1 2015 年度
卒業論文
アルギン酸分解酵素の予備精製
Prepurification of alginate lyase
高知工科大学 環境理工学群 1160207 小林 史弥
指導教員 有賀 修 准教授
2 目次 第1 章 緒 言 ··· 3 第2 章 Cellvibrio sp. OA-2007 由来の酵素によるアルギン酸の分解 ··· 4 2-1. 実験材料調製··· 4 2-1-1. 実験材料 ··· 4 2-1-2. 寒天分解菌の培養 ··· 4 2-1-3. 粗酵素の調製 ··· 4 2-2. 実験方法 ··· 5 2-2-1. 分解反応実験 ··· 5 2-2-2. 滴下実験 ··· 5 2-3. 結果と考察··· 5 第3 章 アルギン酸分解酵素の予備精製 ··· 8 3-1. 実験材料調製··· 8 3-1-1. 実験材料 ··· 8 3-1-2. 粗酵素の調製 ··· 8 3-2. 実験方法 ··· 8 3-2-1. 活性 ··· 8 3-2-2. タンパク質量 ··· 8 3-2-3. 比活性 ··· 8 3-2-4. 精製度 ··· 9 3-2-5. 硫安 ··· 9 3-2-6. HAp ··· 9 3-3. 結果と考察··· 9 3-3-1. 硫安による精製 ··· 9 3-3-2. HAp による精製 ··· 9 3-3-3. 精製度 ··· 9 第4 章 アルギン酸分解酵素の耐熱性 ··· 13 4-1. 実験材料調製··· 13 4-2. 実験方法 ··· 13 4-3. 結果と考察··· 13 第5 章 結言 ··· 15 謝辞 ··· 16 参考文献 ··· 17
3
第
1 章 緒 言
アルギン酸とは、褐藻類の細胞間粘質多糖成分の一つで、β-D-マンヌロン酸(M)とα -L-グルロン酸(G)のウロン酸が1,4結合を繰り返す多糖である。食品、化粧品、医 薬品など様々な用途に使用される。しかし、アルギン酸は水に溶解すると極めて高粘性を 示すため、食品、化粧品、医薬品など様々な用途に適用するためには、アルギン酸リアー ゼでアルギン酸を分解することにより、アルギン酸水溶液の粘度を低下させることが必要 である。また、アルギン酸に酵素を添加することで、β脱離反応が起こり、二重結合をも つオリゴ糖が生成される。このオリゴ糖には植物の根の生長促進効果、腸内細菌の増殖促 進など、様々な生理活性作用が報告されている。本研究では、硫酸アンモニウム(硫安)と ヒドロキシアパタイト(HAp)を用いて、アルギン酸分解酵素の精製を試みた。 Cellvibrio sp.OA-2007 を、アルギン酸ナトリウムを加えた培地で培養した後、トリス緩 衝液で菌体を洗浄し、超音波破壊を行い、粗酵素液を調製した。アルギン酸ナトリウム溶 液に粗酵素を添加し、25℃で種々の時間反応させ、加熱(100℃)により反応を止めた。反応 液を針(内径 0.7mm)付きシリンジに入れ、1mL が滴下する時間を計測した。粗酵素を種々の 濃度の硫安で硫安分画を行った。さらに、HAp を用いて種々の濃度で酵素の精製を行った。 アルギン酸分解酵素の活性を、反応液の 235nm の吸光度から算出し、タンパク質濃度を、 BCA Assay Kit を使用し測定し、比活性(タンパク質量当たりの活性)を算出した。精製度は、 粗酵素の比活性あたりの精製した酵素の比活性から算出した。また、HAp 処理を行った酵素 の耐熱性を調べた。4
第
2 章
Cellvibrio sp. OA-2007 由来の酵素によるアルギン酸の分解
2-1. 実験材料調製
2-1-1. 実験材料
寒天分解菌 Cellvibrio sp. OA-2007 については有賀先生が作成し、冷凍保存したものを 使用した。硝酸ナトリウム(NaNO3)、りん酸水素二ナトリウム 12 水和物(Na2HPO4・12H2O)、
りん酸二水素カリウム(KH2PO4)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4・7H2O)、塩化カリウ ム(KCl)、Agar、アルギン酸ナトリウム、りん酸水素二カリウム (K2HPO4)については、シ グマ アルドリッチ ジャパン合同会社さんから購入した。針(内径 0.7mm)、シリンジ(10mL、 中口)については、TERUMO 株式会社さんから購入した。 2-1-2. 寒天分解菌の培養 寒天培地(硝酸ナトリウム 1.0g ,りん酸水素二ナトリウム 12 水和物 1.57g ,りん酸二水 素カリウム 0.9g ,硫酸マグネシウム七水和物 0.5g ,塩化カリウム 0.5g ,Agar 1.0g ,H2O 1L)を 400mL 作り、100mL ずつ 4 本の三角フラスコに分け、オートクレーブで滅菌した。 