M.ムッサのマネタリー・アプローチ-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

M.ムッサのマネタリー・

アプローチ

宮 田 亘 朗 Ⅰ一 固定為替相場とマネクリ・−・アプローチ。ⅠⅠ伸縮為 替相場とマネタリー・アプローチ。ⅠⅠⅠ資産市場アブロトー チとマネタリー・アブローサ。ⅠⅤ,むすび。 Ⅰ 本稿の目的は,国際経済理論におけるマネタリー・アプロ、−チをサ1−ベイす る過程で,M.ムッサを考察することである。M.ムッサのマネタリー・アプロ ーチは,固定為替相場の下での関税の効果分析と,伸縮為替相場の下での為替 相場の理論や若干の政策提言などをめぐって展開されている。そこで,先ず彼 の固定為替相場の下での関税率の変動の効果の分析を要約することからはじめ る。1) 完全雇用の下で輸出可能晶一丈1と輸入可能品ズ2の二財を生産し消費する小 国モデルを仮定する。仮定により当該国の諸外国に与える効果(レ/く1−カッシ ョン)ほすべて無視され,両財の世界市場価格〆,ガは所与とされる。相対価 格はq*=〆/〆であり,輸入関税率を丁とするとき当該国の相対価格す=♪2/ ♪1は α=(1+㌻)q* (1) で与えられる。第1図のrr曲線は,当該国の生産可能曲線を表わし,両財の 生産量 .x;=.‡言(¢) (2) 1)Mussa,M‖,AMonetaryApproachtoBalance・Of−PaymentsAnalysis,JM.CB Vol6no3Aug1974およびTariffs and the Balance of Payments;A Monetary

Approach(771e Moneb27y AAt,YVaCh to the Bbhmce qf’p5yments,eds.byJA

(2)

−92− 香川大学経済学部 研究年報 22 ノダβ2 ズ昌=エ芸(す) (3) を導く。他方,無差別曲線払は,相対価格と総消費支出Cの函数として両財の 消費函数 ェぎ=尤F(す,C) (4) ㌶=ズぎ(¢,C) (5) を与える。ただし,

方ぎ(す,C)+¢∬ぎ(¢,C)=C

(6) である。また,通常のモデルでほ,予算制約の条件は,第1財で測った総消費 支出が消費者の所得訂に等しくなるという関係 cJ=.訂 (7) で表わされる。かくして,第1図のAc点が得られる。なお,所得は,要素所得 訂′と関税受取額の再分配の和とからなっている。すなわち, 訂=エ呈(〃)+¢ズ蔓(す)+rα*〔。尤g(¢,Cト.尤茎(す)〕 (8)

T yiダラ

yA yβ

(3)

−93− M.ムッサのマネクリ・−・アブロ・−チ ダー尤i(わー即墨(武トて〆〔.方g(す,〟)−.尤茎(¢)〕=0 (9) を得る。したがって,す*と㌃が与えられる場合,均衡所得水準は,(9)式から.訂 =.訂(丁)となる。そして,それは,第1園の訂A点によって表わされる。勿論, (7)式からこの所得訂Aは総消費支出に等しくなければならない。他方,そのとき の貿易量は,ズg(〃ト訂)−が(¢)である。そして,それは,第1囲の直線AcAp によって表わされる。さらに,その輸出と輸入の差で示される貿易収支ほ,交 易条件すで,均衡にあることとなる。さて,このようなケースにおいて,関税 率㌃がrAからrβへ増加するものとし,その場合の効果を考えてみる。この関 税率の上昇は,第2財の国内相対価格を引上げ生産点をβ♪に消費点を昆に, それぞれ移動させる。第1財で測った要素所得はy子からyデに上昇し,均衡所 得は訂.≠から.yダに増加する。その増加額は, 裏㍍+r〔(&g/飴)−(血星/(ね)〕¢*2 d訝/♂r= (10) 1−丁¢*(∂ヱg/∂c)

である。2)新しい消費の均衡点は,無差別曲線Uβと新しい価格線との交点βc

で表わされるから,貿易を示す直線A。A♪をβ。β♪へ・と変化せしめ,貿易量を減

少させる。すなわち,関税率の増加は,輸入を減じ他方でそれと同額の輸出を

減じることによって,貿易収支を均衡状態のままに.残し,リアル関係に特に.影

響を与えないこととなるのである。

Mいムヅサは,以上のような通常のリアル・モデルに対して貨幣を含むマネク

リ、−・モデルを次のように展開する。先ず,♪.=如才および少2=〃+わ頭芸,

ゆえに上記(1)式が成り立つ。ただし,為替相場は貨幣当局により固定される。

そして,当該国の国内貨幣供給量は,貿易収支にのみ依存して変化すると仮定

される。すなわち,

〟=β

(11)

したがって,総貨幣供給変化額は舶1)一舶0)=£1β(5)ぁとなる0他方,名

目貨幣の需要は,名目所得y=九訂に依存するだけでなく,二財の国内価格れ

2)この導出に,生産町能線と価格線が接することから,初期の射において,が(α) +¢エざ(〃)=0の関係の成立することを代入して,消去している。

(4)

ー94− 香川大学経済学部 研究年報 22 ノク♂2 ♪2および国内証券の利子率γにも依存する。すなわちエ(㌣れ少2,7■)であ る。この場合,国内証券のストックは所与とされ国際的に取引されないと仮定 されている。そしてそれは,当該国の資本ストックの存在畳を金融市場におい て反映したものであり,したがって資本から獲得される収入すなわち証券の価 値に与える相対価格変化の影響や証券の実質価値に与える利子率の影響などを 配慮した形で(すなわち久,あおよびγの函数の形で)資産の制約にのつと.り 名目貨幣の需要函数に導入されている。名目貨幣の需要函数は,㌢れ♪2に関 して−・次同次であると仮定する。 エ(y,か,加,㌢・)/れ=ゼ(〟,¢,γ・) (1カ =烏(γうy (1扮 ただし,(1溺或は㈹式の特殊形である。同様に,マネタリー・モデ/レの消費函数 も実質所得のみの函数でなく,名目所得や貨幣価格および利子率の函数として

規定する。すなわちCd「㌣れ♪2,りである。この名目消費Cdは,yの増加

函数であり,γの減少函数である。そして㌣れ少2に閲し−・次同次である。そ こで, Cd(y,れ如,γう/か=C(.訂,¢,γ・) (用 =∂(γ・).訂 (畑 となる。ただし,(1㊥或は(14)式の特殊形である。(1か転よび㈹式において,利子率 γに閲し,(〟,々)の各組みに対して消費支出と所得とが均等となるようなγ■の 値が存在するものと仮定する。そして,それを戸(y,す)と書く。マネクリ・−・ モデルにおいては,支出が所得に等しくなる必然性は存在しない。すなわち, 消費者は,所得の一・部を貨幣残高の蓄積に使用しうるし,蓄積されている貨幣 残高をとりくずして所得を超えて支出することも可能である。しかし,長期均 衡においては,消費支出は所得に等しくなる。そして,㈹式のような特殊形の

場合,このような長期均衡の状態ではCd=yすなわち帥ノ=了となるγ−の

値例えば戸(y,〃)=pが存在せねばならない。もしγ■>pならばCd<yで

あり,γ・<pならばCd>yである。名目支出を越える名目所得の超過(不足) は,当該国の貿易収支の黒字(赤字)を招来し,(川式を通じて国内貨幣供給量 の増大(減少)を導く。したがって,長期均衡は,このような国内貨幣の変動

(5)

