• 検索結果がありません。

理学療法士の臨床能力の難易度と経験年数間の差に関する縦断研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "理学療法士の臨床能力の難易度と経験年数間の差に関する縦断研究"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)理学療法学 第 154 44 巻第 2 号 154 ∼ 155 頁(2017 年) 理学療法学 第 44 巻第 2 号. 平成 26 年度研究助成報告書. 別の合計の平均を経験年数別に対応のある一元配置分散分析お よび Bonferroni の多重比較を用いた。53 の評価項目は経験年. 理学療法士の臨床能力の難易度と経験年 数間の差に関する縦断研究. 数別に Friedman 検定および Scheffe の多重比較を用いた。さ らに CEPT の段階づけで「自立している状態」である 3 点以 上と評価した人数の割合を,53 の評価項目毎に比較した。対 象者の倫理的配慮として研究期間中データは「通し番号」で管. 芳野 純. 1). 理し無記名にて調査を行った。初回時に書面および口頭におい ての説明後,CEPT を配布し無記名で対象者個別に返送しても. 1). 帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科. らった。本研究は帝京平成大学の倫理委員会の承認を得ている (承認番号 25-012)。. キーワード:継続教育,臨床能力評価,縦断研究. 結  果  7 施設に所属し 2013 年に理学療法士国家試験に合格した理. はじめに. 学療法士は 65 名であった。4 回すべて CEPT の返信があった.  理学療法士に限らず医療専門職に必要な能力は多様な要素で. 対象者は 38 名であり,解析対象は 38 名とした。38 名の属性は,. 構成されていると考えられるが,その内容により比較的早期に. 男性 25 名・女性 13 名であり平均年齢(標準偏差:以下,SD). 獲得される能力や十分な臨床経験を重ねる必要のある能力と. は 25.9(2.8)歳であった。経験 3 年時の所属は,急性期 13 名・. いった難易度が存在すると考えられる。看護師においては厚生. 回復期 9 名・生活期(外来を含む)16 名であった。CEPT の. 労働省による「看護技術の到達目標」があり,それらの項目に. 53 項目の合計の平均(SD)は,経験 0 年 106.3(23.1)点・経. ついて 1 年以内に「できる」「指導の下できる」などの 4 段階 の目安が存在する. 1). 験 1 年 130.8(18.8) 点・ 経 験 2 年 140.5(15.4) 点・ 経 験 3 年. 。臨床経験 1 年目でそのような能力を獲. 150.1(13.4)点であり,すべての経験年数間で有意な差を認め. 得・経験することにより,その後の成長が期待できると考えら. た。表 1 に 7 つのカテゴリー別合計の平均を項目数で除した結. れる。そのため理学療法士が必要な能力をどのような段階を経. 果および統計結果を示す。7 つのカテゴリー別では【知識】・. て獲得しているのかを知ることがその後の成長に関して重要で. 【PT 技術】はすべての経験年数間で有意な差を認めた。他の 5. あるといえる。本研究の目的は,理学療法士の資格取得後の継. つのカテゴリーは経験 0 年と他の経験年数との有意な差を認め. 続教育において,1 ∼ 3 年目終了時(4 年目開始時)までの能. たが,「経験 1・2 年」の間「経験 2・3 年」の間では有意な差. 力を縦断的に調査し,その難易度および経験年数間の差を調査. が認められなかった。カテゴリーの【態度】・【自己教育】 ・【自. することである。. 己管理】は経験 0 年から平均 2.5 点程度で比較的高値を示した。. 方法と対象. カテゴリーの【知識】・【思考】・【PT 技術】は経験 0 年の平均.  本研究では,理学療法士の能力の難易度を調査するために,. が 1 点台であり低値であったが経験 3 年時には平均 2.5 点以上. 理学療法士の能力の評価表である「理学療法における臨床能力. の値を示した。53 の評価項目別にみると,Friedman 検定の. 評価尺度: (Clinical Competence Evaluation Scale in Physical 2)3). 結果はカテゴリー【自己教育】:「向上心をもつ」・カテゴリー. 。CEPT. 【自己管理】 :「体調管理や予定管理等を行う」の 2 項目を除い. は 7 つのカテゴリーと 53 の評価項目にて構成されている 4 段. て 51 項目が有意な差を認めた。CEPT の段階づけで「自立し. 階の評価尺度である(合計 212 点満点) 。7 つのカテゴリーは【理. ている状態」である 3 点以上と評価した人数の割合を 53 の評. 学療法実施上の必要な知識(以下,知識) 】・【臨床思考能力(以. 価項目別でみると,「接遇身だしなみ」「ルールを守る」「雑用. 下,思考) 】・【医療職としての理学療法士の技術(以下,PT 技. を進んで行う」「謙虚な姿勢で診療を行う」「指摘を真摯に受け. 術)】・【コミュニケーション技術(以下,会話技術)】・【専門職. 止める」「治療に責任をもつ」「向上心をもつ」の 7 項目で経験. 社会人としての態度(以下,態度) 】・【自己教育力(以下,自. 0 年時から 50%を超えていた。経験 3 年時でも 3 点以上と評価. 己教育) 】・【自己管理能力(以下,自己管理) 】である。4 段階. した人数の割合が 50%を超えなかった項目は, 「内部障害の知. の評価基準は評価項目に関して「1 点:多くの指導を必要とす. 識」 「保険制度の知識」 「治療効果を出せる技術」 「プレゼンテー. Therapy:以下,CEPT) 」を使用し調査を行った. る状態」 「2 点:ある程度指導が必要とする状態」 「3 点 : 指導な. ション技術」の 4 項目であった。53 の評価項目を Friedman 検. く実施できる自立した状態」「4 点 : 後輩や学生に模範となる能. 定・Scheffe の多重比較と 3 点以上の割合を考慮して,3 年間の. 力を有する状態」である。対象は調査に対して協力の得られた. 点数の変化の傾向を 3 つのパターンに分けることができた。パ. 7 施設に所属し,2013 年に理学療法士国家試験に合格した理学. ターン①は経験 0 年から高値を示す項目,パターン②は 3 年間. 療法士とした。7 施設はひとつの領域に偏らないように意図的. を通して向上する項目,パターン③は経験 0 年から 1 年間で点. に選定した(内訳:大学病院 1 施設・急性期病院 1 施設・急性. 数が向上するがその後の向上が穏やかな項目であった。パター. 期∼生活期の複合施設 3 施設・リハビリテーション専門病院 1. ン①はおもにカテゴリー【態度】・【自己教育】・【自己管理】に. 施設・診療所 1 施設)。調査は 1 年目の 5 月(以下,経験 0 年)・. 含まれる項目であった。パターン②はおもに【知識】・【会話技. 2 年目の 4 月(以下,経験 1 年)3 年目の 4 月(以下,経験 2 年). 術】 ・治療計画を立てるレベルの【思考】 ・検査や介助指導やカ. 4 年目の 4 月(以下,経験 3 年)の計 4 回行った。得られたデー. ルテ記載に関する【PT 技術】の項目であった。③はおもに予. タを集計して,CEPT の 53 項目合計の平均と 7 つのカテゴリー. 後予測や治療効果に関する【思考】・比較的高度な【PT 技術】.

