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ムッサの貿易収支βは,国際通貨(対外準備)に対する当該国の保有欲求を

何等反映するものではないのである。かりに,そこに国際通貨が存在するとし   ても,その国際通貨は,保有の対象ではなく,全くのヴェールであると考えね   ばならない。ゆえに.,この点に関してMいムッサの分析は,ドー・ソブッシュのモ   デルよりもー・歩後退しているといえる。すなわち,ドーンブッシュ.・モデルに   おける対外準備に対する保有欲求ほ,Mいムッサのように〟やCの動きの反映   ではなくて,少くとも当該国の国内貨幣に対する超過需要と直接結びつき,そ   れに割合レを乗じた大きさで生じるものとされているからである。ゆえに,M.  

ムッサの固定為替相場における国際取引は,全くの物々交換取引を想定してい   るとしても,それを否定する証拠を提出しえないのである。そして,このよう   なMいムッサ・モデルの特色は,伸縮為替相場の下での彼の分析においても同様   に保持されているように思われる。   

われわれは,第ⅠⅠ節において,1969年のフランスの平価切下げや1971年のド   ル本位制の崩壊並びにその後の伸縮為替相場に関して,M。ムッサのマネクリ  

−・アプローチによる説明を概観すると共に,伸縮為替相場下における彼の為  

替相場の決定理論を考察した。M.ムッサの為替相場決定式は,期待を考慮に入  

れなければ簡単に,   

M.ムッサのマネクリ・−・アプローチ   −J37一  

e=(〟/〟*)(エ*/エ)   ㈹㌧  

となる。ただし,eほ為替相場である。両辺の対数をとり,為替相場に関する屑   来の期待を加えて調整し,貨幣市場の均衡式を導出すれば,   

研(〜)=ス5(り−抑(り+ど(f),ス,符>0  

㈹  

を得る。ただし,小文字は,大文字表示の変数の対数をとったものである。ま  

た,方(才)は為替相場の変化率の期待値,さらにぃりほ5(≠)や方(才)以外の自国  

貨幣保有に影響を与えるすべての要因を包括する変数例えばゼ乃(〟*/エ*)であ  

る。そこで,外国価格および外国利子率など外国貨幣の需要や供給に影響する   変数は,すべてど(才)の中に.含まれるものと理解される。マネタリー・アプロー   チにおいて,この㈹或は,中心的役割を演じる。すなわら,これに為替相場変   化率の期待値方(り=&〔ぶ(f+1ト5(り〕を代入し,かつ合理的期待の形成を仮   定して,   

5(f)=註す〔桝(けぺ(出動(汁1))〕   ㈹  

く○  

ただし・E勅+1))=羞碁減価=(州〕(琉)卜1   を導く。いま,れ′)を一・定借ゑと仮定する。そして貨幣の供給に就いて,   

雛(≠)=痢+α(′),α(り=γα(わー1)+∈(≠)  

㈹   あるいは   

桝(才)=椚(巨1)十〝(g)+ぎ(f),〃(f)=〃(才一1)+〈(〜)   Q08  のこ種のケースを考えるものとする。ただし,痢は貨幣供給の平均水準であり,  

ど(J)および (f)は平均ゼロ分散8・芸,8・2で互いに独立な正規分布を持つランダ   ム項である。前者のケ1−スほ,㈹式を(朋式に代入し,  

) )〝(り,g=‡(成一ゑ)  

ざ(り=g+   ㈹  

ス+甲(1−γ   

となり,後者のケースほ,㈹式を(舶式に代入し,   

ざ(才)=‡(桝(fト帥号β可,β(f)≡軌(g))   

㈹   となる。この㈹式と㈹式がM.ムッサによって提示されたマネタリー・アブロ、−  

チによる為替相場の決定式である。彼は㈹式をγ<1,γ=1,0<γ<1の   

Jクβ2  

香川大学経済学部 研究年報 22   

−ユニ好一  

夫々の場合にわけて,また㈹式を情報が完全である場合と不完全である場合に   わけて,それぞれ考察を行い,加えて各々のケ・−スに関する事例を示した。か  

くして,マネクリ、−・アブロー・チによる伸縮為替相場の説明は,上記のように   期待を導入した形で展開されることになったのである。   

M.ムッサにおいてほ,マネタリ、−・アブロー・チほ,より広い資産市場アブロ  

−チの具体的形態の一山つであるにすぎない。われわれは,このことに関して,  

引続く第ⅠⅠⅠ節において考察を行った。ここに言う資産市場アブロ∵−チとは,彼   によれば,為替相場が組織された資産市場で取引される資産の価格と本質的に   異ならない諸力で決定されるとする考えに立つものであり,フロ∵−の需要とブ  