−.好一 M.ムッサのマネクリ、−・アプローチ

が止み,支出が所得に等しくなるとき,達成される。

〟.ムッサによれは,消費支出が所得に等しく国内貨幣供給の変動がなくな

る長期均衡では,前記のリアル・モデルがそのまま妥当する。そして,リアル

の世界で決定される国内相対価格と所得に応じて長期の貨幣残高の均衡水準

廊(㌃)が得られ,長期利子率戸し訂(ア),(1+丁)¢*〕が得られる。ゆえに,貨幣ス

トックの需給均等ほ,

廊(㌃)=かぜ〔訂(丁),(1+r)す*,戸(y(㌃),(1+丁)α*)〕

あるいは廊(丁)=烏(p)れダ(丁) となる。さて,関税率が変化する場合,この長期均衡に与える効果は,

普=か([普・普告]普+[普+普告捨)

ー∂c/∂¢ )]巧(1ゆ ㈹ 1−∂cノゐ )捨+[普+普( =か([普+普( ∂cノ∂γ・ ∂c/∂γ・

あるいは晋=細か普

によって見出される。3)ただし,♂.訂/drは既に(川式に.よって与えられている。(畑

式は,初期の関税率をゼロとすれば,d廊=〔綽)加圧ズ劫*〕♂rすなわちd廊=

〔々(p)尋芸∬g〕♂rとなる。これは,関税の賦課がそれに比例した貨幣残高の増加

を招来すること,そしてその比例乗数が第2財の消費の初期値の国内価格表示

コストであることを示している。換言すれば,関税率のrAからrβへの増大は

所得.訂(丁)をyAからyβに増大させ貿易収支の黒字を勉1ヱ紬*だけ増大しそ

れに対応した貨幣残高の増加を導く。すなわち,関税の変化は,貨幣残高の実

質価値を減じ,収支黒字による貨幣供給の増加を通じてそれを補うものといえ

る。このような関係は,(1ゆ式においてもその右辺が正である限り妥当する。し

かしながら,それが正であるか香かは,リアルな.訝やヴの変化を知らねばなら

ない。

次に,このような長期均衡状態に達するまでの過渡期間を考える。M・・ムッサ

によれば,その過渡期間は.,既達のように消費支出が所得に等しくなり貿易収

3)∂戸/み=(1−∂cノみ)/(∂cノ∂γ)および∂タ伸=−(∂cノ飴)/(∂cノ∂けである。(1カ式に

γ=拍,α)を代入し,.y=g〔.y,〃,戸(〟,¢)〕として偏微分すれは導くことができる0

(6)

香川大学経済学部 研究年報 22 第 2 図 −96− J.クβ2 〟tし・l− j′一 Tyう 封号

支が均衡となることを必要としない。いま,第1囲および第2図にみるように,

関税率がrAからr・βへ増加した場合には,生産点は』♪からβ♪に移動し,要素

所得は寝からポに増大する。また,消費者の直面する価格も同様に変化する。

そこで,消費の新しい均衡点は,第2囲にみるようにA。から,所得がすべて支

出される場合にはβ。に,消費支出が所得.訂βより少なく例えばCβとなる場合

はβ。に,支出が所得訂βより多い場合はβ。より右上方のエンゲル曲線(β。と

βeを結ぶ曲線)の任意の点へ,移動する。消費支出が所得に等しいかあるいほ

それより多いか少いかは,次のように決定される。貨幣を含む場合の消費函数

ほ,(14)式で規定されたものである。そこで,このq4)式を所得の定義式(8)に代入

し,♂(㌢・;丁)を求め,かくして得られた貨幣を含む場合の所得の定義式を用いて

消費函数㈹式の.訂を書き改めると, ∂(㌢・;r)±c〔.訂(γ;㌃),(1+ど)〃*,γ〕 となる。他方で,上の過礎で導出した.ダ(γ;ど)の式から 餉 r¢*(ゐ・g/∂c)(∂cノ∂γ) 鑑= ∂γ 1−どす*(∂ズ・g/∂c)(∂c/∂訂) 帥

(7)

一97− M.ムッサのマネクリ・−・・アプローチ

を得る。釦或は,限界消費性向∂c/∂訂が1/昭*(∂ズヂ/む)より小であり,両財が

劣等財でない限り(右上りのエンゲル曲線によって示される)負の値をとる。 さて−,γ・=ダ(〝,〃)の場合,定義からc=.訂である。そして,㌢・がタを越える 場合ほ,(抽式がタの減少函数であることおよび上の佃式の性質から,Cとyは, ともに減少する。この場合cの減少はyの減少よりも大でなければならない。

なぜなら,所得訂の減少は,(8)式にみる如く㌢の変化に影響される関税受取額

の減少のみから生じるものであり,そしてその関税受取額の減少が第2財の需 要.ズgの減少の一都であるにすぎず,しかも第1財が劣等財でない限りその第 2財の需要の減少は総消費支出cの減少の−・部であるにすぎないからで

ある。また,γ・が戸より低くなる場合ほ,これと全く逝の推論によって,所得

訂の減少が総支出cの減少より大でなければならない。かくして,

γそ戸のとき,ダ(γ;ど喀∂(㌢・;㌻)

を得る。さて,この㈹式における利子率γの戸からの轟離は,㈹式の〟に.ダ(γ・;

r)を代入して得る億が,存在する貨幣供給量と等しくなるところ,すなわち,

〟/か=ゼ〔ダ(γ・,丁),(1+丁)〃*,γ〕≡♂(γ・;ど)

で決定される値ダ(廊;ど)によって生じてくるものといえる。いま,¢事式を〟

で微分すると, dダ 1  ̄

粛♪.(抑)=

か(鋸/∂.ダ)(∂.ダ/∂γ)+か(∂♂/∂γ) 伽

を得る。伽式は,∂.ダ/∂㌢・<0である限り,負である。そこで,この関係から㈹

式を書き換えて,

〟そ舶)のとき,.訂(〟;㌃)号♂(〝;丁)

cza

を得ることになる。なお,所与の関税率㌃に対して,所得および消費は,貨幣 供給量の函数として表わされる。すなわち,

.訂(〝;丁)=ダ〔戸(〟;㌃);r〕

e(〝;ど)=∂〔戸(〟;丁);r〕 である。さらに,この場合の当該国の貿易収支ほ, 点(〟;ど)=e(抑需(1+丁)〆⊥.ズヂ(〟;ど)ト戯〔一頭(〟;ど)

(8)

香川大学経済学部 研究年報 22 一9β−

−.工芸(1+丁)¢*)〕)

である。これは,所得と消費の定義式を用いると, g(〟;㌻)=かほ(〟;丁)−∂(〝;丁)〕 ¢功 と表わすことがごきる。そして,(用式から 必=点(〟;丁) 帥 となる。貿易収支虐ほ,¢功式の右辺より,〟<廊(r)に対して正となり,〝> 廊(ど)に対して負となる。そこで,任意の初期値から出発して,貨幣供給量は長 期均衡値廊(㌻)へと収赦することが見出されるのである。 この貨幣供給量の変動と,所得や消費の関係は,第3図によって表わすこと ができる。右上りゐ⊥げ〟曲線は,関税率をrβとしたときの名目貨幣の市場均 衡を表す曲線である。また,.ダ(γ・,rβ)曲線は,関税率をrβとしたときの利子 率の函数である所得水準を表わしている。なお,エrβ〟。曲線ほ名目貨幣量〟0 の場合のものであり,エrβA久は名目貨幣量〟1の場合のものである。ム彗‰曲 線と.ダ(㌢・;rβ)曲線の交点は利子率戸(〟0;rβ)と所得.ダ(〟0;rβ)を決定

(9)

−99一 M.ムッサのマネタリー・アプローチ

し,またその利子率と♂(γ・;rβ)曲線は消費∂(脇;rβ)を決定する。ここに決

定したど(〟。;rβ)ほ,同時に決定した.訂(脇;rβ)より小となっている。そこ

で,貨幣供給量は,弧から」軌に貿易収支の黒字を通じて,増大する。そして,

エrβ〟1曲線を右方にシフトさせる。かくして,利子率や所得ほ,漸次長期均衡

値戸(rβ)やタ(rβ)へと近ずいて行くことになるのである。この場合,∂(〝;

rβ)や訂(〟;rβ)と貿易収支の関係は,図示すれば,第4図のようになる。第

4図の上図では,.ダ(〝;rβ)と∂(〟;rβ)の両曲線を措いており,第3図の各

貨幣供給量に対する横軸の目盛をとったものである。ゆえに,この両曲線は,

点〔廊(rβ)トダ(rβ)〕で交叉する。他方,第4図の下図は,この上図の∂(〟;rβ)

