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反すうに焦点を当てた認知行動療法を用いた予防的自助プログラム参加者の体験の質的検討―プログラムによる変化と動機づけの観点から―

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-37 370

-反すうに焦点を当てた認知行動療法を用いた予防的自助プログラム参加者の体験の

質的検討―プログラムによる変化と動機づけの観点から―

○梅垣 佑介1)、松岡 祐里1)、岩垣 千早1)、樋口 綾香2)、ワトキンス エド3)、マラン ユージン3) 1 )奈良女子大学大学院人間文化研究科、 2 )近畿大学医学部奈良病院、 3 )エクセター大学 問題と目的 複数の精神障害や心理的問題に共通する病理的プロ セ ス に 焦 点 を 当 て た 診 断 横 断 的 な 認 知 行 動 療 法 (Harvey et al., 2004; Watkins, 2016)が近年注目 されている。中でも,過剰な反すうや心配といった反 復 的 で 否 定 的 な 思 考(r e p e t i t i v e n e g a t i v e thoughts; RNT)は,うつや不安などの心理的問題の 発症・維持に関わる病理的プロセスとして知られる (Watkins, 2004; 2008)。本研究では,RNTに働きかけ ることでうつ・不安の予防・改善を目指す「反すうに 焦点を当てた認知行動療法」(Rumination-focused CBT, RFCBT; Watkins, 2016)に基づくパンフレット 形式の自助プログラムを開発した。本研究の目的は, 我 が 国 の 大 学 生 に お け る う つ・ 不 安 の 予 防 的 ア プ ローチとしてRFCBTが適用可能かどうか,およびRFCBT を自助プログラムとして実施可能かどうかについて予 備的な知見を得ることであった。特に,RFCBTの技法 要因(specific factors)が日本の大学生においても 有効か,自助プログラムの継続の動機となる要因は何 かに注目した。 方法 研究の手続き  A 女子大学の心理学の概論の講義終 了後に協力を呼びかけ,協力者から同意を得たのち, 自助プログラムのパンフレットを配布し, 1 〜数週間 かけて取り組んでもらった。すべてのパンフレットが 終了した協力者に対し,半構造化面接法によるインタ ビュー調査(30〜70分)を行った。インタビュー内容 を協力者の同意のもとで録音し,逐語記録を作成しKJ 法(川喜田, 1967; 1970)を援用して分析した。各パ ンフレット終了時とインタビュー終了時に協力者に謝 礼(図書カード1,000円分)を渡した。 研究協力者 本研究の協力者は,高いRNT傾向のあ る 大 学 生 で あ っ た。 具 体 的 に は, R u m i n a t i v e Responses Scaleで非抑うつ群大学生の平均+1SD以上 に 当 た る50点 以 上( 長 谷 川, 2012), ま た はPenn State Worry Questionnaireで大学生の平均+1SD 以上 に当たる64点以上(杉浦・丹野, 2000)のいずれかを 満たす者であった。Patient Health Questionnaire -9の項目 9 で 2 以上を回答した者には協力を依頼せず 学生相談室などの利用を勧めた。 呼びかけに応じた36名のうち,16名がプログラム適 用と判断された。このうち 7 名が 3 冊のパンフレット を終了し,インタビュー調査を受けた。 プログラムの形式と内容  3 冊のパンフレット形式 (12〜24ページ)であった。内容は,1 冊目が反すう・ 心配の自己点検と機能分析,代替行動のプランニン グ, 2 冊目が具体的な思考を用いた対処方略の練習・ 応用, 3 冊目が自分に優しくする方法を用いた対処方 略の練習・応用であった。 倫理的配慮 第一著者が所属する大学の研究倫理委 員会の承認を受けて実施した。実施に際し,協力者に 対して口頭・書面にて個別で研究内容を説明し,書面 による同意を得た。その際に,研究協力は任意である こと,いつでも中断可能であること,講義の成績評価 とは関連がないことなどを説明した。得られた個人情 報は厳重に管理されており,結果の公表に際しても個 人が特定できない形で行った。 結果と考察 7 名の言語データを分析した結果,233個のラベル と40個のカテゴリが生成された。そのうち,「自己分 析」と「対処方法の学習」が,自助プログラムによる 中核的な変化と考えられた。 自己分析 チェックリストなどを用いて振り返るこ とで,自分自身の考え方の傾向を知ることや,「何も していないと不安になる」,「思った以上に反すうをし ていた」といった気づきや自己の客観視につながっ た。自己分析によるこういった気づきは,異なる対処 方略をとってみようという動機につながったと考えら れた。また,対処の前段階として,反すうに対処可能 であるという気づきを挙げる協力者がいた。 対処方法の学習  1 冊目で学んだ内容として「なん で○○しなかったんだろう」という原因や結果に着目 した抽象的な考え方から「△△してみたらどうだろ う」というプロセスに着目した具体的で前方視的な考 え方に変えられたという報告や,機能分析によってこ れまでにうまくいった場面を振り返ることが対処方略 の選定だけでなく自信にもつながった可能性が示され た。 2 冊目で学んだ内容として,代替行動を計画する ことで自分の気持ちを振り返るきっかけになったり, その時どうしたら良いかを具体的に考えるきっかけに なったことが報告された。 3 冊目で学んだ内容とし て,自分自身に前向きな言葉や優しい言葉をかけられ

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-37 371 -るようになったことが報告された。 いずれの冊子についても,具体的な対処方法の紹介 が役に立ったと多くの協力者から語られた。協力者は 多くの対処方法の中から役に立ちそうなものを取捨選 択していたことが示された。 その他の変化  7 名中 6 名が悩んでいることを書き 出すことによる変化を報告した。書き出すことで状況 や問題を整理でき,思考・感情が整理されるといった 効果や,不安に感じていたことがそれほど重大なこと ではないと再評価できる効果があると考えられた。 自助プログラム継続の動機づけ要因 自己分析によ る気づきや対処方法の学習に加え,内容が自分自身に 当てはまると感じられること,例示されたエピソード に共感できること,具体的な対処方法のレパートリー が書かれていること,将来にも役立てられそうと感じ られること,形式的な取り組みやすさなどが,継続の 動機づけにつながった可能性が示唆された。また,臨 床心理学研究への興味から参加した人もいた。内容の 新奇性は継続の動機につながる一方,馴染みがなく やってみようと思えないことにもつながる可能性が示 された。また,思い出したくないことに直面化させら れる感じや,反すうは否定的なものだというメッセー ジを感じたと報告した協力者もいた。 総合考察 多くのプログラム完遂者にとってRFCBTの技法要因 の内容が役立つと感じられたことが示唆された。自助 プログラムの継続には,協力者それぞれに内的・外的 な動機づけ要因が働いたと考えられた。 本研究はプログラム完遂者に対するインタビュー調 査であったため,概ね肯定的な意見・感想が多く,プ ログラムが意図した通りの変化を報告した協力者が多 かった。定量的な指標の検討や,自助プログラムの進 度と定量的指標の変化との関連の検討,協力者の年 齢・性別の偏りを考慮した検討などが今後の課題であ る。 参考文献

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参照

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