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小学校高学年を対象とする学級全体への認知再構成の介入効果の検討―自閉スペクトラム症的傾向を視点に入れて―

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-72 262

-小学校高学年を対象とする学級全体への認知再構成の介入効果の検討

―自閉スペクトラム症的傾向を視点に入れて―

○塩見 豊、池田 浩之 兵庫教育大学大学院 【問題と目的】 学校不適応は「登校しているが正規の学校生活に苦 痛や困難を感じている状態」(有賀,2010)とされる.不 登校の一部にはこのような苦痛や困難等の不適応感の 持続と関係するケースがあると考えられる.加茂ら (2010)は各研究結果から,不登校における発達障害全 体の割合について,1.3%〜60%(医療機関),1.4%〜 47%(教育機関)と整理しており, 不登校と不適応 感・発達障害との関係については検討する必要がある と考える.石崎(2017)は発達障害のある児童生徒と 不適応の関係について,特に自閉スペクトラム症(以 下ASD)の児童生徒の集団内での適切な行動のできに くさについて指摘している.また齊藤(2011)は,ASD 診断のある児童生徒の不登校の割合は発達障害全体の 割合と比較すると高い傾向にあるとしている. ASDへの介入研究は,中西ら(2016)の研究のように 社会的・行動的なスキル獲得のための介入研究等が多 い.しかし, 佐藤ら(2009)が行った小学校高学年児 童に社会的スキル訓練・認知再構成等のプログラム介 入では,抑うつ症状や認知の誤りの改善がみられたと 報告されている.ASDの特性である想像力の弱さや固定 的な思考等に対して認知再構成を中心とする介入を行 うことは,ASD特性のある子どもに対して不登校予防に つながる可能性がある. 不登校が小学校高学年から中学校にかけて増加する こと,認知再構成介入には内省力や言語での思考力と の関係が想定されること,ASD特性のある子は通常学級 内に一定数在籍していること等から,小学校高学年の 時期に通常学級への認知的介入は効果が期待でき る.以上から,小学校高学年の通常の学級全体への認知 再構成を内容とする介入を行い,ASD的傾向を視野に入 れた介入効果を検討することを目的とする. 【方法】 対 象  A 府内公立 B 小学校 5 年生 2 学級41名 時 期 平成30年 2 月上旬〜 3 月上旬 手続き 1 )学校・担任との打合せ  2 )保護者への説明文書 の配布・ベースライン測定  3 ) 2 月上旬:第 1 回介 入と評価尺度記入  4 ) 2 月下旬:第 2 回介入と評価 尺度記入  5 ) 3 月上旬:第 3 回介入と評価尺度記入  6 )学校・担任への結果報告 介入内容(認知再構成を扱う内容:授業形式) <第 1 回>気分と考えの関係について知る.希望して いない放送担当になった子が,多面的に考えられずに 気分が落ち込んでしまった架空事例を通して自動思考 について知る. <第 2 回>自分自身の問題についての自動思考と反証 探しを行った後, 適応的思考の型を知る. <第 3 回>サッカーの試合で自分の失敗と友達のよそ よそしさを関連付けて考えてしまう架空事例について 適応的思考を考えたのち,登場人物へのアドバイスを 行う. 倫理的配慮 質問への回答は任意であること,参加しないことに ついて不利益は受けないこと,個人情報は公開されな いこと等,保護者には文書を配布して説明を行った (文言は学校長と協議).また児童には授業時と尺度記 入時に保護者と同様の説明を行った. 使用尺度 1 ) 自 閉 性 ス ペ ク ト ル 指 数(Autism-spectrum Quotient: AQ)10 項目版(AQ- J -10:Kurita et al., 2005)担任が記入をする. 2 )小学生版学校適応感尺度(山口,2016)20項目(心 理・社会,学習・進路,先生との関係,心身健康の 4 因 子)児童が記入をする. 【結果と考察】 まず全体への介入効果を調べるため,5年生全体の ベースライン点数と介入終了後点数の t 検定を行っ た.t(38)=-.947, n.s.となり,5年生全体への介入効果 は見られなかった(table 1). また男女差を見るために行った 2 要因被験者混合分 散分析では,全体として有意な差は見られなかった(F (1,29)=1.337,n.s.) (table 2).次にAQ- J -10の カットオフ値( 7 点)により低群と高群(欠損のない 2 名)に分け,分散分析を行ったところ全体として有 意な差は見られなかったが,介入 2 回目と 3 回目に有 意な差がみられた(table 3).次に小学生版学校適応 感尺度の因子ごとに,男女差を比較する 2 要因被験者 混合分散分析を行った.「心理・社会」因子(F(1,29) =1.983,n.s.)「学習・進路」因子(F(1,29)=0.878,n. s.)「心身健康」因子(F(1,29)=1.295,n.s.)となり, 有意な差は見られなかった.「先生との関係」因子(F

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-72 263 -(1,29)=3.479,n.s.)となったが, 1 回目と 2 回目, 2 回目と 3 回目の結果に有意な差が見られた.さらに この 4 因子ついてASD特性による差があるかどうかを 調べるため,分散分析を行った.「心理・社会」因子(F (1,29)=1.439,n.s.), 「学習・進路」因子(F(1,29) =0.564,n.s.),「心身健康」因子(F(1,29)=2.294,n. s.)には,全体で差が見られなかった.「先生との関 係」因子は,ASD高群の児童がこの因子質問に欠損が あったため分析を行っていない.ASD高群については 「学習・進路」因子において, 2 回目と 3 回目に有意 な差が見られた(table 3). 今回の調査では,学年全体への介入の効果は見られ なかったが, 2 回目の授業介入の効果が得られにくい 様子が見られた. 2 回目の介入は,自分の経験や内面 を語る内容を含んでおり,それが効果に影響した可能 性がある.認知的な介入のためには,自己の内省力や 体験を基にした思考力が関係している可能性が示唆さ れた.授業後の感想文では「自分もワナに落ちている ので,抜け出したい」等の感想が散見されたことから 認知的な変化の兆候は感じられた.小学生に認知的な 介入を行うためには,自分の気持ちに焦点を合わせ,そ れを言語化する等の基盤となる力についてアセスメン トが重要であろう. ASD特性の低高群においても全体 としては差が見られなかったが,因子別の分析では 「学習・進路」因子において 2 回目と 3 回目の介入成 果に差が出ている.「学習・進路」因子の中には「授 業内容が分かったか」など学習状況についての質問が ある.ASD高群の児童は,この質問を普段のこととし てとらえず“この日( 2 回目の介入)の授業”として 捉えたのかもしれない.全体的な視点や総括的な思考 判断ができにくいASD児は,その場の経験や判断が全 体的な価値観に影響を及ぼしてしまい,こういった特 性が不適応に影響することも考えられる. 【今後について】 内省や表現力の影響を受けやすい第 2 回目の介入内 容について検討する.また自動尺度など認知面の変容 をとらえやすい尺度について追加を検討する.さらに スキル的な学習との比較や介入回数についても研究計 画上での工夫が可能であろう.

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