(2) 理学療法士の臨床能力の難易度と経験年数間の差に関する縦断研究. 155. 表 1 経験年数別 CEPT の 53 項目・カテゴリー別結果の平均と統計結果 経験年数別(結果の合計平均 / 項目数) :点. 統計結果 経験年数間の差(Bonferroni). 経験 0 年. 経験 1 年. 経験 2 年. 経験 3 年. ANOVA. 0‒1. 0‒2. 0‒3. 1‒2. 1‒3. 2‒3. 53 項目合計. 2.01. 2.47. 2.65. 2.83. **. **. **. **. *. **. *. 知識. 1.57. 1.91. 2.23. 2.56. **. **. **. **. **. **. **. 思考. 1.71. 2.33. 2.55. 2.76. **. **. **. **. PT 技術. 1.67. 2.24. 2.46. 2.66. **. **. **. **. 会話技術. 2.02. 2.50. 2.70. 2.87. **. **. **. **. **. 態度. 2.49. 2.88. 2.97. 3.09. **. **. **. **. *. 自己教育. 2.44. 2.68. 2.80. 2.97. **. **. **. *. 自己管理. 2.39. 2.72. 2.82. 2.89. **. **. **. **. ** *. **. *. **:p < 0.01 *:p < 0.05. に関する項目が含まれた。. と【PT 技術】に関しては経験を重ねることにより確実に向上. 考  察. するパターン②のものと,経験 1 年時はある程度向上するが,.  経験 0 年から経験 3 年終了後までの 3 年間の自己評価による. その後穏やかにしか向上していかないパターン③の評価項目が. 理学療法士の臨床能力の変化を縦断的に調査した。CEPT の. あることが考えられる。パターン③の評価項目は比較的難易度. 合計点はすべての経験年間に有意な差があり,臨床経験により. の高いものであると推察され,長期的な成長といった視点から. 総合的に臨床能力が向上していたといえる。しかし項目毎にみ. も,これらの能力の改善が重要になると考えられる。今回はカ. ると臨床能力の向上がいくつかのパターンがあることがわかっ. テゴリーのみの考察であったが,今後は 53 の評価項目を 1 つ. た。パターン①に多くの評価項目が含まれた【態度】 ・【自己教. ひとつ検討する必要があると思われる。. 育】・【自己管理】は比較的早期から高値を示していた。これは,. 文  献. 学生時代からある程度身に着けていたか,経験 0 年の調査時点 である 5 月時点での 1 ヵ月程度の臨床経験の早い段階で獲得で きた可能性がある。パターン②にすべての項目が含まれた【知 識】に関しては経験 0 年では他のカテゴリーと比較するともっ とも低値であったが各経験年数において有意差があり,臨床経 験を重ねることにより知識量が確実に向上していることが考え られる。【会話技術】も多くの評価項目がパターン②に含まれ, 【知識】と同様な傾向で経験 0 年は比較的低いが経験年数を重 ねることにより向上していく能力であると考えられる。【思考】. 1)厚生労働省 新人看護職員研修ガイドライン.http://www. mhlw.go.jp/bunya/iryou/oshirase/dl/100210-3c.pdf(2016 年 6 月 30 日引用) 2)芳野 純,臼田 滋:理学療法における臨床能力評価尺 度(Clinical Competence Evaluation Scale in Physical Therapy:CEPT)の開発と信頼性の検討.理学療法科学. 2012; 27(6): 651‒655. 3)Yoshino J, Usuda S: The Reliability and Validity of the Clinical Competence Evaluation Scale in Physical Therapy. J Phys Ther Sci. 2013; 25(12): 1621‒1624..

(3)

参照

関連したドキュメント

5 ケースの実験結果を比較すると,落下高さの低い段

文献資料リポジトリとの連携および横断検索の 実現である.複数の機関に分散している多様な

などから, 従来から用いられてきた診断基準 (表 3) にて診断は容易である.一方,非典型例の臨 床像は多様である(表 2)

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

等 におい て も各作 業段 階での拘 束状態 の確認 が必 要で ある... University

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

LF/HF の変化である。本研究で はキャンプの日数が経過するほど 快眠度指数が上昇し、1日目と4 日目を比較すると 9.3 点の差があ った。

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を