ローの供給によって決定されるとする収支説を否定するものである。したがっ   て,為替相場は,将来相場について抱く市場の期待と深く関係するものとして   把握されることになる。そこで,われわれは,第ⅠⅠⅠ節において,先ずM、ムッサ   の為替相場の決定に閲す−る収支説の批判を考察し,その後彼の資産市場アブロ  

−チによる為替相場の動学分析を概観した。彼の為替相場の動学分析は次のよ   うに展開される。貨幣市場の均衡を表わす式を中心に置き,それを対数値でと   り,  

椚=々+P+甲査   q㈲  

とする。ただし,Pは当該国の−・般物価水準であり,国内で生産される財の価   格カと輸入財の価格〆の間にP=0少+(1−8う(〆+ぶ),0<β・<1の関係が   あるものとする。また,ニ国の名目利子率よ■と哀■*の間には為替相場の期待変化   率(先物プレミアム)¢を通じて,2=査*+¢の関係が得られる。そこで,上の  

㈹或は,  

P=桝−ゑ+甲(査1¢)  

M  

のように表わされることになる。他方,当該国で生産される財の市場は,均衡   においてα(p−γう+β(〝−す)=0によって規定される。ただし,こちでpは実   質利子率,また¢は相対価格(¢…♪一(〆+ざ)),〝は自然相対価格である。〃  

を期待インフレ率とすれば,実質利子率γ=才一〝である。そこで,国内で生   産される財の市場を均衡に維持するときの相対価格曾は,  

す=〃+(α/β)(p一査*−¢+〝)   ㈹   

−J39−  

M.ムッサのマネタリーー・アブロ1−チ   

で表わされてくる。なお,㈹式とqlカ式が成り立ち両市場が均衡である場合久少*,  

君」払5の相互∵問には   

♪=P+(卜∂うすあるいは5  カ  

の関係が成立っている。以上のようにMいムッサの軍産市場アプローチは,㈹式   と㈹式の二つの方程式に集約される。さて,このモデルで重要な変数は,為替   相場に.関する期待変化率¢と−・放物価に関する期待インフレ率〝である。そ  

こで,完全予見の合理的期待を仮定して,〃=βP=d袖十(1−♂)(か♪  

+β〆)および¢=かざ=かダーd)¢−β〆と置き,㈹式とM式に代入して,そ   れらを,  

か曾=α(す−Z)  

819  

βP=∂(クーび)+α∂・(¢一之)   飢増  

と書きかえる。Zほリアルに係わる要因の和〝+(α/β)(β−査*十が)であり,抑   は貨幣に係わる要因の和桝−ゑ+符(査*−が)である。ただし,が=β〆とする。  

この南武を解き,均衡径路(特解)を求めると,   

q19  

す(才)=G(f)=羞g(刷+々),ただしg(々)=α(孟)紬   

の  00   

和)=鞘)+〝∽=∑招)紗(什糾∑ゐ(烏)g(汁ゑ),  

烏=0  烏=0   

ただしノ(ゑ)=∂(一缶)…ぉよびゐ(々)=盈〔g(々トパゐ)〕  ◎   を得る。また,相対価格および為替相場の均衡径路について,   

オ(f)=ダ(f)+(1一β・)。/(≠)   

g(g)=ダ(g)一正烏)一〆(り  

0〇  

ただし,川)=∑肋(汁れ・パゑ)=g(糾了㌔ゐ(ゑ)  

た亡0  

くX〉  

ェ(g)=∑g(刷+射,ゼ(烏)=g(々卜吉ゐ(々)  

点こ0  

を得る。そこで,〟いムッサは,均衡価格および均衡為替相場について次のよう   

J夕β2  

香川大学経済学部 研究年報 22   

−ヱ40一  

に言う。完全予見を仮定する場合,それらは,貨幣に係わる外生的要因紺とリ  

アルに係わる外生的要因Zの現在値およびすべての将来値の加重平均で表わ  

され,必ずしも一・定の値に収赦するものでほない。外生的貨幣要因紺は,加重   平均ダ(声)を通じてすべての貨幣価格の均衡径路に作用する。しかし,相対価格   の均衡径路す(才)ほ,それによって影響されず,それから中立である。さらに,  

