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学習者の体系的法意識の形成を図る法教育教材の開発―授業実践・教科専門・教科教育担当者の協働を通して―-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学教育実践総合研究(Bull. Educ. Res. Teach. Develop. Kagawa Univ.),36:1-14,2018

学習者の体系的法意識の形成を図る法教育教材の開発

―授業実践・教科専門・教科教育担当者の協働を通して―

鈴木 正行 ・ 髙倉 良一 ・ 守田 逸人 ・ 小野 智史

* (社会科教育) (社会科教育) (社会科教育) (附属高松中学校)

池田 良

・ 大和田 俊

**

・ 山城 貴彦

** (附属高松中学校) (附属坂出中学校) (附属坂出中学校) 760-8522 高松市幸町1-1 香川大学教育学部        *761-8082 高松市鹿角町394 香川大学教育学部附属高松中学校  **762-0037 坂出市青葉町1-7 香川大学教育学部附属坂出中学校

Development of Teaching Materials for Systematic Formation of

Law Consciousness of Learner: Through Collaboration by Persons in

Charge of Teaching Practice, Social Science, Social Studies Education

Masayuki Suzuki, Ryoichi Takakura, Hayato Morita, Tomofumi Ono

,

Ryo Ikeda

, Syun Ohwada

**

and Takahiko Yamashiro

**

Faculty of Education, Kagawa University, 1-1 Saiwai-cho, Takamatsu 760-8522

Takamatsu Junior High School Attached to the Faculty of Education, Kagawa University, 394 Kanotsuno-cho, Takamatsu 761-8082 **Sakaide Junior High School Attached to the Faculty of Education, Kagawa University, 1-7 Aoba-cho, Sakaide 762-0037

要 旨 本研究では,古代・中世から現代に至る法や政策,裁判等を題材として,学習者の 体系的法意識の形成を促進するための中学校社会科の教材開発を行うことをめざした。研究 の推進にあたり,授業実践,教科専門(法学,歴史学),社会科教育の各担当者の協働によ る教材開発を行った。これにより,歴史学習と公民学習を繋ぐ法教育教材を開発した。 キーワード 法教育 法意識 協働 歴史学習 教材開発

Ⅰ.はじめに

 本研究は,古代・中世から現代に至る法や政 策,裁判等を題材として,学習者の体系的法意 識の形成を促進するための中学校社会科の教材 開発を行うことを目的とする。  選挙権が18歳以上に広げられたことにより, ほとんどの若者が,実社会に出る前に選挙権を 行使できることとなった。これにより,学校教 育を通じて主権者を育てることの重要性が,こ れまで以上に高まっている。とりわけ,主権者 教育の基盤となる学習者の法意識の形成は,急 務の課題である。民主主義は,国民の代表によ る法の制定と,法の遵守によって成り立つ制度 であり,主権者教育・法教育の失敗は社会に深 刻な影響をもたらす。法学者の土井真一は,法 教育を通じて育成されるべき資質・能力(法的 リテラシー)として,①公正に事実を認識し, 問題を多面的に考察する能力,②自分の意見を 明確に述べ,他人の主張を公平に理解しようと する姿勢・能力,③多様な意見を調整し,合意 を形成したり,公平な第三者として判断を行っ たりする能力,④上記を支える根源的な資質と しての自尊感情及び他者に対する共感,という 4つを挙げている(1)。こうした法的資質・能

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力を尊重し,社会生活の行動規範とする意識 が,法意識といえよう。加えて,急激に変化し 複雑化する現代社会においては,法に基づいて ものごとを考え,判断し,行動する姿勢ととも に,法を所与のものとして受け止めるのではな く,現行の法や制度を改善したり,新たに構想 し制定したりする主体的な法意識の形成が求め られるのである。  これまで義務教育段階における法教育は,主 に中学校社会科公民的分野が担ってきた。だが, その多くは制度やしくみの理解に重点が置かれ, 法意識の形成を直接の目標とするものではな かった。また,歴史的分野においては,教材と なる歴史上の法や掟・しきたりは,時の為政者 による政策や制度を認識するための史料として 位置づけられており,当時の人々の法意識につ いては,ほとんど注目されてこなかった。歴史 学習では,法の内容的理解とともに,個々の法 の存在意義や社会的影響に関する学習を通して, (1)社会を構造的に捉える,(2)制度を批判的 に考察する,(3)法合理的に捉える,(4)事象 を道義的・倫理的に検討する,(5)普遍性と状 況依存性を考える,などの社会的見方・考え方を 育み,法意識の形成をめざすことが求められる。  さて,学習者の法意識の体系的な形成を図る には,前近代と近現代の法観念・法意識の相違 と共通性に焦点を当てながら,歴史学習と公民 学習とを有機的に結びつける必要がある。だ が,このような課題に応え得る授業開発を行う には,授業者個人の力では難しい。そこで,本 研究に取り組むにあたり,教科専門(歴史学・ 法学),教科教育(社会科教育),授業実践の担 当者が協働で,法教育を基軸とする教材開発及 び授業実践に取り組むこととした。  なお,本稿では,前近代と近現代の間にある 法意識・法観念の相違を大枠としながら,(ア) 古代土地制度における法と国家体制,(イ)政 治の転換期における法と政治判断,(ウ)憲法 における戦前と戦後の断絶性と連続性,(エ) 裁判員制度における公正さと市民感覚,という 4つの教材開発の事例を提示する。研究途上で はあるが,その方向性を示したい。

Ⅱ.歴史学習と法教育

 歴史学習における法教育については,これ までにも多くの研究がなされている。例えば, R.H.ラトクリフらによって開発された歴史教育 教材『Vital Issues of the Constitution』を分析 した溝口和宏は,それが「表現の自由」等の実 践的原理を合衆国憲法から組織的に取り出し, 過去の判例をもとに,普遍的原理の適用範囲に ついて再検討させるものであることを明らかに した(2)  また,橋本康弘は,歴史アプローチによる 法関連教育プロジェクト『Adventures in Law and History』を分析し,それがどの社会のど の法制度にも存在する「ルールと法」・「財産権」・ 「権威」等を構成原理とする,法制度の成立・ 再構築過程の学習であることを指摘した。そし て,過去の法制度の成立と形成に関する学習 は,子どもたちにとって,現代の法制度を相対 化し,法制度を作り替えていく主体が市民であ ることを理解するのに有効であるとした(3)  日本の歴史学習における法教育の授業実践に ついては,髙橋壮臣が,①過去の法制度(法規 範)を理解する授業,②法(法律)を通して時 代の特色をつかむ授業,③法(法律)を通して 時代の変化をつかむ授業,④法(法律)の変化 から現在の社会を反省する授業,⑤法的な見 方・考え方と時代の特色をつかむ授業,という 5つに類型化している。中学校社会科を担当す る現場教師である髙橋は,「社会科歴史におけ る法教育では,歴史的事象を法的な見方や考 え方を育成するための素材として扱いながら, 歴史そのものの理解も深めることが求められ る」とし,中学校歴史的分野の単元「権力と中 世」を開発した(4)。髙橋の実践は,21時間に 及ぶ大単元を組織し,平安末・院政期から織豊 政権期に至る「権力」の統合と分権に焦点をあ て,②と③を組み合わせながら⑤に迫るもので ある。この実践については,「権力」と「権威」 に着目する中で,法が社会状況を後追いすると いう中世の時代像に,生徒たちがどこまで迫る ことができるかが,授業の鍵となろう。  現代に生きる私たちは,法のもつ普遍性を受