と.ダ(〟;rβ)の両曲線の差に第1財の価格久を乗じた貿易収支差額を表わ

し,磨(〝;rβ)曲線として描いている。この点(〟;rβ)曲線ほ,廊(rβ)の貨幣

供給量のときに横軸を切る。これらの第4図の上下二つの図に・おいて,関税が

rAからrβへ増加することは,ど,.訂および点の各曲線が破線から実線へシフ

トすることとして示される。そこで,いまこのシフトにも拘わらず貨幣供給量

が廊(rA)にとどまるものとする。この場合,消費はα∂だけ所得より小さくな

り,貿易収支はc・♂だけ黒字を生じる。そして,貨幣供給量ほ増大し〟(rβ)の

男へ右に移動して行くことになる。このとき,第3図の利子率γ’はダ(〟;rβ)

の水準から戸(rβ)へと下落する。第3図の利子率がダ(rβ)に到達し,第4図の

貿易収支がゼロとなるとき,第2図においてはβc点が実現する。すなわち,こ

のβ。点ほ,所得が消費に等しく貨幣が廊(rβ)に等しぐなる点を示しているか

らである。 マネクリ・アプローチは,必ずしも完全雇用を前提としない。上記のモデル

で,生産可能曲線上の生産を表わす(2)式と(3)式を除去し,代りに二働の生産に

使用する可変要素を労働のみとしその限界生産力逓減を仮定し,固定されてい

る貨幣賃金と労働の限界価値生産力の均等となる点で生産を行うような失業を

含むモデルを設定するものとする。このとき,二働の生産函数は,固定貨幣賃

金率を抑とすれば, ズi=ズ壬(か/紗),∂ズ・…/み1>0 .ェ・茎=.ヱ芸(少2/紺),ゐ芸/み2>0

(10)

香川大学経済学部 研究年報 22 −J(X)− ノクβ2

によって表わすことができる。4)この場合,関税の増加は,第1財の生産を不変

のままに残すが,第2財の生産を増大することになる。そこで,例えば関税率

がrAからrβに変動するとき第1図と第2図で考察したように生産可儲曲線 上をA♪からβタへ移動し第2財の生産を増加し第1財の生産を減じるという

ようなことは起らない。失業を含む場合の稔計としての生産額は,以前よりも

大となる。かくして,関税の増加は,第3図の.訂曲線をより大きく右にシフト

させ,長期均衡値,ダ(rβ)をより大とする。そして,第4図の貿易収支黒字の累

倍額で示される貨幣残高の長期均衡水準を右方により大きく移動させる。しか

第 4 図 朗廊(−Aノ;−βJ O 4)生産函数を方‘=ノ■‘(〃ど)とすると,生産は♪i∂/■i/∂凡=紺で行われることとなる。ゆ えに,肪/∂Ⅳ一=紺/かから¢1)と鋤の両式を導出しうる。このとき完全雇用とはいえない。 (g=1,2)

(11)

M.ムッサのマネタリー・アブロ・−サ 第 5 図 −ヱ0ユー yβ yA

し,それに到る短期の調整プロセスは,完全雇用モデルで考察したものと全く

同じになる。

以上のモデルで,ムッサは,貨幣需要函数を(1⑩式とし,消費函数を㈹式とし

た場合の特殊なケ、−スにおいて,関税の賦課が輸入を減少し赤字を生じ常識と

異なる結果を生むことを指摘する。当該国が第1財の固定量(すなわち君1)の

みを生産するものとする。この場合,生産は,可儲曲線ではなく,第5園にみ

る如く横軸の一点flでのみ示されることになる。名目所得y=れ訂は,β1が

関税によって影響を受けないので,(8)式の右辺の最後の項すなわち関税収入の

再配分額の変動のみに依存して変化するにすぎない。同様に,貨幣供給の長期

均衡水準廊(ど)=烏(p)yも名目所得yを通じる関税収入の再分配額のみに

依存する。したがって,初期の関税率丁が関税収入を極.大にするところにある

ものと仮定すると,関税率のrAからrβへの変化は,第1財で測った関税収入

を減じ,yおよびyを減少し,廊を小さくする。そして,この場合の貿易収

支は,累積的な赤字を呈することになる。消費の均衡点は,Acからβcへ移動

し,輸入額は第1財で測ってα〟Aからみ訂βへと減少する。これほ・,第2財の需

(12)

−JO2一 香川大学経済学部 研究年報 22 ノクβ2 要をAc点から艮:点へ大きく減じ,所得を㍉まで減じる(関税収入の減少を通 じ)ことから生じたものである。以上の結論は,関税が輸入を減じることによ って貿易を改善するとする常識的見解と矛盾することになる。常識的見解がマ ネタリー・アブロ・−チと異なる主張をする主な原因ほ,M.ムッサによれば,第 一Lにそれが予算制約を無視し,ニ財のみからなるモデルにおいて所得と支出を 鵬・定に保つ場合に,輸入需要を減少することが輸出財への国内需要を増大させ ることになり,したがって輸入需要(外国為替の需夢)の減少だけでなく輸出 (外国為替の供給)をも同じく減少することになることを看過したからであり, 第二に貿易収支変動について貨幣的見解を強調する余り,関税が貨幣価値あの 騰貴を招来し,初期の名目貨幣残高の実質価値を減じ,それを望ましい水準に 回復するために貿易収支の黒字を生じると考えること,すなわち関税率の変化 の短期的な調整過程を強調し,関税変化の金利を通じる長期的な貨幣残高の実 質需要に与える効果を無視するからであると。 ⅠⅠ 以上は,M.ムッサのマネクリ・−・アブロ・−チによる固定為替相場制下での議 論である。M.ムッサは,マネタリー・アプローチが固定為替相場制だけでなく 変動為替相場制の下でも充分に妥当することを主張する。そこで,以下彼の主 張を主な二つの論文を中心に考察することにする。5) 先ず,固定為替相場制下のマネタリー・アブロ、−チについて次のように言う。 それは三つの特徴をもつ。第一・に,国際収支が本質的に貨幣現象であるとの認 識に立脚し,公的決済収支に着目して分析を行う。すなわち,国際収支を分析 する場合に,貿易収支,サービス勘定,短期長期の資本収支,移転収支などの 個々別々の勘定収支に分割せず,−・括して公的決済収支として把え,その公的 決済収支が貨幣の勘定に対応することに注意する。(ムッサによれば,国際収支

5)Mussa,M。,OurRecentExperiencewithFixedandFlexibleExchangeRate;A

Comment,ASi4QlementSeYies toihe.ルumald’MoneおryEtonomics,1976及び

TheFlexibleExchangeRate,theBalanceofPayments,andMonetaryandFiscal

Policyunder・aRegimeofContr・OlledF10ating,Scandinavian.ルumald.Etonomics,

Vol78,nO.2,May1976.