また、アルギン酸培地(硝酸ナトリウム 1.0g ,りん酸水素二ナトリウム 12 水和物 1.57g ,り ん酸二水素カリウム 0.9g ,硫酸マグネシウム七水和物 0.5g ,塩化カリウム 0.5g ,アルギン 酸ナトリウム 5.0g ,H2O 1L)を 2L 作り、三角フラスコに入れ、オートクレーブで滅菌した。 冷凍保存されたOA-2007 株を寒天培地 2 本に 2mL 植菌し、25℃で 48 時間振とう培養し た。この前々培養液を寒天培地2 本に 3mL 植菌し、25℃で 48 時間振とう培養した。この 前培養液をアルギン酸培地に5mL 植菌し、25℃で 48 時間振とう培養した。 2-1-3. 粗酵素の調製 培養液を遠心分離 (8000rpm, 4℃, 10 min)し、上清液を取り除いた。沈殿物を 20mM りん酸緩衝液 (pH7.0)で懸濁。 遠心分離 (8000rpm, 4℃, 10min)し、上清液を取り除き、 沈殿物をりん酸緩衝液で懸濁した。懸濁液を超音波処理 (出力 60%, 15min, 1秒間隔で ON/OFF, Max 9℃)し、懸濁破砕液を遠心分離(8000rpm, 4℃, 10 min)し、上清液を粗酵素 液として回収した。
5 2-2. 実験方法 2-2-1. 分解反応実験 10g/L の濃度で 20mM りん酸緩衝液にアルギン酸ナトリウムを溶解させ、アルギン酸 水溶液を調製。全量5mL ,濃度 6g/L (10g/L アルギン酸水溶液 3mL ,りん酸緩衝液 1mL ,粗 酵素1mL)の反応液を 30 分から 6 時間振とう(25℃)し、100℃の沸騰水で加熱し反応を止め た。 2-2-2. 滴下実験 針を付けたシリンジに 2-2-1. で反応を停止したサンプルを入れ、4ml~3ml 間の 1ml が 針の先から滴下する時間を計測した(図 1)。 2-3. 結果と考察 反応時間が長くなるにつれて、滴下にかかる時間が速くなっていることから、粘性を持 つアルギン酸がCellvibriosp. OA-2007 由来の酵素によってアルギン酸が分解されているこ とが分かった(図 2)。
6 図1
7
図
2 反応時間に対する滴下時間
0
200
400
600
800
0
2
4
6
滴
下
時
間
(s)
反応時間 (h)
8
第
3 章 アルギン酸分解酵素の予備精製
3-1. 実験材料調製 3-1-1. 実験材料 塩酸(HCl)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(NH2C(CH2OH)3)、硫酸アンモニウ ム((NH4)2SO4)、については、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社さんから購入した。ハイドロキシアパタイト(Ca10(Po4)6(OH)2)については、日本ケミカルさんから購入した。
Micro BCATM Protein Assay Kit については、Thermo Fisher SCIENTIFIC 株式会社さん
から購入した。ビバスピン(VIVASPIN 2)については、四国理科 株式会社から購入した。
3-1-2. 粗酵素の調製
2-1-2. の培養液を遠心分離 (8000rpm, 4℃, 10 min)し、上清液を取り除いた。沈殿物を 50mM トリス緩衝液 (pH7.0)で懸濁。 遠心分離 (8000rpm, 4℃, 10min)し、上清液を取り 除き、沈殿物をトリス緩衝液で懸濁した。懸濁液を超音波処理 (出力 60%, 15min, 1秒間 隔で ON/OFF, Max 9℃)し、懸濁破砕液を遠心分離(8000rpm, 4℃, 10 min)し、上清液を粗 酵素液として回収した。 3-2. 実験方法 3-2-1.活性 2g/L アルギン酸ナトリウム水溶液 0.5mL に酵素液 0.2mL と 50mM トリス緩衝液 (pH7.0) 0.3mL を加え、振とう(37℃, 1h)、100℃の沸騰水で反応を止めた。その後、 反応液 0.6mL に 33mMHCl を 0.6mL 加えて未反応のアルギン酸ナトリウムを除去するために遠 心分離(8,000rpm, 5min)した後、上澄み液の 235nm の吸光度を計測することでリア-ゼ活性 により生じる不飽和ウロン酸量を測定。反応時間当たりの、測定した吸光度235nm の値を 活性として算出した。 3-2-2. タンパク質量
タンパク質量については BCA Protein Assay Kit を用いて、 説明書に従って 562nm の 吸光度を測定した。標準タンパク質としてウシ血清アルブミン (BSA)を使用した。
3-2-3. 比活性