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け入れ,それを規範として判断し,行動してい る。もちろん個々の法律や裁判を見れば,それ らが必ずしも全ての場面において適用されてい るとは言い難いが,法が状況の外側にあって, 秩序を形成するための基準となっていることは 確かであろう。しかし,前近代の社会において は,律令国家体制が成立し統制的支配力を持っ た一時期を除き,法は人々にとって普遍的なも のではなく,状況に大きく依存するものであっ たと考えられる。江戸幕府による公事方御定書 の場合も,あくまでも判決を導くための内規で あり,広く一般に公開されたものではなかっ た。とりわけ中世の訴訟においては,紛争当事 者が状況に応じて,自己に有利な法や先例を見 つけ出し,自己の主張の根拠とすることがほと んどであった。日本の社会において,国家レベ ルで法律が明示され,法に基づく秩序形成がな されるようになるのは,明治維新以降である。  このような,前近代と近代以降における法の 在り方や法意識の違いについて,中学校の歴史 学習ではほとんど意識化されてこなかった(5) そのため,教科書や資料集に掲載された法は, 当時の人々に周知されていたものとして授業の 中で扱われてきたのである。このことに関して 奥山研司は,前近代の人々が現代人とは違った 法観念・法意識の下で生活していたということ を学ぶことにより,自らの日常的な法観念・法 意識を批判的に振り返ることができるとして, 歴史学習が法を理解し,法を反省するのにふさ わしい学習方法であると述べている(6)。その 上で,分国法の喧嘩両成敗を基点として,江戸 時代の敵討ち・大岡裁き,明治政府による敵討 ちの禁止,現代の正当防衛など,中世から現代 に至る時間を大胆に飛び越えながら,法観念・ 法文化の変化を追う中学校歴史的分野の単元 「ケンカ両成敗って正しい?」を開発・提案した。 この単元案は,歴史学習における一定のまとま りをもつ単元開発の事例として参考になるが, 数時間の授業の中で時代が交叉しているため, 通史を初めて学ぶ中学生にとって,各時代の特 色と法観念・法文化の変化の関連を把握するに は難しく,混乱が生じることも予想される。  日本の中学校の歴史学習は,政権の盛衰や政 策等の政治的内容を軸として,経済,社会,文 化的領域が時代ごとに配列されており,普遍的 原理に基づく法制度の成立・再構築に特化した 構成とはなっておらず,アメリカの歴史学習に 比べて,法教育へのアプローチは難しい。した がって,実践上は,各時代に特徴的な法を取り 上げ,法学習を通史学習の中に位置づけつつ, 学習全体を通して法意識の体系的形成を図るこ とが現実的である。このような事情を前提とし て,次章以下では,前近代の法と近現代の法と を大きく分ける観点から,歴史学習と公民学習 を繋ぐ教材開発の事例を示すこととする。

Ⅲ.前近代社会の法

1.墾田永年私財法の歴史的位置 (1)教材としての墾田永年私財法  法を通して社会を構造的に捉える力は,歴史 教育で養うべき重要な力の一つである。社会の 変化を構造的に捉えるには,土地制度史の研究 成果が有効である。とくに大化の改新と公地公 民制,律令制の成立,墾田永年私財法,太閤検 地等は,時代の画期となる歴史事象として重視 され,学説上の論争を生んできた。このうち墾 田永年私財法が律令国家体制に及ぼした影響に 関しては,相反する評価がなされている。  中国の均田法を分析した吉田孝は,墾田永年 私財法を公地公民制が解体してゆく画期として 位置づける従来の説に対し,日本の班田法の手 本となった中国の均田法には,もとから墾田永 年私財法に相当する内容が含まれていたことを 指摘し,同法は日本の律令国家体制を補完する ものだとした(図1)。吉田は,「たしかに墾田 は,永年私財田としては既存の田制と対立する が,開墾予定地の占定手続きやその有効期間を 明確にしたことは,田地に対する支配体制の深 化であり,また開発された田は輸租田として田 図に登録されたのであるから,その面でも田地 に対する支配体制は後退していない。しかも開 墾予定地の占定面積には位階に応じた制限を設 け,墾田所有を律令官僚の身分序列に整序しよ うとしているのであるから,隋唐律令的な律令

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体制を基準にすれば,永年私財法はまさに律令 制的な制度であったとも言えるであろう。墾田 永年私財法は,日本の班田制に欠如していた要 素を補完したものと考えられる。」と結論づけ ている(7)  中学校の歴史教育では,律令国家体制の形成 と衰退について,概ね次のような図式で扱われ てきた。①聖徳太子(厩戸皇子)は,十七条憲 法や官位十二階の制定,遣隋使や留学生の派遣 などの政策によって,豪族の権力を弱めて天皇 中心の国づくりをめざそうとした。→②聖徳太 子の死後,中大兄皇子と中臣鎌足らが蘇我氏を 滅ぼして大化の改新を行い,皇族や豪族が支配 していた土地と人民を国家が直接支配する公地 公民制をしいた。→③白村江の戦いに敗れた中 大兄皇子は,唐・新羅の襲来に備えて防備を固 めるとともに,戸籍・計帳を作らせて人民を掌 握する政策を行った。→④壬申の乱の後,天武 天皇・持統天皇は,律令制など唐の政治のしく みを導入し,天皇を中心とする中央集権的国家 体制の基礎を築いた。→⑤大宝律令の制定に よって,天皇を中心とする中央集権国家のしく みが整った。→⑥口分田の不足等に対処するた めに墾田永年私財法が制定され,開墾地の私有 が認められたことにより,大宝律令から40年余 りで律令体制が崩れ始めた。吉田の説は,この ような図式に則った指導に,根本から転換を迫 るものである。  ただし,吉田の説に対しては,同じく均田法 を分析した何東により,「均田法は,私有を積 極的に否定することによって,大土地所有を制 限する政策であることが明らかである。一方, 日本の墾田永年私財法は,墾田収公制という土 地に対する律令国家の制約が撤廃されることに よって,墾田が律令田制の規制外となる。田令 集解賃租条の朱説に『私田聴永売也』とあるよ うに,私財法以後私田(墾田)の永売が法的に 禁止されなかったのである。売買,相伝を可能 にすること等の点から考えれば,永年私財法は 私的土地所有形成の条件を創出し,律令田制構 造を大きく変化させ,律令的国家土地所有の基 盤を崩したと評価することができる。」とする 批判もなされている(8)  現在,歴史学界では,墾田永年私財法によっ て,中央の貴族や寺社が地方へ進出し,現地で の開発は在地首長の影響下にある共同体が担う こととなり,実質的には律令国家による土地把 握が深化したと考えられており,吉田の説がほ ぼ定説となっている。中学校歴史的分野の教科 書では,律令制の補完として評価するもの,中 国の律令制とのずれを修正・補足し,日本の実 態に合わせるための工夫として制定されたとす るもの,公地公民制の崩れを指摘するもの,歴 史的評価を記述しないものなど様々である。法 と国家体制の関係する事象を題材とし,学説の 構築と脱構築の過程を辿る学習は,学習者に社 会を構造的に捉える力を養うのに有効である。  そこで鈴木は,墾田永年私財法の歴史的評価 に着目し,以下のような教材開発を行った。 (2)授業の構想  古代の土地制度については,不明な点が多 い。班田収授法における口分田も公田ではな く,私田(民田)として認識されていたとされ, 理念と実態のズレが明らかになるにつれ,従 来の定説であった「私地私民から公地公民へ」 という図式の崩れが指摘されている(9)。だが, 中学校の歴史学習の場合,歴史事象の複雑さも 踏まえつつ,一方で理解のしやすい単純化・図 式化も図らなければならないというジレンマが ある。また,教師が単に学説の違いを解説すれ ばよいわけではない。学説の対立についての単 なる解説に陥らず,生徒の学習の主体性を確保 しつつ,思考力の発達を図る授業開発を行うこ とはかなりの難題である。  本授業案では,学習課題を「墾田永年私財 法は,日本の律令国家の体制にとって薬か毒 図1 唐の均田法と日本の班田法の対応関係 (吉田孝『日本の誕生』岩波書店,1997年,p.151より引用) 〔唐の均田法〕      〔日本の班田法〕   口分田         口分田   永業田       (墾田永年私財法)