(13)

−JO3一 M.ムッサのマネタリー・アプローチ

が貨幣現象であるとの認識は,貨幣のみがすべての役割を演じているというの

ではなく,その致命的な役割を演じるということである。)第二に,その公的決

済収支の動向が貨幣の需要と供給に依存すると考える。政策の変化やその他パ

ラメ・一夕の変動も,この貨幣の需綺に与える効果を通じてのみ,公的決済収支

に作用する。例えば,輸出や輸入を取扱う場合も,通常は貨幣の需給を受動的

であるとするかあるいは無視し,結局ほそれを抽象して取扱う。しかしながら,

マネクリ・−・アプローチは,この貿易収支の変動を貨幣の需給の変化として把

え分析する。第三に,長期と短期に分け,国際収支の長期の動きに注目する。

そして,その長期の結果が実現する過程として短期を分析する。上記の第Ⅰ節

で考察したように,この短期の分析では,貨幣の変動は,輸出入の変化に対し

て受身のものとして取扱われ,貿易収支の結果として生じてくるものとされる。

このマネタリ、−・アブp・−チは,アブソープシ/ヨこ/・アブp、−チと矛盾なく

両立する。すなわち,外国為替の蓄掛も その国の支出をこえる受取の超過か

ら生じる。しかし,それは,アブソープショソ・アプローチをこえて−・歩進み,

この支出と受取の差異が貨幣ストックの変化を通じて解消して行くことを指摘

する。しかも貨幣の需給の効果を組み入れる場合に実質残高効果による支出へ

の影響のみを分析するのではなく,むしろたとえ実質残高効果が存在しなくて

も貨幣供給の実質価値の減少が利子率の変動を通じて支出に作用することを考

慮に入れ,より−・般的な種々の貨幣作用径路を包含せしめる。例えば,貿易財

と非貿易財の相対価格変化やポートフォリオ調整などの径路である。さらに,

マネタリー・アブロ1−チは,部分的均衡でなく,公的決済収支に着目し経済全

体の構造の貨幣需給に与える効果の分析を対象とする。したがって,非貨幣的

要因といえどもその変化を無視することはないのである。ただし,包括的に公

的決済収支を取扱う関係で,個別の収支例えば経常収支の赤字が他の個別の収

支例えば長期資本収支の黒字によって相殺され公的決済収支そのものが何の影

響も受けない場合には,貨幣の需要と供給に作用しないことから,それらの相

互間の作用の分析を見落しがちである。最後に,マネクリ・−・アプローチは,

貨幣の需給を重視することを除けば,ミードやピアースの弾力性アプローチと

大きく異なるものではない。M‖ムッサによれば,例えば貨幣当局が国内信用に

(14)

香川大学経済学部 研究年報 22 ーJO4− Jクβ2 対する中立化政策をとる場合には為替切下げ効果ほ貨幣を入れて導いた類似の 弾力性や限界性向で表示されることになる。しかしながら,各国が国内信用に 対して同じような政策をとる可能性が少ないこと,またこのような弾力性によ る表示を通常の相対価格変化の直接効果と混同したりあるいは貨幣政策が重要 な決定因であるときそれを副次的要因として取扱い貨幣的要因を軽視したりす ることなどの問題を生じる。 以上の諸点を注意しながら,M.ムッサは,1969年のフランスの平価切下げや 1971年のドルの為替本位の崩壊およびその後の為替相場の大幅変動に関して, マネタリ・−・アプローチの観点から次のように論述する。1969年8月のフラン スの平価切下げの原因は,1968年5月以来の政治的混乱にあったといえる。す なわち,1968年第2四半期にそれまで保有していた大きな対外資産は,その額 を90億フランも減少した。しかし,そのうち10億フランは貿易収支の悪化によ るものであり,他は資本の流出によるものであった。そして,この資本流出は 政治上の不確実性から生じたものである。この場合,問題は,このような状況 にも拘らず,当時準備貨幣の供給が全く減少せず,バンク・オブ・フランスが その国内資産を170億フランも増加し貨幣の異常な拡大に導いた点にある。1968 年の政治危機の解決は,賃金の増加と物価の安定に関する労働組合との密約に よってなされ,賃金指数の10%増と消費物価の2%騰貴(輸出入価格の2%下 落)を現出した。貿易収支は第3四半期に改善したが,フランその対外資産は 再び50億フランを減少した。しかし,バンク・オブ・フランスの国内資産は40 億フラン増大したから,準備貨幣はわずか10億フラン減少したにすぎないこと となった。そこで,この間の賃金の上昇は,外国為替準備の犠牲によって行わ れたといえる。引続く1968年の第4四半期から,1969年の第1四半期にかけて, 貿易収支赤字は10億フランから20億フランへと増大した。そして,輸出品価格 は輸入品価格に較べ騰貴し,国内消費物価はその輸出品価格をこえて騰貴した。 これは,賃金の上昇によって上向き圧力がかかり,世界市場によって下向きの 圧力がかかる場合の国内の生産品価格にありがちな現象であった。そこで,わ れわれほ.,この間の貿易収支赤字を伝統的な輸出の減退と輸入増大によって説 明することができる。しかし,他方それは,支出が所得を越えるというアブソ

(15)

−Jαラー M.ムッサのマネタリー・アブロ・−・チ ープショソ・アブロ・−チとその超過が国内信用の創出に.よってまかなわれた事 実によっても充分説明できる性質のものであるといえる。さて,この間のフラ ンスの対外資産の減少は,大部分この貿易収支赤字に.よって生じていた。しか しながら,1969年第2四半期になると,貿易収支赤字は,20億フランを越え, 他方対外資産の減少は90億フランへと急増した。これは,当時のドゴ1−ル大統 領辞任による政情不安によるものであるといえるが,しかしそこに生じた対外 資産の大幅な減少が当然生ずべき準備貨幣の減少を導かず国内信用の注入によ って補充された事実を見落してはならない。したがって,このような事態ほ, 長く続かず1969年8月に至って崩壊し,フランの約11%の減価とそれに続く為 替切下げへと進展して行ったのである。この平価切下げの結果は,輸出入価格 のそれに伴う騰貴を招来し,国内消費物価の3%上昇と賃金の貿易晶価格をこ える騰貴をもたらし,そして貿易収支赤字にも拘わらずフランスの対外資産を 1969年第2四半期と第4四半期の比較で20億フランも増大させたのである。こ の事態ほ,従来のように賃金の上昇と相対価格の変化によって説明することは, 不可儲である。それは,1970年に.入り賃金の上昇が貿易品価格上昇に追いつき 消費物価を凌駕し,なおフランスの対外資産の増大が続いた事実からも理解し うるところである。むしろ,この説明は,貨幣ベースのうち国内借用の部分の 変動に求められるべき性質のものである。それは,平価切下げの前後で国内信 用の動きと対外資産の動きを較べると,より明白である。以上のことからして, M.ムッサは,当時の政情不安が1969年のフランスの平価切下げの究棲的な原因 であったといいうるが,そこにおしなべて貨幣的要因が強く作用していたこと を否定できないと結論するのである。 次に,1971年のドル本位制崩壊は,世界経済におけるアメリカの優位が衰失 したことに原因するというよりも,1970年と1971年のアメリカの貨幣創出にそ の原因を求めるべきものであるという。この貨幣の拡大は,国内産出高と雇用 の増大を動機としたものであったが,ドル債権を保有しようとする諸外国の需 要に較べて余りにも過大であった。さらにこの需要は,ドルが切下げられるに 至りより一層減退し,ドルの減価に拍車をかけた。ところで,この1971年の危

