生剤使用期間,絶食期間,栄養療法期間にお いては差は認められなかった.一方で術後在院期 間は有意差はないものの,経鼻経腸栄養群におい てTPN群に比較して短かった(表4). 〈治療関連合併症〉  経鼻経腸栄養群とTPN群において,栄養チュー ブおよびCVC留置手技によるトラブルは無かっ た.一方でTPN群では3件にカテーテル感染が認 められた.カテーテル感染と判断された患者は CVCを抜去され,抗生剤による追加の治療がな された. 表1 患者背景   経鼻経腸栄養群(n=4) (n=10)TPN群 P値 人数 男/女 3/1 9/1 0.506 年齢(歳) 74±7.5 70.8±10 0.578 術前BMI 20.1±2.7 22.2±2.5 0.205 術式  胃全摘 0 4  幽門側胃切除 2 4  噴門側胃切除 2 1  その他 0 1 根治度 >0.999  R0 4 9  ≧R1 0 1 pStage >0.999  Ⅰ+Ⅱ 4 8  Ⅲ+ Ⅳ 0 2 再手術例 0 4 0.251 合併症発症日(術後) 5.3±1.7 6.2±2.8 0.547 既往症  高血圧 4 5 0.221  糖尿病 1 2 >0.999  脳血管障害 1 3 >0.999

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考  察  近年,栄養投与を必要とする病態において TPNと比較し経腸栄養の優位性が指摘されてい る.消化管を積極的に使用することで腸管免疫系 の機能を維持し,腸粘膜の恒常性が維持されると 考えられている.4~6)日本静脈経腸栄養学会編集の 静脈経腸栄養ガイドラインにおいても,消化管が 機能している場合は,経腸栄養を選択することが 推奨されている.7)  一方で消化管術後の合併症,特に縫合不全に おいては消化管の安静を保つことや吻合部に食 物が通過するのを避ける目的に,従来TPNが選 択されることが一般的であった.しかしながら, TPNでは重篤なカテーテル挿入時の合併症に加 えて,感染の危険性がある.米国の集中治療領域 では年間8万人がTPNによるカテーテル感染を発 症し,そのうち2万8000人が死亡していると報告 されている.1日当たり1.8-5.2人/1000人のCVC留 置患者がカテーテル感染を発症するとされる.8) CVC留置患者の28.6%にカテーテル感染を発症し たという報告もある.9)このようにCVC留置によ るカテーテル感染は比較的高頻度で認められ,追 加の抗生剤治療を要したり,術後死亡の危険性を 高めることが危惧される.実際に今回の検討にお いて,TPN群10例中3例(30.0%)にカテーテル 表2 栄養指標 表3 栄養指標の増減     施行前 p値 施行後 p値 総蛋白 (g/dL) 経鼻経腸栄養群 (n=4) 5.5±0.7 0.804 6.9±0.7 0.104 TPN群(n=10) 5.4±1.1 6.3±0.5 アルブミン (g/dL) 経鼻経腸栄養群 (n=4) 2.5±0.4 0.8 3.2±0.5 0.152 TPN群(n=10) 2.6±0.8 2.7±0.5     増減(%) p値 総蛋白上昇率 (%) 経鼻経腸栄養群(n=4) 25±13 0.843 TPN群(n=10) 22±27 アルブミン 上昇率(%) 経鼻経腸栄養群(n=4) 29±15 0.4 TPN群(n=10) 12±37 表4 臨床指標   経鼻経腸栄養群(n=4) (n=10)TPN群 p値 抗生剤使用期間(日) 18±13.3 19.4±9.9 0.84 絶食期間(日) 24±13.1 23.2±10.9 0.909 栄養療法実施期間(日) CVC留置期間(日) 24.5±19.5 25.4±13.2 0.921 術後在院期間(日) 49.5±12.7 62.4±26.4 0.427

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感染を認め,追加の治療を要した.  そこで近年,縫合不全症例などにおいても経腸 栄養が注目され,施行されることが徐々に増えて きている.問題点としてはカテーテルを安全に吻 合部よりも肛門側に留置することであるが,近年 の経鼻内視鏡の発達やガイドワイヤー操作の習熟 により安全に留置が可能となってきている.実際 に今回の症例では,すべての症例に特に問題なく カテーテルが留置され,さらに治療関連合併症を 認めず,安全に施行が可能であった.  投与カロリーについては経鼻経腸栄養群で多い 結果となったが,これは各群・各患者で目標と する投与カロリーの差違に加え,経鼻経腸栄養 では末梢輸液製剤を併用していたことが影響して いると考えられた.栄養指標については,血清 総蛋白値,アルブミン値およびそれらの治療後の 上昇率も含め両群間で有意差を認めなかったもの の,TPN群と比較して経鼻経腸栄養群で高値で あった.また臨床パラメーターである抗生剤使用 期間,術後入院期間においても有意差はないもの の,TPN群と比較して経鼻経腸栄養群で短かっ た.以上から経鼻経腸栄養によりTPNと同等以 上の栄養投与が可能であり,結果として経鼻経腸 栄養法は術後合併症の早期回復を期待しうる栄養 管理法であると考える.以上の結果から,胃術後 合併症症例で比較的長期の栄養管理が必要な場合 は,仮に縫合不全症例であっても,常に経鼻経腸 栄養の導入を念頭に置いた栄養管理の立案が極め て重要と考えられた.一方で、今回の検討は後方 視的検討であり,症例の偏りも認められる.実際 に今回の検討では経鼻経腸栄養群には再手術例は 認められないものの,TPN群では4例に認められ ており,TPN群により重症の患者が含まれてい た可能性がある.このことが今回の結果に影響を 与えた可能性は否定できない.したがって,胃術 後合併症症例に対する経鼻経腸栄養の有用性を示 すための前方視的検討が早期に行われることが必 要であると考えられた. 結  語  胃術後合併症患者に対する経鼻経腸栄養の有用 性について検討を行った.  経鼻経腸栄養は胃術後であっても安全に施行で き,TPNと同等以上の栄養投与が可能で,有用な 栄養管理法と考えられた. 文  献

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参照

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