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か?」として,生徒による課題解決を主体とし た学習過程を考案した(資料1)。中央貴族・ 寺社勢力の地方進出,在地首長の力の増大,律 令国家による土地把握の深化などに関する資料 をもとに選択・判断させるとともに,「私地私 民→公地公民→公地公民制の補完・崩れ」を表 す模式図の作成を通して国家体制及び社会像の イメージ化を図った。6世紀末から8世紀に至 <資料1>      社会科学習指導案 指導者 鈴木 正行  1.単元名  律令国家の成立と崩れ 2.本時の目標   墾田永年私財法が律令国家体制を崩すものか,あるいは補完するものか,同法の歴史的位置づけを めぐる推論と探究を通して,律令国家体制の崩れから荘園制の成立に向かう過程を説明できる。 3.指導過程 学習内容 生徒の活動 教師の働きかけ (1)聖武天皇の政策 ○東大寺の建設と大仏建立。 ○国分寺・国分尼寺の建設。 ○仏教の力で国を守る(鎮護国家)。 ○墾田永年私財法の制定。 ○大仏建立の詔と墾田永年私財法の制 定が並行して進められたことに気づ かせる。 (2)墾田永年私財法制 定の理由 (3)個人での検証 (4)グループでの討論 と判断 (5)全体討論 (6)律令体制から荘園 制へ (7)振り返り ○墾田永年私財法が制定された理由を考 える。  ・風水害などによる耕地の減少。  ・口分田の不足。  ・班田農民の逃亡。  ・税収の減少。  ・皇族,貴族,寺社,豪族の要望。  ・公地公民制の限界。 ①薬か毒か予想する。 ②教科書や資料により調べる。 ③調べた各事象が律令国家体制に与えた 影響の大きさを推察し,結論に向けて の文脈をつくり判断する。 ④自分の結論を模式図を用いて説明でき るようにする。 ○グループで話し合い,薬か毒かグルー プとしての意見を決める。 ○全体の場で,グループの決定につい て,理由を挙げて発表する。発表に対 して,全体で討論する。 ○開墾と課税を通じて,国家の土地への 関与が強まったことに気づく。 ○貴族や寺社が,律令制度に依拠しなが ら,私有地(のちの荘園)を拡大して 勢力を強めることにより,天皇を中心 とする中央集権国家の体制が崩れて いったことに気づく。 ○本時を振り返り,墾田永年私財法が律 令国家体制に与えた影響について,自 分の考えを記述する。   薬:律令国家体制が強まる。   毒:律令国家体制が崩れる。 ○推論と知識の生成過程を体験させる。 <着眼点>  ・墾田永年私財法を制定した理由は 何か。  ・公地公民制はどうなったか。  ・朝廷(天皇)による土地への支配 は強まるか,弱まるか。  ・税収(租・庸・調など)は増えるか。  ・耕地の減少に歯止めがかかるか。  ・皇族・貴族・寺社の勢力を抑えら れるか。  ・三世一身法と比べてどうか。  ・唐の均田制と日本の班田制との対 応関係はどうか。 ○理由を挙げて話し合わせる。 ○グループで決まらなかった場合は, 話し合いの状況について発表する。 ○どちらかに偏った場合には,授業者 が反対の立場から応答する。 ○全体での討論は,個人の意見に基づ いて発表させる。 ○意見が変わった生徒がいれば,その 理由を発表させる。 ○律令制度により実現しようとした天 皇を中心とする中央集権国家が,ど のように変わっていくか予想させ る。 ○墾田永年私財法に関する解釈の違い により,律令国家体制に対する見方 が大きく異なることを説明する。 〇相異なる二つの学説を検討したこ  とによる,自分の考えの深まりや  変容に着目させる。 学習課題:墾田永年私財法は,日本の律令国家の体制にとって薬か毒か?