枚以前の二年間(1967年第3四半期∼1969年第3四半期)は,アメリカGNPの

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香川大学経済学部 研究年報 22 −JO6− ノ.クβ2 急速な増加(17.6%)を示しており,したがってケインズ的考えにしたがえば その収支は所得増大に伴う輸入増加によって悪化すべきものであ・つた。確かに 貿易収支は,年々その黒字を正常な1960年代に較べて11億ドルはど小さくして いた。しかしながら,これに反して公的決済収支は21億ドル以上にのぼる累横 黒字を呈していたのである。このような異常な事態は,ケインズ的考えが全く 意味をなさないことを示している。むしろ,アメリカの貨幣供給が,GNPの成 長よりも小さな伸びにとどまり(9。.7%),そのため貨幣需要の所得弾力性を1 とした場合に約300億ドルの供給超過になっていたことによってのみ説明でき るのである。他方,それに続く二年間(1969年第3四半期∼1971年第3四半期) については,アメリカのGNPの成長率は鈍化し(12−9%)その価格騰貴は表面 化し貿易収支黒字は改善したが,アメリカの公的決済収支は329億ドルの巨額な 累標赤字を示した。そこで,この期間もまた,マネタリ1−・アプローチによっ て説明することができる。すなわち,当時の貨幣供給は,GNPの成長(12.9%) を越える伸び(24..7%)を示し,ほぼ450億ドルの供給超過であったからである。 ところで,このような超過供給はその後も続き,公的決済収支の赤字ほ1971年 第2四半期だけで60億ドルに達し,ついにドルの崩壊へとつながって行った。 そして,その公的決済収支の赤字は,1971年8月を過ぎた後も,1973年始めの スミソニアソ協定の事実上の無効に至るまで続いた。そして,その額は,1971 年以後の投機的誘因の消滅による−・時的減少を除くと貨幣の超過供給の存続の ために,1973年1月に大規模な投政が起るや再び100億ドルに.のばる額に達する ことになったのである。勿論,この間の貿易収支は,赤字であった。 M.ムッサによれば,以上のような固定為替相場のマネタリー・アプローチは, 容易に伸縮為替相場制における為替相場の説明理論として変換しうるものであ る。自由に変動する為替相場の下では,貨幣供給は,もはや対外取引を通じて 獲得されることはない。それに代って,為替相場は,価格としてその調整機能 を発揮し,貨幣の需要函数に入る価格や所得および貨幣に関する期待収益など の変数に影響を与えることになる。かくして,為替相場は,このような貨幣需 要が貨幣供給に等しくなるところで,決定されてくる。なお,管理されたフロ ート制の場合には,為替相場に対する変動圧力は,貨幣当局の対外準備保有額

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−J∂7− M.ムッサのマネタリー・アプローチ

の変化によって部分的に吸収され減殺される。

このような伸縮相場に関するマネタリー・アブロ㌧−チは,例えば1974年のス

イス・フランが他のヨーロッパ諸国の通貨に較べて高評価されたことをスイス 工業の国際的競争力よりもスイス・フランの供給がそれを保有しようとする需

要と比較して不足したことに,またこの1974年の石油価格引上げの時代にドイ

ツ.マルクがイギリス・ポンドに対して強くなったことをこれら二層の貨幣当

局の引締政策の差すなわちイギリスと較ぺてドイツが国内信用の拡張により厳

しい政策をとったことに,およびその時代のサウジアラビアが大幅な収支黒字

を維持したことを石油価格の上昇で入手した代金を所得増大に伴う輸入の急増

に費消せず大部分対外資産の蓄積の形で保有したことに,さらに1975年夏のア

メリカのドルの高評価をアメリカ並びに他の先進諸国の貨幣政策(短期金利引

上げ)が貨幣の拡張に歯止めをかけたことに,それぞれその説明を求めること

ができると主張する。そして,伝蔵的な為替の需給による説明や弾力性分析は,

これらの事態の説明原理としてほ,余り役立たなかったという。すなわち,伝

統的考えによれば,為替の供給は非居住者の行う当該国の輸出に対する外貨支

払いから生じ,他方為替の需要は居住者の行う外国からの輸入に対する外貨支

払いから生じる。そして為替相場は,この需要と供給によって決定される。そ

こで,固定相場制では,その超過需要が収支の赤字となって表われ,為替相場

切下げが国内貨幣タームで表した輸入価格上昇と外国貨幣タームで表わした輸

出価格下落を導き,ロビンソソ・ピッか−ダイクの条件を満すとき収支の改善

をみると言うことになる。他方,伸縮相場制の下では,このロビンソソ・ピッ

カーダイクの条件が,為替市場の安定条件となり,変動する相場の安定的か否

かの基準となる。そこで,このような伝統的考えは,為替相場を各国貨幣の相

対価格として把えず各国の産出高の相対価格として把えており,資金フローの

市場均衡に注目し資産ストックの市場均衡を看過するということになる。この

ように為替相場を各国産出高の相対価格として把えることは,為替相場の変化

が二眉間の相対価格の変化を引起し収支に影響を与えることから一見妥当のよ

うにみえる。しかしながら,一物一個の成立する世界において,たとえ為替相

場が特定の財でなくすべての財の貨幣価格を変動させることが可能であるとし

(18)

ノクg2 香川大学経済学部 研究年報 22 −Jα才一 ても,その相対価格まで変化せしめると考えるのは,なお納得の行かないこと であるという。しかも,もしその相対価格に影響が及ぶとしても,それが貨幣の需要 を伴わずに収支に影響するとは,とうてい考えられない。すなわち,為替相場 の切下げは,もしそれが自国の生産財の価格を外国の財に比較して下落させ自 国所得の増大と外国所得の減少を生じるならば必ず自国貨幣需要の増加と外国 貨幣需要の減退とを招き,また逆にもしこれら両国における貨幣需要に何の変 化も生じないならば国内信用の変動の無い限り収支に何等の実質的影響を与え ないことになるからである。上記の伝統的考えは,資金フロ・−の市場に注目し 資産ストックの市場を無視する。しかし,例えば固定為替相場の下で相対価格 が変化する場合に,その結果生じる外国為替の需給不均衡は,資金フローの市 場均衡を重視しレバー・九ッショソやその他の自己調節システムが働かないとす れば,対外準備の流出を引起こし,その対外準備が枯渇するまで持続すること に.なる。しかし,マネクリ、−・アブロ・−チのように資産ストックの市場均衡を 重視すれば,資産ストックの不均衡を誘発しその調整過程を経て新たなストッ クの均衡を達成してストップすることになるのである。そして,この後者の場 合にそこに考える資金フローの需給は,均衡を決定するものではなく,むしろ 資産ストックの市場均衡を達成させる単なる調整過程に生じる必要条件である にすぎなくなるという。 かくして,M.ムッサの言うマネクリ、−・アプローチの為替相場決定式は,最 も単純な形で, ∈=(〟/Aグ*ノ伍*/エノ 郎) で表わされる。6)ただし,∈は外国為替相場であり,自国通貨で表示した外国通 貨単位の価格である。また,〟/〟*は外国貨幣供給に対する自国貨幣供給の割 合であり,エソエは自国貨幣需要に対する外国貨幣需要の割合である。エソエは, 両国の貨幣需要に影響する所得水準や名目利子水準などの変数により変動す る。かくしてこの帥式は,為替相場の決定困としてフローの需給よりもストッ

6)Mussa,M,EmpiricalRegulationsinthe Behavior of Exchange Rates and Theories of the ForIeign Exchange Market,Zbliαカr軸物刑ent,劫ceちand