−・般物価の均衡径路香子)はZの平均水準に依存せずそのわまりの/くタ・−ソに  

依存し,相対価格の均衡径路離)ほリアルの外生的要因Zのみに依存する。さ   て,以上ほ.,予見が完全であるとの仮定の下になされたものである。しかし,  

この結果は,M.ムッサによれば,完全予見の仮定が成立せず不確実な状態を想   定したとしても,大きく変らず妥当するとされる。すなわち,例えば均衡為替  

相場についてみると,時点=′こおけるよ■時点の相場の期待をβ(g(≠);りとし81紗  

式の両辺の期待をとってβ(g(g);J)=E(ダ(貞一);け「げ(エ(査);バ  

ーE(〆(査);f)とすればよいだけである。   

動学分析に関して,均衡径路の変化とそれからの轟離が考えられる。先ず,  

各変数が均衡径路にあるものとし,その変化を考える。各変数の変化は,利用   可儲な情報にもとずいて予期できる変化と予期できない変化とにわけられる。  

均衡為替相場についてみると,その予期できる変化は,   

βe(g(り)=βe(且〔ダ(f);Ⅲ−d)e(β〔エ(g);り)−βg(〆(り)  

00   

ただし,βe(押(′);棚=:./■(ゑ)印〔紗(汁々);用  

烏=0   

00  

−dγ(β〔エ(′);川=−∂・:g(々旭(地(汁ゑ);用  

烏=0  

であり,予期できない変化は,   

βぴ(g(′))=βぴ(E〔ダ(′);用−d㌢(E〔エ(′);り)−βぴ(〆(f))  

Q19 

側  

00  

ただし・βぴ(押(′);用=∑ノ(紺〔紗(巨十か+1);汁1ト抽(汁ゑ  

ゐ=0  

+1);り)  

00   

−d㌢(E〔エ(′);用=−∂・∑ゼ(ゑ雁〔g(ト・烏+1);什1〕  

た=0   

一JJJ一   M.ムッサのマネタリー・アブロ㌧−チ  

一旦〔g(f+点+1);り)  

である。¢19式と用式の右辺第1項ほ,−・般物価水準の均衡解に関係し,その第   2項ほ相対価格の均衡解に関係する。ゆえに,均衡為替相場が購買力平価と一  致するためにほ,819式と8Zゆ式の右辺の第∴2項と第3項が不変であることを必要  

とする。次に,為替相場が均衡径路から帝離する場合を考える。その最もあり  

そうなケ、−スとして,当該国で生産される財の市場が即時に均衡とならず価格   に関して次のような調整を仮定するものとする。   

β〔♪(川=βe〔タ(g)〕+∂(タ(才)一夕(g)〕,∂>0  

Q2D 

ただし,ここで∂は調整スピードである。他の内生変数ほ,それに応じて変化  

してくる。すなわち,−\般物価水準はP一戸=∂・(♪一夕)+(1−ぴ)(s一言)とな   り,利子率ほ査−㌻=¢−すおよびP一戸=符(査−J)となる。また,脚式の仮   定から,すべての内生変数は,∂の率で均衡へ収赦する。そこで,先物プレミア   ムほ¢−す=∂(g−5)となる。かくして,  

5一言=−β(♪一夕),ただしβ=   >0  

(1一∂・)+符∂   

いま,ダ(gト♪(才)…0(才)と置き,Ⅲ式および8訝式を書き換えると,   

β〔Q(g)〕=−∂Q(J)+βむ〔タ(′)〕  

ただし,βぴ〔タ(川=エけ(β〔ダ(f);り)+(1+∂うβα(E〔/(f);り)   

ぶ(f)=g(f)+♂Q(g)  

を得る。旧式を解くと,  

00   

釦)=∑(ト∂)刺)β 〔♪(巨ゑ)〕  

烏=0  

n恐  

を得る。すなわち,撹乱の大きさは,過去のすべての予期できない変化の加重   平均からなる。他方,q29式の両辺に関して予期できる変化および予期できない   変化を考え,   

βe(ざ(f))=βg(g(り)−∂β¢(g)=ββ(g(g)ト∂(5(′ト音(り)    ㈹   

βむ(ざ(f))=βα(g(り)+β∂む(オ(り)   脚  

を導く。¢婚或は当該国の為替相場が国内で生産される財の市場と同じく∂の率   で均衡径路に収赦することを表わし,他方脚式は予期できない均衡径路の変化   

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