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る古代国家の成立過程において,私地私民から 公地公民という図式によって学習を展開する ことは,論理的に墾田永年私財法が律令国家 体制を崩したとする意見を持ちやすい。授業 においても,多数の生徒が毒(律令体制を崩 す)という見解を採った(10)。そこで,双方の 意見を述べさせるとともに,かつては毒と考え られていたものが,現在では薬(律令体制を強 化)とする見解の方が有力視されていることを 紹介し,その論拠を説明した。こうして,生徒 の認識を揺さぶりながら,法と国家体制の関係 を構造的に捉えさせることをめざした。ただ し,実践は前段階の指導を含めて2時間という 時間的制約のある中で行ったため,十分な成果 を収めるには至らなかった。この結果を受け止 め,今後の単元構成の確立に生かしたい。 2.武家諸法度と忠臣蔵 (1)授業の構想  2015年,日本は戦後70年を迎えた。新聞やテ レビなどの各種メディアでは,様々な特集が組 まれ,70年前の戦争の惨禍を確認した。私たち は,これからも戦争のない平和な時代が続くこ とを望んでいる。その一方で,9月には安全保 障関連法案が成立するなど,我が国の安全保障 体制は大きな転換期を迎えている。薄れつつあ る戦争の記憶の中で,国民には,安全保障の在 り方が問われている。  我が国の歴史に目を向けると,約200年以上 も大きな戦乱が起こらなかった時代がある。 江戸時代である。この時代は,「徳川の平和」 (Pax Tokugawana)とも表現され,世界史上 でもまれな「平和」な時代であったとされてい る(11)。江戸時代の前近代的な統治体制や領民 統制,身分制にもとづく社会の在り方,村社会 における生命の不安定性等を鑑みると,現代人 の考える平和とは隔たりがある。しかし,この まれな「平和」の時代を自国の歴史に持ってい ることは,私たち日本人にとってこの上ない文 化遺産ともなっている。  では,「徳川の平和」は,どのようにして実 現されたのか。従来は,江戸開幕から第3代将 軍家光に至る,江戸時代初期の統一的枠組みの 構築が重視されていた。しかし,武断政治の限 界が見え始めた第4代将軍家綱の時期に,文治 政治への転換が図られ,第5代将軍綱吉の時期 に,「徳川の平和」いわゆる近世社会が確立し たと考えられる。この時期には,いわゆる「生 類憐みの令」,全国規模の「鉄砲改め」等が実 施され,中世の気風が改められていった。そし て,武家諸法度第1条の改定がなされ,幕府の 支配論理を「武力」から「思想」へと転換させ た。綱吉による支配論理の転換は,中世社会の 武力による自力救済からの決別であり,思想に よる公権力の一元支配(近世社会)を確立させ ていくことにつながった。  赤穂事件は,こうした支配論理の転換期に起 こった。主君への忠義を果たした四十七士をど う裁くのか。これは,彼らの行動を幕府が推奨 していた忠義として認めるか,それとも徒党を 組んだ暴動として処罰するのか,すなわち自力 救済(中世)と公儀の法(近世)の分水嶺となっ た選択・判断であった。  この点に着目し,大和田は単元「忠臣蔵裁判 ~近世確立の物語~」を開発・実践した(資料 2)(12)。授業では,浪士の処分方法について, 綱吉によって改正された武家諸法度第1条(「文 武弓馬の道,専ら相嗜むべき事」→「文武忠孝 を励まし,礼儀を正すべき事」)の「忠孝」と, 第5条「新儀(謀反)を企て,徒党を結び,誓 約を成し,私的な関所,新法の津留をする事は 禁止する」の「私闘の禁止」のどちらを優先す るかを学習課題として,生徒たちに選択・判断 させた(13)。武家諸法度の相対立する条文の適用 を検討させる活動を通して,武断政治から文治 政治への政策転換に関する理解の深化を図った。 (2)授業実践より  実践に先立ち,附属坂出中学校第2学年2組 (男子20名,女子20名)を対象にアンケート調 査を行った。歴史を学ぶことが好きな生徒は30 名と多いものの,その一方で歴史を学ぶことに 意味や価値を感じないと答えた生徒が11名もい た。意味や価値を感じない理由としては,「将 来や生活に役立ちそうにない(6名)」,「今と

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<資料2>      社会科学習指導案 指導者 大和田 俊 1.単元名   忠臣蔵裁判~近世確立の物語~ 2.本単元の目標  <本単元で生まれる「ものがたり」>   赤穂事件に対する徳川綱吉の決断について,特に公権力の確立と自力救済の否定という観点から語 り合うことを通して,幕府の裁定が近世社会の確立に与えた影響について気づいていく。さらに,綱 吉の決断に対する新たな気づきから,自己に引きつけて為政者の決断の重みを実感したり,近世と現 代日本を結びつけて語り直したりすることで,歴史に対する新たな見方やおもしろさに気づく。 3.単元構成(全8時間) 時間 学習内容と 学習課題(中心の問い) 1 家庭学習 2 3 4 5 6・7 8 本時 家庭学習 ・戦後70年をむかえた現代日本と「徳川の平和」を比較し,その長さを実感する。 ・中世や戦国時代の資料をもとに,江戸時代が日本の治安文化の形成にはたした影響を考える。 今から130年後(西暦2146年)まで,日本は戦争しない国であり続けられるか? 二百年以上続いた『徳川の平和』は,どのようにして実現されたのか? ・石高制,幕藩制,身分制,鎖国制などから江戸時代初期における統一的枠組みの構築が「徳川 の平和」にはたした役割を考える。 ・島原・天草一揆や由井正雪の乱にふれ,江戸幕府開幕以降も決して安定していなかったことに 気づく一方で,貨幣経済の起こりによる元禄期の諸産業の発達や経済成長をそれと対比させる ことで,「徳川の平和」にとっての元禄期に着目する。 どの将軍の時に,『徳川の平和』が確立したのか? ・5代将軍綱吉が行った政策(「生類憐みの令」「鉄砲改め」や武家諸法度第1条の改訂など)を 前の時代の社会状況と比較しながら考え,文治政治への支配論理の転換が幕藩体制の維持には たした役割に気づく。 元禄期の将軍,徳川綱吉がめざした世の中とは? ・実際の『忠臣蔵』(2005年・テレビ朝日)の映像をダイジェスト形式で視聴し,赤穂事件の概 略と綱吉の選択を知り,自分なら四十七士をどう裁くか選択・判断する。 元禄に起きた赤穂事件!あなたは,四十七士を助命にするか?厳罰にするか? ・『葉隠』を通しての「武士道」から,武士身分の特権としての武力は,どのような形で制約され, あるいは発揮されるべきと考えられていたかを理解する。 ・喧嘩両成敗の考え方とそれが採用された事例や殿中刃傷の先例の検討を通して,松の廊下での 刃傷事件についての自分なりの見解を示す。 ・仇討ちの諸相をもとに,事件が仇討ちとして成立するのか,自分なりの見解を示す。また,当 時の人々が仇討ちとした理由を考え,世論では忠義が重んじられ,評価されたことを理解す る。 ・武家諸法度第5条では,徒党を組んだ暴動が禁じられており,違反した者は厳罰に処されるこ とを理解する。 ・四十七士の行動を忠義をはたした行動とするか,徒党を組んだ暴動とするかについて語り合う ことを通して,公権力の確立と自力救済の否定のジレンマに気づかせ,綱吉の裁きが近世の確 立に与えた影響を考える。 ・近世の確立を自己に引きつけて語り直し,歴史を学ぶ意味や価値を物語る。 武家諸法度第1条と第5条,どちらを優先すべきか? のつながりが分からない(3名)」等であった。 彼らは,過去にあった出来事が,現代の生活や 文化を形づくっている,ということへの実感を 持てないでいた。また,「二百年以上の『徳川 の平和』が実現したのはなぜか?」という問い に対しては,「鎖国をしていたから」(14名), 「大名配置や参勤交代」(10名),「幕府の強い勢 力,厳しい支配と処罰」(7名),「武家諸法度 などの法律や制度の整備(5名)」という理由 を挙げており,大半の生徒が初期における統一 政策の枠組みから考えていた。このような実態 を踏まえ,実践では,赤穂事件における武家諸