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−上の一 M.ムッサのマネタリ1−・アブロ・−チ

クの需給に着日していることになる。為替相場は資産の現存ストックを喜んで保有

するようなストックの需給を均等とする価格であると規定される。このように為

替相場をストックの価格として規定すれば,為替相場は,その他のストック価格と

同様に,将来為替相場に対する期待によって強く影響され,各国が行う貨幣政

策に関する予測の不安定性に大きく依存することになる。このことは,例えば

1973年春のドイツ・マルクのドルに対する切上げが,ドイツの実質的比較優位

の変化の反映であると共にアメリカに較ベドイツの貨幣政策がより緊縮的であ

るとの信念の反映であったことから明かであり,また為替の将来相場に対する

期待が上昇するとき外国貨幣の保有により獲得される期待収益の増加が自国貨 幣と較べた外国貨幣の相対的需要を増大させ現物相場を引上げることから明か

であるという。なお牒斌の為替相場決定或は,外国為替に関する投故について特別

の函数を設けることなしに,為替の将来相場に対する期待を,その中に組み込

んでいることになる。勿論,この為替相場の期待と相対的貨幣需要の関係む享,

通常取扱われるような貨幣需要の変化が二国間利子率差に与える影響すなわち

先物プレミアムを通じて,為替相場の期待値に結びつくという関係を,内包し

ているのである。さて次に,以上のように錮式が為替の将来相場の期待と経常

の現物相場とを関連づけることからして,その期待形成の問題が重要になって

くる。この点についてM.ムッサは,その期待が為替相場の動きを決定するモデ

ルと将来相場の期待値とを−・致させるような形で形成されねばならず,したが

って相対的な貨幣の需要に作用する変数の将来値と相対的貨幣供給の将来借と の加重平均(ウェイトは遠い将来ほど小さくなる)の形をとらねばならないと

主張する。このように期待形成が行われるなら,それは,以下に考察するよう

に各国の貨幣供給に関する経常水準と将来水準とがともに為替相場に影響を与

え,またその影響が一期間のみの変数変化である場合には全期間に亘り分散さ

れさはど大きくならず,各期に連続して起る場合にはかなり大きくなるであろ

うこと,さらに予期しえない為替相場の変化換言すれば過去の観察にもとずく

予測では考えられないランダムな変数変化が新しい情報の受入れによって生じ ることなどを示すことになる。

M.ムッサは,現物為替相場とその期待値および貨幣政策の間の相互関係を,

(20)

一丁J()一 香川大学経済学部 研究年報 22 ノダβ2 次のような簡単なそデルで表す。すなわち, 桝(f)=心(け†叩(f)+れ才) んか>0 方(f)=且亡〔5(才+1卜ざ(り〕 である。7)ただし,∽(f)は才時点における自国貨幣ストックの対数値であり,ざ(g)

ほ自国貨幣表示の外国貨幣1単位の価格で定義された為替相場の対数値で

あり,方(才)は為替相場の変化率の期待値である。昂〔〕は,f時点における 期待を表わし,その時点で利用可能な情報にもとずき形成されることを示す。 ど(′)は,自国の貨幣保有に影響する招)や方(∼)以外のすべての要因を包含す る変数である。上記伽)式においてその右辺は,財市場や資産市場などのすべて の市場の均衡式を代入整理してのち出される貨幣の需要方程式であると仮定さ れる。したがって,財市場や資産市場などで生じたすべての変化は,錮式の右 辺の変数ど(′)や弾力性スおよび甲の値の変化に反映されてくるものと解釈さ れねばならない。そのうち,特にど(g)の変化は,外国貨幣の供給や外国価格お よび外国の利子率などの影響を代表している。他方,スが正値であるとの附加的 条件は為替相場の上昇によって貿易される財の価格騰貴と自国の産出高増加を 通してまた外国貨幣に対する自国貨幣価値の割合の低下と外国貨幣で表わした すべての資産の割合の減少を通して自国の貨幣に対する名目需要増加をもたら すことから妥当であり,同様にクが正値であるとの附加的条件ほ将来の相場の 減価期待率の増大に伴う外国貨幣および外国貨幣表示資産に対する自国貨幣の 魅力を減じそのうえ期待インフレ率の増大を招来し自国貨幣に対する名目需要 減退をもたらすことから妥当である。かくして,伽)式と㈲式から ざ(才)=了缶〔桝(≠トど(g)+郎(汁1))〕 ㈹ を得る。この㈹式において現物相場5(f)を知るためには,5(′+1)の期待値が明 かにならなければならない。いま,資産保有者があたかも㈱式を知っているか のように行動するという合理的期待形成を仮定する。すなわち, 7)前出の㈲式の両辺の対数をとり,S≡♂乃∈およびど(f)≡ゼ乃(エソ〟■)とすれは,仇(′) =.S(′)+ゼ(り+れ′)を得る。伽)式とこの式の差ほ,期待相場に関する一行方(f)がない点と ス=1とされている点である。しかし,両式は類似の考えに立脚していることがわかる。

(21)

M.ムッサのマネタリー・・アブp・−・チ −JJJ− 紬(州))=註㌃鋸椚(汁1ト裾十1)+軋1(ぶ(汁2))〕 帥

である。Eと〔且皿(ざ(才+2))〕=′Ef(5(J+2))であるから,Ef(ざ(才+2)),且f(ぶ(才

+3))1‥‥川…等について帥式と塀似の式を導出しそれらを繰返し代入し整理する と, 00 ㈹

抽汁1))=孟秋〔勅・購(什川(了告)卜1

を得る。さて,われわれほ,遥か遠い将来をほとんど予測し得ないと考えるの が妥当である。そこで,∈’(′)を一・定借烏であるとして取扱う。そして,先ず桝(≠) が次のように決定されるものとする。

椚(ヂ)=痢+〟(才),〝(′)=γ〝(才一1)+f(′)

㈲ ただし,勿は貨幣供給の平均水準,〟(≠)ほ自己相関係数γ(0≦γ≦1)をもつ撹 乱項,ぎ(∼)は平均ゼロで分散0・芸であるような正規分布のランダム変数である。 資産(貨幣)保有者が勿と〟(才),換言すれば貨幣供給研(J)に関する確率過程 を知っているものとすると, &(椚(≠+ハ)=痢+γ′㍑(∼) ㈹

となる。この㈹式を¢㊥式に代入し,gど(∫(g+1))=g十〔γ/(人+扇1−γ))〕〟(≠)を

得る。これを錮式および㈹式に代入すれば 5(g)=g+( )α(才) 射) ス+(1−γ) 方(g)=Ef(5(J+1)−5(り)=(1−γ)(g−ざ(り) ㈹ を得る。ただし,現物相場の長期期待値は,㈹式の両辺の期待値をとり∽(わ= 痢およびど(f)=々と置いて得る値g=(1/人)(痢一々)である。かくして,貨幣 供給の増加(〝(わの増加)は,γが小さい時,㈹式から資産(貨幣)保有者の現 物相場のgへの急速な収欽の期待を生じ現物相場ざ(J)の上昇(自国貨幣減価) を招く共に㈹式から資産(貨幣)保有者の自国貨幣価値の再上昇の期待(方(g) の下落)と伽)式と㈲式の相互関係を通じて起る自国貨幣保有増による現物相場 5(f)の上昇阻止を招くことになる。他方,γが大きい時は,㈹式から現物相場の gへのより緩慢な収赦の期待を生じ貨幣市場の需給を均等とするようなざ(f)の より大きく長い変動を招くことになる。さらに,γ=1となる時は,最初の貨幣

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−Jヱ2− 香川大学経済学部 研究年報 22 ノダβ2 供給の増加という撹乱が永続する期待(方(∼)=0)を生じ,椚(f)=痢+〝(f)−ゑ ただしs(f)=(1/ス)椚(′)よりしてその永続的撹乱の現物相場5(オ)の変動のみ による吸収を招くことになる。さて,次に.貨幣供給函数がその成長率を含む形 で規定されるものとする。この場合ほ,貨幣供給式は伽)式の代りに, ∽(J)=椚(卜1)+〟(∼)+ぞ(′) ㈹ となる。ただし,吉(′)は紳式と同じものであるが,これに対し〃(g)ほど(りか ら独立な平均ゼロで分散d誉の正規分布のランダム撹乱項∠(′)をもつような 〃(∼)=〃(才一1)+J(り 匂弟 で表わされるものとする。ゆえに.,この〟(f)ほ貨幣供給の長期成長率と理解す べきである。以前と同様に資産(貨幣)保有者が貨幣供給の確率過程を知って いるものとすれば, &(∽(才+.ハ)=椚(f)+jβ(f) ㈹ となる。β(g)…&(〃(り)は,才時点の利用可儲な情報如何に依存して,必ずし もβ(g)=〟(よ)とはならない。しかし,もし資産(貨幣)保有者が各時点にお いて生起する〃(りの値を常に知っているものとすれば,β(f)…β。(〃(り)= 〃(g)となる。また,桝(f)についても同様に考えることができれば,ぎ(′)≡ Efほ(f))=∈(f)となる。そこで,㈹式を㈹式に代入し,gf(ぶ(≠+1))=(1/ ス)〔椚(才卜々+((人+符)/ス)β(g)〕を得,それを㈹式に代入すると, s(g)=与(椚(fト紆号釦)) ㈹ を得る。さて,貨幣供給の予期せぬ増加は,以前と異なり㈹式からわかるよう にこの場合ぎ(J)に原因するものと〃(f)に原因するものの二十種がありうる。 拍)に原因した貨幣供給の増加は,㈹式と㈹式隼より5(f)を(1/ス)拍)だけ上 昇させ,さらに昂(∫(∼+1))を同額上昇させる。他方,J(g)に原周した貨幣供給 の増大は,㈹式のβ(J)と∽(f)の増加を通じs(f)を(1/ハ(1+甲/人)((f)だけ上 昇させる。しかし,この場合の上昇額は,ど(りが増加した場合より大きぐなる。 すなわち〈(g)の増大ほ昂(s(f+1))をもより大きく増大させる(より大きな自 国貨幣の減価期待をもたらす)からである。最後に,資産(貨幣)保有者が研(≠) の時間径路の観察によって〃(≠)とど(′)を推測するものと仮定する。すなわち,