9 3-2-4. 精製度 精製度は、粗酵素の比活性あたりの精製した酵素の比活性から算出した。 3-2-5. 硫安 硫酸アンモニウムは、溶解度が高く、また添加することで溶液中の塩濃度が高くなり、 タンパク質が凝集し、沈殿する。この作用を利用し、酵素タンパク質の精製を試みた。粗 酵素に溶液の硫安濃度が、40%,50%,60%,70%になるように硫安を添加し、1 時間冷却しな がら振とう後、遠心分離(8,000rpm, 5min)、沈殿物をトリス緩衝液で懸濁することで、硫 安処理した酵素を回収し、比活性を算出した。 3-2-6. Hap ヒドロキシアパタイトは、水酸化リン酸カルシウムのことで、タンパク質などの分離、 精製に使用されている。そこで、硫安濃度 70%で処理した酵素液に 40%,50%,60%,70%の 濃度でHAp を添加し、1 時間反応させ、遠心分離(8,000rpm, 5min)した時の上澄み液を、 吸着時の酵素として回収し、比活性を算出した。また、沈殿物に 300mM リン酸緩衝液を 添加し、1 時間反応させ、遠心分離(8,000rpm, 5min)した時の上澄み液を、脱着時の酵素液 として回収し、比活性を算出した。 3-3. 結果と考察 3-3-1. 硫安による精製 硫安濃度が70%の時、比活性の値が最も高くなっていることから、目的の酵素タンパク 質が多く沈澱していることがわかった。硫安濃度とそれに対する比活性のグラフ(図 3)。 3-3-2. HAp による精製 HAp 濃度 60%の吸着時、酵素を最も精製できた。また、HAp 濃度 60%の時、脱着時と 吸着時の比活性を比較したところ、脱着時の比活性が吸着時よりも低いことから、HAp に 目的ではない夾雑タンパク質が多く吸着していることがわかった。HAp 濃度とそれに対す る比活性のグラフ(図 4)。 3-3-3. 精製度 粗酵素と硫安濃度70%で処理した酵素とそれを、HAp 濃度 60%で処理した酵素の比活 性を比較したところ、硫安濃度70%で処理した酵素は、粗酵素の約 1.8 倍精製され、HAp 濃度60%で処理した酵素は、粗酵素の約 4.1 倍精製された。粗酵素と精製した酵素の比活 性を比較したグラフ(図 5)
10
図
3 硫安濃度とそれに対する比活性
0.06
0.07
0.08
0.09
30
50
70
比活性
硫安濃度 (%)
11
図
4 HAp 濃度とそれに対する比活性
0.15
0.2
0.25
0.3
0.35
30
50
70
比活性
HA濃度 (%)
脱着
吸着
12
図
5 粗酵素と精製した酵素の比活性を比較したグラフ
0.08
0.15
0.35
0
0.1
0.2
0.3
0.4
粗酵素
硫安70%酵素
HA60%酵素
比活性
1.8倍
4.1倍
13
第
4 章 アルギン酸分解酵素の耐熱性
4-1. 実験材料調製 3-2-6. で得られた Hap60%処理した吸着酵素を使用した。 4-2. 実験方法 酵素を20℃,30℃,40℃,50℃,60℃の温度で加温(1h)した後、4g/L アルギン酸ナトリウム 水溶液0.5mL に酵素液 0.2mL と 50mM トリス緩衝液(pH7.0) 0.3mL を加え、振とう(37℃, 2h)、100℃の沸騰水で反応を止めた。その後、 反応液 0.6mL に 33mMHCl を 0.6mL 加えて 未反応のアルギン酸ナトリウムを除去するために遠心分離(8,000rpm, 5min)した後、上澄み 液の235nm の吸光度を計測することでリア-ゼ活性により生じる不飽和ウロン酸量を測定。 反応時間当たりの、測定した吸光度235nm の値を活性として算出した。この時、一番活性 の高いものを100%とし、相対活性を比較することで耐熱性を調べた。 4-3. 結果と考察 50℃で 1 時間加温した酵素は、一番活性が高い箇所と比較すると、約 72%活性の低下が見 られた。温度に対する相対活性のグラフ(図 6)。14
図
6 温度に対する相対活性のグラフ
0
20
40
60
80
100
10
30
50
70
相対活性
(%
)
温度 (℃)
加温
(1 h)
100%
28%
15
第
5 章 結言
Cellvibrio sp. OA-2007 が生産する酵素により、アルギン酸が分解されていることを確認 できた。硫安とHA によりアルギン酸分解酵素を約 4.1 倍精製できた。HA 処理を行なった 酵素は50 ℃で 1 時間加温したところ約 72 %活性が低下した。
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謝辞
この研究を卒業論文として形にするにあたり、有賀 修 准教授 に最後まで厳しくも熱心 なご指導を賜りました。ここに、深謝の意を申し上げます。また、日頃から多くの知識と 激励を頂きました 川本 雄基 先輩、辛い研究の中に笑いを提供して頂きました 坂口 直人 氏、毎日実験のモチベーションを高めて頂きました 仲原 将太 氏、多大な助言、助力を頂 きました 安居 菜摘 氏、研究に行き詰まった際、多くの示唆を頂きました 山崎 和真 氏 に心より感謝するとともに、皆様のご活躍を祈っております。最後に日頃から、支えて頂 いた百田研究室卒業生 山口 上昇 先輩、環境理工学群の同期の方々、他学群のご友人方、 有賀研究室の後輩方に感謝申し上げます。17