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法度の適用の方法に着目させ,綱吉による幕府 政治の方針転換の意義について考察させた。  授業では,四十七士の行動について,忠義を はたした行動とするか,徒党を組んだ暴動とす るかを語り合う活動を通して,生徒たちが公権 力の確立と自力救済の否定のジレンマに気づ き,綱吉の裁きが近世の確立に与えた影響を捉 えるとともに,歴史を学ぶ意味や価値を物語る 姿が見られた。

Ⅲ.近現代の法

1.日本国憲法と大日本帝国憲法 (1)憲法における断絶性と連続性  歴史の変革期における断絶性と連続性の視点 は,その後の社会をどのように捉え意味づける かという問題と深く関わっている。戦前と戦後 の断絶性のみに目がいけば,戦後社会の中に潜 む危険性に無自覚となる。一方,連続性を強調 しすぎれば,戦後改革の意義を見失いかねない こととなる。現在使用されている中学校歴史的 分野の教科書のほとんどが,戦前と戦後の連続 性について言及しておらず,敗戦を境に日本が 新しく生まれ変わったという観点からの記述が 中心であり,結果的に断絶性が強調された歴史 像が描かれることとなっている。確かに,敗戦 をきっかけとして日本の社会が大きく変わった ことは事実である。しかし,新旧憲法の構造的 共通性や日本社会の共同体規制の存在など,戦 4.本時の目標   ・ 綱吉の裁きから,「近世」の確立に対する認識の変容を,特に公権力の確立と自力救済の否定とい う観点から自分の言葉で表現することができる。   ・ 綱吉の裁きに対する新たな気づきから,決断の重みを自己に引きつけて実感したり,近世と現代 日本を結びつけて語り直したりすることで,歴史を学ぶ意味や価値を物語ることができる。 5.学習指導過程 学習内容及び学習活動 予想される生徒の変容 教師のかかわり (1)資料や学習した時代認識 に基づいて異なる立場に 対する反論を述べる。   (同質4人→全体) (2)考えの異なる集団で,反 乱につなげない裁き(妥 協点)を考える。   (異質4人→全体) (3)「切腹」という綱吉の選 択について振り返り,そ の選択がなぜジレンマを 克服できたのか考える。   (4人→全体) (4)「切腹」を選択した綱吉 の裁きの意味を共有し, その裁きが近世の確立に 与えた影響について考え る。(全体→4人) (5)単元の始めの問いを振り 返り,本単元の学びを語 り直す。   (4人→個人→全体) ・自分はなぜそう考えたか,資料 や時代認識をもとに考え直して いる。 ・自己の考えと相手側の考えの共 通点や相違点について確認し, 考えを深めている。 ・いずれを選択しても反乱につな がる可能性があるというジレン マに気づいている。 ・異なる立場の意見を取り入れな がら,解決する方法はないか悩 んでいる。 ・当時の文化的文脈において,「切 腹」が武士にとって名誉刑の意 味合いをもっていたことに気づ いている。 ・全体で,綱吉の選択に対する新 たな気づきを共有している。 ・大きな歴史の流れから綱吉の選 択をとらえ直し,近世の確立に 与えた影響について考えている。 ・単元の学びを振り返ったり,他 者の語りを聴いたりして,歴史 を学ぶ意味や価値を考えている。 ○資料や既習の時代認識に基づいて, 多面的・多角的な視点からディス カッションが展開されるように, グループの意見や質問をつなぐな ど,ファシリテートする。 ○「第○条(相手の立場)を優先す ると,何がくずれ,どのような世 の中になるか」と逆説的に問い, 相手に対する反論を考えさせる。 ○解決策を無理に考えさせることよ りも,異なる立場の意見を取り入 れる難しさに気づかせる。 ○考えが出にくいグループには,切 腹という幕府の沙汰に対する大石 の返答を提示し,考える糸口にさ せる。 ○推論にとどまらせないために資料 を配布し「切腹」の意味を確認さ せる。 ○綱吉の選択を大きな歴史の流れの 中で眺め直させ,その価値に気づ かせる。 ○学習前の自己の考えを振り返らせ ることで時間軸を意識させ考えの 変容を自覚的に語り直させる。

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前と戦後の連続性についても忘れてはならな い。授業では,通常,大日本帝国憲法が天皇主 権であったのに対して,日本国憲法では国民主 権及び象徴天皇制となったことで,日本が民主 国家へと生まれ変わったとして扱われる。しか し,天皇の政治行為について見れば,「国務各 大臣の輔弼」(大日本帝国憲法)と「内閣の助 言と承認」(日本国憲法)のように,新旧両憲 法は類似の構造をもっている。したがって,現 憲法下においても,国民が基本的人権保持への 「不断の努力」(日本国憲法第12条)を怠れば, 戦前のような状況に陥りかねない危うさがある という認識を生徒にもたせることが重要であ る。また,大正デモクラシーの成果である普通 選挙制の実現した後に,日本の全体主義体制が 確立したことも,現代社会の危うさへの警鐘と なろう。以上のような点に着目し,鈴木は「敗 戦と戦後改革~日本は本当に新しく生まれ変 わったのか?~」を構想した(資料3)(14) (2)授業の構想  導入として,戦前と戦後の比較を通して,生 徒が各時代に対して抱いているイメージを明確 にさせる。戦後改革の具体的内容を調べさせた 後,単元の学習課題「敗戦と戦後改革によって, 日本の社会はどのようになったか?」を提示す る。  次に,戦後改革の諸政策の内容と目的につい て概観した後,新旧憲法における天皇の政治的 位置づけと権限を取り上げ,相違性と類似性に ついて検討させる。その際,「内閣の助言と承 認」(日本国憲法第3条・第7条)と「国務各 大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責メニ任ス」(大日本 帝国憲法第55条)を示し,戦前の天皇の政治的 意思が,憲法と各国務大臣(内閣)によって規 定される点で,新旧両憲法は天皇の政治的権限 の行使に関する構造的類似性を有していたこと に気づかせる。これにより,日本国憲法の最大 の特徴である平和主義(前文・第9条)の貴重 性と,その趣旨を見失うことの危険性を認識さ せるとともに,一見平和な現在の状況に安住せ ず,生徒自身が自らの問題として真剣に考え, 判断することの重要性に気づかせたい。  終結においては,素朴で単純なイメージや認 識に揺さぶりをかけ,思考を深めさせるため に,再び「敗戦と戦後改革によって,日本は本 当に新しく生まれ変わったといえるか?」と問 いかけ,学んだことを振り返らせ,考えをまと めさせる。こうした活動を通して,現代社会に 対する見方・考え方の育成に繋げたい。 2.現代社会と公正な裁判 (1)裁判員制度を問い直す  裁判は,社会関係における利益の衝突や紛争 を解決・調整するための,ある一定の権威をも つ第三者が下す拘束力のある判定,またはその 判定過程のことである。有史以来,対立を解消 するための手段として,裁判はあらゆる場所 で,あらゆる時代に行われてきた。近代社会の 成立前は,立法・行政・司法の三権は未分化で, 権力の座にある者が裁判権を有した。そのた め,しばしば恣意的な判決が下された。現代の 日本の裁判は,その権限が裁判所に委ねられ, 裁判所は他の二権から独立した立場で司法権を 担う。また,被告人の権利を保障する仕組みが 整えられるとともに,裁判官には何ものにも染 まらず,法と良心にのみ基づいて裁判を行うこ とが求められている。  学習指導要領には,「国民の権利を守り,社 会の秩序を維持するために,法に基づく公正な 裁判の保障があることについて理解させる」こ との必要性が述べられている(15)。ただ,これ までの裁判の学習は,裁判の仕組みや被告人の 人権保障,三権の関係把握に重きが置かれ,裁 判の枠組みを認識することが主な目的となって いたため,裁判の根幹をなす公正性について は,あまり取り上げられることがなかった。  それでは,「公正な裁判」とは何であろうか。 小野は,「当事者も社会も納得する手続きで, 望ましい結果を作り出す過程であり,社会の目 から常に問い直され,更新されるべき過程であ る」と捉える。社会科学習において,現代の裁 判の仕組みを既存の固定化されたものとして受 け入れ,知識として獲得するならば,公正さを 実感的に理解したり,公正さを問い直したりす