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一JJ3− M.ムッサのマネタリ血・・アブロ・−チ β(′)=β(才一1)十α〔椚(′ト椚(仁1)−β(才一1)〕 ㈹ とする。この右辺の第二項は,例の観察された変化研(≠)一例(ト1)とその期待 値β(才一1)との差に割合αを乗じたものである。その割合の大きさは,∽(≠) −リ朋(≠一1)とβ(卜1)の違いが∽(f)の水準の変化よりも〃(f)の予期しない 変化によって生じるような値, β2+β誉 ㈹ α = β2+0Z+∂・芸

ただし,β=‡ト糾ノ扇子房房〕

をとるものとす−る。8)ただし,この場合,㈹式からわかる如く,貨幣保有者は,

≠時点における変化を,ぎ(g)によるものか〈(g)によるものか区別できない。ゆ

えに,研(才)の成長率の増加(∠(g)の増大)ほ,研(オ)の水準の増加(ど(′)の増大)

と同じ効果を与える。そして,5(f)はど(才)であろうと((≠)であろうと(1/ス)(1

+α(ス+符/ハ)となる。しかし,このような誤謬に基づく現象は,いずれ是正さ

れるのほ.いうまでもないことである。 以上のようにM…ムッサは,国民経済全体を伽式の貨幣市場均衡式と㈲式の

貨幣需要の期待形成によって表現し,そしてこの場合の貨幣供給函数を㈹式と

するケ、−スと㈹式とするケ、−・スのこ種について考察した。先ず,前者の㈲式の ケ、−スについてほ,γ<1のとき為替相場の変動がその平均水準へ復帰する期 待を導き回帰性を持つが,γ=1のとき永続変動の信念に導き回帰性を持たな いことを示した。回帰性のあるものとしては,カナダとアメリカの間の為替相

場がその例であり,過去100年に亘り10%以内の変動を示し,常にその平均値に

回帰する債向をもった。他方,永続的為替相場変動の信念が生じた例としては,

1974年1月まで続いた1973年5月と7月のマルクのドル相場急騰にみることが

できる。この時期は,旧来の為替相場体制の崩壊と石油価格の上昇に伴う世界

的不況が資産市場にまで及び,旧平価への相場復帰がもはや望み得ず適当な平 8)Mムッサは,βを柁庖戒㍑菰奴儲胱ばによ′つて規定している。しかし,その導出過程 の詳細な記述はない。MMussa,AdaptiveandRegressiveExpectationsinaRational ModeloftheInflationaryProcess,.ルumal扉■Moneh27y丘ねnomics,Vol.1,nO.4,Odt 1975から類推できる。

(24)

香川大学経済学部 研究年報 22 ノ夕β2 一丁JJ− 均水準も極めて不確実なものを示した時代であった。しかしながら,そこにた だマルクの切上げに対し将来も永続するという永続性の信念のみが一・般的であ り,それが為替相場の変動に.強く反映したのである。なお,このような永続変 動の期待形成は,カナダの場合にも充分起りうるものである。例えば,高度の インフレ政策により正常な期待の破壊されることが起る場合である。次に,後 者の㈹式および㈱式を貨幣供給函数とするケ、−スについてほ,資産保有者が利 用しうる情報如何によって期待形成の結果が異なることを示した。利用しうる 情報が限られており,資産保有者ほしばしば誤りを犯すものである。その例と しては,投機に伴って−生じる−・方向の極端な為替相場の変動を見れば,充分で ある。最後に,前者と後者の両ケ、−スについて,為替相場の変動が貨幣の需要 や供給の変動より大きくなりうること,および先物相場の取扱いに特に注意す べきことを附託する。すなわち,㈹式において為替相場ざ(′)の変動は,人+ヴ< Jを仮定すれば,研(f)やg(′)の変動より大きぐなりうる。また,かりに先物相 場を将来現物相場の期待値と同じものと考えると,その場合佃式のケースでは γ=0のとき現物相場が先物相場に何等作用せず常に先物相場を−L定にするこ と,0<γ<1のとき先物相場が現物相場より小さいけれども同じ方向に変動 すること,γ=1のとき現先両相場がともに同じ変動を示すこと,さらに(欄式㈱ 式のケースでほ情報の完全であるとき先物相場が現物相場に較べて椚(f)の水 準の変化に対して同じだがその成長率の変化に対してより大きく変化するこ と,並びに情報の不完全であるとき先物相場が常に.椚(f)の予期せぬ変化に対 して大きく変動すること,等を見出した。 上記の如くマネダリ、−・アプローチは,常に国民経済全体の均衡が成立する ように貨幣の需要と貨幣の供給を等しくかつその中に期待を導入して議論を進 める。しかしながら,そのことが,直ちにリアルな側面の影響を軽視すること にならない。例えば,先進国の収支や為替相場に影響するリアルな変数である 実質所得の成長は,既にのべたように貨幣の需要の伸びに反映され,もし貨幣 供給を一・定とすれば収支黒字や通貨の高評価に反映される。また,発展途上国 の輸出価格変化も,石油価格急騰にみるように必ず貨幣需給の変動に反映され 為替相場や公的決済収支に作用する。かくの如く,マネタリ1−・アプローチで

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−JJ5− M.ムッサのマネタリー・・アブロー・チ は所得や価格いずれのリアルな変化も必ず貨幣の需要か貨幣の供給の変動を導 くことになる。すなわち,それらは,上記の¢4)式でみるとき一・定借ゑとして取 扱ったH≠)(貨幣需要)の変化かあるいは平均水準痢の変動をもたらす貨幣政 策(貨幣供給)の変化に反映されるものである。 ⅠⅠI M小ムッサは,以上のマネタリー・・アブロ・−チせより広い資産市場アブロ∵−チ (asset market approach)の一つの具体的形態であるとして理解する。彼の 言う資産市場アブロ十−チは,為替相場が組織された資産市場(株式や商品スト ック市場)で取引される資産の価格と本質的に.異ならない諸力で決定されると する考えに立ち,フロ、−・としての需要とフロ・−としての供給のバランス(具体 的には収支均衡)でなく現存するストック全額を喜んで保有するところで決定 されるとする。取扱われる資産が耐久財である以上,その価格は,その将来価 格について抱く市場の期待と深く関係している。そしてそれゆえに,予想に関 する市場の情報は,ただちにその価格に反映される。これに対し,フロ・−の需 要とフローの供給による為替相場の分析(flowmarketmodel)は,9)買手の需 要曲線と売手の供給曲線が別々に計測されかつ各々の動機が異なる場合に,始 めて有効な考えとなりうる。例えば,通常の財の需給による価格決定において, その需要ほ消費者の趣好や所得並びに価格に依存し,他方その供給は生産技術 や要素価格および生産規模等に依存する。そして,これら両者は全く異なるも のである。しかしながら,資産市場では,その買手と売手の動機は,このよう に異質であるとされ得ないものである。むしろ,それらは,ともに同じであり, そこにただ同じ期待収益率をより楽観的にみるかより悲観的にみるかだけの違 いが存在するにすぎない。したがって,このような資産市場でほ,例えば株式 を買おうとするフロ、一需要とそれを売ろうとするフロー供給の分析を行い両曲 線の弾力性を強調するようなアプローチは全く意味を持たず,必ず株式の現存