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<資料3>      社会科学習指導案 指導者 鈴木 正行 1.題材名「敗戦と戦後改革~日本は本当に新しく生まれ変わったのか?~」 2.目標   日本国憲法と大日本帝国憲法の構造的相違性と類似性に関する考察を通して,戦後社会の重層性と そこに潜む危険性に気づかせ,民主的平和国家建設の理念に基づく戦後改革の意義と,憲法の平和主 義の貴重性について理解させる。 3.学習過程 教師の発問・指示 予想される生徒の反応 指導上の留意事項 ・戦前と戦後の日 本の社会を比べ るとどのような 違いがあると思 うか。 <戦前について> ・軍国主義の国であった。 ・相次ぐ戦争により多くの人々が亡くなった。 ・暗いイメージがある。 ・自由な行動や発言ができない。 ・貧しい人たちが多かった。 <戦後について> ・平和な世の中になった。 ・民主主義になった。 ・自由に行動し,発言できる。 ・豊かな社会になった。 ・男女平等になった。 ・何でも自由に発言できるようになった。 ・天皇中心(天皇主権)ではなくなった。 ・農地改革が行われた。 ・戦前=暗い,戦後=明るい,とい う素朴なイメージを持っているこ とが予想される。 ・政治の民主化,経済の民主化,教 育の民主化などに関する事項を挙 げさせ,概略を説明する。 ・教科書の記述などをもとに,戦後 の社会の変化を挙げさせる。 ・戦後改革では, どのようなこと が行われたか。 ・敗戦に際して, 日本政府はどの ように対応しよ うとしたか。 ・GHQはどのよう な政策を行った か。 ・日本国憲法は大 日本帝国憲法と 比べてどのよう に変わったか。 ・まとめ ・日本国憲法が制定された。 ・財閥解体や農地改革が行われた。 ・教育の民主化のために,教育基本法が制定 された。 ・これまでの日本の政治体制を維持しようと した。 ・これまでの日本の政治を反省し,新しい日 本をつくろうとした。 ・軍国主義を改めさせ,日本の民主化を進め ようとした。 ・憲法の改正を指示した。 ・農村の民主化を図るために,地主制を解体 させるよう農地改革を指示した。 ・海外への侵略の原因となった財閥の解体を 指示した。 ・軍国主義的・国家主義的教育を改め,教育 の民主化を進めるよう指示した。 ・天皇主権から国民主権になった。 ・天皇の地位が,統治権者から象徴としての 天皇(象徴天皇制)に変わった。 ・軍部の暴走に繋がった統帥権の独立等が廃 止され,戦争の放棄(平和主義)が憲法の 基本原理になった。 ・国民の権利(基本的人権)の保障が,「法 律ノ範囲内」から「公共の福祉」に基づく 制限に変わった。 ・貴族院が参議院に変わった。 ・本時を振り返り,学習課題についてまとめ る。 ・東久邇宮内閣が天皇制護持をめざ し,従来の政治体制を変えようと しなかったことに触れる。 ・戦後改革の目的が日本の民主化で あることを確実におさえる。 ・憲法改正要綱(松本試案)の保守性, 憲法研究会案の意義等について触 れる。 ・日本国憲法の成立過程について説 明する。 ・日本国憲法と大日本帝国憲法を分 かつ最大の違いが,前文および第 9条に表された平和主義の存在に あることに気づかせる。 ・憲法9条については,公民的分野 で詳しく扱うため,ここでは条文 の解釈等には深入りしない。 ・「内閣の助言と承認」と「国務各大 臣ノ輔弼」という構造的類似性に 着目させ,日本国憲法下において も,運用の仕方によっては,形を 変えて戦前と同じような過ちを犯 す危険性のあることに気づかせる。 ・「日本の社会は新しく生まれ変わっ たといえるか?」と問いかける。 敗戦と戦後改革によって,日本の社会はどのようになったか? ることはできない。裁判員制度は,公正な裁判 を実現しようとする理念の具現化であり,公正 な裁判は市民の主体的な関わりの中でこそ,よ りよく更新されていくという考えのもとで導入 された。公正な裁判の共通項を考察し,公正な 裁判の在り方を構想することが,現代社会を生

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きる市民には求められている。3年後に有権者 となる生徒たちにとって,公正な裁判の在り方 に関して検討することは,法的に良識ある市民 となる上で有用であると考える。 (2)生徒の実態  附属高松中学校第3学年の生徒(116名)を 対象に事前アンケートを行った。アンケート では,「対立が生じたとき合意にいたるために は公正さが必要である。」との設問に,107名 (92%)の生徒が肯定的に答えた。次に,「対立 が生じたとき裁判で合意に至ることは公正であ る。」の問いに対しては,35名(30%)が否定 的に答えた。すなわち,約3分の1の生徒が裁 判を公正ではないと感じていたことになる。そ の理由には,違憲立法審査をすべきときに判断 を避けたり,被害者や遺族の意に反して心神喪 失や心神耗弱を理由に減刑したりすることへの 不満等があった。また,裁判に持ち込むこと自 体に,否定的な感覚をもっている生徒も見られ た。このようにアンケート調査を通して,生徒 たちが,日本の裁判を公正な裁きの場として, 必ずしも受け入れているわけではないという状 況が浮かび上がった。  次に,裁判に関する既習知識の定着を図るプ レテストを実施したところ,三審制を説明で きた生徒が113名(97%)であった。また,裁 判員制度や冤罪などの教科書に登場する用語 については,114名(98%)の生徒が知ってい た。しかし,推定無罪の原則や黙秘権など,被 告人の人権保障に関する問題に対する誤答は48 名(41%)もあり,正しい理解が定着していな いことがわかった。これらのことから,現在の 日本の裁判は本当に公正さを担保できているの か,被告人の人権保障のためにどのような配慮 がなされているのか,そこにはどのような課題 があるのか,ということについて学ぶべきであ ると考えた。 (3)授業の構想  これまでの裁判に関する学習では,裁判の仕 組みや三権の関係など,裁判の枠組みに関する 認識の形成が目的となっていたが,これでは学 習者が,現代の裁判の仕組みを既存の固定化さ れたものとして受け入れるだけで,公正さを実 感的に理解したり,問い直したりすることはで きない。そこで小野は,古代から現代に至る裁 判の歴史を追った試案教科書『社会科 中学生 の歴史~日本の裁判のあゆみ~』を作成すると ともに,単元「公正な裁判とは何か」を開発・ 実践した(資料4)(16)。単元の目標は,次の4 点とした。①公正な裁判を実現するためには, 様々な困難や課題があることに気づき,未来の 裁判員として,人権保障や社会への影響に配慮 できる自立した市民になる意欲と態度を養う。 ②公正な裁判の在り方について,歴史的視野と 現代的視野から考察し,公正な裁判を目指した 具体的な評議・審理の場を実現する。③歴史的 な判例や現代の判例にある証拠資料を吟味した り,裁判における一連の流れを図示したりでき る。④裁判は公権力を背景にした調停の場であ り,両者と社会が納得するために公正な裁判が 必要であることを理解できる。  授業では,「公正な裁判の実現のために,裁 判員裁判はどうあるべきか?」を学習課題とし て,公正さと市民感覚という視点から,裁判 員裁判の是非をめぐる討論授業を行った(資 料4)。生徒たちは,真剣に議論を重ねる中で, 主権者としての国民の司法参加の意義と,裁判 員制度の問題点に気づくことができていた(17)

Ⅳ.おわりに

 本研究では,①前近代と近現代の法観念・法 意識の相違を捉えること,②法を通して,社会 の変化を構造的に捉えること,③法を通して, 政治の変化を捉えること,④国民の司法参加と 公正な裁判の在り方を問い直すことなどを通し て,学習者の法意識の体系的形成を図る教材開 発を行った。  中学校の歴史学習は,基本的に政治的事象の 変遷を軸として構成されている。教科書に掲載 されている法は,その時々の政策意図を説明す るための根拠として用いられており,法がもた らした社会の根本的な変化に関する影響面から の記述は少ない。現在,国会では重要法案が 次々と可決され,日本国憲法の改正問題も浮上

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<資料4>      社会科学習指導案 指導者 小野 智史 1.単元の目標及び評価規準と学習指導計画 (1)単元の目標  ○公正な裁判を実現するためには様々な困難や課題があることに気づき,未来の裁判員として人権保 障や社会への影響にまで配慮できる自立した市民になる意欲と態度を養う。(関心・意欲・態度)  ◯公正な裁判の在り方を歴史的視野と現代的視野から考察し,公正な裁判を目指した具体的な評議・ 審理の場を表現する。(思考・判断・表現)  ◯歴史的な判例や現代の判例にある証拠資料を吟味したり,裁判における一連の流れを,手続きに区 切って図示したりできる。(技能)  ◯裁判は公権力を背景にした調停の場であることを理解し,両者と社会が納得するために公正な裁判 が必要であることを理解する。(知識・理解) (2)単元の指導計画 <学習指導要領の目標> ○社会生活における物事の決定の仕方,きまり の意義について考えさせる。 ○国民の権利を守り,社会の秩序を維持するために法に基づく公正な裁判の保障があること について理解させる。  公正な裁判とは手続きや機会,結果の正統性が保障された裁判である。その正統性は決して固定 化されたものでなく,自立した市民による問い直しにより形成される。権力の集中やなれあいを監 視する目を大切にし,市民感覚を絶対視しない感覚を身に付けておくべきである。 【単元を貫く問い】  公正な裁判とは何か? 明日を生きる私たちは公正な裁判を実現するために,どのような考え方 を身に付けておくべきだろうか? <前単元の関連する授業> ①裁判の仕組み ②人権を守る裁判と改革 ③三権の分立 民事裁判,刑事裁判,三審制, 控訴,上告,裁判官の身分 推定無罪の法則,法テラス,司法制度改革,裁判員制度 司法権の独立,三権分立,違憲立法審査権,憲法の番人 <本単元の授業> ④公正さの問い直し ⑤歴史の中の裁判 ⑥被告人の人権保障 ⑦裁判員裁判の公正さ  の検討(本時) 裁判員裁判の評議シス テム,良心と憲法,法 による審理 神判,律令,私刑,公 権力の強制力,権力の 濫用,近代裁判 疑わしきは被告人の利 益,冤罪,自白,合理 的な疑い,再審 市民感覚,裁判員の苦 悩,量刑,先例主義 「三匹の子豚」物語を 題材にした模擬裁判員 裁判を行い,公正さを 担保するための工夫と 困難さに気づかせ,単 元を貫く問いをつく る。 『社会科 中学生の歴史 ~日本の裁判のあゆみ』 の 試 案 教 科 書 を 基 に, 現代の裁判の特徴を歴 史的視点から問い直し, 公正さの視点を得る。 「松山事件はなぜ,28 年もの歳月を経て再審 無罪となったのか」事 例をもとにして,公正 な裁判に必要な手続き の正統性を検討する。 「公正な刑事裁判の実 現のために,裁判員裁 判はどうあるべきか」 裁判員裁判の是非を複 数の資料から検討し, よりよい公正な裁判を 模索する。 ↓ ↓ ↓ ↓ ⑧現実社会を公正な裁判を学んできた視点から問い直す 現実の裁判員裁判,新聞記事の中の裁判,公正な刑事裁判のビジョン  新聞記事の切り抜きをまとめたスクラップノートの刑事裁判事例を,公正な裁判という視点で自 分なりに問い直す課題に対して,ペアで交流しながらレポートを作成する。