9)Mussa,M,EmpiricalRegulationsin the Behavior of Exchange Ratesand Theor■ies ofthe Foreign Exchange Market,Ebliq hr Eh4)bymenち 劫ces,and

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香川大学経済学部 研究年報 22 ノダβ2 ーJJ6− ストックとその保有という関連を注視するアプローチのみが意味をもつことに なるというのである。 単位期間当りのフロ、一需要とフロー供給によって為替相場が決定されるとす るフロ・一市場モデルは,次のように要約できる。外国為替の需要ほ財の輸入か ら生じ,外国為替の供給は財の輸出(外国の財輸入)から生じる。そして,均 衡取引量と均衡為替相場は,その為替に関する右下りの需要曲線と右上りの供 給曲線の交点において決定される。いま,少を自国の貨幣価格とし,♪*を外国 の貨幣価格とする。そしてノと′*を両国の実質で表した輸入量としす=頭ソ ♪および甜/∂す<0,甜*/∂(1/¢)<0とすれば,外国為替の需要はβ= 〆J(頭*/♪)となり,相対価格すおよび為替相場eの減少函数となる。また,外 国為替の供給はS=(♪/e)Jとなり,輸入需要の弾力性を1より大とする限 り,ヴおよびeの増加函数となる。かくして,外国為替の需要および供給曲線ほ 第6図の∂曲線とS曲線で表わされてくる。為替市場の安定条件は,周知の如 くマ・−シヤル・ラーナ一条伴野掴+符ル。+1<0である。そこで,これが充さ れるものとすれば,輸入需要の1%の外生的変化〟/Jほ,(J/e)(♂e/〟)= −1/(裾9+町,掴+1)よりしてほぼ同額の為替相場上昇(分母の絶対値が1に 近いとき)をもたらす。また,中央銀行が為替市場に介入し為替相場を維持し ようとする場合には,その公的な為替購入額は,変化すべき為替相場の率♂e/e と為替売買額の関係(β/〆)J=(軋。+符J・,川+1)(♂e/e)よりして,より少くな 外貨フロー額 外貨フロー額

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−Jヱ7− M.ムヅサのマネタリー・アブロ1−チ

る。さて,この単純なフロー市場モデルに民間資本移動を導入する。民間資本

の流入は,S曲線を右方にシフトさせ為替相場をeoからelに変化させる。民

間の資本移動は,投資の利潤率の外生的変化あるいは利子率の変動によって生

じてくる。いま,利子率の変動が財の輸出および輸入に影響せず5曲線やβ曲

線を不変のままに残すものとしあたかも外生変数のように取扱いうるものとす

れば,第6図右半分が得られる。すなわち,β一5曲線はその左半分に描かれた

β曲線とS曲線の水平距離である超過需要額を表わし,またSP曲線は投機

者による外国為替の純供給曲線を表わしている。投機者ほ,経常為替相場∈が

百より小さいときその上昇を期待してより多くの外貨を保有し逆にぎより大

きいときより多くの自国貨幣を保有するのが,利益的だと考える。したがって,

投機的な期待を導入する場合,為替相場は,財の輸出および輸入による外国為

替の超過需要曲線とこの投機による純供給曲線の交わる点ゐに・おいて均衡に

達することになる。このように,拡大されたモデルにおいてほ将来相場に対す

る期待が重要な役割を演じてくる。経常相場は,もしSP曲線の供給弾力性が

無限大(水平線)であるならぎで決定され,またもしSP曲線が図のように右

上りの勾配を持つなら投機業者並びに貿易業老双方の外国為替需給の相互作用

によって決定される。そして,投機業者と貿易業者の相対的重要度は,第6図

右半分のこれら二つの曲線の勾配に依存するのである。ところで,固定相場制

からフロートする相場制への移行時代に,このようなフP・一市場モデルにもと

づいて弾力性悲観論と弾力性楽観論(elasticity pessimism and elasticity

optimism)の相互対立が起った。フロート制への移行は,アジャスタブル・ペ

ック制の下における不連続で大きな相場の変動に伴う破壊的な為替危機を回避

するためになされたが,フロート制移行後の為替相場の変動が為替市場安定条

件の計測結果と共に安定的でかつ経済調整に役立ち得るものか否かを疑問視

し,問題を生じた。すなわち,弾力性楽観論者は,長期的には輸入需要弾力性

が大であり為替市場の小さな撹乱も比較的大きな相場変動をもたらすと信じ,

かりに短期で輸入需要弾力性が小さいとしても将来の相場を予測する投椀者の 存在のためにそれが高度に弾力的な為替の供給を行い為替相場を長期期待相場

の方に近ずけ安定化すると考えた。これに対し,弾力性悲観論者は,輸入需要

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ノダ♂2 −JJざ− 香川大学経済学部 研究年報 22

弾力性が小さく市場が不安定であり,また投機者の外国為替の投機的純供給も

それほど弾力的ではなくむしろ将来相場に関する期待の形成に確固とした基礎

を持たず不安定要因を附加するにすぎないと信じたのである。

M,ムッサによれば,以上要約したフロート市場虻デルは,次のような諸点で

その欠陥を有しており,為替相場の説明原理となり得ないという。第一・に,そ

の分析方法が部分均衡モデルによっている点である。したがって,一「・般均衡モ

デルと比較して,しばしば他の要因の動きや勘定の恒等関係を無視しがちであ

る。第二に,部分均衡モデルであること以上に問題となるのは,現物相場の変

動が本質的にランダム・ウアークしているにも拘らず,それを充分に説明しえ

ない点である。フロー市場モデルによってこれを行おうとすれば第6図に措い

たような各曲線を外生的にシフトさせることに頼らねばならない。ところが,

たとえば自国と外国の輸入需要曲線すなわちβ曲線やS曲線をシフトさせラ

ンダム・ウアークと−・致する動きを作り出そうとする場合,価格一・定の下での

シフトはそれを引起した撹乱に負の相関(例えば輸入減少は次期の輸入増加を

招く)があることから,また−・般物価の変動に・よるシフトはその月別データで

みた−・般物価変動に正の相関があることから,いずれも充分な説明をなし得な

いものとなる。ゆえに,β曲線および5曲線のシフトによる説明は,本来その

撹乱が偶発的であるとき便利であるが,上記のようなランダム・ウァ、−クで規

則性のある相場の動きを説明する場合には余り適当なものでないようである。

そこで,β曲線やS曲線のシフトでなく投機者の行動を示すSP曲線をシフト

させることによって説明しようとする試みがなされてくる。5ア曲線が水平で

ある場合それを上下にシフトさせランダム・ウアークを導くことができる。し

かしながら,既に述べた如く,この場合,5P曲線が水平であることは,直ちに

β曲線や5曲線を為替相場の決定から排除することになってくる。したがっ

て,それは,フロl一市場モデルによる分析を初めから放棄するに等しい。これ

と類似の傾向は,何もSP曲線が水平でなく通常のように右上りであっても生

じてくる。すなわち,この場合,非投機者の行動は,投故老に新しい情報を提

供するにとどまり,為替相場決定においてその役割をそれだけ小さくしている

からである。要するに,SP曲線が水平であろうと右上りであろうと,いずれも

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