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している。法が社会に及ぼす影響について,深 く考える機会を提供し,法意識の体系的形成に 資することは,歴史学習及び公民学習に突きつ けられた重要な課題である。その意味で,本研 究で提示した教材開発や実践は,法教育の新た な地平を拓く可能性をもつものであると考え る。現在及び未来との緊張関係を持ちながら, 今後も教材開発を進めていきたい。 【註】 (1)土井真一「法教育の基本理念―自由で公正な 社会の担い手の育成」大村敦志・土井真一編著 『法教育のめざすもの―その実践に向けて―』商 事法務,2009年,pp.3-28。 (2)溝口和宏「歴史教育による社会的判断力の育 成(1)―法的判断力育成のための歴史教材例 ―」全国社会科教育学会『社会科研究』第50号, 1999年,pp.211-220。 (3)橋本康弘「歴史アプローチによって法制度の 2 本時の学習指導 (1)本時の目標  ◯裁判員制度の是非を公正という視点で多面的,多角的に考察し,判断できる。(思考・判断・表現)  ◯裁判員制度の問題点を諸資料から把握し,未来の裁判員として,社会も当事者も納得するような公 正な裁判制度を構想しようとすることができる。(関心・意欲・態度) (2)学習指導過程 (◯配慮事項 ●おおむね満足できると判断できる状況 [ ]評価方法) 学習内容及び活動 指導上の留意点及び評価 1.裁判員裁判が始まってからこれまでの自白事件 と否認事件の件数,裁判にかかった時間,量刑を 示す表を見て,裁判員制度の矛盾や課題を探す。 2.裁判員制度についての本時の学習課題を把握 し,その立場を明らかにする。 ◯単純な数値の大小だけに注目させるのではな く,その数値の変化の理由も考察させる。 ◯矛盾に気づかない場合は,裁判員制度が導入さ れた理由の資料を見直させる。 ○単元を貫く問いと学習課題を関連させる。 ○これまでの学習を基に仮の意思決定をさせる。 公正な裁判の実現のために,裁判員裁判はどうあるべきか? 3.対立する二つの考え方を示し,グループや学級 全体で公正な裁判を行うため,裁判員制度の在り 方について意見交換する。 (1)二つの立場を把握するため2種類の資料に目 を通し,審理形式(3人一組の討論形式)で意 見を深める。 (2)どちらの立場を支持するか,立場とその理由 を全体で発表する。   ・デメリットを強調して廃止の立場:理由   ・修正を加え,存続の立場:理由 4.よりよい裁判制度にしていくため,裁判員裁判 はどうあるべきか,議論したことを生かして,現 代像シートに構想する。 ○現実にどのような議論があるのか把握するた め,複数の資料を読み,意見に組み入れさせる。 ○討議の際には資料の根拠を示して発言するよう 注意し,さらに揺さぶる発問をして多角的に資 料を検討するよう促す。 思考・判断・表現 ●被告人の人権保障への危惧,ラフジャスティス, それらに対して市民感覚の反映など制度の長所 短所を見抜き,よりよい裁判の在り方を表現し ようとしている。[ワークシート・行動観察] ◯学んだことを生かして,学習課題に対する考え を現代像シートに記入させる。 ○次時の最終課題のための準備をさせる。 関心・意欲・態度 ●公正さを担保するため,自分事として裁判に関 わっていく意欲をもち,よりよい裁判制度を提 案しようとしている。[現代像シート] 例:裁判員裁判に否定的な立場の場合  裁判員裁判は様々な矛盾や課題を抱えている。市民の市民感覚や常識を反映させる裁判を構築していきたい が,先例をないがしろにするような判決では公正さが失われる。また被告人の人権保障に最大限の注意を図り, 効率よりも公正さを重視した手続きが期待される。自分が被告人なら行き過ぎた市民感覚によって厳罰を受け るのは納得がいかないので,歯止めをかける仕組みをつくってほしい。(A)

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相対化を目指す法関連教育カリキュラムの構造 ―アメリカ史プロジェクト『法と歴史における 冒険』の場合―」全国社会科教育学会『社会科 研究』第61号,2004年,pp.11-20。 (4)髙橋壮臣「中学校社会科における法教育の単 元開発―歴史的分野の権力の取扱いを中心とし て―」『日本社会科教育学会全国研究大会発表論 文集 第10号 第64回全国研究大会』2014年, pp.118-119。 (5)近世からの民衆の慣習と近代法との相克が, 様々な民衆運動となって顕在化した時期が明治 前期である。人々の経済生活に大きな影響を与 えたこととして,近代法の厳格な適用によるモ ラル・エコノミーの崩壊が挙げられる。鈴木正 行「『参加』に着目した中学校歴史的分野の単元 開発―学習のくくり『民衆の時代へ』の実践を 通して―」『静岡大学教育実践総合センター紀要』 No.13,2007年,pp.429-444。 (6)奥山研司「中学校の事例―歴史的分野『ケン カ両成敗って正しい?~封建時代の法について 考える~』―」橋本康弘・野坂佳生編著『“法” を考える身近な題材で基礎基本を授業する』明 治図書,2006年,pp.64-73。 (7)吉田孝『律令国家と古代社会』岩波書店, 1983年,p.279。 (8)何東「班田法における『墾田』規定の再考察 ―日中律令制の比較研究をめぐって―」『九大法 学』90号,2005年,pp.21-22。 (9)吉田孝『日本の誕生』岩波新書,pp.150- 154,1997年。 (10)2017年7月7日と7月10日に,附属坂出中学 校の第1学年生徒120名(3学級)を対象として, 小単元(2時間)を組んで授業を行った。7日 (第1時)は,聖徳太子(厩戸皇子)の政治から 大宝律令の成立までの政治的過程について,私 地私民から公地公民への移行に焦点を当て,振 り返らせた。10日(第2時)は,学習指導案に 示した授業を行った。 (11)芳賀徹『みだれ髪の系譜』美術公論社,1981年, のち講談社学術文庫,1988年。 (12)山城貴彦・大和田俊「豊かな社会認識の形成 と能動的な社会的実践者の育成をめざした社会 科学習の在り方―合意形成を通して,社会的自 己『ものがたり』を深めあう共同体をめざして―」 香川大学教育学部附属坂出中学校『「学ぶこと」 と「生きること」をつなぐ「ものがたり」―個 が響き合う共同体をめざして―』2016年,pp.55 -74。 (13)「武家諸法度」石井良助編『徳川禁令考前集第 一』創文社,1959年。 (14)本稿で示した学習指導案は,鈴木「歴史的思 考力の育成をめざす戦後改革の単元開発―戦前・ 戦後の断絶性と連続性の視点から―」(愛知教育 大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科『教 科開発学論集』第3号,2015年,pp.77-88)で 提案した単元構想の一部を修正したものである。 (15)文部科学省『中学校学習指導要領』(平成20年 3月告示),p.43。 (16)池田良・小野智史「学んできた知識・技能を 活用し,社会認識を再構築する生徒の育成―領 域をまたいだ単元構成の工夫を通して―」香川 大学教育学部附属高松中学校『研究報告第4巻・ 第5号 未来を創造する学びの追究』2017年, pp.69-78。 (17)髙倉は,裁判員制度の違憲性に言及し,「裁 判員制度の問題点に触れない授業だけを行うな らば,教員が基本的人権の侵害を援助すること にもなりかねない。」と指摘している(「公民的 分野の中核となる法教育」伊藤裕康・田中健 二・日詰裕雄・髙倉良一・松本康・山下隆章編 『社会への扉を拓く』美巧社,2011年,pp.223 -228)。 付記  本研究の実施にあたり,平成28年度香川大学 教育学部教員と附属学校園教員による研究プレ ジェクトの助成を受けた。なお,大和田実践を まとめた論文「歴史を学ぶ意味や価値を実感さ せ,民主社会の形成者の育成につなげる社会科 学習のあり方―中学2年歴史的分野 実践『忠 臣蔵裁判~近世確立の物語~』を通して―」は, 平成29年度ちゅうでん教育大賞(公益財団法人 ちゅうでん教育振興財団)を受賞した。

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